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へきへき

 へきへきは美味しそうにミルクを飲んでいる。可愛い。

 コータはそれをちょっと羨ましそうに見ているが、お前さっき練り物食べただろっていう。

 それにしてもこの毛玉の可愛さは人を殺せるな。恐ろしい。

 ちなみにハナの持っているカードはちゃんと「Hekiheki」と書かれていた。


 そういえばコボルドたちのカード、名前書いてあるんだろうか。

 改めて調べてみる。すべて銀カードだった。


 Dan

 An

 Van

 Ean


 あれっ何かすごい名前適当じゃない?最後のはイアンでいいのだろうか。エアン?

 後で聞いた話だが、一族毎に名前が大体決まっているらしい。

 たとえばこのコボルドの一族はアンという言葉が基本だとのこと。

 一族の長は長になるとアンを名乗るとか何とか。

 ちなみに今の長は杖のコボルドなので彼女がアンだそうだ。

 ガタイの良いコボルドがダン、素早さ重視のコボルドがヴァン。

 弓矢で狙撃をしてきたコボルドがイアンだそうだ。ちなみにイアンであっているらしい。

 にしても50体はいるってことはアルファベット使い切ってないか?細かい事は気にしない方がいいかもしれない。

 ゴブリンは200を超えてるんだっけか。名付け係大変そうだなぁ。

 ステータスは……まぁコボルドだし、こんなものだろう。

 むしろよくスキルを体得させたものだ。


 へきへきの能力も見てみる。

 能力自体は高くない。

 《戦闘レベル》が0のせいだろう。

 ただしスキルがコータ同様見た事がない。

 片方は魔力とかに関係するのだけはわかった。


「えーっと……。《魔力譲渡》と《嗅覚探知》かな」

「何か複雑だな」


 コータ同様サポート用の効果のようだ。

 魔力譲渡……シンプルにMPを貰えるのだろうか。

 《採掘》や俺の作業なんかに便利そうだ。

 他のモンスターのサポートにも使えるかもしれない。

 嗅覚探知はそのまんまだろうな。

 コータと協力すれば、結構な索敵ができそうだ。


 少し気になったことがある。

 確かにコータもへきへきも優秀ではある。

 しかし、明確にコボルド達より強いかといえばそうではない。

 実際に戦えば、前衛のダンかヴァンと戦った時点で殴り殺されるだろう。

 彼らのレベルも見たが、せいぜい5か6だ。コータと同じぐらいである。

 彼らは銀カードでありながら、コータとへきへきは孵化した後も金カードのままだ。

 ここが物凄い引っかかる。何か凄いポテンシャルが秘められているのだろうか。


 ハナがコマンドを一通り操作し終えたので、採掘現場へと飛ばす。

 採掘を開始したのを確認して、昼寝の体制に入る。

 何だかんだで体を凄い動かしている。少しぐらい休んでもいいだろう。



 目が覚めた時にはコボルド達がダンジョンに到着していた。

 コボルド達は皆居住スペースやダンジョン内に闊歩するスライムに喜びを感じていた。

 先ほど整理しておいた武器カードはハナに持たせておいた。

 現在彼らは目を輝かせながらそれらを選んでいるところだった。

 彼らのステータスを見るに、彼らはほとんど戦闘の経験が無さそうだった。

 鍛えてやらないと。まぁ自分もそうなんですけどね。



 ■ ■ ■ ■ ■



「部隊編成?」

「部隊編成。モンスターカードをまとめれるんだって」

「そうだったのか」


 四体+コータを同時に装備できないのでどうするのかと思ったら、そんなシステムが。

 これを使えばカード枠一つでいくらでもモンスターを統べることができるとか何とか。


 ちなみに今はたき火を起こし、鍋でスライム料理を作っているところだ。

 スライムを一匹丸々ぶち込み、木の実と野草を入れて煮込んでいる。

 これで十人ちょっと分になるらしい。決して食べたくはない。

 酸素とかどうなっているのだろうか。

 一度試してみたところ、俺とハナは体質が違うのか酸素が薄くても苦しくならなかった。

 とはいえコボルド達はそうとは限らない。

 何か対策を考えないと。

 今は野外でたき火をしているが、危険性を考えるとあまり出来ないだろう。


 部隊編成はモンスターのカードを複数装備しているときに使用すると一枚のカードとして所持できるらしい。

 試しにコータとアン以外の三人を装備。そして部隊編成してみる。

 あ、パーティーってカードになってる。

 ステータスを開くと凄いいっぱいステータスが並んでる。五体分か、凄いな。


