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後出しジャンケン

 モグラ男の討伐後、ハナがサクっと部屋を拡張する。

 その間俺はダメになった服を一部破き、怪我をした部分を軽く縛った。

 ただのかすり傷だから戦闘には支障は無さそうだ。

 ……フラグじゃないぞ。


 ハナが光る壁まで採掘で部屋を広げ、ついでにその周辺も軽く採掘してみる。

 どうやら、光る壁が二つ分が偶然隣り合ったらしい。

 ということは出てくるモンスターも二体と考えるのが自然だろう。


 ハナを打ち合わせをする。

 これまで敵は一対一か一対二だった。

 複数の相手は一度もしていない。

 仮に敵が二体いたとして、どちらも弱かった場合。

 この場合は一気に仕留めるのも手だろう。

 どちらか弱い場合。

 弱い方に《錯乱》をかけ、強い方を集中して倒す。

 両方強い場合。

 逃げの一手。改めて考え直す。


 もちろんまだ相手が二体と決まったわけではない。

 どちらか片方の光る壁しか発動せず、一体ずつ戦うことも考えられる。

 その場合は普通に倒せばいいだろう。


 再びハナは出入り口でスタンバイする。

 慎重に光る壁を刺激。刺激した壁は強い光を発する。

 隣の光る壁は……。


 見た瞬間出入り口に走りだす。

 強い光を放つ間、モンスターの姿は見えないがシルエットは見える。

 影は二つあった。それはいい。

 連鎖的に起動しそうなのは何となくそんな気がしていた。


「逃げるぞ!」

「え、う……うん」


 問題はその相手だった。


「そんなに強そうな相手だったの?」

「あぁ、忘れもしないさ。」


 確かにリベンジしたいとは思ったけどさぁ……。


両方オーク(・・・・・)だった。」

「あー……」


 二体も同時に出てくるこたぁねーだろ……。



 マスタールームに戻ると、ハナが救急箱を持ってくる。

 これはベッド並に高いアイテムで、何度かモンスターを倒した時の稼ぎと今朝の収入分が必要だった。

 ベッドもそうだが、実用的なアイテム程高い傾向がありそうだ。

 逆に言えば高くて実用的っぽいアイテムは、効果が保障されていると考えていいかもしれない。


 心配そうにハナが傷に包帯を巻く。

 こういう時パートナーがいるといいなって思う。

 何か可愛く見えてくるもんだ。

 試しにツバでもつけておいてくれないかと言ったら、全力で傷口を殴りにかかろうとしたので謝った。

 ちょっとしたジョークだろ、鬼か。


 モニターを見るとオークが二体部屋を眺めている。

 互いに同士撃ちとかしてくれればいいのに、何故か意気投合してないかこいつら。


 モグラ男によってハナのレベルは上がっていなかったが、コータのレベルが2まで上がっていた。

 ステータスも気持ち程度上がっている。

 というかこれ自動上昇なのか。自分好みにステータスを振るのはできないらしい。

 落としたカードを見ると《落とし穴》だそうだ。

 罠専用カードか。これは間違いなく重要カードだろう。


 ハナに言って装備を杖+魔法三枚にしてもらう。

 ケチっている場合ではない。

 逆に言えば魔法を使えば十分倒せる相手のはずだ。

 少し休んでからとも考えたが、気が昂ぶっている今がいいだろうと判断した。

 コータを見ると臆している様子は無い……。ように見える。


 先ほどまでの部屋の出入り口まで戻る。

 オークはこちらに気づいていない様子。

 ハナとコータにチラリと合図を送る。

 入口に近いオークへ魔法が放たれるのを合図に、俺はオークへ向かって行った。

 その時の俺は、正直負ける気がしなかった。

 ……もう一度言う、フラグじゃないぞ。



 ■ ■ ■ ■ ■





 ハナがオークに撃った《コールド》は、複数の氷の刃を自らの周辺に出現させて敵に放つ魔法だった。

 普段俺達ダンジョンマスターは光度の調整がある為忘れがちだが、このダンジョンに光源は基本無い。

 モンスターは基本的に暗闇に対する耐性があると言っても、ほぼ真っ暗な中からの奇襲には対応し辛いモンスターも多い。

 まぁモグラ男のような例外もあるが。


 《ファイア》は《コールド》に比べて威力があるように見える。

 一方で所詮火の玉なので光を強く発する。

 奇襲という点では《コールド》に軍配が上がりそうだ。


 オークの背中に数本の氷の刃が突き刺さり悲鳴が上がる。

 正直二体のオークを同時に相手するのが厳しいものがある。

 ならば奇襲でとりあえず一体を倒すのがベストだと言う結論になった。


 《コールド》に襲われたオークは痛みで隙を晒している。

 わき腹に向かって《ハードヒット》!

