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偽りの帽子

「それと、これをお納めください」

「これは?」

「偽りの帽子と言います」


 ポチとタマが二つの帽子を差し出してくる。

 というかどっちがポチでどっちがタマなんだ。後でこっそりハナに聞いておこう。


「これを私たちモンスターがかぶりながら町中に入っても、人間に偽装する事が出来ます」

「……こわっ」


 フマウンやマーシュにもこれを使って潜入してたモンスターがいたのだろうか。

 ただし殺気を放ったり、武器を出したりしたらバレてしまうそうだ。

 元主人の冒険者が彼女たちに持たせたらしい。

 それなりに貴重なものなので、潜伏する事はあまりないらしいがどうなんだろう。

 一応コボルド達も使えるようだが、鬼姉妹の方が使い道ありそうだしとりあえず返しておく。

 昔からの大事なものみたいだし、使うとしたらどの道彼女らに被せる事が多そうだ。


 この一連の流れの中で、ふとデジャヴを感じた。

 少ししてから思い出した。アンが通信機をくれた時と同じだ。

 新しい種族と契約を結ぶと、特典としてこういうものがついてくるのだろうか。

 ともあれこれで町に行く時、二人までは護衛を付けられることはありがたい。

 コータが大きくなってからちょっとどうしようか困っていたところだ。


 一度鬼姉妹と別れてマスタールームへと戻る。

 まだ彼女たちのステータスは見ていないから、確認しておきたい。

 恐らくそれなりの強いのだろう。

 ちなみに口数が少なくて剣使ってる妹がポチ。

 頭がよくて弓を使っている豊満な姉がタマだそうだ。

 うーんいつか間違えそうだなぁ。



 タマ


《戦闘レベル》12


《攻撃力》25

《敏捷力》8

《器用さ》38

《知性力》10


 ポチ


《戦闘レベル》11


《攻撃力》27

《敏捷力》36

《器用さ》8

《知性力」8




 マスタールームで確認したらこんな感じだった。つよっ。

 流石冒険者に連れられていただけはある。

 タマはロックオン、幸運、ハードヒット、カウンター。

 ポチはハードヒット、カウンター、クイックヒット、ハイジャンプ。

 それぞれちゃんと覚えていた。というか俺らの中で一番レベルが高いじゃないか。

 これはいい人材?を確保出来た。

 ただ、だからこそ非常に惜しい。

 何で、何でまとも名前にならなかったんだ……!



 ■ ■ ■ ■ ■



 夕方、俺たちはコボルドの代表者数名と鬼姉妹を居住スペース前に集めた。

 顔合わせとこれからについての打ち合わせだ。

 一番の目的は光る壁の処理もあるが。


「ごめんごめん、待たせちゃったな」

「おまたー」


 俺達が準備を終えて合流した時には、もう皆集まっていた。

 戦闘メンバーに関しては既に鬼姉妹と会っているが、他のコボルド達にも一応顔合わせを。


「えーっと、知っていると思うけどこちらが新しく入ったメンバーのタマとポチです」

「よろしくお願いします」

「お願いします」


 鬼姉妹はぺこりと頭を下げる。

 ホーガン語はもちろんコボルドは分からないのでハナ→アン→コボルドと経由して説明し……。

 あれ、何かおかしくないか?


