第6話 ゴーレム達に会いたいよぉ
もう二ヶ月が経った。
この異世界のことも、なんとなく分かってきた。
剣と魔法の世界。
街では、たまに獣魔を連れた人も見かける。
(へぇ……)
じゃあ、私のゴーレムも――
そう思わないわけじゃない。
でも、百体は無理だよねぇ。
冒険者ギルドというものもあるらしい。
けれど、私には関係のない世界だ。
怖いし。
「エミリアちゃん! 今日もお使いかい?」
(お使い……?
子供扱いされてる気はするけど……)
「はい。女将さんに頼まれて。
鮮度の良い野菜、ありますか?」
「あるよ! これなんてどうだい?」
並べられたのは、トマト、ウリ、ナス、パプリカのような野菜。
少し日本とは違うけれど、どれも瑞々しい。
私は、トマトとパプリカを選んだ。
(この世界、なぜかチーズが絶品なのよね)
トマトとチーズのサラダ。
パプリカは魔大猪のミンチで肉詰めにしよう。
「毎度ありがとうね。
サービスでこのナスも持ってきな」
「ありがとうございます」
なぜか、私のときだけサービスが多い。
女将さんが来ると、あまりしてもらえないらしい。
……買い物担当、固定だな。
宿屋へ戻ると、女将さんの姿はなかった。
そのとき、胸の奥に、ふとした寂しさが広がった。
――もう、長いことゴーレム達に会っていない。
(……本当に、召喚できるのかな)
私は、静かに口を開いた。
「――召喚」
反応は、ない。
「……え?」
胸が、きゅっと締め付けられる。
「ゴーレム召喚」
言い方を変えた、その瞬間。
床が、もぞり、と動いた。
ニョキニョキと、土の塊が盛り上がる。
「……!」
現れたのは、見覚えのある小さな姿。
「わー!」
「エミリア!」
「久しぶり!」
――ゴーレム達だった。
「……久しぶりね」
胸が、じんわりと温かくなる。
「寂しかったわ」
「嬉しいー!」
「僕も〜!」
「私も〜!」
「僕は五十五号です!」
「……五十五号?」
「はい! 私は一号!」
「私は二号です!」
番号……あるんだ。
一通りの挨拶が終わるまで、少し時間がかかった。
長い。とても長い。
「私ね。
あれから、この宿屋の女将さんのところでお世話になってるの」
「感謝〜」
「エミリア様〜」
「助けてくれる人〜」
「大切〜」
ゴーレム達は、そう言うと、食堂の掃除を始めた。
気づけば、床も机も、見違えるほどピカピカだ。
「……凄い」
「あなた達、なんでもできるのね?」
「わー!」
「わー!」
(そこは、わー、なんだ……)
「ねぇ。
少しだけ、召喚とかできないの?」
「できる〜」
「十、召喚〜」
「ゴーレム〜」
「……数、指定できるの?」
「わー!」
「わー!」
「じゃあ、最大は何体?」
「エミリア様〜」
「レベル〜」
「今は百〜」
「……レベル?」
「エミリア〜」
「強くなる〜」
「そしたら増える〜」
なるほど。
よく分からないけど――
悪くない気がした。
私は、ゴーレム達を見回しながら、そっと微笑んだ。
(……また、一緒にいられる)




