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漁村 マーシュ

 北へ向かって歩いていくと、《警戒》していたコウモリの一匹が反応する。

 そちらの方角を物音を立てないように移動すると、見覚えのあるモンスターがいた。

 死神がすぐそこまで迫ってるでお馴染みの大サソリだ。

 気のせいか少しダンジョンで見かけるより小振りのような気もする。


 他にもモンスターがいない事を確認し、大サソリを襲撃する。

 棍棒を何度か打ちつけて見たが、殻が以前より若干軟らかい気がする。

 《ハードヒット》を放つと簡単に倒す事が出来た。

 屋外ではモンスターが弱いのか?

 いやいやコボルドは弱いとは到底思えない。


 大サソリがドロップしたのは《毒消し丸》だった。

 あれ、銀カードですらない。

 弱いからショボいカードのドロップしかないのだろうか。


「……あれ?カードってどうすればいいんだ?確かバインダーに入ってないと、消失するんだろ?」


 以前検証した時は丸一日で置いてあったカードが消失した。

 毎回マスタールームまで戻るのは非常にかったるい。

 かと言って一日以上出歩けないなんて不便極まりない。


「あぁ、確か屋外だとコマンド開けたはずだよ」

「なんだって……」


 試してみたら確かに開く事が出来た。

 ただし《ダンジョン操作》は無かった。

 《ステータス》も自分のは確認出来るが、ハナのは確認出来ない。

 ついでにアモルを確認する。やはり以前倒した大サソリ程のアモルは得られていない。

 バインダーに《毒消し丸》をしまっておく。


「そういえば、前回大サソリ倒した時って何拾ったんだ?」

「あぁ。見せてなかったっけ」


 あの時は死神が迫ってたのでカードまで気が回って無かった。

 せっかくバインダーが出せるので、歩きながらハナにカードを見せて貰う。銀カードだった。

 ぽいそん?


