表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/150

新たなる戦力

「ほんとによかったのかなー」

「アリサのことか?」

「うん。やっぱりナフィからマーシュへ一日で着くなんて、普通じゃないよ」


 彼女は今口はきけない。

 しかし、筆談は出来るかもしれないし、彼女から見たら今回の件は不審な事ばかりだ。

 場合によってはこのダンジョンの存在がバレる恐れもある。


「でもさ、正直それでも良いと思うんだ。そろそろ冒険者をおびき寄せようとも思ってたんだし」

「まーね」


 他のダンジョンも次々に発見されている。

 マーシュでこそ発見された新しいダンジョンは無かったものの、フマウンに行けば二つぐらい新しく発見されているのではないだろうか。

 そろそろ打って出るのもいいかもしれない。

 少女が誰にも俺達が不審だと伝えなければ、それはそれで何も問題はない。



 さて、俺達がマーシュへ行っている間、コボルド達にある準備をお願いしていた。

 俺達がダンジョンに戻った時、まだ太陽はあまり上っていなかった。

 今なら冒険者もまだあまり街道を歩いていないかもしれない。


 一度ハナと食事をとって、今日のメインイベントを開始する。

 参加するのはメンバー全員だ。

 あ、カエルは除くけどな。


「それで、一体何が行われるんですか?」

「前にイアンってコボルドがいたのは話しただろ?彼女の葬儀だ」

「あぁ……なるほど」


 タマが質問をしてきた。確かに教えてなかったかもしれない。

 以前やろうと思っていた日は生憎の雨天で決行になってしまった。

 有志によって遺品の埋葬は済ませてある。


 お墓の前で手を合わせる。

 コボルド達も俺たちの真似をして手を合わせる。

 それに習って鬼姉妹も。


「これはハナがナフィで買ってきた種だ。良かったら一緒に撒いてくれないか?」

「……はい」


 俺とハナ、コボルド、鬼姉妹で協力してお墓の回りに種を撒く。

 ハナと二人で考えた俺らなりの供養だ。

 好きな時にこの墓に来る事は出来ない。

 だから花を添えるより、種を植えて花を咲かせたら、イアンたちの供養になるのではないか。

 俺達には念仏とか唱えられないしな。


 イアンと関係の近しいコボルドが泣いていた。

 ダンとヴァンに、気が済むまで周囲の護衛をしているようにお願いする。

 この辺りは手ごわいモンスターがもうあまりいないが、警戒するに越したことはない。

 帰り際、タマがポツリとつぶやいた。


「ここは、綺麗な所ですね。……本当に」



 ダンジョンに入り、居住スペースへ戻る間にそっとポチが近くに寄ってきた。

 タマに気づかれないようさり気なく近づいてきた。珍しいな、どうしたんだろう。

 ヒソヒソと小さく声をかけてくる。


「あの……お願いがあります」

「どうした?」

「二年前、父が亡くなったのはお話しましたよね?」

「あぁ」

「実は、明後日が父が亡くなってちょうど二年なんです」


 ポチの話によると、彼女らの父はダンジョンで亡くなった。

 ダンジョンと言っても俺達が作っているようなちゃんとしたものではないらしい。

 大きな洞窟にモンスターが大量発生しただけのものだ。

 そこで多くのモンスターと戦い、命を落とした。

 彼は俺らと同様、埋葬された。

 それがダンジョンの入口なのだという。


「先ほどの葬儀、正直びっくりしました」

「そうなのか?」

「えぇ、モンスターの為に葬儀を上げるなんて、元の雇い主ぐらいでしたから」

「へぇー」


 ポチが少しさびしそうな顔を浮かべた。


「姉は先ほどのお墓を見て、父の墓参りに行きたいと願っているはずです。しかし姉の性格上、言い出す事はないと思います」

「……確かに」

「なので、墓参りに行く為の許可を頂けませんか?」

「お墓は遠いのか?」

「はい。ただし危険なモンスターは出ないと思います。一応歩いて行ける距離ですし」

「なるほど……分かった。検討しとく」

「ありがとうございます」


 ポチがそっと離れていった。

 にしても、ダンジョンか。

 この姉妹の父親も気になる。

 明後日時間を割いて、一緒についていこうかなぁ。

 ハナにその話をしたところ、あたしも行くと言い出した。

 まぁ、問題ないか。



 ■ ■ ■ ■ ■




「おーい、そろそろ出るぞー。……って何やってんだお前」

「いやー、練習してればいつかKAMIに会えるかなと思って」

「アホだ、アホがおる」


 俺の恋人である幼馴染は、なぜかブリッジをしていた。

 何かに感化されたのだろうか。

 というかスカートでそういう事やるとパンツ見える気が……。

 いや、これはやれという前フリか。

 ブリッジをしてハナのスカートをそっとめくってみる。


「いやん」

「うおっ……びっくりした」


 一瞬履いてないかと思った。

 よくよく見たら肌色の下着に黒のペンで毛っぽいものを書いてある。


「こんな小ネタ仕込んで……」

「フッフッフ。こんなこともあろうかと」

「というかお前毛ェ生えてないのにゴフゥ……」


 ブリッジからの飛び蹴り。見事だった。

 どうやったのかは分からないが。




 さて、イアンの葬儀を行った俺達だがまだ日は高い。

 ということで、今日はそのままもう一つのメインイベントをこなす事に。

 それは、ナフィの冒険者掲示板で見つけたダンジョンの一つを攻略してみようというものだ。

 今回はほぼフルメンバーで行く為、ハナは採掘せずMPを温存している。


