第33話 アイテムボックスが欲しいの
私はこの日、商人ギルドに来ていた。
「この前、伯爵が持ってたアイテムボックスが欲しいんですけど……
あれって、どんな物なんですか?」
支配人は、少し困ったように笑った。
「アイテムボックスですか。
あれはですね、昔――異世界から来た人物が、空間魔法で作ったと言われている代物です」
「へぇ」
「その人物が生涯で作った数は、三十個ほど。
当時から相当な高値で取引されていました」
「……つまり?」
「結論から言うと、入手はほぼ不可能です」
「えー……」
「現在確認されている保有数は、
王国が七個、帝国が六個、獣王国が三個。
残りは所在不明ですね」
「一個くらい、余ってないの?」
「噂では一つだけ――
深淵のダンジョン最下層にあると言われていますが……」
「ダンジョンかぁ……」
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「ねぇ、カイル〜。深淵のダンジョンに行かない?」
「はぁ!? 無理に決まってるだろ!
あそこは行方不明者が山ほど出てるんだぞ!」
「そうなの? わかったわ」
……そう言って、私は素直に引き下がった。
その足で、冒険者ギルドへ向かった。
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「ねぇ。深淵のダンジョンの最深部まで行ける人、いないかしら?」
受付嬢が目を見開く。
「え、エミリア様!?
だ、ダンジョンですか!?」
「そう。最下層にあるアイテムボックスが欲しくて」
(あとは……)
「第二王女と、あの女戦士にもお願いしてみようっと」
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翌日。
冒険者ギルドから連絡が来た。
「紅の旅団と、蒼穹の翼が参加を表明しました。
出発は明日になりますが、よろしいですか?」
「いいわ」
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【参加メンバー】
私、第二王女アステリア、女戦士ルナリア
紅の旅団(四名)
蒼穹の翼(五名)
計十一名。
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十階踏破。
二十階踏破。
順調だ。
「そろそろゴーレム出しとこうかな。
歩くの疲れたし、飛行部隊で楽しよ」
五十階踏破。
「この辺りから敵が強くなります。お気をつけて」
「じゃあ、先行部隊ね。
五十番代、行きなさい」
「わーわー!」
「偵察だー!」
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……戻ってこない。
「反応もない……?」
「ここから七十四階までは、紅が先行します」
紅の団長が言った。
「ここで前回は引き返しました。
足場のない、溶岩地帯です」
見渡す限り、赤く煮えた溶岩。
「飛行部隊、先行して」
「はい!」
「……いや、待って。
ここは私がやるわ」
地形変更。
溶岩が一気に冷え、黒い地面へと変わった。
「……大丈夫そうね。
みんな、急いで!」
七十五階踏破。
蒼穹の翼の活躍もあり、
八十階へ。
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「ここは一対一の間ね」
「任せて」
女戦士ルナリアが前へ出た。
九十階。
ボス部屋――巨大ゴーレム。
「わーわー!」
「合体する!」
「合体! 合体!」
巨大ゴーレム vs 巨大ゴーレム。
……結果は、引き分け。
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「ねぇ、アステリア。
ここから下に降りる階段、作ればいいんじゃない?」
「……え?」
「え?」
「えぇ!?」
地形変更。
地形変更。
こうして、
私たちは最下層へと到達したのだった。




