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アイヴィードラゴン ●

 さて、かなり遠くにいるあの人影。

 敵か味方かは考えるまでもない。アレが今回のターゲットに深くかかわっている事は確かだ。

 しかし周囲に広がるこのツタ。どう考えても危ない気がする。

 となると遠距離攻撃だが、500メートルって遠くねっていう。


 かつて源平合戦の頃、武士は互いに向かい合った際に弓の強いものが敵側に一発だけ弓を射るという儀式めいた事が行われていた。

 両軍とも交互にそれを行い、敵に到達すれば褒め、到達しなければ嘲笑ったという。

 その距離が凡そ200メートル。

 当時の弓の名人が強い弓を使ってそれだ。500メートルは到底届く気がしない。

 一応ロックオンと《ハードショット》の併用である程度伸びるが、それでも300が限界だろう。

 あ、ちなみにこの知識はハナに後から教えてもらったものだぜ!


「ということでハナ、任せた!」

「おう、任せられた!」

「確かにロックオンがあれば魔法なら届くかもしれんな。やってみたらどうや?」


 ハナはファイアを起動し、威力を出す為に十分に練っている。

 連射を試すいい機会かもしれないが、とりあえず実験なので普通の魔法だ。

 ハナは自分の身長より大きな炎の塊を練り上げると、謎の人影に向かって思いっきり飛ばした。

 人影は火の玉に向かって手をかざす動作をする。

 次の瞬間、地面から突然壁のようなものが現れた。

 火の玉はその壁に衝突し、壁の表面を軽く焼いただけで消え去った。


「な、何?」

「ツタの壁やな。あいつ、周囲のツタを全て操る能力でもあるんとちゃうか?」

「おいおい、ここら一体ツタだらけじゃねぇか。どんだけ残弾が残ってるんだよアイツ」


 まぁこれであいつは人の形をしたモンスターというのは何となく分かった。

 あんなスキルは見た事ないので、ダンジョンマスターという事も多分無いと思う。

 これで遠慮はしなくてもいいだろう。


 とにかく魔法じゃラチがあかない。

 しかし、近接は見るからに危険だろう。

 ええい、物は試しだ。


「コータ、4匹ぐらい《撹乱》で飛ばしてくれないか?」

「わかった!多分ダメだと思うけど!」


 コータは周囲にコウモリを召喚し、ツタ使いに目がけて飛ばした。

 コウモリが中に入ると同時に周辺のツタが動き始める。

 やがて、地面からツタが何十本も飛び出し、鞭のようにコウモリを攻撃し始めた。

 コウモリ達はツタ使いにたどり着く事はなく、消えて行った。


「うーんダメそうかー」

「あんたちょっと行ってきたらどう?触手プレイだよ?」

「行ったら絶対バシバシ叩かれるだろ!それにそういうのはお前の方が需要あるだろ!」

「いや、だったらこの子の方が」

「へ?コータ!?コータもやだよ!?」


 そんなアホな事を言っていても仕方ない。

 とにかくこの状態をどうにかしなければ。

 と言っても何も思いつかない。


「なぁ、カロリーナ。何か手はないか?」

「ん?あるで?」


 あるのかよ!

 まぁせっかくだし案は聞いてみよう。


「ター君の背中に乗って飛ぶんや。そんで、弓であいつ目がけて射ればええねん」

「あー、確かにそれはいいかもな」

「でも、それだとまた壁に阻まれちゃうんじゃない?」


 そうなんだよなぁ。

 とはいえ、ちょっと試したい事がある。


「なぁ、ター君に乗って弓で射る作戦。俺も乗っていいか?」

「乗るんか?ター君に?」

「そう、俺も今回マイ弓を持って来てるんだぜ!」

「あぁ、アレね。あたしの自信作」

「ほう、ならいっちょやってみよか!」


 弓を実際の戦いで使うのは初めてかもしれない。

 今こそ練習の成果を見せる時だ。


 カロリーナはター君を呼び寄せた。

 俺とカロリーナはター君の上に乗り、そのまま上空からツタ使いに近づく。

 地面から何本かツタが伸びてきている。気を付けなければ。

 俺は自分専用の弓を取り出した。


「それがあんちゃんの弓か?」

「そう、俺たちの切り札の一つ。『朧月夜の奇弓』だ!」

「凄い、凄いわ!」

「だろ?」

「ちゃんとしたかっこいい名前も付けられるんやな!あんちゃんとハナちゃんでも!」


 そっちかよ!