 出入り口でモンスターたちと待ち合わせをしているので向かうと、コボルドが六体いた。

 アンがハナに事情を説明する。

 そして俺に伝達。


「えっとこの三人は、前から訓練してた子たちだって。大分実力がついたから、今日から実戦に参加させたいって」

「おー、それはありがたいと言えばありがたいかな」


 三人から銀カードを受け取る。

 よくよく見れば、ダークネスフロッグの移送の際に見覚えがある顔ばかりだ。

 全員戦闘レベル3だった。たまにダンやヴァンと屋外でモンスターを狩って実戦経験を積んでいたようだ。

 前衛の二人は、ヤンの作った鎧を着ている。

 戦闘レベルが5にならないとコボルド達はスキルを使えない為、無理はできない。


 サン


 女の子で、イアンの意思を継いで弓を扱う。

 アンが後衛で指揮を執る形が非常に上手く機能する為、彼女が新生チームのリーダーらしい。

 彼女はよくイアンに弓の指導を受けていたので覚えている。

 手に持つはイアンが使っていた弓だ。


 ジャン


 サンの幼馴染。

 ステータスは《攻撃力》に特化させていく方針だが、元から足が速い。

 俺と同じ棍棒使いのようだ。

 もし俺が強い武器を手に入れたら、こいつに強棍棒を譲渡する日が来るかもしれない。

 もう一方の手には盾を持っている。


 ザン


 ヴァンの従兄弟に当たるそうだ。

 よく稽古をつけてもらっているようで、スキルは持っていないがかなり剣の筋は良い。

 ヴァンはこれから槍を中心に使用するそうなので、彼がコボルドの剣使いになるようだ。

 方針は《敏捷力》特化。




 前回俺がダンジョンで助かったのは呼び寄せのおかげだ。

 だが、毎回俺が狙われるとは限らない。ハナが転送させられて孤立する可能性もある。

 現在俺達のメンバーはかなり充実しているので、俺とハナの戦力を分散させるつもりだ。


 相談の結果、俺はコータと今までのコボルドチーム。

 ハナがへきへき、鬼姉妹、新コボルドチームを装備することに。

 こうして見るとかなり戦力が増えたのが分かるが、ダンジョンを実質留守にすることになるのでまだまだメンバーは足りないと言える。

 留守は危険なので、なるべく早く帰って来よう。うん。

 新たなる戦力を加え、俺達はダンジョンがあるという南東へと足を進めた。



 ■ ■ ■ ■ ■



「あづーい」

「確かに大分暑くなってきたなぁ」


 俺達が来た時の季節は分からないが、今外は比較的暑い。

 ダンジョン内はその性質上かなり涼しく快適で気づかなかった。

 今までが春でこれから夏に向かおうとしているのではないだろうか。


「そういえば、この辺りだったよな。カエルのいた沼」

「あー、嫌な事件だったよ」


 せっかくなので立ち寄ってみる。

 白い玉はもう発光していないはずだが、カエルたちは無事だろうか。

 そっとタマが沼に近づいて気配を探る。


「……いませんね」

「この辺りに手頃な沼や洞窟は?」

「うーんどうでしょう」


 カエル達よ、頑張って生きろ。




「えーっとここか」

「今回は看板は無いのね」

「気を付けていくぞ」


 ともかく中に入ってみる。

 ダンジョンマスターから見たらすごい分かりやすい《採掘》で作られた洞窟だ。


 少し通路が続き、すぐに空間が現れた。

 学校の教室よりはちょっと狭いぐらいの空間だ。

 そこにはリザードマンが三体居座っていた。


「新チームの三人がリザードマン一体を受け持ってくれ。残りのメンバーで二体を速攻で叩く」


 鬼姉妹が頷く。

 ハナからコボルド達にも伝えられる。

 新チーム三人に任せたのは、彼らの実力を確かめる為だ。

 残りのリザードマンはこのメンバー相手になすすべもなく速攻で倒された。

 正直俺が手を出す隙も無い。魔法も温存だ。


 さて、新チームの三人だが……。

 ……動かない?


 前衛二人とリザードマンが互いに固まっている。

 リザードマンは攻撃が来たら《ハイジャンプ》で避けようとしてるのだろう。

 まぁ三対一だ。迂闊に動けないと考えるのは分かる。

 しかし新チームのコボルドが固まっているのは何故だ?


 ピンと来た。

 彼らは刃物が怖いのか。

 いつも狩るのはそんなに強いモンスターじゃなかったり、武器を持ってなかったり。

 仮にそういう相手がいても、ヴァンかダンが率先して受け持ってくれていたのだろう。


 そして互いに固まってるのでサンが弓を撃ってしまえばいいのだが、手が震えている。

 緊張してしまっているのか、実戦を恐れているのか分からないがこれではラチがあかない。

 ヴァンがこっちをチラッと見た。助太刀に入ってもいいか?という合図だろう。

 GOサインを出してヴァンとダンが援護に入る。

 それでハッと気づいたように新チームの三人も動き始めた。

 それからの彼らの動きは悪くなかったが、うーん……。

 課題が残る結果になってしまった。


 次の部屋ではオークが三体だった。

 正直狩り慣れている相手だ。

 今回はヴァンとザンの敏捷力組を入れ替えてみる。

 すると頼もしい人が一緒だと動きやすいらしく、結構良い動きをするようになった。


 うーん彼らに必要なのは実戦経験と恐怖心の克服かもしれない。

 ゆくゆくは彼らだけである程度動いて貰わないと困るので、何とかしたいところだ。

 ちなみにその次の部屋はモグラ男三体だった。

 あれ?第一階層の光る壁の敵しか出ないんじゃないか?これ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