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ダークネスフロッグ

 一通り狩りを終えた俺達は、鬼姉妹とミーティングをすることにした。

 コボルド達と別れ、ハナと二人で鬼姉妹の部屋にお邪魔する。


 少し見覚えのある家具があった。

 確か今朝まで住んでいた場所にあったものだ。

 コボルドたちにお願いして移したのだろうか。


「さーて、ミーティングを始めたいと思いまーす。いえーい!」

「いえーい!」

「……ぃぇぃ」


 ハナはともかく寡黙な妹の方がちょっとだけ乗ってくれた。

 意外とノリが良いのだろうか。

 タマの方は苦笑いしている。


「さて、戦闘の様子を見させてもらったわけだけど、流石お強いって感じでした」

「うんうん」


 その後の狩りではカウンター頼りの戦い方はしていなかった。

 あくまで俺達に奥の手を見せてくれたというだけで、普段は堅実に戦うらしい。

 ちなみにそのお返しとして、俺らの奥の手である《衝撃波》と《天地逆転》をお披露目してある。


 今後の為に、彼女たちにカードを一枚ずつ預ける。

 タマには《矢の雨》を渡す。


「これは弓矢のカードだ。対集団に効果を発揮する。主に屋外で使うと良いが、ボス部屋なら多分使える」

「はい、ありがとうございます」


 若干神妙な顔をしている。

 イアンの事は話してあるので、恐らくそのコボルドが装備していたものだろうと察したのだろうか。

 賢い娘だ。

 ポチにはラッドが持っていた剣を渡す。


「こちらは冒険者が落とした剣だ。俺は見ての通り棍棒を使っているし、きっとポチが一番相応しいと思う」

「ありがとう……ございます」


 さっそく出して具合を確かめている。

 気に入った様子だ。恐らく高価なものだから強い剣だとは思うが。


「どうだろう、俺には剣がよく分からないんだが大丈夫そうか?」

「これは良い剣ですね、かなり良質の鉄に特殊な金属を混ぜ込んだものだと思います。良い魔石が埋め込まれているのか、素早さに補正がかかっていますね」

「ほー」


 急に饒舌になったのに少し驚いた。

 よほど剣が好きなのだろうか。

 魔石というのがあるのか、覚えておこう。


「さて、聞きたい事……というか相談したい事がある」

「はい」

「このダンジョンは現在コボルドと君たち、コータとへきへきぐらいしかいない。個々の能力は高いのだが、それゆえに使い捨てが出来ない」


 流石に非戦闘要員のコボルド達を捨て駒にする程俺も鬼じゃない。

 しかし捨て駒に最適なモンスターは、北部エリアのダンジョン出現ポイント周辺に存在していなかった。

 ウルフや巨大なハチは洞窟に適さないし、大サソリは逆に洞窟内に繁殖されるで通行できなくなって困る事になる。


「出来れば繁殖力が高く、洞窟に適応できて強すぎない奴がいい。心当たりはないか?」

「うーん、心当たりはあるにはあるんですが……」


 歯切れが悪い。何か問題があるモンスターなんだろうか。


「出入り口から西にしばらく行ったところに、大きめの沼があるんです」

「ほうほう」

「そこのモンスターが繁殖力が強く、光に反応して攻撃する為私たちには安全なんですが……」

「……なんですが?」

「巨大なカエルなんです」


 ハナの却下!という叫び声を上げようとした。

 その口を手で塞いで黙らせた。



 ■ ■ ■ ■ ■



 ダークネスフロッグ。

 直訳すると暗闇ガエル。

 子牛程の大きさにまでなり、ぬるぬるとした黒い肌は見た目に反して非常に分厚い。

 沼や洞窟に生息し、非常に高い繁殖能力を有する。

 基本的に温厚だが光に対して過剰に反応し、その持ち主へ過剰とも言える攻撃を加える。

 その黒い体は闇に馴染み、人間たちを容赦なく襲うだろう。


「……というモンスターなのですが、実は非常に数が少ないです」

「というと?」