 ■ ■ ■ ■ ■



 ター君はツタ使いを中心に大きく旋回し始めた。

 そうする事により、背中の上にいる俺達でも角度がついて辛うじて弓で狙う事が出来る。

 とはいえター君がいるのは空の上だ。

 非常に怖い。とんでもなく怖い。


「離すんやないで!絶対に離したらアカンで!」

「離さないって、早く矢ぁ撃って!」

「フリやないからな!ええな!」

「いいから早くしろって!」


 そんなコントをしているが、割と俺らはマジだ。

 矢を撃つには両手をフリーにする必要がある。

 さらに、角度の関係上座りながら撃つ事ができない。

 つまり斜めになっているター君の背中の上で立たないといけない。

 流石に無理です。

 という事で俺が今カロリーナの足を抱えて持っている状態だ。

 高所恐怖症とか関係なく怖い。


 カロリーナが足を震わせながら撃った一撃は、狙ったものとは程遠いものだった。

 しかし《ロックオン》のおかげで自動でそちらに向かってくれる。

 何故かツタ使いはその場を一歩も動かない為、割と適当に撃っても狙いとしては悪くない。

 が、予想の通りツタ使いは当然の如くツタの壁を出現させた。

 矢は壁に刺さり、バキバキに折られてポイっと捨てられた。


「くそーやっぱりアカンかったかー」

「まぁ、ハナの魔法で無理だったんだから普通の矢じゃ無理ですな」

「じゃああんちゃんやってみぃや」

「ふっふっふ……よかろうわぁ!」


 何となく流れで立ち上がったが、バランスを崩しそうになった。

 慌ててカロリーナが俺の脚をガシッと抱きかかえるように支えてくれた。

 でもこええぇぇ。

 しかし、抱きかかえてるという事は俺の脚に柔らかい感触があるということで。

 ああ!ふくらはぎに!ふくらはぎに!

 二つのモンブランが接している!

 ってそんなことやってる場合じゃない。とっとと撃ってしまおう。

 俺は朧月夜の奇弓を構えた。


「いいか?絶対離すなよ!絶対だからな!」

「お?関西におった人間にええ度胸やな。前フリか?」

「ちげーよ!ほんとにやめろよ!死んじゃうって!」


 もうこれ以上は恐怖で押しつぶされそうだ。

 とっとと狙いをつけ、《ロックオン》から《ハードショット》につなげて撃つ。

 矢は一直線にツタ使いへ向かい、当然の如くツタの壁に邪魔される。

 しかし、矢の当たった場所からツタが変色しはじめた。


「よっしゃ!予想通り!」

「何や、ツタの様子が変やな」

「カロリーナと一緒に大鷲倒したの覚えてるか?」

「ああ、よー覚えとるで」

「あの時の小瓶を使って合成した弓なんだ」

「あぁー!」





 話は奴隷少女だったアリサ事件が起こった頃まで遡る。

 その当時、俺達は毒武器という事で色々意見を交わした。

 が、コータが毒攻撃を使える事。近接より遠距離の方が恐らく強いだろう。

 そういう関係上、毒の弓を作ろうという話は出ていたのだ。

 それらの合成に必要な道具もナフィにある事は分かっていた。

 しかし、仮に毒の弓を作ったとしても冒険者相手ではほぼ無意味。

 転ばせて殴った方が早いし、それが通じない相手に毒の弓が通じるかは怪しい。

 モンスター相手でも光る壁の処理の時ではあまり効果が無い。

 そういう訳で、この毒の弓合成計画はしばらく先延ばしにされた。


 それからしばらくして、戦争が起こった。

 冒険者の中には高い装備を持っているものもいた。

 その中の一つが《三日月の弓》という名前の弓だった。


 偶然それを手に入れた俺たちは、特に俺はこの弓を凄い気に入った。

 装飾が非常に豪華なのだ。

 正直すげーかっこよかった。

 威力もありそうなので、この弓と毒の小瓶を合成することに決めた。


 そして生まれたのが直訳すると《毒の三日月の弓》。名前かっこ悪い!

