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魔法少女捕獲計画  作者: ネコヅキ
魔法少女捕縛編
4/6

魔法少女捕縛編 四、ミッション完了。

 勇気を奮い立たせ、赤毛の少女の尾行を再開する。やはり彼女はオレ達に気付いているらしく、少しづつひと気の無い場所へとオレ達を先導していた。そうして幾つかの角を曲がり続け、オレとアリスは袋小路へと逆に追い込まれていた。


「何者だ?」背後から女性の声がオレ達の素性を問う。振り返ると、前を歩いていたはずの彼女が仁王立ちで立っている。その様相は先程までとは違い、ファイアパターンが刺繍されたレオタードの様な容姿に炎の蛇の様なモノが腕や体に巻き付いていた。

「オレ達は委員会の使いだ」

「なるほどね。あたし等を捕まえに来たって訳だ」

「ああ。そうだ。大人しく――」唐突に彼女の姿が掻き消える。直後、路地裏に耳障りな金属音が響いた。

「へぇ、やるじゃないか」

「マスターには指一本触れさせません」アリスと魔法少女。その二人がいつの間にか持ち出した刃物がオレの眼前で火花を散らしていた。あ、アリスが居なかったら今頃は……

「面白いな……」そう呟いた魔法少女はサバイバルナイフの様な刃物で鍔迫り合いをしていたアリスを押し返し、自らは宙を飛んで約二十歩ほど離れた場所に着地する。そしてある方向へ向かって指を差し示した。

「郊外の丘の上に来い。そこで相手をしてやる」それだけを言い残して魔法少女の姿が掻き消える。ひゅるりと吹いた生暖かな風は、魔法少女が纏っていた炎の所為なのかそれとも夏間近の風なのかは分からなかった。

「話し合いで解決したかったが……」

「彼女は好戦的な様ですね」

「勝てるのか?」

「お忘れですか? 私はその為に作られたのですよ」スペックはアリスの方が上だと黒猫はこともなげに言っていたが、正直な所不安で一杯だ。

「行きましょう。マスター」手を差し出して微笑むアリス。オレは覚悟を決めてその手を取った。



 ☆ ☆ ☆



 明言した通りに街郊外の丘の上で魔法少女は待っていた。空には赤く輝く球体が浮かび、太陽の如く僅かに熱を発している。彼女は炎の蛇を羽衣の様に身に纏い、仁王立ちでオレ達を見下ろしていた。


「オレの名はシャーマだ」

「私はアリスです」臆する事もなく応えるアリス。その顔は今まで見た事のない怖い顔をしていた。

「んで、そっちのヤツは女に戦わせて恥ずかしくないのか?」彼女達から少し離れた場所に避難しているオレに話しかけるシャーマ。一般人と大差のないスペックのオレが魔法少女に敵うわけがない。

「マスターのお手を借りる程ではありません。あなたは私一人で十分ですから」

「へぇ……オレも舐められたものだな……」シャーマの纏う炎が激しさを増す。感情に昂りによってその威力が上がる様だ。


「ま。さっきの様子から、その辺の雑魚共と同じ――」ガキンッ。と、金属音が丘に響いた。側に居た筈のアリスは瞬時にシャーマへと接近して、ナイフの一撃を浴びせている。その一撃を顔色変えずに受け止めているシャーマ。

「マスターは雑魚ではありません。私には私の。マスターにはマスターの役目があるのです」シャーマと鍔迫り合っていたアリスの姿がブレる。直後には蹴りの格好になっていた。風圧で千切れた下草が舞う。テレビで見た蹴りなんか比じゃない。そしてそれを受ける事もなく、シャーマは後ろに飛んで躱す。


「ハン。役目ねぇ……」言ってシャーマはアリスに指を差した。

「その役目を果たしたら、お前もきっと排除される。オレ達魔法少女の様になっ!」アリスとシャーマ。二人同時に姿が掻き消える。

 鍔迫り合って、互いの拳や脚で打ち合う。彼女達はその時のみ姿を現し、目で追う事すら困難なオレには踏み締めて舞った下草でその居場所が何となくわかる程度でしかない。


「これが、魔法少女の戦いなのか……」テレビで見られるような、可憐で煌びやかな戦いは微塵もなく、繰り出される一撃はお互いを行動不能にする為の容赦のない一撃。

 それもその筈だ。彼女達魔法少女は、その小さな背中に人類の存亡という途轍もなく大きなものを背負わされ、何年もの間命のやり取りをしてきたのだから。加減をすれば自分が、人類が滅びる。


 斬り結ぶ度に血飛沫と布地と千切れた草が舞い、幾多の傷と露出が増えていく。黒猫が言っていた通りにアリスの戦闘力は高く、少しづつではあるがシャーマを追い詰めている様に思えた。

