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開戦

 ハナとモサモサと食事をしていたところ、突然ブザーが鳴った。

 あれ、明日が開戦予定だからだから今日は動かないと思ったんだが。

 見たらフマウン側から第一陣と思われる部隊がダンジョンに侵入していた。

 その数60。やはりレベル10から30の部隊だった。

 恐らく30を超えてるこの二人が指揮官かな?

 その様子を一緒に眺めてたハナがふと何かに気づく。


「あ、そうか」

「どうした?」

「開戦って明日じゃん」

「うん」

「あたしたちはここを戦場にしようとしてるけど、フマウン側はナフィの本拠地叩きたいんだよ」

「うん」

「だからここを今日通って、明日の未明に攻撃しようとしてたんだよ」

「あー……」


 そうだよな、ここあくまでも通過点なんだよな。

 だからナフィ側も警戒して今日人員を入口においていたのか。

 明日攻撃でも、ここを通るのが今日というのは確かに自然だ。


「で、どうする?」

「どうするったって、こっちの準備は出来てるんだ。やろうぜ」

「うん、わかった」


 念の為コボルド、ハイコボルドの戦闘要員を全てボス部屋に集めておく。

 モニターを4台臨時で購入。状況を把握させ、ハナの指揮下で行動させる。

 基本俺が行動し、必要となれば彼らを呼び出す。

 俺とコータには役割があるので、総指揮はハナだ。

 ちなみに今俺は第二階層で待機している。

 モニターも一応設置して状態をチェックしている。

 俺のダンジョン内がモニターだらけだ。




 フマウン部隊は池ではちゃんと白い玉を隠し、やり過ごしながら前進した。

 対策はばっちりのようだ。

 池からまたしばらく進む部隊。

 このままでは交戦地点は野外になってしまう。

 なのでここらで仕掛けさせてもらう。


『いくよ!』

「おう!」


 第二階層のカエルを二匹ほど掴む。

 そしてハナが俺を転送する。

 重っ!一瞬だ我慢我慢。


 俺が転送されたのは部隊の真後ろ。

 そこにそっとカエルを放り投げ、ハナが即座に俺だけを転送でマスタールームへ戻す。


「どうよ、あたしの転送技術は」

「戻すタイミングといい、ポイントといい、よかったわ。冷凍バナナをあげよう」

「わーい」


 小さく切って凍らせておいたバナナをアイス代わりにしている。

 冷凍バナナ美味いよね。



 さて、突如カエルを背後に出現された部隊はパニックになっていた。

 女性魔法使いらしき人がベロンと首筋を舐められ悲鳴を上げ、前衛が急いでカエルを処理する。

 カエルが殺されるのは忍びないが、元より捨て駒にする為に育てたのだ。仕方ない。


 トンネルなので声は非常に響く。

 その声はナフィ側の兵士、冒険者たちにも聞こえていた。

 本来ならあの場所で待ち伏せるのがベストだが、中で何かが起きている。

 攻めるのは今なのかもしれない。

 そう決断したナフィ側のリーダーは、一人を伝令にナフィに向かわせダンジョン内に入った。

 計画通りだ。

 ナフィ側32、フマウン側61。

 二つの町の間の戦争が、今始まった。

 俺のダンジョンで。



 ■ ■ ■ ■ ■






 フマウン部隊の耳に、足音が聞こえる。それも10人以上の。

 すぐさま体制を整え、迎撃に当たる。

 ナフィ部隊はそのままフマウン側に攻撃しようとする。


 しかしこの時、互いは互いの戦力を把握できていない。

 このままではナフィ側が簡単にやられてしまう。

 そこで、俺とコータの出番だ。

 モニターを抱え、コータと一緒に転送。

 場所はそう、あの穴の中だ。