 変えたい!そういう訳でハナと色々相談した。

 しかしネーミングセンスの無い俺たちには良い案は出なかった。

 何だよハンバーグって。弓の名前じゃねーよ。今食べたいもん言えばいいってもんじゃないよ。

 考え抜いた俺は、苦渋の策ですでに吸血鬼になっていたコータに聞いた。


「なぁ、コータ。何か良い名前無いか?」

「んー、《朧月夜の奇弓》かなー」

「かっこいい!」


 即答でこの名前が出てきた。

 何故『夜』を付けたか聞いたら、語感の良さだという。

 こいつネーミングセンスいいぞ!

 ためしにポチとタマの名前も一応付けて貰ってみる。


「なぁ、試しにさ。ポチとタマの名前変えるとしたら何にする?」

「えーっとね、『マロン』と『コロン』かな!」

「……ハナ、今からでも変えないか?」

「えー、本人たち喜んでるんだからいいじゃない」


 やはり、ネーミングセンスは俺たちの数十倍良い事は判明した。




 ター君の上でカロリーナが興奮している。

 ツタの壁に刺さった矢はみるみるうちに壁の色を変色させた。

 慌てたツタ使いは、右腕を突きだすとそこからにょろにょろーっとツタを伸ばした。

 そして大きな刃物のような形にし、壁にしていたツタを地面から切り落としていた。

 こいつ、ツタ使いじゃなくてツタで造形された人型の何かなんじゃね?

 あとツタをどうやって刃物にするんだろう。


「毒がツタに有効だってよー気づいたなぁ」

「この毒、どうやら血液を悪質な液体に変化させるものみたいなんだよ」

「ほう」

「血液はほとんどが水だろ?ってことはツタに通ってる水も悪質な液体に変化させられるかなと思ったんだよ」

「なるほどなぁ、よー考えてるわ」

「だろ?俺だってバカなだけじゃないんだぜ!」

「それでホンマのとこは?」

「毒が効くか分からないけどとりあえずダメ元でやった」

「……せやろなぁ」

「あと、この弓基本的に使い道ないからこういう時に使っておきたかった」


 俺がそんな難しい事考えて撃つと思ったか!

 とりあえず何か有効っぽい手があったら試したいじゃん!

 そう言い訳をしながら、俺は《矢の雨》を装備した。



 ■ ■ ■ ■ ■



 俺は朧月夜の奇弓を適当に斜め上に構えると、ツタ使いに大体あたるように撃った。

 矢は《矢の雨》の効果を受け六つに分かれる。

 その六本の矢はツタ使いの上空から降り注いだ。


 ツタ使いは自らに向かってくる矢を迎撃しようとする。

 そこで、いくらかのツタをまとめて太く長いツタを何本も作った。

 そのツタは的確に一本の矢を掴むと、ボキボキと折ってぽいっとすてた。

 朧月夜の奇弓は矢が対象に深く刺さらないと毒が回らない。

 おそらくあの一本に関しては全く毒を与えなかっただろう。


「なんや、もう対策されてもーた」

「それはどうかな?アイツの回りを見ろ」

「お、アレは……!」


 ツタ使いに向かっていったものは確かに迎撃された。

 しかしそれ以外の矢は、ツタ使いの周囲の地面を這っているツタに命中した。

 命中した地点から、周囲のツタが変色を始める。

 変色したツタは役割を果たす事ができないので、周囲のツタによって切り離される。

 これ以上浸食をゆるさない為に。


 俺の勘では、あのツタ使いの周囲のツタは大事なはずだ。

 いざというときは自分の周辺のツタを使うはずだからな。

 本体への攻撃が通らなくとも、これを続けるだけで相手は辛いはずだ。


「ター君にスピードを上げてもらっていいか?」

「おう!あんちゃんいきいきしてんな!」

「まーな!」


 そういいながら、バンバン矢を撃っていく。

 このままならどんどん優勢になっていく気がする!


