魔法少女捕縛編 二、始動・魔法少女捕獲計画。
前回のあらすじ。
異世界に転移させられたオレは、人語を嗜む黒猫と間違った方向性にこだわりぬいた美女。マジカロイド一號と出会い、世界の魔素を食い尽くす魔法少女の捕獲に旅立たされようとした所で断りを入れた。
「な、何故にゃ……」黒猫はクリックリの目を見開いてオレを見ている。
「戦ってヨシ。娶ってヨシの世界最高の美女を付けるというのに……一体何が不満だというのにゃっ!」
「彼女、世界最高なんだろ?」そうにゃ。と黒猫が頷く。
「だったら彼女一人にやらせれば良いだけだろ? わざわざオレが一緒する理由が分からん」
「にゃぁんだそういう事か……」自分の胸に肉球を当ててホッと安心する黒猫。
「一號アレを」
「畏まりました博士」マジカロイド一號が自身の谷間に手を差し込み、黒い物体を取り出した。
「はい。マスター」微笑みながら差し出す一號に戸惑いながら、黒い物体を受け取る。ほ、ほかほかしてる……
「スマホ?」いや違う。スマホサイズの何かだ。
「魔法少女を封じ込める為に我々が作り出した端末だにゃ。そのにゃも、マジカルキャッチャースマートフォン。略してマジスマホ!」ドヤ顔の黒猫。キャッチャーは何処いったんだ?
「これを魔法少女に翳すと、中にずっぷりと入ってしまうにゃ」言い方。
「それは異世界人であるキミにしか扱えないにゃ」何でそんな設定にしたんだ?
「そして、それには更に秘密の機能が搭載されているのにゃ」
「秘密の機能? 何だそれは」
「それは、魔法少女を捕らえてからのお楽しみにゃ。どうにゃ? やる気になってくれたかにゃ?」首を僅かに傾げつぶらな瞳でオレを見る黒猫。オレはため息を吐きながら頭を掻いた。
「もう一度聞くぞ。本当に元の世界に帰れるんだな?」
「もちろんにゃ。猫ウソ吐かないにゃ」それがウソっぽいっつーんだよ。
「仕方がないやってやる」おおっ。と黒猫が唸る。
「だけど勘違いするなよ? お前達の世界の為じゃない。オレが元の世界に戻る為にやるんだからな」
「ツンデレにゃ」断じて違うっ!
「不束者ですがよろしくお願いしますねマスター」オレの手を両手で包み込んで微笑む彼女。その手は本物と遜色なく柔らかい。そんなオレを見上げてニヤつく黒猫。
「何ならこのままお持ち帰りしてから出発しても良いにゃ」そんな余裕があんのかよ。
「それで? 魔法少女の居場所は分かってんのか?」
「もちろんにゃ。この先の街に二人居るにゃ。それとシヅオカに二人とキヨウトに一人。それから――」
「マテマテ。いっぺんに言われてもわかんねーよ。それに、一体何人魔法少女が居るんだよ」
「魔法少女は全部で九人にゃ」そんなに!?
「そのうちの一人は委員会で捕縛しているから残りは…………八人にゃ」ソコ言い淀む必要はあったのか?
「まあいいか。それじゃ、とっとと捕まえてくるとしますか。……えーと、一號さん?」
「はいマスター」相変わらず直視できないほどの微笑みをするマジカロイド一號さん。
「ってか、マジカロイド一號って言い難いんだが。他に名前はないのか?」
「無いにゃ」即答かよ。
「でもそうだにゃ……キミが呼び易い名前を付けて構わないにゃ。そこは任すにゃ」えっ?! オレがか?
