第38話 ダイエットは淑女の嗜み
「エミリア〜、エミリア〜」
女将の声が聞こえる。
どうやら私を呼んでいるようだ。
「どうしたんですか?」
「いい、エミリア!
淑女はね、ダイエットしないといけないの!」
(……いや、私はしなくていいと思う。
しないといけないのは女将じゃん)
「だからね! 聞いてるの?」
「はい……」
「これからは毎朝ジョギングをしましょう!」
(いやぁー、一人でやってよー……)
「わかったわね」
「はい……」
最近、巷では
“淑女としての身だしなみ” が流行しているらしい。
……でも、なぜダイエットなのか。
女将はやった方がいいけど。
なぜ私?
⸻
翌日、早朝。
二人して、疲労困憊。
「……本日は休業します」
ダメじゃんね。
⸻
そんな時だった。
魔法通信が届く。
アステリアからだ。
『ねぇ。最近ね、
巷では淑女としての嗜みが流行ってるのよ。
明日からジョギングしない?』
(ほんとやめて〜。
アステリアはしなくていいじゃん。私も)
⸻
翌日、早朝。
私はアステリアと走った。
……正確には、
時々、小刻みに地面交換を使いまくった。
もう、無詠唱だ。
遅れたら、
「シュッ」って感じで。
アステリアは、元気だった。
女将は――
本日も休業している。
しばらくアステリアとジョギングしたけど、
いつのまにか終わっていた。
……まぁ、そんなもんなのよ。
⸻
さて。
醤油。
お酢。
味醂。
日本酒。
そして、ついでに味噌。
ほぼ完成。
これで和食が作れる。
私はそれぞれを小瓶に詰め、
もちろん、アイテムボックスへ。
久しぶりに――
私が作ろう。
本日の料理は、
鯉の洗い(醤油付き)、それと鯉こく。
ほかは女将が作った。
評判は、良かった。
⸻
ドワーフのみなさんには、
お礼も兼ねて日本酒を振る舞った。
「おお!
これは飲んだことのない酒じゃの!」
「甘くて美味い!」
「まぁー、釣り針は任せてくれ!」
「さぁー、飲むぞー!」
⸻
その頃――
カイルは。
「……どこにいるんだよ……
蛾の幼虫は……」
途方に暮れていた。
その時だった。
森の中。
大きな蛾が、カイルの目前に現れた。
追いかけるカイル。
蛾は、大きな木の枝に止まる。
(葉の裏か……)
その木の葉の裏を見ると――
大量の幼虫と卵。
びっしりと、ついていた。
持ち帰り、
木の枝を定期的に与える。
幼虫は大きく成長し、
やがて分泌液を出すようになる。
「……これだ!」
そして、思った。
(俺は一体、
何をやっているのだろう)




