夢と現実の町 ナフィ
「よーし勝ったどー」
「ぐぬぬ……これで5勝8敗か」
「いやー後攻で勝つっていいね!」
「くそー……」
俺とハナは今五目並べをしている。
ハナのダンジョンレベルが上がった際、何故か囲碁や将棋やオセロやチェスが買えるようになった。
基本暇を持て余してる俺達はとりあえずやってみたものの、ハナは将棋が出来ず俺はチェスが出来ない。
囲碁は全くわからんということで、もっぱらオセロと五目並べをやっている。
いやーしかし馬鹿にしてたけど面白いね、コレ。
5分以上の長期戦になる事もあれば、一瞬で勝負が着く事もある。
独り言で「何だこの泥仕合」とか呟いたと思えば次の手で勝負がついたり。
二人とも根はゲーム好きなのでこういうのは割と盛り上がる。
いやー、ほんとハナと二人でよかった。
ちなみに今はポチがカエルの世話をしている。
沼から持ってきた藻を浮かべて住みやすくしているのかな。
あのカエルの生態は俺らの中で一番詳しいし、しばらく彼女に一任したい。
女性陣の中で唯一カエルを恐れていない存在でもある。
とはいえ一応相手もモンスター。彼女が世話している間何かあったらいけないので、一応寝ないでいる。
明日は昼過ぎまで休み、午後からナフィに向かう予定だ。
「準備出来たか?」
「おけーい」
翌日、俺とハナはナフィに向かう為に、出入り口で鬼姉妹と待ち合わせをした。
彼女らはナフィ出身の為、色々案内とかしてもらおうと思っている。
それと、以前ここに迷い込んだ少年が持っていた宝石も売却しようとも考えている。
マーシュやフマウンで売れば元が割れる可能性があるが、こちらで売ってしまえば問題ない。
「お待たせいたしました」
鬼姉妹が外行きファッションで現れた。
とはいえ戦闘の危険がある為、動きやすい服装ではある。
そして二人とも帽子をかぶっている。偽りの帽子だ。
ナフィまでは七キロほどある。
しかし、直線でここからナフィへ向かうには色々と問題がある。
そこで少し遠回りをする必要がある。結局十キロ弱ぐらいは歩く事に。
その間、三人はぶつぶつと何か話している。
ナフィはイタリア語。ハナは当然の如く何故か話せたが、一応イントネーションの確認などをしているらしい。
鬼姉妹はそれに違和感があるかチェックしているらしいが、そもそも彼女たちはイタリア語は話せないのだそうだ。
ハナがすべての生命線になりそうだ。
とはいえ、大陸の中央にあり様々な人種が混ざりやすい町。
会話が出来なくても何とかなると鬼姉妹は言っていた。
ナフィについたころには、日も傾きかけていた。
どのみち一泊する予定ではいたので問題ない。
まずは鬼姉妹のおススメの宿へと寄る事にした。
ナフィは奴隷制度があるという割に、かなり綺麗だという印象だった。
もっと世紀末ヒャッハーなイメージを持っていたが、そうでもないようだ。
「あそこの男女がいますよね」
「あぁ」
「女性の足を見てください、あの輪っかが奴隷の証です」
「あー……」
噂には聞いていたが、やはり奴隷も結構いるようだ。
ちなみに奴隷の中でもそれなりに重いものが脱走防止の輪を足に課せられるらしい。
宿は商店街の近くにあった。比較的治安とサービスが良く、綺麗でそこそこ安価だ。
金庫があって貴重品を保管できるらしい。
とはいえお金をスられる事はありえない世界なんだが。
空き部屋を二つ確保して町に繰り出す。
目指すは宝石店と冒険者ギルドの掲示板だ。
「あ、こっちはいかない方がいいです」
「ん?どうしてだ?」
裏道を通ろうとしたら、タマに止められた。
何かあるのだろうか。
「こっちは奴隷市場があるのですよ」
「奴隷市場?」
「あの、何というか生まれたままの姿で売られているので……」
「あーなるほど」
奴隷によっては全裸で売られているそうだ。
ハナと一緒に行ったら気まずいことになりそうだ。