「光に対して攻撃をするのですが、逆に言えばモンスターに対してはほとんど無力なんですよ」

「あー……」


 人間は光を放つ機会が多い。

 松明や白い玉を使って灯りを用意しなければ戦う事も出来ない。

 また、スキルを使う際も光を放つ。それを目印にして捨て身覚悟で戦うのだという。


 しかしモンスターは違う。

 基本的にモンスターは灯りが無くても暗闇で目が効く。

 例えばコータの場合、《警戒》をする時もわざわざ体を光らせたりはしない。

 そのようなモンスター相手の場合、仮に相手から攻撃されても、カエルたちは逃げ回るしか出来ない。

 鬼姉妹やコボルド達のような人間と同様のスキルを利用できるモンスターは確かに光を放つ。

 とはいえそこを心得ているモンスターには通用しないということだ。


 こうしてカエルたちは洞窟から追い出された。

 その特性上澄んだ水には住めない。

 数少ない住処である沼は、洞窟と違ってスライム等の安定した食糧がない。

 結果思うように繁殖が出来ず、最悪自分たちの卵を食べる事も珍しくないのだという。


「とはいえ、俺達でしっかり管理すれば容易に繁殖できると。そういうことだな?」

「はい」


 彼らは体内に毒を持っている。

 それを闇にまぎれた状態から奇襲に近い形で毒を仕掛けるということだ。

 しかし逆に言えば毒消し丸さえあれば駆け出しの冒険者でも倒せる程度だ。

 個々の能力は大サソリ程度ぐらいだそうだ。

 仮にカエルがこのダンジョンに大量発生したとしても、北の山の何十倍も安全だという。


「期待してた以上に良いモンスターが、しかも割と近場にいるというのは助かるな」

「う、うん……」

「しかし沼に生息してるモンスターを、安全にダンジョン内に移すのは大変だなー」

「せ、せやな……」

「あーあー、どこかに睡眠とかの状態異常魔法使える人いないかなー」

「……お願い」


 ハナが涙目になっている。

 やだ、Sとして何かに目覚めそう。


「お願い、カエルだけは!カエルだけは勘弁して!しかも凄い大きいんでしょ!」

「でもしょうがないじゃん、状態異常魔法使えるのお前しかいないんだから」

「アンが!アンがいるじゃん!」

「問題があるでしょ?アンが使うと」

「それは……」


 俺達は状態異常をかける事ができる魔法カード、異常魔法を二種類持っている。

 一つは《ポイズン》、そしてもう一つは《スリープ》だ。

 読んで字のごとく毒と睡眠状態にさせる異常魔法だ

 今回は後者を使おうと思っているが、この異常魔法は問題がある。

 実はこれら、思ったより使い勝手が悪いのだ。

 俺が実際に体で体験したが、このゲームの状態異常は本気で強い効果を持っている。

 だからこそ、意図的に強めの制約がかけられているようだ。


 まず、《知性力》が25以上でないと使う事ができない。

 俺が使おうとしても、装備すら出来ない。


 次に装備されているモンスターが、魔法として使う事は出来ない。

 例えば寝ているモンスター相手に《ポイズン》を使い、呼び寄せを使って逃げる。

 ということを防いでいると読んだ。

 そう考えると《毒攻撃》が使えるコータは相対的に強い気がする。

 まぁ一定時間呼び寄せられなくなるって制約はありそうな気がするが。


 アンが使えないというのもこういうことだ。

 本当はその間だけカードを外せばいいのだが、一定時間そのモンスターのカードが装備できないなどのペナルティがつくらしい。

 あと、確かアンもカエルの類は苦手なはずなので説得は多分無理だ。


 そして最後にして最大の問題がある。

 異常魔法の使用の際、杖は必要ない。

 その代わり、対象のモンスターに触る必要がある。

 しかも十秒間、素手でだ。

 手袋なんて甘えは許されない。

 ハナが嫌がっている最大の理由はこれだ。

 しかもオスとメスの両方を拉致りたいので、二回はやる必要がある。