「でも、これって四枚までしかパーティーにできないな」

「まぁ、確かに」


 コータ+コボルド四体はできないのか。まぁ仕方ないか。

 と思っていたら、アンがハナに何かを話しかけている。


「アンに他のコボルドのカードを渡せば、アンが隊長としてさらにパーティーを組める。だって」

「ん?どういうことだ?」


 話を総合するとこういうことらしい。

 まずアンにヴァン、ダン、イアンのカードを渡す。アンはそれを装備→パーティーとして編成する。

 そして俺はアンとコータのカードを装備。パーティー編成。

 たとえば更に他のモンスターを大量に統べたいならば、ヴァン、ダン、イアンにパーティー編成させる。

 と言ったように子パーティー孫パーティーがどんどん作れるらしい。

 軍規模になれば、大隊、中隊、小隊と言った方がいいかもしれない。


 そういえばいくらでもモンスターを統べられるって言っていたな。

 ただしこの場合ヴァン、ダン、イアンには経験値があまり入らないらしい。

 それと、子パーティー、孫パーティーとなるにつれて統率は取りにくくなるとか。


 今はアンに任せることにした。

 せっかくカードを貰っておいて何だが、彼らの事はアンが一番使えそうだ。

 戦闘レベルもみんな6は超えているので、多少経験値が分散するのも問題ないだろう。



 コボルド達が食事をしている間に戦闘が出来る者で光る壁の処理をすることになった。

 コボルド達の居住スペースを作る間に発見されたものだ。合計三つあった。

 ちなみにハナ曰く銀カードの出現率が高かった気がするとのこと。

 《幸運》の影響だろうか?

 光る壁が普段より多めに出たのも関係があるのかもしれない。


 俺とヴァン、ダンで光る壁を囲むように立つ。

 イアンは射撃ができる位置で待機。いざとなったらアンとハナが魔法を使う。

 合図をして光る壁を刺激する。

 コボルド達は眩しそうにしていたが慣れてもらうしかない。俺達は大分慣れている。

 このシルエット……オークか。


 コボルド達は元から培った連携と新しい武器で、俺が手を出す間もなく倒してしまった。

 はっきり言ってオークですら相手にならないレベルだ。次々と光る壁を処理していった。

 これは便りになる。乗り越えてきた修羅場は伊達じゃないようだ。


 予想していた通り、経験値はかなり分散された。

 三体を倒したのにハナが抱っこしているへきへきは未だ2のままだ。

 しかし、この調子なら光る壁をどんどん出現させても問題なさそうだな。



 ■ ■ ■ ■ ■



 

「さて、じゃあお願いを聞いて貰おうか」

「え?今?」


 今俺達はコボルド達に感謝されながら見送られ、マスタールームへと歩いている最中だ。

 俺は直接マスタールームへ行かず、まだMPをほとんど使ってないので《採掘》で消費してから帰る予定だ。


 俺達が買った本は仏英、英仏の他にもう一冊。

 それがこの辺りの地域の家庭料理が乗っている料理本だ。

 無論フランス語で書いてあるので俺には読めない。


「マスタールームにある俺の荷物の中に三冊の本が入ってる」

「うん。……何かすごい嫌な予感がするんだけど」

「料理本を解読して、今夜手料理を作るんだ!」

「ええええぇぇぇぇーーーー……。ムリムリムリムリムリ……」


 予想外だったのだろう。しかしこれは俺のワガママでも無ければ、自殺行為でもない。

 やってもらわないと困るのだ。


「いや、何でもするって言ったよね?」

「うっ……言ったけど、言ったけどさぁ……」


 このお願いには二つの意味がある。

 塩などの調味料が手に入らない。しかしこの地域の家庭料理はそれらの調味料を使用せずに作られているということになる。

 調味料なしで作れる料理があるのなら今のうち知っておくべきだ。

 もう一つ。俺が長期で出かける場合だ。

 仮に一人で丸一日出かけるとしたら、その間ハナは空腹になる。

 毎回毎回作り置きが作れるとも限らない。

 だからある程度の自炊が出来ないと困る。


「じゃあ、条件がある。それを守るならいいよ」

「おう」

「まず、手伝って」

「分かった」


 俺の命の危険があるので、最初から手を出すつもりではあった。

 明らかに危ない味付けをするようならば止める所存だ。


「あと、出したものは全部食べて……?」

「あっ……えっと……」

「何?可愛い幼馴染の手料理が食べられないっていうの?」

「いや……た、食べるさ」


 何だろう、ハナから変なオーラが出てる。

 やばい早まったか。やはり自殺行為だったというのか?


