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来訪者

 さて、ダンジョンに戻った俺達だがすぐに冒険者がドバっと押し寄せてくるかと言ったらそんな事はない。

 とりあえずまずやらねばならんことは日課だ。

 採掘と昨日の分も含めた光る壁の処理である。


 第二階層も、本来目標としていた広さはそろそろ達成しそうだ。

 まぁ目標達成したとしてももっと掘り進めるだけなんですけどね。


 さて、今回は変わった点が一つある。

 何と、俺とコータが参戦しないのだ!

 理由は簡単。レベル上がりすぎちゃったからね。

 他の要員にいまのうちに経験値を少しでも回しておきたい。


 正直コボルド六体。ハイコボルド一体。へきへき。

 あと鬼姉妹とハナ。戦力は何とでもなるレベルでいる。

 ボムスライムさえ注意すれば大丈夫だろう。


 ということで、俺はモニターをチェックしながらここ数日の分のノートを書いている。

 最近ちょっと日帰りとかが多くて睡眠優先だったからね。時間があるうちにやらないと。

 ふと画面を見ると、オークが矢を二本射られて怯んだところをポチに一刀両断されてた。

 全く問題は無さそうだ。


 コータにおやつをあげながらペンを走らせてると、画面に変化があった。

 こ、こいつはハイコボルド!

 いかん、モニターの中のハナの機嫌が悪くなった。


 だが、今回のハイコボルドはちょっと様子が違った。

 なんせ、こちらには既に一体のハイコボルドが軍門に下っていたのだ。

 相手のハイコボルドも最初こそ威勢は良かったが、何やら様子がおかしいと察して前回よりちゃんとアンの話を聞いているように見える。


 が、何故かハナは機嫌が悪いように見える。

 うーん、どうしてだろう。

 もはやあのハイコボルドとアンの構図が気に入らないだけのようにしか見えなくなってきた。


 後で知った話だが、どうやら今回のハイコボルドも態度こそ軟化はしていたが、口では結構いい加減な事を言っていたらしい。

 元からハイコボルドに対する好感度が低いハナは、イライラを募らせる一方。

 エビがそれを見てジェスチャーで(おい、お前。やめとけよ)みたいな事をやってたのがちょっと面白かった。


 例によって土カードでの脅しが行われるのを横目で見ながら、俺は再びペンを走らせる。

 増員も考えてハイコボルドの居住スペースは作られている。

 段取りもハナとアンがいるなら問題ないだろう。

 今回は失禁ではなく半べそ程度で済んだ。後処理が楽でいい。


 ちなみに、今回獲得したハイコボルドは何となく予想してたが「カニ」になった。

 ステータスもエビが加入してきた時と一緒だった。

 うーんこいつもレベル10にしなきゃいけないんだよなぁ。

 最初に入ったダンジョンのハイゴブリン六体。

 倒したのは割と申し訳ないことをしたのかもしれないなぁ。

 エビとカニがこき使われているのを眺めながら、そんな事を考えていた。



 ■ ■ ■ ■ ■



 さて、現在カニはというとヤンの元で指導を受けている。

 即座に戦闘には出さず、とりあえず自分の仕事を覚える事からだそうだ。


 ハイコボルドの当面の仕事は大工。

 今後誰がどんなメンバーとして加入するか今は未定だが、その為に新しい家具を購入するのは痛手になる。

 そこで、あらかじめ森で伐採しておいた木を使って家具を作る。

 大きな体を活かした適任の仕事だと思う。

 ただ木材の加工とか結構難しいので、みっちりとヤンに仕込まれている。

 あとで俺とか他のメンバーに顔合わせをしておかないと。



 光る壁の処理が全て終わり、あとは片付けという時にそれは起きた。

 マスタールームの中でブザーがなる。侵入者が来たという監視係のコボルドからの連絡だ。


「ハナ、ブザーが鳴った!」

『分かった。あとはこの子たちにまかせて一旦転送して』

「おけーい」


 ハナをマスタールームまで転送する。

 急いでモニターのチェックだ。


「おい、こっち側って……」

「ナフィ側、よね……」


 完全に予想外の方角だった。

 ナフィ側から誰か人影が侵入して来ている。

 どうするか。

 何か凄い深い帽子を被っていて様子が分からない。


「殺すか?いや、本来はこっちでもいいのか?」

「分からない、とりあえず様子を見ようよ」

「わかった」


 とにかくこのままじゃ情報が足りない。

 《ステータス》を見て相手のステータスを確認する。

 《戦闘レベル》……19!?高い!

