第32話 私!養殖場を作ります。
「ねぇ、カイル〜。ねぇったら〜」
「……」
「無視するなら、ここ岩盤浴にして放置するわよ!」
「わかった!わかったからやめろ!!
で、なんだよ今度は!」
「この前ね、宮廷料理で鯉が出たでしょ?」
「ああ……」
「私ね。あれ、養殖したいの」
「……は?」
「鯉、どこにいるの?」
カイルは深いため息をついた。
「あれは東の川の上流だ。
ただし庶民立ち入り禁止区域だぞ?」
「じゃあ問題ないわね」
「……お前なぁ」
⸻
「それでね。その川のそばに、
大きな穴を掘りたいの」
「ダメだ!!」
「ええ!? なんでよ!」
「どうせ地形変更だろ!
絶対ダメだ!」
「でも、養殖したら皆が食べられるじゃない!
私、ちゃんと作るから!」
「……皆が?」
「うん。上手くいけばね。
川の水を引いて、池に流して、
そのまま下流に戻すの。
もちろん鯉が逃げないようにネットも張るわ」
「……」
「……」
「……王女殿下経由で、王の許可を取れ。
それなら考える」
「やった!」
⸻
許可は、あっさり下りた。
「さぁ、やるわよ!」
地形変更。
――ドォン。
「大きな穴」のイメージ通り、
地面が抉れ、巨大な空間ができた。
「ゴーレム達、次はこっち!
下流へ向かって掘って!」
「わーわー!」
「終わったら、今度は上流よ!」
「わーわー!」
「そこまででいいわ。
それ以上は濁流になるから」
地形変更。
川の水が勢いよく流れ込み、
巨大な穴に溜まり、
排水側へと綺麗に循環し始めた。
直径百メートル。
深さ三十メートル。
「完成!」
⸻
翌日。
「……おい、エミリア」
「なに?カイル」
「この山はなんだ」
池の横に、
小山のように積まれた土。
「あ、それ?
池を作った時の余り土よ」
「……ダメだ」
「え?」
「雨が降れば川に流れる。
そのうち氾濫するぞ」
「……」
(どうするのよ)
私は考えた。
「……一つずつやればいいのよ」
土を固める。
岩にする。
平たい岩にして、
池の周りに敷き詰める。
「よし……」
地形変更。
地形変更。
地形変更。
「できた!」
池の周囲は、
綺麗な石畳に変わっていた。
「……ちょっとおしゃれじゃない?」
「……もう何も言わん」
⸻
翌日。
「鯉が届きましたー!」
「え!? もう!?」
「アイテムボックスで運びましたので!」
「なにそれ便利!!」
「伯爵すごいですー!」
「私も欲しいです!」
「……そう簡単には手に入らんがな」
大量の鯉が、
新しい池へと放たれた。
水は澄み、
流れも安定している。
「よし……」
私は池を見つめて、にっこり笑った。
「さぁ、増やすわよ〜!」
こうして、
エミリアの養殖場は完成したのだった。




