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到達

「ということでハナは一体どこで何をしてきたのか!何してたの?」

「ん?ニータくんとこ行ってきたの」

「ニータ?誰それ」


 普通に記憶にない。誰だっけ。


「あんた同士とか言ってたじゃない!粒マスタードくれたマスターよ」

「あーあー思い出した。で、彼元気だった?」

「結構工夫しながら頑張ってるみたいよ」

「工夫?」


 どうやら、俺達の話を聞いていろいろやっているらしい。

 まずは自分の手下のリザードマンのオスとメスを何とか配合させ、リザードマン一族を作成してるとかなんとか。

 彼は光る壁から出るモンスターの扱いが上手そうだ。

 ボムスライムの罠について何か良い案を出してくれるかもしれないなぁ。

 ちなみにニータ曰くいつかモンスター街を作るのを目標にしたいとかなんとか。

 頑張って欲しい。



「……さて、じゃあ行こうぜ!」

「行こうぜってどこに?」

「催眠術と威嚇の実験」


 ハナが落ち着いてきた辺りで切り出した。

 へきへきがレベル10になって戦力に数えられそうな以上、今のうちにスキルを把握しておきたい。

 とりあえずすぐに転送できるように、マスタールームのすぐ前のボス部屋で行う事に。

 でもその前に聞いておきたい事がある。


「へきへきってさ」

「何よ」

「ほんとに猫なのか?」

「た、多分……」


 いや、凄いでかいし何かでかい牙が見えるんだけど

 まぁいいか。

 まずは威嚇を試そう。

 うーん誰がいいかな。

 女の子はかわいそうだしそこそこガタイが良くて試すのに手頃な……。


「あ、あいつでちょうどいいところに」

「ちょっと、お前こっち来い」


 こんな感じで選ばれたのはエビだった。

 ハナの指示で壁の前に立たせる。


「よーし、へきへき!思いっきり威嚇!」

「ガルルルル……」


 へきへきが威嚇をすると、エビがビクッと一瞬動かなくなった。

 あれ?それだけ?まぁ催眠術は目を見ないと起動しないからこっちの方が有利といえば有利なのかもしれないけど。

 いや、もしかしてこれって……


「ちょっとカニも連れてきた方がいいかも」

「分かった。多分この時間ならその辺に……あぁいたいた」


 カニがちょうどヤンにレッスンを受ける帰りだった。

 カニとエビを二人とも壁の前に立たせて、ちょっと二人の間に距離を作ってみる。


「もっかい威嚇!」

「グルルルル……」


 カニもエビもどちらもビクっと一瞬固まった。

 そうか、これは複数相手でも有効なんだな。

 まぁ相手が格下相手限定っぽいけど。


「ところで、ハナ。もう一度聞いていいか?」

「ん?何?」

「ガルルルルって言ってるんだけど、へきへきって猫なのか?」

「そうだよ」


 こいつ、開き直りやがったな!



 ■ ■ ■ ■ ■




 体から力が抜ける。

 力が抜けると気持ちいい。

 気持ちいいから、更に力が抜ける。

 そして落ちる。意識が落ちる。

 意識が落ちるのは気持ち良い。

 気持ちいいから指示に従ってしまう……。



「……ハッ!ここは一体……って俺のベッドか」


 へきへきの催眠術を一度受けてみたくて、お願いしたらへきへきの目が光り始めて……。

 夢の中で色々な事を言われたような感覚に襲われて……。

 気が付いたらこのベッドの上だったか。


 何だろう、完全に抗うとかそういう次元じゃなかった。

 これがいわゆる何か恐ろしいものの片鱗を味わったというものだろうか。

 よし、今度カロリーナが来たらかけてやろう。



「あ、起きた?もう二時間ぐらい寝てたんだよ?」

「え?マジで?」


 ハナが起こしにきてくれたのか。

 カードの交換内容から、採掘に行ってたんだろうと予想できる。

 帰り転送をしてやれなかったのは申し訳ないな。


「で、何かあったか?」

「今のとこは何も。新しい生贄も来なかったし」


 生贄とはハイコボルドのことである。

 いやぁ女って怖い。




「で、実際どうだった?催眠術」

「俺には無理。何か強い耐性がないとマジで免れられる気がしない」


 料理を作っていたらハナが聞いてきた。

 ハナ曰く、俺はしばらくへきへきと眺め合った後に固まり、やがて倒れたらしい。

 とはいえ、食らった側の俺も何が起きたのかよく分からない。


「何か、凄い頭の中に直接語りかけられたような感覚だったなぁ」

「なるほど」

「ある程度知性があるモンスターなら行けそう。逆にカエルとかには無理だろうなぁ」


 コボルドぐらいならいけそうかもしれない。

 後で試してみるか。エビとカニで。



 あれやこれやと話していると、ブザーが鳴った。

 すぐ近くのモニターを弄ってフマウン側の入口を表示する。

 えーっと今度は。お、最初の男女の冒険者じゃないか。

 今度は前回より荷物が多い。何と言うか頑張れ。





 しばらく観察していると、カエルがいる池まで来た。

 彼らの実力ではダークネスフロッグはかなり強敵だと思うが、どうだろう。


「どう思う?彼ら行けそうかな?」

「戦うなら厳しいと思うなぁ」


 そう予想したが、女性の方が池のかなり遠くの位置で白い玉の灯りを消した。

 ダークネスフロッグを知ってて、なおかつ察知したのか?

