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清算

 その日の夜。マーシュとフマウンのちょうど中央辺りに存在する洞窟に三人組の冒険者が足を踏み入れた。

 彼らはここにコボルドの巣があるという情報を聞きつけてやってきた。


「本当にこんなとこにあるのかね?コボルドの巣なんか」

「まぁあいつらはまだ子供だが、実力があったのは間違いない。上位のゴブリンを一人で引き受ける素人がいるか」

「そうだな。所詮あるかもしれないという情報だし、ダメ元だダメ元」


 魔法使いが白光具を取り出して使用する。

 非常に奥が深い洞窟だということがよくわかる。

 しかしかつて彼らが攻略したリン・テートと比べるとさほど深くは無さそうだ。


 しばらく進むと、行き止まりに当たった。

 よくよく見ると迂回路があるのだが、彼らはそれに気づかなかった。


「やっぱりデマだったんじゃねえの?」

「いや、よく見ろ。ここよく見ると扉があるぞ」

「これって、リン・テートの時に最後の扉がこんなデザインじゃなかったか?」

「あー。偶然じゃないか?」


 中に入るが非常に広い。

 照らすも中に誰もいない。

 最後の一人が完全に中に入った時、誰も触れていないのに扉が閉まった。


「おい、これってもしかして……」

「あぁ。この前の時と同じだ」

「しかし敵が……」


 敵が見当たらない。

 槍使いがそう言おうとした途端、部屋の中に大量の反応が現れた。

 ゴブリンだ。それも10……20……100は超えている。

 彼らの長い戦いが始まった。




 戦いが始まってから一時間が経過した。

 魔法も尽き、剣も血のりで使い物にならなくなり、ゴブリンの短剣を拾って戦う始末だ。

 彼らがゴブリンをほとんど討伐した時には、辛うじて全員生存していたものの槍男は深い傷を負っていた。

 しかしこれで全てのゴブリンを倒した。解放される。

 最後の一体を討伐し、へたり込む冒険者一同。

 少ししてから扉が開いた。

 そしてその先には、ついこの間まで共闘していた少年少女が、武器を構えコボルドを従えて立っていた。

 こうして三つの冒険者の人生が終わりを迎えた。



 ■ ■ ■ ■ ■




 話は少しさかのぼる。

 俺達は、ラッドをゴブリンの処理に利用する作戦の最終調整を行っていた。

 この作戦を行う理由はいくつかあった。

 ゴブリンは無視できないが、利用もしたかった事。

 ラッドたちはホーガン語を使用する、北地方の数少ない冒険者である事。

 ダンジョンレベルを上げる為に、ある程度の実力者に大量のモンスターと戦ってもらうのは美味しい事。

 さらに彼らが貴重な武器防具を持っていて、現在資金が潤沢な事。

 そして最後に、ハナに殺しを体験させる事だった。


 最後の項目に関しては、ハナが言いだしたことだった。

 間もなくダンジョンは第二段階へと移行する。

 俺は少年を殺すことで、あのいけ好かないダンジョンマスターを殺す躊躇が無くなった。

 今の内体験する事で、いざという時の躊躇を減らす目的がある。

 出来れば俺もハナにそんな事をさせずに脱出したい。

 しかしハナもハナで、生半可な覚悟で言い出した提案ではなかった。



 ラッド迎撃作戦の主な行動は二つ。強棍棒の合成と、戦闘スペースの確保だ。

 まず強棍棒だが、合成してみると釘バッドに近いものだった。

 芯に金属を使い、木で周囲を固めてトゲトゲを埋め込んである。

 俺らの感覚で言ったらこんな複雑な木の加工するより、鉄で素直に作った方が楽そうだが。

 まぁこの世界の鉄の値段が馬鹿にならないのだろうか。 

 二本とも一発で作成できた為、ハンマーが一本残った。


 戦闘スペースは旧居住スペースをぶち抜いて作る。

 光る壁が出現したらそのまま放置し、彼らが来たら出現させて放置。

 倒したところでゴブリンたちを《呼び寄せ》で連れてきて以下同じ作戦でもよかった。

 まあ光る壁は出てこなかったんだが。

 後は例のボス部屋用扉を設置して廊下をふさぎ、迂回路を作って完成。

 あとは待つだけだ。



 コボルド達は予め外側の分かりづらい場所で待機。

 俺は単身、部屋の中で潜んでおく。

 ラッドたちが来たらすかさず呼び寄せでゴブリン全てを呼び出す。

 後はハナが俺をダンジョンマスタールームへと転送し、二人でコボルド達と合流すれば完成だ。


 ちなみに、ラッドたちが敗北した場合は俺達がゴブリンを退治する計画だった。

 しかし彼らならゴブリンを倒すだろうなという算段もあった。

 扉が開いて三人とも生存しているのを確認した俺達は、武器を構えて満身創痍の彼らを襲いかかった。

 ハナのファイアが魔法使いを包み、ダンとヴァンが立つ力も残っていない槍使いを襲う。

 迎え撃とうとするラッドに《天地逆転》を使って転ばせる。

 悪いなラッド。これが俺達の本当の姿なんだよ。



 ■ ■ ■ ■ ■



 

 ラッドたち三人を倒す事によって、俺を除くメンバーの装備が一新した。

 一覧にするとこんな感じになる。


 ヴァン→槍男の槍と剣

 ダン→槍男の盾とハイゴブリンの強斧

 アン→敵のダンジョンマスターの持っていた杖

 ハナ→魔法使いが持っていた杖


 丸々ラッドが使っていた装備が持て余している。

 まぁこれぐらいはいいか。後で売ってもいい。

 お金?うっはうっはよぉ。


 ともあれ、これでほぼすべての準備が完了した。

 後片付けも既に完了して、いつも通りの糞長い直線の通路になっている。

 明日の夜明けを合図に、ダンジョンを完全に完成させる。

 コボルドたちにそう告げ、俺とハナはマスタールームへ戻っていった。



 シャワーを浴びそのままお休みを言って部屋に戻ろうとして、ふと体が止まる。


「……なぁハナ」

「なぁに?」

「一緒に添い寝でもしてやろうか?」

「……なんでよ」

「いや、今夜はそうした方がいいかなと思ってさ」

「……いらない」

「あっそ」


 俺が初めて人を殺したあの夜、近くにハナがいてくれた。

 ハナは今日初めて人を殺した。もしかしたら、と思ったが気を使い過ぎたかもしれない。


「じゃあおやすみ」

「……あのさ」

「ん?」

「あーっと、ありがと」


 それだけ言うとハナは布団に潜ってしまった。

 何だ、可愛いところあるじゃないか。

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