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2.5次元の狭間にて  作者: 黒覇 媄兎
第4章 リェータイルシオン・フェスティバル
25/32

プロローグ

 前略


 第二の魔王であったリアを倒し監獄から脱獄に成功して、無事現実世界へと帰還した神夜たち。

 知らず知らずの間に6月が終わって現実世界は7月に切り替わり、休んでいた分の学業に追われる身となったが、学生が何よりも心待ちにする夏休みがもう目と鼻の先にまで迫ってきていた。



 終業式で学園長のありがたーいお言葉と『高校の夏休みを存分に楽しんでこーいっ!』という高らかな宣言を聞いて式は終えた。

 その後は担任から配られるお中元という名の通知表が全員に配られた。落胆する者、両腕を高らかに挙げる者と皆、表情は様々。

 俺こと、十六夜神夜の一学期成績は数学、化学、物理、体育、家庭科は五。保健は四。それ以外は三と言った中の上? といった成績だ。さて、咲妃たちはどうだったかなー?

 咲妃たちの成績は後で聞くとして。通知表を配り終えた岡村は改まって、夏休みの過ごし方について長々と話しだした。

「――であるからして、夏休みは各自節度を持って過ごすように。それじゃあ白星―号令」

「はいっ! 起立! 気よ付け、礼っ!」

 今学期最後の号令を言い終え、本日兼今学期分の学業は終了した。

 ぞろぞろと部活動生は部活動生同士で集まって部室へと。帰宅部の連中は友達を誘って駅前の喫茶店にでも寄っていこうなど、そろいもそろって教室を出て行った。

 今日も最後まで教室に残ったのは俺を含めて、咲妃にユキ、アリスに俊と白星姉妹の計七人に加えて妹の氷空までもが俺たちの教室にやってきた。

「ねえ。こうして皆残ったわけだからさ成績の見せ合いっこしない?」

 と、艶の入った腰まである綺麗な茶髪をいつもポニーテールに束ねている幼馴染の咲妃が終了時のお約束行事をやりたいと言い出した。

「私は構わないよ咲妃」

 やたら自信満々に、ボブカットの白髪で感情をあまり表にださないクールキャラのユキが咲妃に便乗する。

「八雲さん、今回はかなり自信あるような顔しているわねー」

 白星さんの姉であるとおりんさんが言い出しっぺの咲妃を煽り始めた。今回も始まるのかとおりんさんのと咲妃による成績バトルが!

「当たり前でしょ! あたし、負ける気がしないので! さあ皆通知表を出して! じゃあせーので見せ合うわよ。せーのっ!」

 バッ! と通知表を開いた俺たちは互いに見えるようにして表示した。

 とおりんさんは全教科オール五。さすがと言えばさすがだ。

 咲妃は主要教科と保健、体育、音楽は五。誣いて家庭科のみ四。これは調理実習が影響しているな。

 ユキも同じく主要科目は五。ただし副科目である音楽、保健、体育だけが四。この場合実習での評価が響いているのか。

 白星さんも主要教科は五。ただ体育だけが三というだけだった。これもまた咲妃とユキ同様に実習だな。

 俺はさきほど言った通り理系科目と体育と家庭科が五。それ以外は三と言っていたって普通、中の上の成績。

 六月中旬に転校してきたというより、任務でこっちに来たアリスの成績は、英語と日本史に家庭科が五。それ以外は三と四で溢れ返っていた。

 学年が違う氷空も俺たちに便乗して通知表を見せてくれた。彼女の成績はと家庭科、保健と体育はオール五.それ以外は三だと教えてくれた。

 なんか俺と氷空の成績だけ類似する点があるような気がするのは俺だけだろうか? 兄妹だからか? 

 さて、問題は俊だ。

 トップクラスの中で成績がもっとも怪しいといわれている俊。さて、今回はどんな成績だったのだろうか超気になる……。

「さあ俊。あとはお前だけだぞ。はよ通知表を見せろ!」

「い、いやだ! お前らと俺との成績は天と地の差がある!」

「……なら、合計だけでいい。四十五点中の何点だ?」

 少しばかり不満が残るが、無理時だけはしたくないし。

「……三十三」

 おぉー……としか言わざるを得ないな。俊にしていい方ではないか。推測して副科目で五か四を稼いであとは三かな? まあ滅多に二はつかないから合計二十七、つまりオール三を下回ることはない。

「俊にしてはいいほうじゃないか」

「そうかー? 俺からしてみればお前らが頭良すぎて羨ましいよ」

「普段から勉強してないあんたが悪いのよ俊」

 咲妃、よくいった。ナイス正論!