 だとしたら凄い判断能力と知識量だが……。


 やがて、二人は白い玉なしに池の脇を通り過ぎた。

 そしてしばらくしてから白い玉を取り出して進んでゆく。

 これは、見た目によらず凄い冒険者かもしれないな。



 ■ ■ ■ ■ ■



 それから二時間後。

 たまに動きが怪しい時があったが、二人は着実に前進し、ついにナフィ側の出入り口までたどり着いた。

 二人は呆然としていた。

 恐らく、彼らはここがナフィ側だという事を気づいたのだろう。

 明け方に来た日は真上まで登り、これから下ろうとしている。


 俺とハナは、その様子をホッとしながら見ていた。

 恐らく、彼らが無事フマウンに帰り着ければここはナフィとフマウンを安全に行き来できるトンネルとして認識されるだろう。


「いやー、思ったより苦労したね」

「本当は誰かさんが出かけなければよかったんだけどね」

「あぁ、本当にもうしわけございませんでした」


 まぁ、おかげでへきへきの雄姿が見られたからよかったというものか。

 冒険者二人組が無事フマウン側へと抜けて行ったのを確認し、俺達は祝杯を挙げた。

 食事と酒を持って鬼姉妹の居住スペースへ殴り込みをかけ、コボルドとハイコボルド、もちろんコータとへきへきも一緒に食事を楽しんだ。

 この祝杯は、ダンジョンの完成を祝うものでもある。

 割と凄い額を使ってしまったが、夜通し楽しい宴になった。

 ちなみにハナはその日の夜ずっとケロケロケロッピになってしまったのは秘密だ。


 そして、これからが本番ではある。

 本格的に冒険者が出入りし、これから一層気を引き締める必要がありそうだ。








「大丈夫かなー」

「さぁ、どうだろうね」


 二人組の冒険者がフマウンへ帰ってから三日が経過した。

 あれから一人の冒険者も顔を出して来ない。

 凄い不安になってきたが、もう少し様子を見ておきたいところではあるのだが……。


 仮に後一日誰も来なかったらどうするかという会議をハナとしていたところ、ブザーがようやく鳴った。

 お、冒険者か?とモニターを覗いたらちょっとビビった。

 まるで部隊だった。

 レベル10から30までの冒険者が合計22人。

 何となく理解した。これはフマウンの町から派遣された、正式な調査隊ではないかな。

 彼らの調査を経て、ナフィとフマウンの間に現れたトンネルだと認められれば、冒険者も通行できるようになるのではないだろうか。

 だったら恐れることはない。じっくり見ていよう。


「大丈夫だよね?」

「た、多分」


 隠し扉は見つけられないよう何度もチェックした。

 うん、多分……大丈夫……だと思う。



 ■ ■ ■ ■ ■



 例の調査団は無事ナフィまでの道のりを探索し抜いた。

 彼らはダークネスフロッグに関してもきっちり情報を冒険者から仕入れていたらしく、池の近くでは光源を落としていた。

 帰り際には近くに『この辺りでは明かりは危険です』みたいな立て看板のようなものまで設置していった。

 しかも中国語と英語でだ。ナフィの事は知ったことではないらしい。




 彼らの調査が終わってから三日が経過した。

 調査が終わった翌日から、冒険者がナフィへ通り抜ける為にトンネルを利用し始めた。

 初日は一人が様子見で来てすぐに帰って行ったが、二日目には五組、今日は十組と順調にその利用者を増やしている。


 さて、俺らはというとあまり大きな変化は起こっていない。

 強いて言えば、俺が《ダンジョンレベル》2になったことと、ハイコボルドが新たに二体加入した事だろう。

 迷路も土の設置作業に入ってはいるが、予想以上に面倒臭いということであまり進んではいない。


 俺のダンジョンレベルに関しては調査団の時にどうやら上がっていたらしい。

 《戦闘レベル》はもう14になりなかなか上がらないとタカをくくっていたので見てなかった。


 新しいハイコボルドは両方メスだった。

 コボルド達の奥さま勢に家事を教わり、ゆくゆくは裏方として支える役割が……。

 あるように見せかけて、彼女たちも普通に男性陣と同じステータスなので全然戦闘に使う。

 え?二体の名前?聞きたいの?

 仕方ないなぁ、教えてあげよう。イカとタコだよ。



 そして現在、俺は何をしてるかと言うと……。


「いやーお願いだよ。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいからさ」

「……ダメです」

「先っぽだけ、先っぽだけでいいから!」

「……先っぽって何?」

「いや何でもない」


 俺は今、ポチを説得していた。

 いやー、居合切りカード使ってみたいんだけど、ポチがなかなか貸してくれない。

 一日だけでいいんだが……。

 二刀流使わせてあげるって言ってるんだけどなぁ。

 え?棍棒で居合とかあるのかって?さぁ……。



『ねぇ、ちょっといい?』

「どうした?何があった」

『池で白い玉を使ったまま侵入した冒険者がいて、カエルの餌食になったみたいなの』

「わかった、転送してくれ」

『あいよ』


 ダンジョン内に冒険者が出入りするようになってから、コボルドのモニターでの監視を変更した。

 毎回入ってくるたびにブザーを鳴らされたら困る。

 死者が出たり、隠し扉を探そうとしてる奴がいたり、極度に変な奴が出てきたりした場合にのみブザーを鳴らすよう指示をしている。




「あちゃー……これはもう本格的に池ポチャしたんだなぁ」

『気を付けて、フマウン側の入口に一組来てる。早めに作業完了して』

「了解。よーし、皆急ぐぞー」


 そういうと、俺は骨だけになった遺体を死体置き場へと放り込んだ。

 それにしてもあのカエル達、もう両手足がしっかり生えてたなぁ。

 不意打ちで何匹かダンジョンのどっかにおいてやろうか。いたずらで。

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