第29話 いざ王宮へ。大浴場入ります。
この日は、公爵家のご令嬢たちと大いに盛り上がった。
さすが一夫多妻制。子どもの数がとにかく多い。
(公爵家でこれなら、王様ってどうなってるの……?)
私の日本の話で場はさらに盛り上がった。
けれど、少しずつ――記憶が薄れている気がする。
思い出せないことが、増えている。
寝所は、まるでお姫様みたいな大きなベッド。
メイドたちが着替えまで手伝ってくれるのだけど……正直、恥ずかしい。
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翌日。
朝食を終えた私たちは王宮へ向かうことになった。
同行者は、副騎士団長のカイルと騎士数名。
それに公爵とご令嬢たち、公爵家直属の騎士団が二十名。
豪華な馬車での移動だ。
(地面交換のほうが楽なんだけどなぁ……)
公爵家から王宮までは、馬車で二十分ほど。
王宮に到着すると、玉座には国王の姿があった。
その隣には、美しい奥方様――
……一人、二人、三人……?
「よう参られた。
予はイスペリア王国第十五代国王、
ハインリッヒ・フォン・シュヴァルツェンベルクである」
エミリア
(名前、長っ……ハインちゃんで良くない?)
「えっと……ハイン様で」
「うむ。それでよい」
私は自然に笑顔になった。
「ここにいらっしゃる貴族の方々、皆さん素敵ですね。
男性はかっこいいし、女性の方はとても綺麗で」
――魅惑の笑顔、発動。
先ほどまで「不敬だ!」とざわついていた空気が、一気に和らぐ。
本人は、まったく自覚がない。
「さすがエミリア様だ! 大地の女神様だ!」
「ぜひ我が屋敷にもお泊まりを!」
ざわざわ……
「静粛に!」
丞相の声が響く。
国王ハインは満足そうにうなずいた。
「今宵は王宮に泊まりなさい。
最高の宮廷料理と、大浴場でもてなそう!」
「ありがとうございます、ハイン様!」
カイル
(王だ……王と呼べ……胃が痛い……)
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「ねぇ、カイル。どうしたの? 顔、真っ青だけど」
(お前のせいだ。普通なら俺も打首だ……)
「……いや、なんでもない」
昼は軽めの食事。
その後は入浴、そして夜は晩餐会。
「……で、誰が体を洗うの?」
「……専用のメイドたちだ」
「え?」
「俺も見たことはない」
⸻
入浴。
「じっとしてください、エミリア様!」
「ダメです、動かないでください!」
私は五人の入浴メイドに囲まれていた。
「もう良いです!」
「まだです!」
――やっと解放。
「あぁ……やっぱりお風呂って良いわね……」
私は、湯気の中でほっと息をついたのだった。