「ドンドン撃てやーあんちゃん!」

「それっそれっ」

『ねぇ、ちょっといい?』

「どうした?」

『何か大量のツタが集まって、ター君を叩き落とそうとでかいツタになろうとしてるよ』

「どれどれ……」


 ハナの通信機からの連絡を聞き、地面を見る。

 ター君の飛んでいる真下のツタが強く蠢き、大きな一本のツタになろうとしている。

 あの長さ、ここまで十分届きそうだな。


「カロリーナ、ター君をハナのいた方角で飛ばせる事は出来るか?」

「了解や」

「ハナ、距離的に狙いやすくなると思う。ター君を攻撃するツタを《ファイア》で狙えるか?」

『やってみる』


 敵が強い抵抗を示している。

 つまりこれは有効な戦術だということだ。

 もうしばらく続ければいけるはず……!


 《矢の雨》を撃ち、ツタが襲ってくる。

 それをハナが狙撃し、ツタを思い通りに動かなくさせる。

 この作戦で三度程矢を放ったところ、その時は訪れた。


「……やった!」

「なにがや」

「ツタ使いの肩に矢が当たった!」

「おおおおおぉっ!」


 ツタ使いの肩に矢が刺さる。

 これは決定的な一打だろう。

 それも簡単に切り離すということは出来ない……。

 と、思っていたんだが。


「うおっ!?」

「胸から上を全部切り落としたやて!?」

「あいつもツタそのものだったのかよ。まぁそんな気はしてたけどちょっとびっくりした」


 ツタ使いの胸から上は、全て切り落とされ適当に投げ捨てられた。

 周囲からツタが集まり、ツタ使いの上半身を形成していく。

 そしてツタ使いは、天に両手を掲げた。

 全てのツタが動き始めた。



 ■ ■ ■ ■ ■



「おいおい、どこまで大きくなるんだよ」

「ハハッ!こりゃ楽しくなってきたでぇ」


 ツタはツタを呼び、絡み合い形を形成してゆく。

 その塊は徐々に大きさを増してゆく。

 牽制に一度《矢の雨》を浴びせたが、あれでは焼け石に水というレベルではない。

 ツタは形をどんどん変えてゆく。

 球体から縦長に。そこから手足が生え、とても長く尖ったキツネのようなしっぽが3本。

 体の表面に当たるツタがウロコのような模様を形成してゆく。


「ドラゴンか……」

「アイヴィードラゴンかいな」

「知っているのか?」

「いんや、直訳や。ツタのドラゴン。ツタは英語でアイヴィーや」

「へぇ」


 一つ勉強になったな。

 今考えると、あのツタ使いはこのドラゴンの仮の姿としてドラゴンが作っていたものだったのだろうか。

 それともあのツタ使いが、自身の周りにツタを集めて守っている姿がコレなのだろうか。

 いや、今となってはどっちでもいいな。


 ドラゴンは、動く気配はない。

 当然だ。所詮はツタ。空を飛んだりする事は出来ないはずだ。


 ドラゴンは顔を夜空へと向けた。

 それは俺たちへの怒りを表すものであり、咆哮をしたようにも見える。

 しかし、ドラゴンから発せられる声はない。

 その星空の元での声なき咆哮は、とても美しく見えた。


 形を形成し終えたドラゴンは、瞳の無い目でこちらを見た気がした。

 そして三本あるしっぽを地面に突き立てる。

 しっぽはドンドン地面に飲み込まれていく。

 これは一体……。


「嫌な予感がしたわ。ター君!ダッシュやダッシュ!」

「へ?」

「ハナちゃんと合流すんで!ここは危険や!」


 ター君は指示を受けると、両翼を大きく広げてドラゴンから離れるように飛んだ。

 次の瞬間、地面から現れた長さ50メートルはあろう巨大なツタが、今まで俺たちがいた場所を通り過ぎた。


