フラッシュボム
さて、トーノに到着したらとりあえず掲示板チェックだ。
えーっとどれどれ?なるほど、分からん。
情報が整理されるまで暇だ。
うおー!へきへきモフモフさせろー!
「バカやってないで大人しくしなさい」
「はい、ごめんなさい」
くそー暇だから仕方ないじゃないか。
大人しく頭撫でてやるぐらいにしておく。
さて、情報だがまずここにまで戦争の情報が入ってきている。
開戦までは一週間の予定。
ちなみにこの世界には別に宣戦布告とかそういうルールは無いらしい。
求人がいくつか出ている。
それによると、金持ちがボディガードを募集。
戦争絡みだろうか。
あと私兵団を結成し、フマウンの護衛として派遣して儲けようというグループの団員募集もあった。
それとこの周辺のダンジョンについて。
二つ発見されたらしいが、どちらも骨までしゃぶりつくされているようだ。
方角を見る限りメーシャのダンジョンではなさそうなのは確かだ。
俺たちのところは多分大丈夫だろうが、ロベルトとか名前忘れたけど粒マスタードくれた子とか大丈夫だろうか。
カロリーナは……多分大丈夫だろう。
あとは砂漠についての情報だったのでちょっと使い道は無さそうだ。
次行こう次。
「あれ?ここ何屋だろう」
「えーっと、魔法カードとか売ってるみたいよ」
「ほー」
食事にしようかとブラブラ歩いていると、少し古い小さなお店があった。
魔法屋か。専門店は初めて見たかもしれない。
ちょっと気になるから入ってみよう。
品揃えは他の町に比べてよかった。
見た事のない魔法がいくつか置かれている。
この町の交通の便の良さも関係あるのだろうか。
ただし同じカードでもこの町の方が平均的に高かった。
うーんまぁこんなもんなのかなぁ。
と思ったが、実は戦争間近だから需要が高くカードが値上がりしてるだけなのかもしれない。
フマウンでも高くなってたのかなぁ。
チェックするの忘れてた。
「なぁ、これ何だ?」
「あぁ、フラッシュボムね。閃光手りゅう弾みたいなのかな?」
「ちょっと店員に聞いてみてくれないか?」
「あいよ」
ハナが店員に色々聞いてみている。
多分この《フラッシュボム》はこの店でしか売ってないのだろう。
フマウンやマーシュで見た記憶がない。
一枚五千アモルもする。たけー。
強いんだろうなぁ。
と、思いきや店員の歯切れが妙に悪い。
何でだろう。
「どうした?あんま強くないって?」
「えっとね、閃光手りゅう弾みたいなものみたい。周囲に白い玉の数十倍の光を拡散するってさ」
「へー。強いと言えば強いな」
「ただ凄い貴重なんだって。なんだけど、あんまおススメしないってさ」
「どして?」
「持ってる白い玉が壊れたり、モンスターには実はあんま効果なかったりするんだって」
人間とモンスターではモンスターの方が夜にも昼にも目が強い。
急にボン!と強い光を放ったとしてもあまり意味はないとか。
それと、あまりに光が強すぎて白い玉が過受光とかなんとかで壊れるらしい。
ちなみに《知性力》25が無いと使えないらしい。
いやー使いにくそうだなぁ。
冒険者にとっては。
「買えー!買い占めろー!」
「えっと、三つセットで14000に負けてくれるってよ?」
「おー!買うぞー!」
「わーいありがとー」
「いや、アンへのプレゼントだし」
「えっ」
「えっ」
冒険者にとっては使い辛い。
つまり俺達にとっては得って事じゃないか!
冒険者の白い玉を壊してくれる魔法。
しかも俺達にはあまり効果がなく、人間には効果が高い。
最高じゃないか!
いざという時の切り札としてアンに渡しておこうと思う。
それと大鷲戦での功績も兼ねてだ。
最近はお金の使い道が減り、収入は逆に増えたのでお金に少々余裕がある。
今後もすぐに使う予定はないしな。
ちなみにハナはシューンとしながら自腹でもう一枚買ってた。
■ ■ ■ ■ ■
さて、ダンジョンの採掘はかなり進んでいる。
予定よりかなり早いと言っていい。
7割近くは終わり、明日中にも終わりそうだ。
最後の一日は遊んでもいいかもしれない。
今も遊んでるっちゃ遊んでるんだが。
という訳で、今俺達はトーノで食事をしながら相談している。
正確には8割雑談2割相談と言ったところか。
ほとんどは「ウチの子が一番可愛い議論」だが。
だからコータが一番可愛いって言ってるだろ!
