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ムダな死闘

「お、レベル上がってる」


 ハナがステータスを見ながら呟いた。早速ポイントを《器用さ》に振り25にする。

 予想通り二つ程スキルが出てきた。

 ろっくおん……だな。と、えふぇ……?

 聞いたら《ロックオン》と《幸運》だそうで。

 幸運かぁ。何に使うんだろう。


「そういえば、《知性力》で獲得できるスキルって何なんだ?結局」

「あ、教えてなかったっけ。まぁここまで来たらもうちょっと秘密で」


 えー。

 ちなみに俺とコータのレベルも上がっていた。

 コータはレベル5になったので、少し多めにステータスが上がっていた。

 相変わらずステータスを自由に伸ばすことはできないらしく、均等に振られている。

 俺のポイントは《攻撃力》に振る。



 《ロックオン》の検証をしてみる事に。広さが欲しいのでボス部屋を使う。

 ボス部屋の横幅十メートルを使って、《ロックオン》を使った状態でハリセンを投擲してもらう。

 予想通りの効果なら、強い誘導がかかるだろう。


「いくよー」

「おーう」


 壁の左端で待機する。

 ハリセンが光を放ち、そのまま投擲される。

 全力で右に回避!



 パサッ



 何と命中した。

 まるでそれそのものが意思を持つかのように誘導がかかる。しかもかなり強力なものだ。

 敏捷力25ですら無理なのか。さすがスキルと言ったところか。

 ハナにお願いしてもう一度やってみる。


「またいくよー」

「よーしこい!」


 今度は《ハイジャンプ》を使って飛ぶ。

 一度見てタイミングを掴んだというのもあり、なんとか回避出来た。

 それを見てハナが何かを考えている。


「うーん。検証って可能な限りやった方がいいよね?」

「まぁ、そうだな」

「よし、わかった」


 さも当然のごとく杖を出すハナ。

 おい何をする気だ。


「魔法も《ロックオン》の対象になるのかなーと思って」

「で、何で俺に向けて魔法を撃とうとしてるのかな?」

「いやー、魔法の誘導も見たほうがいいかなと思って」


 そういえば魔法を正面から見た事は無かった。

 ハナの正面に火の玉が現れる。

 火の玉は少しずつ大きさを増して……。

 ……でかくね?前見たとき大きいような……。


「そうだ、《知性力》の25でのスキルを教えてあげようか」

「お、おう……」

「一つ目は《MP増強》。スキルをいっぱい使えるようになります」


 火の玉がただでさえ明るいのに光をまとっている。

 間違いない、《ロックオン》が適応されている。

 というかハナ、なんでそんな笑顔なんだ。

 てかでかくね?それ死んじゃうよ?

 先ほどの定位置の左端に身を寄せる。


「もう一つは《魔法強化》。魔法の威力が上がります」

「……それ死んじゃうと思うんだけど」

「なーに、大丈夫だよ。多分」


 ハナが杖を振り上げる。


「頑張ってねー☆」

「……飛べえええぇぇぇぇ!」


 火の玉は一メートルに達しようとしていた。



 ■ ■ ■ ■ ■



「飛べえええぇぇぇぇっ!」


 《ハイジャンプ》で直角の角度に飛ぶが、予想以上に火の玉が飛んでくる。

 コータに《撹乱》をさせる。

 二回目のオーク戦ではコウモリが盾になって火の玉を消した。

 逆に言えばそれを狙う事も可能なのではないか。

 コウモリズの内二匹が火の玉に向けて突撃する。


「なっ……!」


 なんと火の玉はコウモリを明確に避けた(・・・)。

 ロックオンだからターゲット以外は少しは回避するということだろうか。

 便利は便利だが、今は危険が増しただけだ。

 このままでは当たる……!

 いや、当てられてたまるかぁっ!


 コウモリの内二匹は火の玉命中狙いの直進。

 しかし、一匹は右の天井付近へ迂回するルートを取らせた。

 コータの《撹乱》をコントロールする練習をこっそりやっておいてよかった。


 《ハイジャンプ》での滞空している間に仕込んでおいた《クイックヒット》を右天井付近のコウモリ(・・・・)へ放つ!