 右手での強打から氷の刃で傷ついている背中に向かって左の突き。

 そして飛びあがりからの頭部へトドメの一撃。

 オークは訳も分からないまま倒れる。まず一体。これはいい。

 問題はここからだ。


 《ハードヒット》の三連撃は威力が高く、タイマンではかなりの性能を発揮する。

 しかし、複数での戦いではそうではない。

 連続攻撃の間だけ動けないし、通常の《ハードヒット》より僅かだが長い硬直が存在する。

 その間俺はもう一体のオークに対して全くの無力になる。


 相棒を倒されたオークは、俺に向かって走り寄り棍棒を振り上げる。

 しかし俺は一人じゃない!

 確かに俺は(・・)オークに対して無力だ。

 だがコータはその限りではない。スキル発動時でもスキル発動後の硬直時でも、コータは技を出せる。

 《撹乱》をもう一体に出す。オークは急に現れるコウモリズに少なからず怯む。

 そのタイミングを狙ってハナが《ファイア》!

 ハナが放つファイアはオークの頭部目がけて向かい…。



 コウモリの一体にぶつかって消えた。

 コウモリCイイイイィィィィィ。

 うーん。連携が失敗してしまったか。これは今後の課題だな。

 あれ、というかヤバいんじゃ……。


 オークは一瞬コウモリで怯んだもののすぐ気を持ち直す。

 視野を邪魔されながら、振り上げた棍棒を振り下ろす。

 俺はまだスキルの硬直から抜け出せなかった。


 左足に激痛が走る。

 折れているかは分からないが、立っていられない。

 しかしハナは魔法を撃って少しの間撃つまで間隔がある。

 コータも頑張って撹乱しているが、どうにもならないだろう。


 スキルの硬直が終了する。

 《ハイジャンプ》で距離を取るか……。

 いやだめだ。コータのお陰でオークも万全ではない。

 倒れるなら前のめりだ。

 このまま《ハードヒット》で倒す。


 《ハードヒット》を放つ。

 オークはそれに対抗してくる。

 オーク側も《ハードヒット》だろうか。

 しかし違和感を感じる。

 違う。このオークの棍棒の光り方は《ハードヒット》ではない。

 これは……《カウンター》だ。



 ■ ■ ■ ■ ■





 《カウンター》の条件が分かった時、ベッドの中で考えた事がある。

 《カウンター》は攻撃スキルに攻撃スキルを返した時に発生する。

 逆に言えば必ず攻撃スキルを持っているのが前提となる。

 《敏捷力》を25にした時に二つスキルを覚えたように、《攻撃力》を25にすると二つスキルが獲得できるのだろう。

 《カウンター》と《ハードヒット》が。


 そうなると、《カウンター》持ち同士の戦いは必然的に《ハードヒット》持ち同士の戦いになる。

 全てのモンスターで適用されるかは分からないし、俺のように《クイックヒット》を持ってる事もあるが。

 仮に《ハードヒット》同士の場合、それも相対した時は先に《ハードヒット》を出した方が《カウンター》される。

 それってただの後出しジャンケンじゃないだろうか?

 それが仕様なのか?だったらスキルを使わない方がマシだろう。



 俺の《ハードヒット》の一撃目がオークにヒットする。

 リザードマンが俺にダメージを与えられなかったように、俺の《ハードヒット》はオークにほとんどダメージが無い。

 ここまでは良い。

 オークのカウンター《ハードヒット》の命中する前に、二撃目が発生する。

 俺の予想が正しければ……。


 左手の棍棒での突きのモーションが変化する。

 より一層深く踏み込み、強い光りを放っている。

 間違いない。《カウンター》だ!



 《二刀流》での連続攻撃の長所、それは相手に《カウンター》されてもさらに《カウンター返し》が出来る所。

 あくまで推測でしかなかったが、半ば確信してた。

 ただしハナは攻撃スキルを持っていないし、敵にわざとやらせるのも怖いので検証出来なかったが。

 《カウンター》中は防御力が大幅に上昇する。

 オークの一撃も受けられる!


 オークの振り下ろすカウンター付き《ハードヒット》は俺の脳天に振り下ろされる。

 そして……。



 頭に響く強烈な衝撃。

 軽い脳震とうが起きたのだろうか、危うく意識を失いかける。

 まさしく割れるように痛い。割れかけていたのだが。


 《カウンター》での防御力を少し過信していたのかもしれない。

 カウンター付き《ハードヒット》は大幅に軽減されたとしてもこれだけの威力があるということか。

 《カウンター》が発生していなければ、確実に頭を潰されていただろう。

 安易に先出しするもんじゃないな…。


 意識が無くなりかけようと俺の《ハードヒット》は続く。

 通常より深い突きを放ち、オークのわき腹に深く貫かれる。

 そしてそれを引っこ抜き、両方(・・)の棍棒でオークの脳天を叩きつける。


 オークは強い反動で後ろに吹き飛ばされる。

 倒したのか。いや、まだだ。視界がぼやけているが、オークはまだ生きている。

 しかし瀕死といえば、瀕死のはず。

 あと一手、何か追撃を入れなければ……。

 しかしこれからスキルの硬直が発生してしまう。

 ならば、アレを使うしかないか。

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