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第5話 日本と異世界の料理の違い

食事は、ある。


ちゃんと毎日、三食。


ありがたいことだ。


 


ただ――


 


「……薄い」


 


心の中で、そっと呟いた。


 


美味しい、とは思う。

素材の味も悪くない。


でも、どこか足りない。


 


(深み、かな……)


 


この世界の味付けは、基本が塩と胡椒。

あとは香辛料。


 


肉料理は、ワインで臭みを取っているのか、

それなりに美味しい。


特に赤身は、かなりいける。


 


でも――


 


(醤油も、味醂も、ない)


 


それが、どうしても寂しかった。


 


昆布や魚が手に入れば、

出汁は取れる。


 


でも、海は遠いらしい。


 


「……うーん」


 


香辛料の種類は、驚くほど多い。


知らない香りも、たくさんある。


 


(ネットで調べられたら、

 私でも、もっと色々できるのに)


 


スマホを見てみる。


 


……圏外。


 


「ですよね」


 


役立たずなのは、分かってる。


 



 


それでも、この世界で一番驚いたのは――


 


包丁だった。


 


「……なにこれ」


 


切れ味が、異常にいい。


 


野菜を置いて、

少し力を入れるだけで、すっと入る。


 


肉も同じ。


抵抗が、ほとんどない。


 


「魔法……?」


 


女将さんに聞いてみたら、


 


「刃物には、簡単な付与がしてあるのよ」


 


さらっと言われた。


 


(うちの実家の包丁……)


 


思い出す。


 


お肉を切るとき、

鋸みたいに、ぎこぎこしてた。


 


(お母さん……

 あれは、もう……)


 


少しだけ、寂しくなった。


 



 


そんなある日。


 


「エミリアちゃん!」


 


女将さんが、やけに楽しそうな声で言った。


 


「今日はね、賄い、期待していいわよ!」


 


「え?」


 


「魔大牛が取れたらしくてね」


 


どん、と台の上に置かれたのは、

見事なもも肉。


 


「いいところ、買ってきたの」


 


「……魔大牛」


 


名前からして、強そうだ。


 


(絶対、美味しいやつ)


 


この世界に来て、もう一ヶ月。


 


体重計はないから分からないけど――


 


(多分、太った)


 


元々、痩せ気味だった。


 


たぶん、三、四キロくらい。


 


「……うん、絶対、増えてる」


 


女将さんが、服を何着か買ってくれた。


最初は、少し大きめだったはずなのに。


 


最近――


 


胸と、お尻のあたりが、きつい。


 


(結構、働いてるつもりなんだけどな……)


 


掃除もする。

料理の補助もする。

走り回ってる。


 


それでも、減らない。


 


「……魔大牛、恐るべし」


 


私はエプロンを締め直し、

大きな肉を見つめた。


 


(この世界の料理……)


 


(まだ、伸びしろ、あるよね)


 


心の中で、そう呟く。


 


いつか――


 


この世界の食材で、

私なりの「味」を作れたら。


 


そんなことを考えながら、

私は包丁を手に取った。


 


驚くほど、軽かった。


 


刃は、静かに光っていた。


 


――つづく。


とりあえず、5話程、投稿してみました。

ご意見ご感想。

こうしたらいいよ。とか、そんなのがあると嬉しいです。皆様と共に作れる。そんな物語にしていけたらと思います。

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