 ちょうど交戦地点に一つ良いポイントがあったので、そこにする。


 モニターをコータと一緒に見る。

 そして、モニターを指差す。そこにいたのはフマウン側の前衛だ。

 コータはこの場所から《天地逆転》を行う。


 天地逆転。

 これは壁を挟んでてもちょっとした穴から発動できるよく分からないもの。

 てっきり音波を発してるのかと思ったが、まぁいいか。出来るのだから使わせてもらう。

 検証した結果壁挟んでも可能だったのだから仕方ない。

 ちなみにその時の実験台はもちろんエビだ。すっころんでもらった。


 さて、その戦士はナフィ側の槍兵の突きを受けようとした。

 しかしそこで《天地逆転》が炸裂。

 バランスを崩して一突きされた。


 フマウンの魔法使いの一人が《ファイア》を何とか敵に当てようと機を伺っている。

 ダメだなぁ、それじゃナフィ側がやられちゃうじゃん。

 コータ、《天地逆転》だ。

 転ばされた魔法使いのファイアは、地面にぶつかって消えた。


 《ハイジャンプ》で相手の攻撃を回避しようとした兵士はバランスを失い壁にぶつかる。

 盾で矢を受けようとしたものは、なぜか体が傾き肩に矢を受けた。


「ハナ、どうだ?」

『すごい、どんどん戦闘レベルが上がってる』

「ダンジョンは?」

『えっと、今3になった』

「わかった、続ける」


 俺は近くでナフィ側を応援している事になっているらしい。

 経験値がどんどん溜まり、俺とコータのレベルが上がっているようだ。

 ダンジョンレベルも3になり、多分今帰ればもう一個カードが装備できるはずだ。

 アモルに関してはダメージを与えてる訳ではないので獲得は出来ないらしい。

 それでも十分だ。が、まだまだこれからだ。


 ナフィがやや押してきてるか。北方向へ少し前線が動いている。

 これは移動した方がよさそうだな。


「ハナ、一個北側に転送頼む」

『あいよっ』


 コータとモニターを抱えて隣の穴に飛ぶ。

 そろそろあの前線で無双しちゃってるナフィ側のあいつが邪魔だな。

 コータ、寝かせてやれ。


 こうして、俺とコータは戦力バランスを見ながら横やりを入れ続けた。

 それはコータが《天地逆転》を打てなくなるまで続いた。

 一度マスタールームへ戻った時、俺とコータは《戦闘レベル》が18にまで上がっていた。

 だが、まだこれで終わらない。

 大量の光を放っていたせいだろう。

 カエルたちが凄い元気にフマウン部隊の背後から迫っている事に、まだ彼らは気づいていない。



 ■ ■ ■ ■ ■




「おー、上がってる上がってる」

「もう一度転ばせに行く?」

「いや、もう十分だろう。少し遊ばせたら一気にやっちゃおう」


 戦場は大混乱になっていた。

 勢いに乗るナフィ部隊。前後に挟まれ窮地に立たされるフマウン部隊。

 どちらも指揮官を失っている事にも気づかず乱戦となっていた。

 何より、冒険者の多い急造軍の為互いの顔を見知っている訳ではない。

 見慣れぬ相手を全て切るという同士討ちが一部で始まっていた。

 カエルはマイペースにペロペロ冒険者を捕食しようとしている。


 そんな中、モニターを見ていると非常に興味深い現象が起こっていた。

 レベルが急激に上昇しているのだ。この戦場に来たばかりの戦闘レベル12の兵士が、今は20に達している。


 以前から疑問に思っていた事がある。

 この世界ではモンスターはいる。しかし、戦闘レベル30なんてそんな簡単に到達するのか?

 外のモンスター程度では10から経験値の壁が出来る。

 リン・テートはつい最近出てきたばかりだ。

 強敵を倒しても1つぐらいしか上がらず、30には程遠い。

 では彼らはどうやって30までのし上がったのか?