「くっ……まさしくその通りだ……」

 ガクッと跪き両手を床に付けて俊は落胆した。正論を言われたんだ。言い返す余地もない。

 ポンッと俊の肩に手を置いて俺は彼を慰めた。

「話は変えるけど。皆夏休みはどう過ごすか決めてる?」

 通知表をカバンに入れたとおりんさんが皆に問いかけた。

「あたしは別に決めて無いわ。神夜たちはどう過ごすかは知らないけど」

「私もまだ決めてない」

「ユキ達と同じく」

「わ、わたしもです白星さん」

 とおりんさんの問いに全員が『決まってない』と満場一致の解答をいった。

「そうなの。それでね、さっき十六夜くんに話したんだけど、来週の月曜日から三泊四日でうちの別荘に遊びに来ない?」

 一瞬、空気が静まり返ったが、ものの数秒後に俊がひょんきな声を上げたため空気の硬直は解けた。

「あんたの別荘に? それはどういう意味で? 合宿とか?」

「そうじゃないわよ八雲さん! せっかくの夏休みなんだからこうみんなでパァーと遊びにって意味よ」

「でもよ~とおりんさん。交通費とかはどうすんだ? 俺たちそんな金ないぞ」

「その点は大丈夫園崎君。交通費は全額我が白星家が負担しますから!」

 オォ――! と歓声が沸いた。全額負担って……場所にもよるがいったいいくらになるんだ? 想像しただけで肝が冷える。

「白星さん本当にいいの?」

「問題ないわよ香西さん。別荘まではそう遠くないですし在来線でほんの三、四時間のところですし」

「結構時間かかるね。それで行先は?」

「海にしましたわ八雲さん。ですので、水着の準備を忘れずにお願いします。詳細は後程メールで伝えます。私からは以上です」

 終業式直前にとおりんさんが俺に話してくれたことを、今この場で言ってくれたからあとで咲妃たちに伝える手間が省けた。

 話も済んだことだし、帰ってめしにす――。

 通知表をカバンに入れて咲妃たちと教室を出ようとした矢先、シャツの裾をアリスと氷空が引っ張ってきた。

「……二人してどうした? 昼飯のリクエストか?」

「そ、そうじゃないよお兄ちゃん!」

「そうですよ神夜さん!」

 なんだ、違うのか。リクエストがないなら今日はあるモノ使って冷やし中華(冷え冷え)にするぞ。避暑したいから。

「じゃあなんだよ二人して」

「あ、あのねお兄ちゃん。去年買った水着のこと覚えてる?」

「水着? あ~もちろん覚えてるぞ。それがどうかしたか? まさか新しいのがほしいなんて言うんじゃないだろうな~?」

「…………」

 図星か。

 図星を突かれた氷空は頑なに口を閉ざし、うんともすんとも言わなくなった。一応理由だけ訊いといてやるか。

「ほしい理由は?」

「友達こないだ都心に買い物行ったらかわいいのがあったからつい、ほしくなって……」

「ならダメだ。『胸が大きくなった』とか『小さくなった』とかならまだいいが、物欲ならダメだ。アリスはほしいのがあったらすぐ言ってくれ」

「は、はいっ! ありがとうございます神夜さん」

 言いづらそうにしていたアリスの顔が満面の笑みへと変わった。守りたい……その笑顔。

「むぅー! アリスさんばっかりずるいよ!」

「ずるくない。アリスが持っているのスク水だけだ。海なのにスク水ってのはいかんだろ!」

「それはそうだけど……でもずるい! 私も買うの―!」

「わがまま言うな! 今あるのも十二分に可愛いだろ」

「あれとこれは別なの~! ねっ! いいでしょ、お兄ちゃん!」

 上目づかいでじっと氷空は潤んだ瞳で俺のほうを見つめていた。

「……考えておく……」

「やったー! ありがとうお兄ちゃん♪」

 くっ……我ながらなんて情けないんだ……。これじゃあ兄としての威厳そのものが丸つぶれではないか! 全国のお兄さま方、こんな情けない長男の俺をお許しください。

「いいか氷空。これだけは言っておく。別に俺は『買う』とはいっていない『考えておく』って言ったんだからな。買わないっていう考えが優勢だ」

「はーい」

 一応釘は打っておいた。買いに行くのは明日でもいいか。とりあえず、昼飯済ませたら必要なものでも買いに行くか。

 先に昇降口へと行ってしまった咲妃たちとは正門で落ち合い『じゃあまた月曜日に』と言って俺たちは解散した。

 さあ心躍る楽しい夏休みの幕開けだ! 



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