第34話 最下層の真実
一行は、ついに最下層へと辿り着いた。
――はずなのに。
そこは地下とは思えない場所だった。
草木が生い茂り、色とりどりの花が咲き、
まるで地上の楽園のような景色が広がっている。
陽の光。
爽やかな風。
少し先には、小さな一軒家がぽつんと建っていた。
「……魔物、いませんね」
「ええ。気配も感じないわ」
慎重に、その家の中へ入った瞬間だった。
「――あら?」
柔らかな声が響く。
「こんなところに珍しいわね。どなたかしら?」
現れたのは、20代くらいに見える女性だった。
「あの……私、エミリアといいます。
アイテムボックスがあるって噂で聞いて……」
女性は少し驚いたように目を見開き、そして微笑んだ。
「エミリアちゃんね。
あなた……私と同じ異世界人ね」
「え?」
「初めて会ったわ。
私は須藤朱美。
この世界ではミランダって名前よ」
⸻
彼女の話は、衝撃的だった。
三百年以上前にこの世界へ来たこと。
二十歳前後で肉体の成長が止まったこと。
空間魔法SSSを持ち、
アイテムボックス、ダンジョン生成、瞬間移動が可能なこと。
「世界の構造が変わりすぎるといけないから、
もうアイテムボックスは作っていないの」
そう言って、ミランダは私を見つめた。
「……でも、あなたには一つ、あげるわ」
「え!?」
「土魔法SSSでしょ?
それだけ力があるなら、持っていてもいい」
私は深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「ダンジョンはもう元に戻してあるから。
帰りは入り口まで、瞬間移動してあげる」
⸻
「でも……どうして、ここに?」
私がそう聞くと、ミランダは少しだけ視線を落とした。
「空間魔法で元の世界に戻れないか、ずっと研究してるの」
「食べ物とかは、瞬間移動で買いに行ってるけどね」
(……もしかして)
前に街で見かけた、
あの“異様に洗練された魔法使い”。
「ミランダさん。
魔法通信って、しても大丈夫ですか?」
「いいわよ。でも内緒ね」
彼女は指を立てて微笑む。
「私の存在が知られたら、貴族が大騒ぎするから。
このダンジョンのことは伝えてもいいわ。
絶対に、ここまで辿り着けないようにしておくから」
ちらりと私を見る。
「……あなた以外はね」
「地形変更、あれはずるいわ。ふふ」
「す、すみません……」
「それと」
ミランダは、真剣な顔で言った。
「前の世界の記憶、少しずつ薄れていくでしょ?」
「……はい」
「メモしなさい。
書き留めれば、忘れない」
「……わかりました」
「じゃあ、またね」
⸻
「指定グループ瞬間移動」
光が弾け、次の瞬間。
私たちは、ダンジョンの入り口に立っていた。
⸻
「アステリア……あの人、私より魔力量多いよね?」
「ええ。あなたの、たぶん二倍以上」
「私、緊張して何も喋れなかったわ……本当に凄い人ね」
「でもさ」
私は、少しだけ考えて言った。
「次から会いたい時、
地形変更を百階分やれば会いに行けるよね?」
「それはダメ!!」
「ダメだろ!!」
「怒らすな!!」
「絶対やめるんだ!!」
一斉に止められた。
……やっぱり、やめとこう。