確かに道を変えた方がいいかもしれない。
綺麗な町だが、影の面がそれだけ濃い町なのかもしれない。
■ ■ ■ ■ ■
「何なん?あの商人。全く……」
「いやー危ないところだったなぁ」
「これだから油断も隙もあったもんじゃない!んまったくもう……」
宝石店の前で愚痴る俺達。
宝石を売却したことで、資金は二人合わせて三万アモルを超えていた。
しかし俺もハナもすっきりした気分ではないのには理由があった。
俺達が始めに訪れた店では、全ての宝石を合わせて一万程度だった。
そんなものなのかと納得しかけたが、商人が宝石を妙な動きで扱い始めた為違和感を感じた。
俺も宝石に関しては多少調べたので持っていた宝石を何度もチェックしていた。
そして、売る予定だった商品の中に見覚えのない宝石が一つ紛れ込んでいた。
商人を(短剣をちらつかせながら)問い詰めた結果、すり替えを白状。
イタリア語がネイティブでなかった為、舐められていたようだ。
奪い返した上で少々分からせて店を出た。
次のもう少しちゃんとしてそうな店で鑑定を依頼。
結果、前の商人がすり替えようとしたものは魔石と判明。
更に魔石を除いた宝石分だけでも二万近い買い取りを提示。
こちらのお店を天国かと思った一方、どれだけ舐められてたんだと悔しい気持ちが二人を包んだ。
ちなみに魔石は売却せず、一応保管しておくことに。
この魔石はインパクト強化の魔石と言うらしい。
例えば同じ剣を同じ人が打ち合ったとして片方だけこの魔石が装着されているとする。
そうすると、本来はつば迫り合いになるはずが、魔石を装着されてない方が一方的に弾かれる。
鎧を貫通しやすくもなるとか。《衝撃波》の範囲も上昇するのではないかと踏んでいる。
ちなみに、ポチとタマは別行動している。
元々はここの町で暮らしていたので、色々回りたいところがあるようだ。
「にしても魔石かー。思わぬ収穫だったな」
「明らかに貴重よね。店頭で五万で売ってたわよ」
値段を見た瞬間、迂闊に武器に着けない事を心に決めた。
この世界の価値では、ちょっとした年収並なのではないだろうか。
割と良い家が買えそうな気がする。
「家と言えばさー……」
「審議拒否」
「ギャグじゃねーよ。こことマーシュに家を買わないか?」
「まーあれば便利よね。お金あるし」
「だね」
俺達はただでさえ冒険者としては異質だ。
この世界で日帰りでマーシュから帰ってくるなんて、普通から考えると不自然極まりない。
今は俺達のダンジョンが明るみになっていないが、今後各地でダンジョンが発見され始めると何か勘ぐられるようになるかもしれない。
しかしその度にマーシュやここで宿を取るのも大変だ。
そこで家を持って、一泊したり拠点として活動する事を考えている。
「あ、ここだ」
「よーしチェックチェックー。えーっと……」
雑談をしながら通りを歩き、冒険者ギルドに到着する。
この町はいろんな人種がいるおかげで、掲示板がかなりカオスな事になっている。
英語、イタリア語、スペイン語、中国語ととりあえず四つは存在する。
ハナ曰くドイツ語も一枚だけあったとか。
結果、三つのリン・テートが発見されている事が判明した。
そのうち一つは割と以前に発見され、一つはダンジョンとは逆の方角にあって行くのが大変。
「これは……うん。最近見つかってて、場所も行けなくはない」
「おーけー。今かなり戦力充実してるし、行っちゃってもいいかもな」
「まぁ、要相談ということで」
掲示板のチェックも終えたので宿に戻ろうとしたら、ハナが提案をしてきた。
「行きたいところがあるの!」
「ほうほう。どこ?」
「秘密、いいところよ」
「とりあえずパンツ脱いだ」
手をパタパタさせている。そんないいところなのか。
東へ徒歩十分。娯楽の多いエリアへとやってきた。
何か臭い。これは……硫黄か?
