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状態異常対策

 目を覚ましたメーシャは、軽い説明を受けるととりあえずシャワーを浴びに行った。

 そういえば一緒に過ごした三泊四日の時もそうだったなぁ。

 特にやましい気持ちは無いんだが、女の子がシャワー浴びてる音って心躍るよね。


 さて、その間に一旦情報を整理しよう。

 これから向かうのはフマウンの南、俺達のダンジョンが開通するまでは、数少ないナフィへの道のりだった。

 ここは非常に敵が強く、昔懐かしいラッドもここで一度仲間を失ったとか。

 まぁその後得た仲間ごと俺らが美味しくいただいちゃったわけだが。


 道中でさえ危険と噂されるそこに、特に危険と言われるモンスターが現れた。

 と言っても、最近ふと思う事がある。

 冒険者って案外大したことないんじゃね?という事だ。

 俺たちと冒険者の間にはかなりの強さの差がある。

 彼らが苦戦するモンスターが、必ずしも俺たちまで苦戦するとは限らない。

 現に、俺たちと出会う前のラッドでさえ最終的には山超えは出来た訳だ。

 だが、それと油断できるかどうかは別問題。


「うーん、やっぱりこれから狩るモンスターの情報が一切ないのはなー」

「あー、モンスターの情報は一切ないねんけど、ヒントはあんねん」

「ヒント?」

「どうやらその強いモンスターが出る時は周囲に強い影響があるらしくてな」

「ほうほう」

「今回は山の中に妙に緑が集まった何かがあるということで、強いモンスターが出たのでは?という張り紙がナフィにあったんよ」

「なるほど」


 情報を整理すると、山の中に妙に緑が茂ってるところがある。

 突然現れたのでモンスターが関係するのでは?

 今回のモンスターは緑、つまり植物とかに関係する可能性が高いと。


「植物かー」

「植物ならよく分かんないけど楽勝なんじゃないの?」


 ハナがキララを弄りながら発言する。

 そうだといいんだが、そうも言ってられない。

 俺の経験上、ゲームの中の植物系のボスは大体状態異常を使ってくる。

 警戒はした方がいいかな。


「とりあえず、俺とメーシャが前衛だと思うから二人とも少し《毒消し丸》とかを持っておいてくれないか?」

「分かった」

「了解や!」

「コータも!コータも!」


 え、コータも?

 あぁ、そうか。コータは今カード持てるのか。

 でもそれって吸血鬼状態だけじゃないか?

 ちょっと実験。


 コータに《毒消し丸》を持たせる。

 そしてコウモリ状態に変身。

 道具は持てるのか?


「……あっ」

「だめかー」


 ボトっと《毒消し丸》が落ちた。

 コウモリ形態になる度に、持っていた道具は落とすのか。

 まぁいいか。現地で渡そう。

 あとはハナの持つ魔法カードは《ファイア》で統一。

 植物相手なら強い効果を期待したい。


 と、ここでメーシャがシャワーから出てきた。

 髪が濡れてて色っぽい。

 そしておでこにはひらがなで『おでこ』の文字。

 ちょっとにじんでるがしっかり残ってる。


「おい、『中』はちゃんと消えてたじゃないか。何で『おでこ』は消えてないんだ」

「だって『中』は水性で、『おでこ』は油性で書いたもん」

「何でだよ!」


 風呂場に鏡がとりついてなくて良かった。

 メーシャはまだ、自分のおでこで起こっている悲劇に気づいていない。




 さて、出発の準備は整った。

 メーシャは俺が買った白いワンピースを着ている。

 気に入ってくれてるなら何よりだ。

 でもパンツ見えても知らんぞ。

 あとハナ、白い目で俺を見るんじゃない。


「ねぇ、ター君って四人乗りじゃない?」

「大丈夫、コータ!」

「うん!分かった!」


 コータはポンっとコウモリ形態になると、俺のポケットの中にもぐりこんだ。

 何という省スペース。

 やはりコータが一番可愛い。


「ほないくでー!目指すは調味料やー!」

「おー!」

「いえー!」


 おいメーシャ。元気ないぞ?

 え?何を怯えてるんだ?あー、高所恐怖症か。

 えーっと……。



 しゅっぱーつ!



 ■ ■ ■ ■ ■




 ター君は俺達を乗せたまま一直線に目的地へと飛ぶ。

 あれ?一直線?場所分かんないんじゃなかったのか?