 というかハナが割とマジ泣きしている。

 可哀想にと抱きしめてやろうとしたら思いっきり腹部に拳が飛んできた。


「……あっぶね!何すんだよ!」

「うっさい、ばか。ばーか。ばーか!ばーかっ!」


 そういいつつ執拗に腹部を狙ってくる。

 あーもー分かったよ、実はカートリッジ交換で俺が代わりにやってやる事も出来る訳だけど知らん。

 その事に気づかない本人が悪い。せっかく代わってやろうかと思ったらこれだ。

 せいぜい苦しむ姿を楽しませてもらおうじゃないか。ケッケッケ。



 ■ ■ ■ ■ ■




 さてカエルを受け入れる前に、彼らの住処を作る必要がある。

 コボルド達総出で各々にスコップを持たせて集合。

 仕掛け部屋より少し南に行った位置の西側にある程度の大きさの空間を採掘で確保。

 光る壁を適当に処理した後、皆で頑張って穴を掘る。


 三時間程で子供用のプールぐらいの穴が完成。

 掘った時の土は採掘で作った空間に無理矢理押し込めた。

 あとは蛇口を設置して排水溝を埋め、水を垂れ流して溜まったら止めて完成。

 いやーいい仕事した。



 まだ夜も深い時間、俺とハナはコボルド達とポチを引き連れて沼へとやってきた。

 コボルド達というのはいつものメンバーだけではなく、他に十人程の有志メンバーが一緒だ。

 非戦闘要員になる為、コータだけでなくへきへきも索敵要員として動員している。

 鬼姉妹も種族の特性上、殺気や視線等を感じやすいらしい。


 途中ではぐれウルフを処理しつつ、無事沼までたどり着いた。

 ハナは道中ずっとアンにお願いしていたが丁重に断られていた。


「で、これからどうするんだ?沼からカエルをおびき寄せればいいのか?」

「……危ないから離れてて」


 ポチはポケットから白い玉を取り出した。光源になる装置だ。

 それを起動させ、沼に向かって一直線に投げた。


「大丈夫か?カエルを刺激しないか?」

「まぁ、みてて…ください」


 ダークネスフロッグは光を見るとそれに向かって攻撃する。

 そんな性質の奴が住処に強い光源を投げられたら……。


「うわぁ……」

「ひっ!」


 安穏とした沼からカエルたちが溢れ出てきた。

 最初は興奮していた彼らだが、やがて落ち着きを取り戻す……。

 というか住処が住める状況じゃなくなって呆然としている。


「……もう大丈夫です」

「よし、ハナ!ゴー!」

「うぅ……」


 ポチに導かれて手頃なオスの前にやってくる。

 そーっと手を伸ばし、足の根本に手をピトリと。

 《スリープ》を発動させしばらく経過すると、力なくうなだれた。

 すかさずコボルドに指示を出し、五人ぐらいで運ばせる。

 道中の護衛をヴァンとダンとアンにお願いする。


 テンションを下げているハナを引き連れ、今度は手頃なメスのカエルの前まで向かうポチ。

 オスとメスの違いが全くわからん。タマも分からないが、ポチだけは分かるとのこと。

 再びハナが《スリープ》を使って眠らせる。残ったコボルド達で運び、俺達で護衛しつつとっとと撤収する。


「ふえぇ……カエル臭いよー……ぬるっとしたぁ」

「おーよしよし、今日はステーキ焼いてやるからな」

「うん」


 普段より凄い素直だ。

 こういうハナもたまにはいい。

 とりあえずタオルを渡して手を拭かせてやった。

 ちなみにポチは渡したバッグいっぱいにカエルの卵を入れていた。

 すごいグロかった。普通のカエルの卵が凄いでかくなった感じだ。


「ところで、カエルたちはこれからどうするんだ?ここ住めるのか?」

「……さぁ?」


 ポチがだからどうしたみたいな顔している。

 アフターケアは無いのか、可哀想に。

 残された戸惑うカエルたちが夜明けにうろたえるのを見ながら、俺達は沼を後にした。

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