ダンジョンは円形にすることにした。
まず一見洞窟にしか見えないよう加工。
隠し扉を見つけた人のみ先に進む事ができる。
適当に足止めの為の、仕掛け部屋に置いた問題を出す扉もいくつか設置。
一周したらダンジョンルームにたどり着くという寸法だ。
一応練習スペースとして作った場所はちょっとしたボス部屋としても運用できる。
このダンジョンの特徴はズバリ、安全第一だ。
そもそもこのダンジョンは冒険者を呼び込むつもりが一切ない。
とりあえず住めればいいわけだし、メーシャ自身が冒険者は呼ばないと公言してる。
徹底的にバレづらく入りづらい構造にしてしまえばいい。
全長は何キロかあるし、いざ入って来ても彼女の今の強さなら駆け出しの冒険者ぐらいなら一人でどうとでもできるだろう。
それに、俺達がいなくなった後でも一人で採掘してさらに掘り進めるようだし。
ちなみに、自分が入口からマスタールームへ行くときは楽ちんだ。
すり抜けの壁というものがある。
一見すると土の壁にしか見えないが、特定の人物やモンスターは無視して通り抜けられる。
設定した人物、マスター、モンスターのみが通り抜けられる。
今後俺達のダンジョンにも設置するものだ。第二階層が完成したらね。
メーシャは自分の入口にソレを設置し、マスタールームのすぐそばに出る事が出来る。
一応俺達も通れるようにしてくれるとのこと。ありがたや。
さて、今後の方針も決まった事だしダンジョンに戻るとしよう。
採掘が終わったら本格的な《二重存在》の練習だ。
採掘計画に余裕があるということでへきへきの魔力も多めに温存だ。
バシバシしごくぞー!
トーノから出ようとしたら、ふとメーシャが一つの店に駆け出した。
何だ?雑貨店?
ちょっと見たいのかなぁ、ハナと一緒に中に入る。
うーん割とどれもダンジョンのショップで買えるなぁ。
何か欲しいものでもあるのかな。
可愛らしい小物だったりして。
と思ったら、メーシャは小さなナイフを買っていた。
何て物騒なと思ったが、ダンジョン内で確かにこのサイズは買えない。
料理にあれぐらいのサイズが欲しいとなると確かにここで買わないといけないな。
メーシャの女子力は高いなぁ、うん。
■ ■ ■ ■ ■
さてダンジョンへと戻ってきた俺達だが、まだ採掘に行くには早い。
大体MPは半日ぐらいぐらいで全快する。
さて、どうしよう。
「そうだ!」
「何?京都に行くの?」
「違わい。ハナ、髪切ってくれ髪」
そういえばこちらに来てから髪を切ってない。
割と良い長さになってきたし、これからどんどん気温が上がってゆくにつれ邪魔になってくる。
せっかく時間あるし切ってもらおう。
外に出てダンジョンからちょっと離れたところに良い感じの岩があった。
本来こんなところで散髪というのもおかしな話だが、周囲に木が生えていて遠くからは気づかれないはずだ。
散髪用にカッパのようなものを買い、はさみでザクザク切ってもらう。
「あのさー」
「んー?」
「耳切り落としていい?」
「ダメに決まってんだろ!」
ザクザク切ってるハナがポツリと聞いてきた。
何を恐ろしい事を。
「大丈夫だって、ベッドで寝れば多分治るって。多分」
「痛いから嫌だよ!何言ってるんだ!」
「えーケチー」
くそう、こっちが動けない事を良い事に。
しかし、そんなことを言っている間にもはさみは進む。
後ろの方が大分さっぱりしてきた。
「よし、こんなもんかな!」
「なぁ、前髪パッツンなのは意味があるのか?」
「じょーだんだって、今直すわ」
うーん鏡がないから凄い怖い。
まぁ、仮に変な髪形でも恋人であるハナが切ったんだから、お前は大丈夫だよな?
「よーし、今度こそ終わり!」
「ありがとーう」
「まてい!今度はあたしの髪を切ってもらおうか!」
「おう、いいのか?」
「大丈夫、どうせあたしはあんたの所有物だし」
何て爆弾発言。
妙にチョーカーが光ってるじゃねぇか。
まぁ本人が良いって言うからいいか。
「で、どうしたらいい?どこをどれぐらい切る?」
「うーん、良い感じで」
「なるほどわからん」
とりあえず適当にはさみを入れる。
流石にハードな生活を続けてるだけあってちょっと髪が傷んでるな。
適当にはさみを入れていく。
「あれ、もみあげ切らないの?」
「いや、俺もみあげ好きだから」
「……ふーん」
全体的に髪を少しずつ短くしながら、ボリュームを抑える感じに。
基本的に大きな髪型の変化はない。
まぁ、今はこれで十分だろう。
「よーしかんせー」
「おつかれ」
「じゃあ帰るか」
「おー」
切った髪をちょっと土や葉っぱで隠してダンジョンへ戻る。