「なぁハナ、お前もしかしてその言語……」

「モルティ……ってこれはあたしにか。ちょっとアンに教えてもらって。カタコトだけどね」


 こいつ、コボルドの言葉を話してやがる。

 アンにちょいちょい教えてもらっていたらしい。

 たまにつっかえてアンに補足をしてもらっているようだ。

 まだまだ覚えたてでほとんど分からないらしいが、それでも凄い。

 ちなみに文法はスペイン語に近いらしい。知らんがな。

 マジで『チート(語学)』のタグ付けてやろうか。


「じゃあ気を取り直して。こちらから順番にアン、ダン、ヴァン。彼らは戦闘に参加するメンバーだから今後よく組む事になると思う」


 コボルドたちがぺこりと頭を下げる。自己紹介されてる事は訳を聞かなくても分かるらしい。

 続いてヤンを始め、鬼姉妹にも関係のあるメンバーを紹介。

 お隣さんになるので是非とも仲良くしてほしい。


「それと、今日から光る壁の処理は次のステップへと向かう」

「光る壁?」

「リン・テートを掘る上でモンスターが出てくる装置?があってね。それを処理しないといけないんだ」

「あぁ、今朝言っていたやつですか」

「そうそう」




 ラッドたちを倒した際、多くの資金と貴重な武器。経験値もある程度得ることが出来た。

 しかしそれ以外にも大きな変化が起こった。

 ハナの《ダンジョンレベル》がついに2になったのだ。

 ちなみに以前の少年を含めた四人ともすべてハナのダンジョンで倒れている。

 その為、俺のダンジョンには経験値が一切入ってない。


 ダンジョンレベルが増える特典は三つ。

 一つはカートリッジの増加だ。

 ハナは《カートリッジ増設》もあるので、五つのカードが差せるようになった。

 二つ目は収入の増加。

 一日に一度、100アモルを貰える。おそらく正午だろうと最近判明した。

 それが200アモルに上昇した。

 今は大分資金が潤沢なのであまり大きな差はないが、ちょっとだけごはんが贅沢できるようになった。

 それに伴い、俺のベッドも回復量の多いベッドに買い替えた。

 しばらくそのままだった風呂場も、浴槽を設置出来た。

 そして三つ目……。


「じゃあ戦闘できるメンバーだけこっちに来て。あとの人はもう大丈夫」


 ヤン達を帰して、三匹のコボルドと鬼姉妹、へきへきとコータとぞろぞろ移動する。

 居住スペースから比較的近いところにある扉を開ける。そこには下り階段があった。


 三つ目の特典。それは第二階層だった。

 階段が設置可能。下の階層にマスタールームを移す事も一応可能になった。

 恐らくレベルが上がるごとにどんどん下に広げる事が出来るようになるのだろう。


 そこで、ここに大迷路を設置する事にした。

 一度大きな空間をぶち抜き、土を使って制作する。

 ハナは今、ここを《採掘》する作業に没頭している。

 光る壁も当然出てくる。現在四つが放置されている。


「ということで、ポチとタマにはここの光る壁で実力を見せて欲しい……んだけど大丈夫」

「はい、大丈夫です」


 俺の予想ではここには上の階にはいないモンスターが出てくるのではないかと踏んでいる。

 ハイゴブリンもその中の一匹ではないかな。


「……あれ、一人で大丈夫?」

「大丈夫です。任せて下さい」


 タマが力強く答える。

 何という自信。しかし、弓矢でそこまでの自信があるものなのか?

 お手並み拝見と行こうか。

 いつでもフォローできる位置に待機し、ハナが光る壁を刺激する。

 タマは手に弓を取り出し、矢をつがえた。



 ■ ■ ■ ■ ■



 光る壁から出てきたのはオークだった。

 一階層と同じ敵なのは少し安心だが、サイズが僅かに大きい気がする。

 もしかしてこのオーク、一階層よりレベルが高いのか?

 その場合《攻撃力》が上昇が一番あり得るところだ。

 攻撃力が上昇するとその分体力が増え、硬くなる。

 弓の威力を侮っているわけではないが、前衛抜きでこの相手を倒せるのか?

 しかしタマを見ると一切慌てた様子はない。


 タマが弓を引き、矢が光を放つ。《ロックオン》だろう。

 矢はオークの胸元に刺さる。

 本来なら心臓を射抜ける位置だったが、筋肉と脂肪で邪魔されて命を奪うには至らない。


 オークは雄叫びを上げながら矢を引き抜いた。

 完全に激昂している。タマは全く動じてない。

 次の矢を取リ出して構える。

 矢は再び光を放ち……。


「なぁハナ、何かさっきと光り方が違くないか?」

「うん、矢だけじゃなくて、弓も光ってる」

「ほんとだ」

「器用さ50のスキルかな?」

「いいや、あいつはロックオンしかないはず……あ」


 いや、もう一つスキルがあるじゃないか。

 弓矢に《ハードヒット》上乗せ。そんなことが出来るのか。


 タマは動かない。

 オークはそのまま近づき、手に持った棍棒を光らせて《ハードヒット》で殴りかかってくる。

 矢が少し大きくなった気がする。いや、これは光が更に強くなったからか?