 この後俺とハナは仕掛け部屋で別れ、俺は採掘へ向かった。

 一通り採掘した後、ハナにマスタールームへ飛ばしてもらう。

 それからハナが作っている料理が目に入り…………。



「…………ハッ!」


 気が付いたらベッドで寝ていた。

 おかしい……あれからの記憶が一切ない。

 モニターで確認すると外が少し明るくなっている。

 明け方と考えると十時間ぐらい寝ていた計算だ。


 その後ハナに聞いたが、昨晩の事は何も教えてくれなかった。

 ただ、一言。


「あー……うん。あんたは頑張ったよ……」


 この件については、永遠のタブーとされることとなる。



 ■ ■ ■ ■ ■



 

「じゃ、行ってくる」

「いてらー」


 ハナは日課になっている採掘を終えて、食事をした後例の英仏、仏英の辞書を開いている。

 少しでも勉強しておきたいとのこと。

 全く勉強熱心なことだとは思うが、割と命に直結してる事なのでこちらとしてもお願いしたい。


 ハナに転送され、へきへきとコータと共にコボルド達の居住スペースへと飛ぶ。

 せっかく戦力が増強されたので、一気にここいら一帯の洞窟を探索してしまおうと思う。

 ただしゴブリンや他のモンスターの縄張りになっている可能性も非常に高いので気を付けないと。


 ちなみに今回はコータ、へきへき、コボルド四体の勢揃いだ。

 まずコータは必須。コボルドも近接二人は必要だ。

 弓か魔法か考えたが、今はへきへきのレベルを上げたいと考えた。

 弓のイアンを戦力と考え、アンは指示及びへきへきを抱きかかえていざとなれば逃げて貰う。

 昨日のうちに決めた作戦なので、アンにはハナから指示してもらっている。

 それと、合図も決めた。攻撃、待機、撤退だ。

 いざとなったら「メギ!」と叫ぶとコボルド達の言葉で撤退らしい。

 こちらの指示を見る暇が無さそうなら叫ぶ。


 コータの《警戒》とへきへきの《嗅覚探知》をフル活動させている。

 コータは結構バシバシモンスターの気配を察知して教えてくる。

 正確にはお供のコウモリがだが。

 しかしへきへきはさほど気にしない様子。レベルによって範囲の差があるのだろうか。

 でも割と近くまで寄っても反応しなかった。どういうことなんだろう。


 洞窟を一つ一つしらみ潰しに調査する。

 たまにスライムを食べに来ているモンスター等がいる時があるが、極力追い出したりスルーすることにしている。

 理由はアンから昨夜言われたからだ。無闇にモンスターを刺激すると反感を買う。

 しかし逆に言えば大人しくしていればコボルドのようにこちらに助けを求めるモンスターがいるかもしれない。

 それに虐殺をするだけならばゴブリンと変わらないと。

 モンスター界も大変なんだなぁと思いながら承諾した。

 今思えばゴブリンと一緒の事をするだけの存在にはなりたくないというプライドが働いたのかもしれない。


 もちろん相手から仕掛けてきた場合は別だ。

 名前はよく分からんが大きくて凶暴なウサギが襲いかかってきた。

 サクっと処理したが、大したものは落とさなかった。

 そういえばゴブリンはまだ一度も見ていない。夜行性なのだろうか。


 ちなみに出発前にコボルド達にも食事してもらっている。

 毎回スライムを見てヨダレを垂らされては面倒でならない。

 一度ダンが釣られそうになってアンとヴァンに怒られていた。


 彼ら四体の関係を見ると、アンが一番偉いのは当然といえば当然だ。長なのだから。

 それとは別に、どうやらヴァンもそれなりに偉いのではないかという風に見える。

 非戦闘員のコボルドにも慕われているようだし、何かあるのではないかと憶測している。


 コボルド達の強さを見るに、ダントツはイアンのように見える。

 しかしこれは《ロックオン》の使い勝手の良さであり、また屋外では弓矢は有効だがダンジョン内では制限が強い。

 アンは強いかもしれないが、魔法系は総じて燃費が悪いという欠点がある。

 とはいえハナが採掘をバリバリやっているように、アンは指揮という点でコボルド達に貢献している。

 《知性力》はそこらへんにも影響するのかもしれない。


 武器を与えて、密かに開花しているのがヴァンだ。

 《短剣》と《槍》を持っているが、今まで粗末な武器しか持っていなかった鬱憤を晴らすかのように動いている。

 しかもワンマンではない。自分が攻撃するのが困難と判断すると、ダンが攻撃できるよう相手を誘導したりする。

 おかげで俺の仕事があまり回ってこない。


 五つ目の洞窟の調査を終える。ご近所洞窟は大体問題なさそうだ。

 もう一つ先をチェックしたら一度戻ることにしよう。

 そろそろハナの勉強もひと段落つく頃だろう。

 その洞窟へ足を向ける。


「ワッ」


 何かと思ったらアンが驚いた声だった。

 見るとへきへきが地面に飛びおりていた。

 後で聞いたら、暴れたらしい。


 そして全身の毛を逆立てて威嚇をしている。

 まだ何も見えない洞窟に向かってだ。

 思わずその反応に息を飲む。


 コータはモンスターに対して全て反応した。

 しかしへきへきは反応しない。

 これはもしかしたら、弱いモンスター、危害を加えないモンスターには対応しないのではないか。

 そう考えると、へきへきのこの威嚇の意味も考えられる。

 へきへきは《嗅覚探知》で分かるのだろう。

 この先は危険だ。何かがいると。

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