表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/150

鬼姉妹

 俺とハナがまずどんなダンジョンにするかという話し合いをした時に、気づいた事がある。

 ダンジョンの固定概念というものだ。

 ダンジョン経営型のゲームというのは、モンスターを雇ったり養ったり育てたりしながら冒険者を迎え撃つ。

 冒険者は当然ダンジョンを主目的にし、モンスターを倒した時のアイテムや場合によってはお宝なんかを目当てにやってくる。

 俺もハナも、当初はそれを想定していた。仮にその案を採択するならば、全長五キロ近くにもなる長い穴を掘る事はなかった。


 しかしそれだと俺達二人でダンジョンを作る利点がほとんどなくなってしまう。

 一つのダンジョンを合作で作り、出口を二つ作る。

 これが俺達のダンジョン案の大本になっていた。

 計画を練るうちに、俺は一つの事実に気づいた

 ダンジョンはそういうのばかりではないという事を。


 主人公が旅立って始めに到達する始まりのダンジョン。

 ラスボスのダンジョンに向かう為に必要な魔法の道具が設置されたダンジョン。

 難病を癒す為秘薬に使う草が生息するダンジョン。

 いわゆる魔王の城のようなものも、まぁ最後のダンジョンと言えるだろう。

 しかし、RPGに存在するダンジョンは全てが重要ではない。

 RPGとしてのボリュームを増やす為の、いわゆる水増し要員のダンジョンも存在する。


 A国からB国へと移動するとき、RPGではいくつかの手段がある。

 船を使って移動する。橋を渡る。飛空艇に乗って山を越える。砂漠を抜ける。

 色々存在するが、こういうのもRPGの鉄板だ。

 山を越える為に、自然の洞窟や坑道を通り抜ける。というものだ。

 他のプレイヤーや、冒険者たちから欺くために。俺達はこの『ただの通路のダンジョン』というものを作る事に全力を挙げた。

 わざわざプレイヤーが二人協力して、しかもわざわざ五キロ以上も採掘をして。

 ただの強い敵も存在しない『ただの通路のダンジョン』を作るなどと誰も思わないだろう。




 計画はこうだ。

 まずハナが北部、俺が中央部へ出入り口を設置するようにダンジョンを生成。

 高い山に断絶されている北部と中央部は、ごく一部の山道しか移動路が存在しない。

 そこで俺らのダンジョンが出現する。やがて北部と中央部の連絡路になる。

 人々はまずはバラバラ、やがて積極的にこの通路を利用するようになるだろう。

 その中には商人や冒険者もいると予想している。

 そしてそれらを盗賊や山賊と言った形で襲撃し、利益を稼ぎながらダンジョンを成長させる。


 少し遠回りのような気もするが、かなり大きなメリットが存在する。

 それは相手を好きなだけ選べるという点と、ダンジョンだとバレにくいという点だ。

 ダンジョンを作りたての時期に強い奴が来るとは限らない。

 俺が潰したダンジョンも、ラッドたちが別の冒険者と向かっていたら、軌道に乗っていただろう。

 ダンジョンとしての力がないのに強い冒険者や他のダンジョンマスターに気づかれては、潰される可能性がある。

 また、例えば資金を持っていそうな商人が護衛を付けていなかったり、どこぞのボンボンの冒険者が通りかかる。

 なんて美味しいものだけを狩るなんて行動が出来るのもこのダンジョンの魅力だと思う。

 まぁどんな風に機能するかはこれからのお楽しみでもあるが。



 ■ ■ ■ ■ ■



 モニターを確認すると、コボルド達が出入り口作成地点にスタンバイしていた。

 コマンドを開き、ハナに教わりながらダンジョンの開放の操作を続ける。

 やがて出入り口の地点が光に包まれるのを確認する。成功のようだ。

 急いで関連者に俺とハナを登録。

 転送でコボルド達と合流する。



 外はまだ暗かった。

 北出口ではかなり明るい印象だったが、中央部は山に囲まれているので少し日の出が遅いのかもしれない。

 中央部は盆地の為ほぼ完全に山に囲まれている。

 一方で人々が生活する地区は草原が広がり、遠くに野生動物やモンスターが悠々と草を食べているのが確認できる。


 ともあれ解放直後は周囲の安全の確保が第一だ。

 この地域は草原が広がっているものの、一部木が生い茂っている場所がある。

 森と言うには少し心もとない場所だが、そんな場所に俺のダンジョンの入口は出現した。


 まずは安定のコータの《警戒》だ。

 いつもの場所に四匹のコウモリが待機。残るコウモリは近くの茂みや近隣の洞窟の入口等へ散開。

 正直物凄い頼りになる。草原方面には、とりあえずの敵は存在していない様子。

 散開した三匹はすぐに帰ってきたが、残り一匹が少し様子がおかしい。何かいるのだろうか。

 その一匹がいた場所は、俺のダンジョンが出現したすぐ隣の洞窟だった。

 俺たちがその洞窟に近づこうとすると、洞窟の中から一本の矢がヒュッと飛び出してコウモリを貫いた。