 彼女は狙っていたのだ。《カウンター》で更に威力が上乗せされるのを。

 既にモーションに入ってしまっているオークの喉元めがけ、一筋の光が放たれた。

 矢はオークの喉を貫いた。巨体が矢の衝撃で弾かれる。

 オークに致命傷は与えた。しかし、オークはまだ一命を取り留めている。

 《ロックオン》《ハードヒット》《カウンター》と三つのスキルを重複させたせいで、タマには長い硬直が待っているはずだ。


 助太刀も考えたが、硬直で動けないはずのタマの行動はまだ続いている。

 手に持った弓矢がフッと消える。そして次の瞬間手には短剣が握られている。

 タマはその短剣を光らせ、そのままオークに向かって投げた。

 短剣はオークの側頭部に命中し、オークは絶命した。

 今のは一体……まさか。


「今のは、投擲での派生か」

「えぇ、そうです」


 タマが床に落ちるカードと短剣を回収しながら答える。

 考えれば考えるほど、この姉は面倒な事を容易く行ったという結論にしかならない。

 まず相手を《ロックオン》する。

 《ハードヒット》を上乗せし、《カウンター》で射抜く。

 恐らく何かの動作をキーにして弓矢を消す、短剣を出すという一連の動作を仕込む。

 弓を撃つという行動からの派生として投擲をする。

 光ったという事は《ロックオン》と《ハードヒット》を更にかけたのだろう。

 考えるだけでも頭が痛くなりそうな手順だ。

 俺も一応スキルの連携はある程度出来るが、ここまで高度ではない。

 正直相当練習しないと出来る気がしない。


「流石、大丈夫だと豪語しただけはあるなぁ。流石にお強い。流石」

「いえいえ、それほどでもありますよ」


 あるのか、いやあるな。

 しかし弓矢で《ハードヒット》かー。やってみたい気持ちもある。

 次はポチの番だ。

 タマを見た後だと、色々期待してしまうな。



 ■ ■ ■ ■ ■



 光る壁を刺激し、モンスターが姿を現す。

 あのシルエットは……ハイゴブリンか?

 予想していた以上に大物だ。ポチとの体格差が倍以上ある。

 強いて言えばダンジョンで戦った連中と違い皮の鎧を身に着けてないのが唯一の救いか。

 斧は相変わらず《強斧》だった。


 対するポチは携えている剣の柄を握る。

 そしてそのまま動かない。抜刀すらしない。

 この構え……よくアニメとか漫画で見るな。


「これは、居合切りか?」

「よくご存じですね、その通りです。あの娘もそう呼んでいます」

「へぇ、初めて見た」


 居合切り。剣を抜く時の勢いを重点とした剣術の技の一つと言えばいいのだろうか。

 主に出会い頭での戦闘等に、咄嗟に抜刀して攻撃が出来るのが利点だろうか。

 しかしこの世界、そもそも剣が何もないところから出せる。

 つまり剣を鞘に納める必要がない。というか基本的に鞘がついてない。

 ポチが持っている剣は鞘に納められている。この世界に来てから初めて見た。


 ポチは相変わらず柄に手をかけたまま動かない。

 しかし剣が鞘ごと輝きを放っている。

 これは……何らかのスキルが発動しているのだろうか。

 たしか《ハードヒット》と《クイックヒット》を持っていたはずだが……。

 せっかくだし聞いてみよう。


「なぁ、あれはどっちのスキルが発動してるんだ?」

「居合切りは両方のスキルを込める事が出来るんですよ」

「両方の?」

「はい。それぞれの威力が合計されます」

「へぇ、面白いカードだな」

「そうですね、よく助けられました」


 ハッタリで言ってみたが、二刀流と同じく戦闘スタイルカードの一種なのだろう。

 それにしてもこの姉妹、こんなに大きな相手でもまるで動じていない。

 それだけの経験を積み、修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか。

 一方ハナはチラチラこちらを見ながらハラハラしている。



 ハイゴブリンはポチの目の前まで来ると、斧を振り上げて光らせた。

 《衝撃波》か?いや、モーションが短い。《ハードヒット》か。

 その瞬間、ポチが持っている剣が一際強い輝きを放つ。《カウンター》だ。


「……えっ?」

「おぉっ」


 次の瞬間、ポチは一筋の光としてハイゴブリンの脇を通り抜けた。

 ハイゴブリンは腹を真っ二つにされ、事情が把握できないまま光と化した。

 二種のスキルを足したものを《カウンター》で威力の上乗せを図る。

 《クイックヒット》の特性を活かしての高速の一撃。

 恐らく《ハイジャンプ》も併用し、勢いを増している。


「ぶらぼー!」


 ハナが手をパチパチと叩いている。

 コボルドたちも手を叩いている。俺もつられて拍手をした。

 ポチは全く動じずに、ドロップしたカードを拾いあげて渡してきた。

 クールな奴だなぁ



 その後、皆で二階層の光る壁の処理を行った。

 まだあまり掘り進んでいない為、目新しい敵は確認できなかった。

 全体的に、入手できるアモルの量が多かった気がする。

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