「温泉?」
「せーいかい。ここにしかないんだって」
「あー山だからあるのか」
ここは奴隷を買いに来る客がいる。
つまり金持ちが泊まるにふさわしい宿もあるということか。
やってきたのは立派な旅館。
温泉だけ借りれるんだとか。
「じゃあ、登録だけしてきちゃうね」
「おう、ちょっとトイレ行ってくる」
「はーい。先行ってるよ」
道中ちょっと水を飲み過ぎたかもしれない。
トイレから出てきたらハナがいない。
先に行ったのだろうか、通信機を使う。
「トイレから出たよー」
「ん、B-8ってところ入って来て」
「あいよ」
特に疑問も持たずにB-8という場所に向かう。
扉を開けると、中から大量の湯気が襲いかかってきた。
「……うわっ、直で温泉なのかよ。更衣室無いのか」
「おーいこっちこっちー」
「こっちこっちーって……何で泳いでるんだよ」
ハナが平泳ぎで泳いでた。
泳ぐとか何て行儀の悪い。
…………あれ?
■ ■ ■ ■ ■
俺達のマスタールーム近くに設置された風呂場は、つい最近浴槽がついた。
とはいえ、そんな大きな浴槽ではない。一般家庭にあるようなサイズのものだ。
やはり本場の温泉は別格であり、肩まで浸かった気持ち良さは何とも言えない。
日本人には温泉。これは鉄板だろう。
思わずくぅ~と声を上げてしまう。
そんな俺の前をハナが泳いでいる。
白く濁った温泉の為ほとんど裸は見えないが、正直めっちゃドキドキする。
そして素直に喜べない自分がいる。何だろう、こいつ何か企んでるんじゃないだろうか。
「何でこんな貸切温泉にしたんだ?」
「一般的な大浴場的な場所が無かったのよ」
「無かった?」
「うん。ここは二十以上の個別の温泉があって、全部貸切なんだって」
「何でそんな……」
「一緒に入る文化がないんじゃない?」
「うーん……」
ここは温泉のみの場合に使われる温泉らしい。
そして何と泊まりの場合、部屋の隣に専用の温泉があるとか。
何と豪華な。
「ここはお金持ちの道楽だからねー」
「まぁ、そんなもんなのかな」
この町は大量のお金持ちが奴隷を買いにやってくる。
王族の人が大衆温泉に入れるか!ってことなのか?
「そういえば、受付のおねーさんいたじゃん」
「あぁ、あのおとなしそうな人ね」
「あの人も奴隷だったよ」
「へー」
ハナに以前釘を刺されたが、一口に奴隷と言っても文字通りの意味がない場合がある。
ただのアルバイトだったり、今回のように旅館の受付だったり。
そういう立場でも奴隷なのだと言う。
これは翻訳の問題でもあるらしい。ドイツ語というより、この世界の言語独特の価値観とかそういうものだと言ってた。
まったりとした時間が流れる。
俺は普段はシャワー派だが、温泉となると長風呂派だ。
最近荒事が多かったので、こういうのもたまにはいいかもしれない。
ハナも何か大人しくなって……何かチラチラこっち見てるな。
「あのーさ」
「んー?」
「先上がっててもらえないかな」
「いや、俺長風呂派だし」
「じゃあ、せめてあっち向いててよ」
「どーしよっかなー」
要はハナが上がりたいけど、上がると裸を見られると言いたいらしい。
俺は普段体洗うだけだから、長風呂するとは思わなかったのだろう。
何やらもじもじしてる。いや一緒に入ろうとしたのは俺じゃないし。
「んー……どうしても駄目?」
「さーねー」
上を見ながら答える。
正直何も考えてない。嫌がらせとしてちょっと楽しんでるぐらいだ。
天井にはドラゴンの絵が描かれてるのか。かっこいいな。
スーっとハナが近づいてくる。
「あの……これで許して」
「ん?」
……チュッ
「……今日は積極的だな」
「ダメ?」
「わーったよ」
後ろを向いてやる事にした。
頬っぺたにまだハナの唇の感触が残っている。
何かこいつ、今日様子がおかしいな。
ハナの顔が赤かったのは、温泉のせいなのか、恥ずかしかったからなのか。
誰かさんが体を拭く音が、それはそれでエロかった。
「かんぱーい!」
「いえーい!」
宿に戻ったらポチとタマがいたので、そのまま夕食にする事にした。
食堂で皆で大きめのステーキを頬張る。
付け合せの山菜が肉汁を吸って美味しい。
この町は畜産も盛んなので、割と大きくて新鮮な肉が安価で食べられるのがいい。
「これ美味しい!流石タマ!」
「よくこの宿にはお世話になりましたからね」
「このジュースもちょっと変わった味がするけどなかなか」
ちょっと変わった匂いがするが、ステーキに良く合うジュースだ。
美味しいのでついもう一本頼んでしまう。
まぁお金が余裕あるのでいいか。
あー何かボーっとしてきた。
ってこれ……。
「あの、もしかしてこれってお酒?」
「はい、お口に合いませんでした?」
「いいやそうじゃなくて年齢が……」
「あぁ、この地域はお二人の年でも飲めるので大丈夫です」
らしい。
てっきり二十歳を超えないとと思ってた部分があったが、法律で大丈夫ならまぁいいのか……?