「何や!」

「おい、アレを見ろ!ドラゴンのしっぽが無くなっている!」

「とにかく急ぐで!」

「ハナ!状況は分かるか!」

『うん!』

「ツタがター君を狙ったら、フォロー頼むぞ!」

『まーかせて!』

「ター君、次が来るで!避けや!」


 ター君が体の角度を大きく変える。

 すると、元の進行方向に巨大なツタの塔が現れた。

 良い勘してるなほんと。

 これまで生き残ってきたのは伊達じゃないな。


「ター君!そのままハナちゃんの元へ一直線や!」

「っと、こっちに来るんじゃねぇ!」


 奇弓で近寄ってくる二本目のツタへ牽制する。

 やはりツタなので毒は嫌なのか、ツタの動きが止まった。

 ふとドラゴンを見ると、しっぽがなくなっていた。

 そうか、このツタはドラゴンのしっぽだ。

 ということはあと一本あるはず。


「おい、後ろ!」

「ター君!よけーや!」

「ダメだ間に合わない!」


 最後の一本は俺たちの背後から現れ、進行方向へ向かって物凄い速度で迫ってくる。

 ター君は再び角度を変えて避けようとするが、ツタはすぐそこまで来ていた。

 が、ツタは当たらなかった。

 間一髪のところで火の玉が軌道を逸らした。

 ハナがこれを見越して撃っておいてくれたのか。


「ハナ、ナイスだ」

『へへー、いいってもんよ』


 そのままハナたちの元へ降り立つター君。

 しっぽから生まれた巨大なツタは、すぐには移動できないらしい。

 ハナ達がいる場所までは攻撃が届かないようだ。

 さて、ここでハナ達と相談しなければならないことがある。


「あのドラゴンを倒すか否か。皆はどう思う?」

「んーあたしは相当厳しいと思うわ。作戦が無いと厳しいと思う」

「せやな、相当厳しいのは同意見や」

「メーシャも同じ意見っぽいか」


 ドラゴンと俺たちの間に、巨大な3本のツタが揺らめいている。

 まず俺たちはあいつをどうにかする必要がある。

 それにたどり着いたとしても簡単に倒せる相手ではないのは確かだ。


「俺の正直な意見を言っていいか?」

「ええで」

「……うん」

「あいつは強い。そして多分調味料を持っている。だけど、それ以前に俺はあいつと戦いたい」

「……」


 ハナがじっと黙って聞いている。

 間違いなく、俺が危険な事をしようとしているからだろう。

 一つ一つの言葉をかみしめるように、じっと聞いている。


「俺たちはこの世界に来て、力を手に入れた。でも、初めてこんなファンタジーっぽい相手と戦うと思うんだ」

「せやな」

「……」

「俺たちは確かにこの世界から脱出したい。でも、ここがゲームの世界である以上、多少は楽しむのも悪くないと思うんだよ」


 要するに、戦いたくなったから戦う。それだけだ。

 ハナにとっていいものではないだろう。

 俺とハナの様子を見たカロリーナは、こう提案した。


「ハナちゃん、あんたが決めや。ウチもメーシャも、乗り気ではおる。せやけど、ここは満場一致やないとアカンとこや」


 カロリーナはそっちハナの肩に手を置いた。

 ハナは少し言葉を考えた後、口を開いた。


「……ったく、バカはほんとにバカなんだから。良いわよ、乗るわ。でも、一つだけ約束して」

「あぁ」

「絶対に怪我をしないこと。もちろん死ぬなんてもっての他よ。もし破ったら……」


 ハナは俺に近寄ると、耳に口を近づけて耳打ちした。

 夜這いで済むと思うなよ、と。

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