 答えは簡単。戦争だ。

 モンスターより簡単に経験値を得る方法。それが他の冒険者、兵士を倒す事だろう。

 普段から命かけている彼らは、この千載一遇のチャンスを狙っているものも多いのか。

 経験値の旨みを吸えるだけ吸う。その為に彼らはここに参加しているのかもしれない。




 戦いは終盤。

 お互いの数は10にまで減っていたが、彼らは盲目的になっていた。

 そろそろか。


「じゃあ、頼んだ」

「うい、行ってきます」


 ハナが出陣する。

 目標は残存する冒険者たちの殲滅。

 部隊と部隊が互いに奪い合う経験値とアモル。

 俺達が全ていただく。


「フマウンの後続が来てるから気を付けろ。20分で到着する」

「おーけー」

「よし、行ってこーい」


 ハナの背中をポンと叩き、カエルの背後に転送する。

 乱戦でそのことに気づく冒険者はいなかった。

 ハナは杖を取り出すと、目を隠しながらあの魔法を使った。

 《フラッシュボム》である。


「うお、まぶしっ」


 モニターが真っ白になった。

 遠くから爆音が聞こえてくる。

 まさに爆弾。目を閉じて手で覆い、光の変化に強いハナでもチカチカしている様子だ。

 そこにいた冒険者のほとんどは倒れ、あるいは動けなくなった。

 そして冒険者たちがもっていた白い玉は破壊され、周囲は暗闇に包まれる。


 ハナはまずハイコボルドを呼び寄せた。

 次に俺はハナを二つの部隊にハイコボルドと挟みこむように転送。

 2つのコボルドチームがハナに呼び寄せられた。


 そこから起こるのは一方的な虐殺。

 急なモンスターの襲撃に対処できる冒険者はいなかった。

 3分の間に、その場にいた冒険者は全てコボルド、ハイコボルドに討ち取られた。

 その間俺はコボルド達とハナのレベルが上がる様を見ながら、冷凍バナナを一つ口に放り込んでいた。



 ■ ■ ■ ■ ■




 コボルド達が冒険者や兵士を一掃した後、俺はハナと交代して後処理を行った。

 主に行うのは二つ。アモルの回収とカエルの保護だ。

 死体はそのままにする。アイテムも剥がない。

 これにはちゃんとした理由がある。


 今回フマウン側からすると、ナフィ部隊に待ち伏せされて全滅されられた。と、勘違いできるのだ。

 後から来る部隊にはナフィ部隊がどれだけの数がいたのかは分からない。

 ナフィ側の200以上の兵が待ち構え、全滅させて一時撤退した。と考えるのが自然だ。

 そこで俺達がアイテムを剥いでしまうと、ナフィ以外の誰かが介入した可能性を考えるかもしれない。

 戦争はもうちょっと続いてほしい。余計な事をして早期終結されるのは嫌だ。


 カエルに関してだが、当初は助ける予定は無かった。

 しかし光に誘われて参戦したカエルが予想以上に経験値を吸った。

 生存しているカエルは3匹。

 彼らはここに置いて後続のフマウン部隊に殺されるよりは保護したい。


 とりあえずほとんどの死体を軽く触って残ってるアモルが無いか確認する。

 そしてカエルの足をつかんで、急いで第二階層へと転送してもらう。

 アイテムを諦めた事もあり、フマウンの後続が戦場に到着するまでに、全て終わらせる事ができた。



「ただいまー」

「おかえり」

「お疲れさん。何か変わったことは?」

「ジャンが負傷して今治療中」

「……容体は?」

「肩から背中にかけて切られたみたい。幸い鎧を着こんでたから、命に別状はないとか」

「そうか、ちょっと見て来ようか」

「うん」


 マスタールームからボス部屋へと出ると、コボルドとハイコボルドが武器の手入れをしていた。

 ジャンは居住スペースの自室でサンに治療してもらっていた。

 傷口は痛々しいが、ちゃんと治療してしばらく休めばまた戦えそうだ。

 コボルド達専用の救急箱を用意しておいて本当に良かった。


「《ファイア》で周囲を明るくしようとした魔法使いに、やや捨て身で倒しにかかったみたいなの。でも一瞬明るくなった事で隣にいた冒険者に切りかかられたみたいで」

「なるほど。まぁとにかくしばらくコボルド達は出撃しなくても大丈夫だと思うから、ゆっくり休んでくれって言っておいて」

「分かった」


 負傷者が出てしまったのは残念だが、むしろこれぐらいで済んで良かったとも言える。

 戦闘向きの多くの冒険者を相手にしたのだ。下手したら二、三人亡くなってもおかしくはなかった。


 帰り道、ハナの報告の続きを聞く。


「えっと、軒並み戦闘レベルが皆かなり上がってるね。あたしが15、へきへきが14、他の人も13か12になってる」

「流石、経験値をかっさらっただけあるな」

「90人分だからねー。こうもなるか」


 ハイコボルドはみんな《敏捷力》が50を超え、スキルを覚えた。

 だが、メインイベントはハナだ。

 これで《知性力》が50になる。


「えっと……あ、出た出た。《ポーチ》と《連射》だね」

「連射と……ポーチ?」


 連射は恐らく俺が罠にかかってゴブリンに襲われた時、あのマスターが撃ってきた三連射のファイアだろう。

 それはいいとしてポーチ?ポーチって何だ?

 ちっちゃいカバンみたいな。


「ポーチって、あのポーチだよな?」

「うん、スペルも同じだね。持ち運ぶポーチ」

「何に使うスキルなんだ……あ、カートリッジが増えるのか?」

「違うと思うけど……カード関連は怪しいわね」


 ハナのカートリッジを確認してみるが何もなし。

 一応カードも確認してみるも変化なし。

 最後にバインダーを開くと、ハナが「あっ」と声をあげた。


「魔法カードが、三枚ずつストックできる……」

「……と、言うと?」

「魔法が三倍持ち運べるから、カートリッジの枠を圧迫しないでいい!」

「なるほど」


 例えばハナの場合、杖とモンスターカードは必須だ。

 5枚のうち2枚がそれに割かれてしまう。

 のこった3枚のスペースの中に魔法は3回分が限度。

 しかしこのストックが出来る仕様によって、9回までファイア等が使えるようになった。

 そういう事だろう。



 今思えば、あのゴブリンたちのダンジョンマスターはこのスキルを持っていたのか。

 俺に打ったのが一回。イアンに打ったのが一回。最後に俺が炎の中に突っ込んだのが一回。

 仮に彼が《ダンジョンレベル》2まで到達していたら、計算上は合っていた。

 俺はてっきり魔法カードをその場でバインダーから取り出してこっそりセットしていると思っていた。

 今考えると、あそこがダンジョンマスタールームだという事は完全に思いつきだったのか。

 あの時俺がこの《ポーチ》に関する知識を持っていたら、逆にマスタールームだという事には気づかなかったかもしれない。

 そう思うと、背筋がゾっとした。

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