 一人で洞窟を探索しようとしている辺り、並の冒険者ではなさそうだ!

 《ダンジョンレべル》が3に各種のステータスが25。

 これはもう相当な手練れ……で……。





「いやー来ちゃったわー」

「お、おう……」

「お久しぶり!カロリーナ!」

「おう!一昨日あったばっかやけどな!」


 いや、正確には夜明け前とはいえ昨日だったか?

 あぁ、そうか。ハナは帰り際会わずに帰ったんだっけ。


 そう、この緊張感高まるタイミングでカロリーナが俺達のダンジョンに来訪したのだ。

 何という間の悪さ……いやタイミングいいのか?

 ネタとしては完璧なタイミングだ。関西人としては見事だ。だがこいつはアメリカ人だ。


「唐突に帰ってまうなんてひどいわー」

「この男がどうしても帰りたいって言うから」

「ひどいわーあんちゃんひどいわー」


 いや、仕事邪魔したら悪いって言ったらお前も同意してただろうが。

 まぁ、確かに来てもおかしくはない。

 一応ダンジョンの位置を教えて貰った代わりに俺たちのも教えたしな。

 とはいえ、急に来るのは流石にびっくりした。

 まぁ前もって連絡とか出来ないんですけどね。



 ■ ■ ■ ■ 




「まさか、それって……」

「おう、粒マスタードだよ」

「ほんまか?ほんまにマスタードなんか!?」


 おう、いい食いつきだ。

 だが俺たちにも量は限りがある。

 譲渡までは出来ない


「うんま!何やこれ。ここに来てから一番の感動や」

「せやろ?せやろ?」


 思わず関西弁が感染してしまった。

 しかしこれはそれだけ美味い。

 ただサンドイッチに粒マスタードを入れただけだが、そのアクセントが癖になる。

 今日は流石にそろそろ違うメニューにしようと思ったけど、お客様が来ちゃったからなぁ。

 ま、多少はね?


「これどうしたん?ウチも欲しいわ」

「他のマスターからもらったんだよ。一瓶だけ」

「なぁ、そのマスター紹介してもらうんはアカンか?」

「ダメ」

「むー」


 カロリーナが彼の所に行ったら、気の弱い彼の事だ。恐らく粒マスタードをいっぱい取られてしまうだろう。

 流石にそれはかわいそうだ。


 そのかわり、入手方法だけは教えてあげた。

 彼が粒マスタードを入手した経緯だ。

 カロリーナはそれを聞くと、何かを考え始めた。


「なぁ、あんちゃん。いやあんさん!」

「お、おう……」


 ちゃんからさんになった?

 一応格上げな……のか?


「折り入って相談があるんや!いやあります!」

「断る」

「なんでや!」


 何だろう、凄い嫌な予感がした。

 つい勢いで断ってしまった。


「まぁとにかく聞いてぇな。ウチらの一番の目標は何やと思う?」

「脱出すること?」

「それもそうやけど、それは人によると思うんよ」


 確かにこの世界は非常に生活しやすい。

 冒険者やモンスターの脅威さえなければ、一生食事に困る事はないだろう。

 俺達に関しては二人なので、割と普通に楽しくやってもいる。


「ウチらマスターの共通の目標、それは『調味料』や」

「それはあるな」

「せやろ?そこで提案があるんや」


 なんとなく流れが読めた。


 カロリーナの話は大まかに話すとこんな感じだ。

 ダンジョンマスターは調味料を求める。

 それは現代に育った人間には本当に欲しいものだ。

 ダンジョンマスターはその点では分かり合える。


 つまりマスター同士協力し、一緒に強い敵を倒して調味料を確保しようというのだ。

 皆で同じ容器を分かち合えば、基本的に分け合えるだろう。

 調味料だし。


 確かに、そう言われたら思うところはある。

 俺とハナ、カロリーナと三人は恐らく確保できる。

 あと他に二人マスターのツテはある。

 この五人が全員戦闘レベル20を超えるぐらいになって協力すれば、確かにあの大鷲も楽に撃破できるようになるかもしれない。


 もしかしたら、ダンジョンマスターは積極的に見つけて交流した方がいいのか?

 まぁ今までも色々ありつつも最初に殺されかけて返り討ちにした以外は大体友好的ではある。

 ちょっとこれからやる事が増えた気がする。

 ダンジョンを宣伝し始めた直後だから全然外出できないんだけどね!


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