 ター君が向かったのはメーシャのダンジョンからちょうど真南へと向かった場所だった。

 おぉ、妙に黄緑色の何かで覆われている一帯がある。

 山に囲まれているが、上から見るとよく分かるな。


 ちなみに、メーシャは目を回しながらカロリーナに抱えられている。

 後頭部が見事にあのお胸様に埋もれていらっしゃる。

 羨ましい。かーなーりー羨ましい。

 だからと言ってハナよ、そんな白い目で俺を見るんじゃない。



 例の黄緑色の場所は何か明らかに危険なにおいがする。

 近くにはちょうどいい広さの開けたスペースが無かったので、やや離れた場所に降り立った。

 ざっと徒歩1キロと言ったところか。俺達でも歩けそうな道がある場所を選んでくれた。


「とーちゃーく」

「いえーい!」

「いえーいじゃない。お前はもうちょっと声を落とせ」


 ター君は正直遠くから見ると目立つ。

 一応黒い体で今は夜なので人間の目では発見しづらい。

 が、モンスターは闇でもよく見える傾向にある為気づかれている可能性は高い。


「カロリーナぁ!バカがいじめるよー」

「おーよしよし。せやけどあのバカもバカなりに考えてるんやで?」


 バカバカ言うんじゃない。

 語学以外は案外バカじゃないって評判なんだぞ。


 ハナは大げさにカロリーナの胸に飛び込む。

 そして顔をカロリーナの豊満な胸に押し当てた。

 そういえばこいつもおっぱい星人だった。

 俺への当てつけか!こっちを見てニヤリとしやがって。

 くそー。



 山道を歩きながら、ハナとメーシャはそれぞれへきへきとキララを呼び出した。

 俺もコータをポケットから出し、吸血鬼形態へと戻した。

 コータはおもむろにへきへきに近寄ると、当然のごとく上にまたがった。

 可愛い毛玉の上にまたがる幼女。

 絵的にかなり良い!

 ただし両者とも牙が見えてるんですが。

 ター君は近くにいると目立つので、上空で待機することに。



 歩きながら、ふと現在の状況を振り返る。

 ロシア人の美少女。アメリカ人の金髪美人。幼馴染。そして幼女。

 うーん、絵的に完全にハーレムだ。

 いやー素晴らしい。男の夢だ。

 女性陣は今、話に花を咲かせている。

 楽しそうだな。

 凄い楽しそうに話してる。

 英語で。



 メーシャが日本語しゃべれないという事で、皆で英語で楽しそうにおしゃべりしながら歩いているのだ。

 ター君のスキルで周囲にモンスターが見当たらないのは確認できた。

 コータも16匹の《警戒》を行っている為、何かあったらすぐ対処できる。

 という訳で警戒心はまるでない。

 それはいい。


 が、皆英語で話すんだもんなぁ。

 コータも英語出来たんだ。知らなかったよ。俺に気を使ってたのかな。

 まぁメーシャが日本語できないのに日本語で話してた間は、メーシャもこんな気持ちだったのかな。うん。




 ■ ■ ■ ■ ■





「あ、気ぃつけや。近くに何かがおるで」

「んー、いた!あっち!あっち!」


 カロリーナから僅かにおくれてコータが敵を察知した。

 コータは16匹のコウモリを展開している。

 単純に前回の倍だが、それでもカロリーナより探知は遅かった。

 やはりカロリーナの方が索敵能力が優れているというのか?

 まぁ、上空からの視点を得た方が強いと言えば強いか。


 さて、敵はハイゴブリンが四匹だった。

 こんなところで暮らしていたのか。

 どこかにダンジョン出身ではなく自然発生したハイコボルドがいたら、籠絡したいとこだな。


 さて、あちら四人にたいしてこちらもマスター四人。

 対等かと思いきや、早速コータが《幻惑》を使って一体を操作。

 もう一体に切りかかり、既に二体が動けない状態に。

 早い、早いよ。

 メーシャがそのうちの一体に切りかかりに行く。

 やばい、見せ場が無くなる。

 俺もそろそろ一体を引きつけよう。


 急な展開についていけてないハイゴブリンに向かっていく。

 《ハイジャンプ》を駆使し、後ろからはへきへきの《威嚇》で援護をもらう。

 おらー!《ハードヒット》で倒しちゃるでー!


 と棍棒を光らせた時、目の前を大きな影が通り過ぎた。

 な、何だ?とその影を目で追うと、それはハイゴブリンを爪でつかんだター君だった。

 ター君はそのまま高度を上げ続け、上空からぽーいとハイゴブリンを投げ捨てた。

 ハイゴブリンはゴツゴツした岩にベキョっとぶつかり、そのまま光となって消えた。

 ありゃ死ぬ。どう考えても死ぬ。


「これがター君の必殺技、『天空落とし』や!」

「かっこいい!かっこいい!」


 コータのお気に召したようだ。

 ラーメン屋の湯切りみたいな名前だなと思ったのは内緒だ。


 メーシャもあっさりハイゴブリンを倒し、残った二体もサクっと倒して進む。

 そうだよなぁ。今更ハイゴブリン如きではやられないよなぁ。



 しばらく足を進めると、開けた場所が視界に入った。

 黄緑色が広がっているのが目視できた。

 しかし、何だあれは。ツタ?


「ツタ、かな?」

「すげーな。辺り一面ツタで覆ってるのか。カロリーナ、どれぐらいの距離を覆ってるか分かるか?」

「んー、ター君の目によると半径500メートルぐらい、円形にツタが覆ってるそうや」

「でけぇな。絶対になにかあるだろコレ」

「待ちや、ツタの中央に誰かおるで」

「ん?」


 地面を侵食するように広がるツタ。

 その中央に、何か人影がいた。

 アレが今回のターゲットだろうか。


「コータ、いけるか?」

「んーん、射程圏外」

「近づけば《天地逆転》か《幻惑》できるか?」

「多分ダメだと思う」


 コータの勘ではあるが、恐らく正しいのだろう。

 あいつは、そこらの雑魚敵とは一線を画す強さがある気がする。

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