「うーん……」
視線を地面に向け、その視線を一號さんの足からゆっくりと上にあげていく。オレとの視線がかち合うと、一號さんは笑顔を輝かせてドキッとする。
「薄青のエプロンドレスっぽいコス。加えてブロンドのロングを三つ編み一つに纏めている……」その姿はさながら不思議の国のアリスだ。……結構アダルティーなアリスだ。
「……アリス」
「! はいっ!」心から嬉しい。そんな笑顔を披露した一號さん。
「それじゃ、マジカロイド一號改めアリス。そしてキミ! 健闘を祈るっ!」あーそういやオレ、名前言ってねー。
☆ ☆ ☆
小高い丘を登りきると、結構な規模の街が姿を見せた。元の世界と遜色のないその街には、近代建築物が幾つも聳え、その窓が陽の光を反射してキラキラと輝く。ここが異世界である事を忘れてしまう様な街並みだ。
「ん? 何だあれ……?」
「どれですか?」アリスが肩を寄せてオレの目線に合わせる。フローラルな良い香りがふわりと漂ってドキッとする。
「街の向こう側にあるデカいの」彼女から少し距離を取りつつ、立ち並ぶビル群の最奥部の山に鎮座する物体を指差す。
「ああ。あれはカマクラの大仏様ですね」本家鎌倉の大仏みたいだが、そこまでの距離と手前に聳えるビル群と比較すると、途轍もなくでっかい。
「大戦時に破壊されてしまいまして、作り直したそうです」
「へぇ、そうなんだ」大戦というのは魔法少女達が戦った時の事だろう。世界を救った英雄達自身が今度は世界を滅ぼす存在になっているとは皮肉なものだ。
「前は高さは三十メートルくらいでしたが、今では二百メートルあるそうですよ」デカきゃいいってモンじゃないだろうが。
「あの街に二人。魔法少女が居るんだな……」
「はい。早速調査を始めますか?」
「そうだな。けどその前に、アリスはお金を持っているか?」
「お金、ですか?」僅かに首を傾けるアリス。頭に疑問符が浮いている幻覚が見えた。
「いいえ。持ってはいませんが……」
「そうか。実はオレも持ってないんだ。ホラ、急にこっちに召喚されたんでな」しまったなぁ、金寄越せと黒猫に言うんだった。
「お金が必要なのですか?」
「まぁな。旅をするには何かと金が要るもんさ」
「そうなのですね。でしたら……」アリスはその場にしゃがみ込んで一枚の葉っぱを拾い上げた。そしてそれを手の平の上に乗せてじぃっと見つめる。直後、アリスの手の上に乗った葉っぱが作画崩壊を起こしたかの様にグニャリグニャリと歪み始め、治った時には札束に変わっていた。
「では、こちらをどうぞ」それって犯罪だろ!?
「これ、使えるのか……?」
「委員会からの承諾は受けておりますので問題ありません」と言って微笑むアリス。なら、遠慮なく使わせてもらうとしよう。
「先ずは服を買いに行こう」
「服、ですか?」
「ああ。流石にその格好じゃ目立ちすぎるからな」言いながらアリスの服を見つめた。今現在彼女は、薄青色をしたエプロンドレスっぽい服を着ている。ふわりと広がったスカートからは色白な素足をにょきりと生やし、その足以上に白いストッキングを履いている。パッと見、某ランドのパレードに居てもおかしくないレベルだ。
「なるほど。確かにこれでは目立ってしまいますね。けれど、私に服は要りません」
「え?」アリスが胸元に手を当てて目を閉じると、その服が輝き出す。次の瞬間、薄青色のエプロンドレスは解れて消え失せ、別な服に再構築された。その際、アリスのすっぽんぽんを見たのだが、WとかYとか。そういう大事な部分は一緒に解れた髪によって隠されていた。なんでだよ!
「これで如何でしょうかマスター」お尻の上で手を組み体をくねらせながら感想を求めるアリス。その仕草がとても可愛いのだが。
「何故にスク水だ」しかも旧式である。
「え? 委員会のデータには殿方を誘惑するのに最高の服であるとありましたが……」委員会め、勘違いも甚だしいわ。そもそも誘惑するモンじゃねーし、服ですらない。水着とは、見せる事を前提とした下着だ。(個人の見解です)
「いや、そうじゃなくて。一般の女性が着ている様な服で頼む」分かりましたとアリスが言うと、服が輝き出す。そしてマッパを経て別な服に再構築されるのだが、やっぱり重要な場所は見えない。
「こちらで如何でしょうか?」今度のアリスは肩から二の腕までが透けた白いブラウスを身に纏い、丈の短いスカートにブーツというラフな格好になっていた。
「シフォンブラウスとチュールスカートにしてみましたが……」髪はアップでまとめられていて、髪飾りの花も白い物になっている。やばい。めっちゃかわええ……
「そ、それがこっちの世界の服装なんだね」どストライクの彼女にドギマギしている自分が居る。
「はい。委員会にはデータが無かったのでネットから拾ってきました」スク水のデータはあるくせにどうしてフツーの服のデータがないんだ?
「どうですかマスター?」
「あ……う、うん。可愛いよ」
「有難う御座いますっ」満面の笑顔を浮かべ、アリスはオレの腕を抱きしめた。
「あ、あの……」
「この方が自然ですから」言ってこてんと頭をオレの肩に乗せるアリス。胸の柔らかさと良いかほりに理性を失いそうになりながら、オレ達はカマクラへと歩みを進めるのだった。