あ、ハナがだいぶ潰れてる。こいつ気づかず相当飲んだからなぁ。
「ちょっと先に失礼するよ。こいつがもうやばい」
「だーいじょうぶだってー」
「あー、じゃあここを右に曲がった二番目の部屋がお二人の部屋ですよ」
「分かった」
えーっと二番目の……。ここだ。
というかハナと一緒の部屋なのか。聞いてなかった。
扉を開ける。まぁまぁの広さだった。
べろんべろんになったハナをベッドに寝かせる。
ちょっと俺も少し横に……。
「……なぁ、ハナ」
「なーにー?」
「ここって俺とハナの部屋だよな?」
「んー、そだよぉー」
「……何でベッドが一つしかないんだ?」
しかも、これシングル用のベッドだよな?
「……えへへー」
いや、えへへーじゃなくて。
■ ■ ■ ■ ■
真夜中の宿。
二人きりの部屋。
ベッドは一つだけ。
頬に残る唇の感触の記憶はまだ新しい。
そんなロマンティックな状況の中。
「ゥォロロロロロ……」
「おーよしよし」
「ゲホッゲホッ……」
「水飲むか?ハナ」
「う"ん……」
俺達の中にムードもへったくれもなかった。
エチケット袋が部屋についてるとタマに聞いておいてよかった。
「っはー……少しすっきりした」
「ちょっと横になっとけ、匂いが残るから外に捨ててくる」
「うん、ありがと」
女将さんにジェスチャーでお願いする。
察してくれたようで、汚物の処理を引き受けてくれた上に新しいエチケット袋をくれた。
確かにここは良い宿だ。
帰り際にチップを渡しておこう。
「大丈夫かー」
「うん、ごめんねー」
「この薬、酔いに良いんだってよ。そこでタマに貰った」
「ういー」
「後でお礼言っておけよ?」
「うん」
薬を口に含み水をゴクゴク飲む。
すげー顔してるな。そんなに苦いのか。
「うえー、にあい。でもちょっとすっきりした」
「じゃあもうちょっと横になってな」
「うん」
今のうちに備え付けの寝巻に着替える。
見た事ない感じだな。どこかの民族衣装だろうか。
「ハナ、着替える余裕あるか?」
「うーん、脱がして?」
「酔っ払いが……」
とはいえ別にやぶさかではないので脱がしにかかる。
おい、体重を預けるな。脱がせづらいだろう。
「あのさ……」
「うん?また吐きそうか?」
「そうじゃなくてさ、襲わないの?」
「お前さー、酔ってるからってそういうのは」
ハナが俺を振りほどき、正面に座る。
上半身は下着のみ。窓から差し込んで来る町の明かりが、ハナの肌を優しく照らす。
その顔は酔った顔でも、冗談めかしている顔でもない。本気の顔をしている。
「……冗談じゃ、無いんだな?」
「うん」
温泉で混浴したのは、別に必須ではなかった。
他の温泉をもう一つ借りれば混浴する必要はないし、それだけ今は資金がある。
ハナが嫌がれば混浴する必要は一切ない。
それに、ポチとタマの部屋を見たらベッドは普通に二つあった。
わざわざハナはシングル用の部屋を借りたのだ。
何となく分かっていたけどすべてこれはハナが望んだ事。
二人の間に微妙な間が流れる。
「……あたしじゃダメなの?」
「いや、そんな事はない」
「じゃあ、どうして!」
以前何でもすると言った時、俺は料理をハナに頼んだ。
それ自体は失敗だったが、その際に訳したレシピは役に立った。
しかし、それならハナに素直にお願いすれば、翻訳はしてもらえたはずだ。
あの時俺がもし「抱かせろ」と言った場合、ハナは迷った上で了解しただろう。
いや、もしかしたらそれを前提として言った発言なのかもしれない。