「ポイズン。毒ね」

「あぁ、ポイズンか」


 相手を毒状態にするってところか。

 RPGではHPや防御が高い、攻撃が通りにくい相手に対して使う事が多いか。

 しかし後半になってくると敵も自分も耐性があったりして、空気になることもしばしば。

 とはいえ攻撃魔法ではなく搦め手になる魔法があるのは非常に心強い。


 洞窟から一キロ程歩いた所で道を見つける。

 周囲に人がいない事を確認して道に出る。

 遠くに海がちらっと見える。

 ここから東に四キロ程進むと、目的地マーシュだ。



 ■ ■ ■ ■ ■



 歩きながら設定について話し合う。

 基本的には田舎の観光者件冒険者。

 二人の関係性は…まぁ普通に冒険仲間ということでいいか。


 塩等の調味料があればとりあえず調達。

 武器屋も存在するならば、覗いておきたい。

 冒険者ということにすれば、周辺にダンジョンがあるかという情報が得られるかもしれない。



 日の下というのは一週間ぶりのような気がする。

 風が肌を撫でて気持ちいい。

 この世界の空は非常に綺麗な気がする。

 排気ガスの多い東京の空とは違うのだろう。

 夜空も綺麗なのだろうか。



 坂道を登りきると、柵で囲まれている村が見える。

 あれがマーシュだろうか。近くに海岸があり、船がいくつか浮かんでいる。

 まだ朝早いが、何隻か既に漁に出ているようだ。

 流石漁師の朝は早いな。


 コータをバッグに詰める。

 街中でコウモリを使役するのが冒険者でもできるのならいいのだが、仮にできないとするとトラブルの元になる。

 思ったよりコータが大人しくバッグに入って行った。

 出来るだけすぐバッグから解放してやりたいなぁ。


 村の入口の辺りで女性が歩いている。

 見た感じ船を送り出した奥さんみたいな感じだ。

 ハナが駆け寄って話しかけようとしている。

 なんてグローバルなんだ。


 ハナがハローと言うと、相手の女性はポンジュース?とか言っていた。

 何だ?みかんジュースがこんなタイミングで出てくる訳がない。

 ハナは一瞬固まる。少し焦った様子を見せたが、身振り手振りで何か会話している。

 一体どうしたのだろうか。

 少ししたらお辞儀をしてハナが帰ってきた。


「どうした?」

「いやーフランス語だったから凄い焦ったわ」

「お前フランス語喋れるのかよ……」

「昔一か月だけ滞在してたから、簡単な会話ぐらいしかできないけどね……」


 簡単な会話が出来るだけでも十分凄いと思うんだが。

 というかこのゲーム、俺一人で絶対攻略できる気がしない。

 ハナが一緒で良かったと改めて思った。


「なんか中に入っていいらしいから入ろうよ」

「おう」


 この漁村は漁に出る人がいるせいか、朝早くから開いている店も結構あるみたいだ。

 調味料の売ってそうな店はまだ閉まっているらしい。

 開くまでの間、この辺りの店をハナとぶらぶら回ってみることにした。



 ■ ■ ■ ■ ■



 マーシュは朝から活気に満ちていた。

 漁村といえばと言う事でさっそく魚屋に行ってみる。

 大きな魚から小さな魚まで、活きの良いのがいっぱいいる。

 店頭では大きな貝を焼いて販売している。ハマグリだろうか?

 おばちゃんが美味しいよ?どう?みたいな感じで近寄ってくるが、日本語でおkである。


「なぁ、そういえば買い物ってどうすればいいんだ?」

「さぁ……」


 そういえばアモルはあるにはあるが、小銭だの紙幣だのを持っているわけではない。

 支払はどうすればいいのかが分からない。


 困っていると、小さな男の子がお店に駆け寄ってきた。

 お店のおばちゃんが男の子の指定した魚(多分サンマとアジ)を渡す。

 男の子は何かの機械に腕をかざすと、電子音がする。

 改札やレジで電子マネーを使うときみたいなアレだ。


 おばちゃんにハマグリ二個とジェスチャーをして、腕をかざしてみる。

 かなり大振りなハマグリだったが、一個辺り2アモルだった。やっす。

 調味料はかかってなかったが、こんな新鮮で大きなハマグリを食べたのは初めてだ。

 適当な練り物を一つ買っておく。コータへのお土産だ。


 もう少し歩くと、古い本屋があった。

 何やら看板に杖っぽいのが書いてあるので、魔法に関係するのかもしれない。

 気になったので入ってみる。


 しかし目につく本のほとんどが当然ながら日本語ではない。

 俺はまったく戦力になれそうもない。ハナにお任せする。

 お店には魔法カードコーナーがあった。

 カードを店頭で売ってるのか。これは気になる。

 これは《ファイア》か……。300アモル……!?たっかいな。

 この店の一番の目玉っぽい魔法カードは10000アモルもする。

 こんな魔法使ってくる魔法使いなら、俺らのダンジョンなんて一瞬だろう。


 ハナが嬉しそうに二冊程の本を抱えてきた。

 何かと聞いたら辞書だという。

 仏英と英仏か。俺には使えないが、これは非常に便利だろう。

 ハナ曰くフランス語入門みたいな教科書が欲しかったらしいが、残念ながら無かったようだ。


 その後一応探したが、和英や英和、和仏や仏和は無かった。

 それとちょっと欲しかった本を買ってこう。

 後でハナに温存したお願いのチャンスを使う為の布石だ。

 あ、エロ本じゃないぞ。断じてな。


 あれやこれやと話しながらレジに向かう。

 レジには女の子が座っていた。

 俺らより少し上で、青っぽい緑色の髪をしたショートヘアの女の子だった。

 こういう髪の色を見ると、現実じゃないんだなぁとしみじみ思う。


「アノ……ホーガン、ヒト……デスカ?」


 女の子が話しかけてくる。

 チグハグでかなり聞き取りづらかったが、非常に澄んだいい声をしていた。


 ホーガン?何かそんな地方があったような…。

 と考えかけて、ハッとする。

 ハナをチラっと見るが、同じ事に気づいたようだ。

 この子…今日本語を喋らなかったか?


 一瞬プレイヤーかとも思ったが、だとしたらホーガンではなく日本というだろう。

 ということはこの漁村がフランス語が使われるように、日本語が使われる町があるのだろうか。

 そう、それがホーガンという場所なのだろうか。

 この世界には……日本語が存在する……! 

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