持久戦
「コータ、行けそうか?」
「大丈夫!こいつらはあんま強くなさそう!」
「分かった、適当に戦場を荒らしてくれよ」
「うん!」
コータの《幻惑》は相手のレべルに依存して成否が決まる。
更に言うと、コータと同じぐらいのレベルの相手にはそんなに強くかからない。
コータよりレベルが下の相手ほど、強い幻惑をかけられる。
そしてこれを裏返すと、コータが相手にどの程度《幻惑》を通せそうか聞く事で、相手の大体のレベルを把握することができる。
今回の発言ではコータよりかなりレベルが下の相手だと感じた。
おそらくこの緑の騎士たちは戦闘レベル10か、もっと下かもしれない。
単体では戦闘力はあまりない。
数体でも脅威とは言えない。
しかし量が量だった。
「またかいな」
「あいつどんだけ量産するんだよ……」
ドラゴンは体の表面からポコポコとツタのウロコが生えてくる。
生えてきたウロコはそのまま地面に落ち、緑の騎士となりこちらに突撃してくる。
それが絶え間なくだ。
圧倒的な物量作戦。
このアイヴィードラゴンは体を分け与える事でこの緑の騎士を送り込み続ける。
流石にこればっかりは厳しい。
しかしそれにも限界はあるようだ。
アイヴィードラゴンは、あのウロコを体から出すたびに少しずつ本体が小さくなる。
カロリーナが気づいた事だが、アイヴィードラゴンは小さな翼を背中につけていた。
しかし、左右非対称で全体から見てもアンバランスだ。
理由は変身前に俺が散々奇弓で浴びせた毒だろう。
アレによって使えるツタの量が減り、しっぽと違って戦力にならない翼は削られてしまった。
そう考えると奇弓でツタの総量を減らした作戦は間違ってはいなかった。
いや、不要な部分を切り捨てられただけと考えるとそうでもないのか?
まぁどちらでもいいか。
現在の俺たちの戦い方は、非常に安定重視の長期戦を見据えたものになっている。
まず俺のゴーレムたちが前線を張る。
彼らは全て土製の盾だけを最初から持たせている。
正確には盾を持った状態になるように形成したと言った方が正しいか。
剣を持たせて殴らせてもぶっちゃけ弱いと判断。
なので戦線維持を優先した感じだ。
カロリーナのゴーレムは総じて槍を持っている。
俺のゴーレムの後ろに陣取り、少しでも隙を見せた緑の騎士をツンツンするのが役割だ。
それともう一つ。
「カロリーナ、一旦俺のゴーレム張り替えるわ!」
「了解や!」
「5秒だけ持ちこたえてくれ!」
俺のゴーレムの数が減り傷も増え、戦線が維持できなくなる可能性が出てきた場合ゴーレムを張り替える。
《ゴーレム召喚》は一度に120のゴーレムを出すことは出来ない。
俺の場合《攻撃力》が60なので《土》カードを1枚としてストックできるのは60枚。
この時の最大60体までしか出す事ができない。
よって一度生き残っているゴーレムを全て自壊させ、新しく60体のゴーレムを召喚する。
そのタイミングで一瞬踏みとどまる役をするのがカロリーナのゴーレム部隊だ。
では俺たちはというと後ろで援護射撃をバンバン放っている。
俺とカロリーナは弓。ハナは魔法。メーシャはたまに突破して漏れてくる敵を遊撃する担当だ。
一番恐ろしいのがコータだ。
コータ曰く、この緑の騎士は俺たちを倒せという命令が与えられて自律的に行動しているらしい。
1体の緑の騎士をその命令を上書きすることでジャックできる訳だが、問題は周囲の騎士だ。
味方が操られた時のマニュアルなんて存在しない。
よって、操られた緑の騎士が他の騎士たちを無差別に切りかかっても誰も対処しない。
好き勝手し放題だった。
これが長期戦になっても大丈夫だろうと俺たちを思わせる一因だった。
「あっはっは!楽しい!マスター楽しいよ!」
「お、おう……」
「ねぇ、あんたのお供って間違った教育受けてない?」
「あんな子に育てた覚えはない……と思うんだけどなぁ」
うーん、あの幼女強い。
あとでご褒美あげないとなぁ。
「このまま戦ってれば、勝手に自滅してくれそうやな」
「結構時間かかりそうだけどな」
「……あれ?」
「どうした、ハナ」
「いや、気のせいかもしれないんだけどさ」
ハナは空を見上げた。
俺も空をふと見上げる。いつの間にか空は大部分雲に覆われていた。
「雨、降ってきてない?」
俺の頬に、一滴の雫が跳ねた。
大きな雨粒だった。




