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少年少女の選択


「で、ホーガン語話せるのは君だけでいいのか?」

「はい」

「他は皆英語……じゃなかった、公用語を?」

「はい、分かります」

「そうか、コータ!出てこい!」


 皆英語が分かると言う事は話が早い。

 胸ポケットに入っていたコータがバッサバッサと出てくる。

 やがてどこからかコウモリたちが集まり、コータが陽気に現れる。


「マスター、呼んだ?」

「おう、翻訳任せた!」

「任されたよ!」


 これは完全に演出を兼ねてる。

 不審な人物から、明らかに人間ではない者を使役する者にランクアップだ。

 だが、本番はこれからだ。


「さて、君らにお願いがある。健康な君たちに見合ったものだ」

「お願い、ですか?」

「あぁ、先に言っておくが、かなり血生臭いものだ」




 俺たちはあらかじめ、一通りのものを用意した。

 人数分のベッド、キッチンや収納、最低一週間は過ごせる食料。

 ベッドはちゃんと回復機能がついたものだ。

 その他剣や斧、槍などの武器。

 モニターまで設置してやった。

 トンネル部分までしか映さないけどね。


「さて、君たちにはこれらを使って山賊をやってもらいたい。商人や冒険者を脅し、道具を奪い、場合によっては命をも奪う」


 かならず殺せということではないのがミソだ。

 確殺を求めるなら俺らでやっちゃうしね。


 ここまでの説明で、彼らの気分がかなり落ちているのは分かる。

 まぁ、ここまでは当然だろう。


「成功した場合、その時の獲得したものは俺たちに渡さず自分たちで好きにいていい。それと、成功報酬を出そう。コータ!手伝え!」

「……っと。分かった!分かった!」


 ハナに転送させて、一度マスタールームへ戻る。

 彼らの居住スペースに戻った時に俺の手にあるのは大きなカレーの入った鍋。

 同時に転送されたコータの手には、大量の焼きたてのパンが。

 少年たちの目が変わった。 


「成功する度、この食べ物を食べさせてあげよう。ちなみにこの料理には、大量のスパイスが入っている」


 スパイス。

 その価値は、現代でスパイスを知っている俺たちより、彼らの方が知っているだろう。


「今日は、お祝いとしてこの鍋ごとやろう。やるかやらないか、このカレーという食べ物を味わいながら考えろ。それでもやりたくないと考えるなら、こっそりとフマウンやマーシュに向かうと良い」


 絶望に満ちていた少年たちの顔が変わる。

 山賊をしろという俺からの指示。

 その意図は見えないまでも、魅力を感じているようだった。

 さて戻ろうかと思っていたところ、ホーガン語を扱える少女が声をかけてきた。


「あの、フマウンに向かうというのは、本当に行かせてくれるのですか?」

「…………」

「私たちは、意思に関係なく多くの秘密を知ってしまったように思います。素直に行かせてくれるのですか?どうも私には、言葉を濁されたように感じてしまいます」


 日本語が分かるのは彼女だけだ。

 コータの翻訳を通すと、ニュアンスが変化する。

 この言葉の意味を把握出来ているのは彼女だけだろう。

 俺は彼女の問いに、さぁなとだけ答えた。

 青ざめる彼女の顔を見ながら、俺とコータはマスタールームへと戻った。

 

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