しかし俺は逃げたんだ。交わるということから。
そしてその先の事から。
「俺はさ、怖いんだよ」
「怖い?あたしが?」
「違う、子供を作る事をだ」
ハッキリ言って、俺が我慢出来なくなりハナを押し倒せば、何やかんやで許してくれる。
それだけの好感度はぶっちゃけ言えば元からあったと思う。
しかし、現実世界では俺達は学生。稼ぐ手段もない。
だがここは違う。子供一人を育てるだけの資金はダンジョンマスターには楽に作れる。
そしてその根底にあるものは脱出ではない。永住だ。
「俺達がここで子供を作って、もし脱出が成功した時その子はどうなる?」
「…………」
「一緒に現実まで帰れる保証なんてないじゃないか」
俺も色々調べたが、この世界に恐らく避妊具はない。
そんな曖昧な状態で、俺はハナを抱く気なんてない。
ハナは俺の考えを黙って聞いていた。
自分の中の整理がついたのか、少し考えた後口を開く。
「……あんたさ、鏡で自分の姿見た事ある?」
「鏡?……最近は、無いな」
ふと体を見てみる。
これは……。
「気づいた?ベッドに寝ると治癒力は上がる。でもたまに古傷が残る時があるんだよ」
「……気づかなかった」
「一生懸命だったからね。でも、あたしは心配でたまらないんだよ」
こっちの世界に来てすぐのころ、魔法カードの枚数を偽られた事があった。
ハナは普段顔や動作に出さないが、俺の事を心配していたのか。
「あたしが脱出したいって言って、あんたがそのために命張ってくれるのは助かるし嬉しい」
「あぁ」
「でもさ、死なれたらもっと嫌なんだよ。誰かさんが罠踏んで一人転送されて、ドアの前で祈るように待ってた時、どんな気持ちだったと思う?」
「…………」
「次あんたがこんな危ない目に会ったら、あたしは無理矢理押し倒す。脱出を諦めて、永住して子供を産む。そっちの方がリスクが少ないはずだしね」
「……分かった」
ハナの声は全く動揺していない。
しかし目から涙が流れている。
ついその気迫に承諾してしまったが、ものすごい事を言われた気がする。
一種のプロポーズのようなものだ。
「……あーもー酔いが覚めちゃった。ムードもへったくれもないしさーもー」
「急に変わるな、お前」
「うっさぃばーか。女にここまでさせて手ぇ出さないとか不能か!」
「なっ……」
「この前恋人って言ってもらって凄い嬉しかったのに、残念だなーあーあー」
「あ?何だ?喚く口はその口か?」
「だーも……ちょっ……まっ」
焦るハナを押し倒して唇を重ねる。
ファーストキスとか関係ない。
暴れるのを抑えて口の中をねぶってやる。
攻撃力50を舐めるなよ?
やがてハナは大人しくなった。
初めてのキスは薬の味だった。本当に苦いなコレ。
そっと唇を離すと、ヨダレの糸が出来てちょっとエロかった。
「……ムードもへったくれもないんだから……」
「あのさ、別に交わらないってだけでお前を好きって事には変わりないんだぜ?」
「…………」
「だから、さ。正式に恋人にはなろうぜ」
心臓の音しか聞こえない。
顔が赤くなっているのが感じる。
ハナは何も言わず、顔を近づけて唇を重ねた。
「……ばーか」
「はいはい、バカで結構」
「……あのさ」
「どうした?」
「安心したらまた吐き気が……」
「ちょ、ちょっとまて。袋取ってくる。それまでは……」
「……無理」
「あー……」
こうして俺達の関係は幼馴染から恋人に昇格した。
お酒は二十歳になってから!