 コウモリFゥウウウッ! まぁどうせ復活するのは分かってるんですけどね。


 警戒を強め洞窟を注目すると、中から二つのシルエットが見る。

 人間?いや、違う。ツノが頭に二つ生えている。どちらも赤みがかった皮膚に銀色の髪をしている。

 一人はショートヘアでかなり警戒している様子。

 腰にそれなりに立派な剣を携えている。

 もう一人はストレートなロングヘアで落ち着いているが、手に弓を持っている。

 そしてどちらもかなり大きなお胸をお持ちだった。服装は冒険者ものだ。

 正直モンスターなのか、それともエルフやドワーフ等の亜人なのかが区別がつかない。

 強いて言えば、日本の赤鬼をグラマラスな女性にしたらこんな感じという印象だ。

 攻撃しようとするヴァンを制する。相手からも警戒心は感じられるが、敵意は感じられない。


 アンが英語とフランス語で語りかけてみるが、どうにも通じる気配が無い。

 うーんハナを呼んできた方がいいかなー。

 通信機を出してハナと連絡を取ろうかと考えていた時、鬼の二人がひそひそと相談しているのが聞こえた。

 あれ、この言語ってもしかして……。


「もしかして……この言葉、通じる?」


 鬼の二人組は互いに顔を見合わせた。

 弓を持っている方の鬼が口を開く。


「……はい」



 ■ ■ ■ ■ ■



「にほ……ホーガン語がしゃべれるという事は、人間の一種なのか?」

「いえ、私たちはモンスターです。一時期ホーガンの冒険者の元で奴隷として働いてました」


 この時点で色々ツッコミどころがある。

 正直サロメぐらいのカタコトかと思ってたが、すらすらと話している。

 冒険者にモンスターが雇われる?そんな事あるのか?

 奴隷?この世界には奴隷があるのか?

 これらの疑問は一旦おいておこう。

 敵意は無いようなので、全員に武器を収めるように指示する。


「それより貴方は一体……コボルドとコウモリの上位種を使役しているようですが……」

「もしかしてダンジョンマスターって言葉を知らないか?」

「ダンジョン……?」


 アンが知っていたものだから、てっきりモンスターにとってダンジョンマスターは基礎知識だと思っていた。

 ちなみに今話しているのは弓矢を持っている方だ。

 正直おっぱいが目茶目茶でかいので目線がそっちに行かないよう必死だ。

 たまにチラッとみてる事はバレてるかもしれない。

 もう一人はだんまりを決めているが、話を聞いている雰囲気があるので言葉は分かるようだ。

 というかこの分だとダンジョンって言葉を知らないのか?


「リン・テートって分かるか?」

「えぇ、噂には聞いてます」

「それの管理をしている。モンスター達を集めながらな」

「……管理を……?」


 本当はここまで話すべきではないのかもしれないが、俺の直観が言っている。

 この二人は味方に引き込むべきだと。

 体はかなり引き締まり、ステータスを確認するまでもなく二人ともかなり強いのは分かる。

 元々モンスターの数は足りないにも関わらずイアンを失ってしまっている。

 更に彼女らは日本語を話せる。イアンがいなくなってから空いた弓矢要員という点でも欲しい。


「君たちはどうしてここに?他に仲間がいるのか?」

「……立ち話も何ですから、中で話しませんか?」

「あー、そうだな」


 何か地雷を踏んだ印象。いや、核心に触れただけだと思いたい。

 通信機でハナを呼ぶ。コボルド達は一度戻っていいと言ったが、念の為外を見回るそうだ。

 俺はお先に中に入れさせてもらう。

 コータは一緒だし、いざとなればコボルド達を呼べばいい。

 この甘さがゴブリン軍団の危機につながったともいえるが。


「お邪魔しまーす」

「あ、お掛け下さい」


 彼女たちの生活スペースはかなりさびしいものだった。

 横穴に机と、葉っぱや雑草を敷き詰めて作ったベッドぐらいしかない。

 縄文時代を思わせる。いや、机はあるからもうちょっと文明は先なんだが。

 ちなみに食事はカセットコンロで行っているらしい。

 ここで二人で暮らしているのか。


「私たちは姉妹なんですよ」

「へぇー」


 姉妹。一人っ子の俺には胸躍るフレーズだ。

 鬼姉妹。何だか響きがいいな。


「それで、早速なんだけど俺は仲間になって欲しいと思っている」

「仲間……ですか」

「仲間という言い方ではあるが、実質は俺にカードを譲渡するということで、服従だと取ってくれてもいい」


 ここで嘘はつきたくない。後で揉めるのは御免だ。

 簡単にはい!と言ってくれるとは思っていない。

 正直コボルドの時は上手くいきすぎているのだ。


「……リン・テートの運営ということは、それが出現したということですか?」

「あぁ、すぐ近くに」


 このままここに安穏と過ごす事は出来ないという遠回しの脅迫めいたアピールだ。

 しかしこの弓矢のおっぱいちゃん、頭の回転がはやいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