「くっ……」シャーマの焦りが伝わってくる。オレはただその戦いの行方を見ることしかできない。非常にもどかしかった。


「マスター!」アリスの悲痛な叫びが聞こえた気がした。暗闇の中にシャーマが纏っている炎と人の営みが生み出した街の明かりとが交互に視界に飛び込んでグルグルと回っている。

 何が起こったのか? それすらも分からなかった。ただ、気付けば遠くで戦っていたはずのアリスの顔が目の前にあった。


「マスターっ! しっかりして下さいっ!」アリスのその言葉をまるで他人事の様に聞いていた。細い眉をハの字にさせて、しきりにオレの身を案じている。

 大丈夫だから。オレは多分、そう言ったのだと思う。悲しい顔をしている彼女を安心させる為に腕を彼女の顔へと伸ばす。そこで一体オレがどうなったのか理解する。

 焦げ付く腕。爛れた皮膚。引き攣るような痛みが絶え間なく襲い、衣服だけでなく周りに茂っていた草からも白煙が立ち昇り、満天の星空に向かって伸びていた。


「チッ。仕留め損なったか」舌打ちするシャーマ。

「だが、これで終わりだ」天に向けた手の平に、空に浮かばせていた火球よりも更に大きな火の玉を生み出す。それはまるで本物の太陽の様に輝いていた。

「じゃあな」大きな火球がシャーマの手を離れた。

「くっ……」アリスはオレだけでも守ろうと抱き抱える。けれど、シャーマが放った火球はそんなのはお構いなしにオレ達を焼き尽くすだけの熱量を持っていた。

 死に際には走馬灯が垣間見えるという。けれどオレには全然そんなものは見えずに、アリスのふくよかな胸の感触だけを感じていた。

 そんな終わりも悪くはないか。間近に迫った火球を眺めながらそう思っていた。


「何っ?!」驚きの声を上げたのはシャーマだった。直撃したはずの火球が突然消え失せ――いや、それは正確ではないな。

 焼けた服からこぼれ落ちた黒いプレートに、シャーマが放った火球が吸い込まれたのだ。

「アリ、ス。ヤツ、を捕ら、えろ」

「はいっ!」グスッと鼻を啜り、アリスの姿が掻き消える。置いていかれた涙がオレの頬にポタリと落ちた。

「クソッ! 離しやがれ!」アリスによってガッチリと羽交締めされているシャーマは、その拘束から抜け出そうと躍起になっていた。

「マスター!」

「あ、あ」引き攣る様な痛みに耐えながら震える手足で立ち上がる。何度も躓き倒れても、その都度オレは立ち上がってシャーマを目指す。

「や、やめろ。来るなっ」

「これ、で終、わりだ」黒猫から渡された漆黒のプレートをシャーマに翳す。途端、シャーマの体から出た光の粒子がプレートに向かって吸い込まれていく。


「やめろぉぉぉっ!」絶叫と共にシャーマはプレートの中へと吸い込まれた。そしてオレの意識は暗闇に包まれた。



 ☆ ☆ ☆



 気付くとそこはどこかの部屋の中だった。真っ白な天井に、消毒の匂いが鼻を突く。生温かな風が白いレースのカーテンを膨らませていた。

「お目覚めになりましたか?」アリスは安堵した表情でオレの顔を覗き込んでいる。指を動かすだけで激痛が走り、オレは身動き一つ取れずにいた。

「魔法少女の一人を捕らえたと、委員会に連絡をしておきました。それと、マスターが負傷した事も……」

「それで、黒痛っ猫からの返答は……?」

「グッジョブにゃっ」前足を持ち上げて言う黒猫。なんだ居たのかよ。


「よくやってくれたにゃ。先ずは一人目。幸先がいいにゃ」

「だが、計画は終わ、ったぞ」

「何を言ってるにゃ。魔法少女はまだ七人も居るのにゃ。バリバリと働いてもらわないと困るのにゃ」

「この怪我じゃ、続行は無理、だって言ってんだ」

「ソコは心配しなくていい」突然口調が変わる黒猫に驚く。それなりに歳を重ねた渋い声だ。

「アリス」

「はい。博士」

「少し席を外してくれ」

「畏まりました」アリスは深くお辞儀をして、部屋から出ていく。そこにはオレと黒猫だけが残された。

「どういうつも、りだ?」

「なに。名誉の負傷をしたキミの為に、特別ゲストをお招きしているだけさ」

「特別、ゲスト?」それは一体どんな人物なのだろう? ドアをノックする音が聞こえ、黒猫が入室の許可を出す。ドアを開けたその人物を見てオレは驚きを隠せなかった。

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