 棍棒は出していなかったので、右の拳が光ってコウモリへと向かってゆく!


 《ハードヒット》、《クイックヒット》での攻撃は若干無理な体勢からでも放たれる。

 ではジャンプしているときに放つとどうなるのか…。


「うおおおぉぉぉぉっ!」


 俺の体は空中で更に上方向へ軌道を変える。

 疑似二段ジャンプ。試したのは今回が初めてだ。

 巨大な鳥のモンスター対策に考えていた技を、こんなところで使うハメになるとは。

 火の玉は俺のズボンの左端を僅かに焦しながら、後ろの壁に衝突し消滅する。

 二段ジャンプは無理矢理出すものなので、少し壁に打ち付けられる。

 まぁ火の玉に正面衝突されるよりはマシか。


「……あっぶねええええええ」

「おぉー」


 パチパチじゃないですぜ姐さん。 

 今度ばかりは許さん。

 マジで許さんぞ。

 ツカツカとハナの方に詰め寄る。


「お前さー今度はほんっとに……」

「まーまー、後で何でも一つ言う事聞くから許してよ」


 ……ん?



 ■ ■ ■ ■ ■




 マスタールームへ戻りながらついつい考え込んでしまう。

 何でも言う事を聞くか…。正直健全な男子なので妙な発想ばかり思い浮かぶ。

 いわゆる交わりは危険かもしれないが、キスぐらいは許される気がする。


 とはいえ命を張った見返りとしての報酬でもあるわけだ。キスぐらいじゃ釣り合わないだろう。

 ここはハナの予想外の事を要求してみたいところだ。


「なーなー、さっきの一つってのだが」

「あ、願いごとを増やすってのは無しだよ」


 むぅ……思いつかなかった。


「後に残すってのはダメか?貯金だ貯金」

「えー……うーん……まぁいいか」


 焦らしだ焦らし、ここぞという時に使ってやるさ。

 男らしくないとか言われても仕方ないが知った事ではない。

 ハナが非常に不満そうな顔をしているが気にしない。



 夜が明けそうなので出発の準備をする。

 ショップでかなり大きめのバッグを買う。

 コータをこっそり入れられるようにする為だ。

 村まで行くには《警戒》が必要だが、村の中でコウモリを使役していると妙な目で見られかねない。


 ついでにモニターをもう一台買う。

 これは入口を常に映すのに使う。

 誰かが入ってきたのをすぐ確認することも大事だが、外が今明るいかで時計の代わりとしても使えないかと考えている。


「あ、お前そのマント外していけよ」

「えー」


 今回は冒険者兼観光者という設定にしてある。

 そんなみょうちくりんなマントを着てる観光者なんていてたまるか。


 出かける前にパスタを食べておく。

 たらこがあったので試したところ、本来のたらこスパゲティより味は薄いがなかなか良かった。

 一応遠出ということで弁当としてサンドイッチを用意しておく。

 水筒も一応買っておくか。十キロじゃいらないかもしれないが。


「あ、そうだ。転送のやり方を聞いておきたい」

「ん。分かった」


 自分のタイミングで転送出来れば、違和感が減るのではないかと思い教えてもらう。

 コマンドからダンジョン管理、転送を押して場所を指定。

 対象を選んで最後にOKを押す。


 うーんやり方はわかるが基本的に英語なので面倒臭いな。

 なれるしかないか。


「じゃあ行くぞー」

「んー」


 大体の準備が整ったので出発する事に。

 場所を入口、対象を自分にして転送する。


「おぉ」


 パッと切り替わるタイミングが自分で決められるだけマシになったのか、違和感が大分軽減された。

 続いて隣に音もなくハナが現れる。

 ちょっと怖い。


 目標、漁村マーシュ!

 出来れば日没までには帰ってきたい。

 地面に這っているスライムに留守を任せ、まずは北へと足を進める。

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