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第28話 初めてのドレスと貴族

カイルが、やたらと話しかけてくる。


 


「なぁエミリア。あんなゴブリンなんて雑魚だぞ」


 


「エミリアなら、土魔法で一瞬だ」


 


「……」


 


「そもそも名前が変なのよ」


 


私は腕を組んで言った。


 


「ゴブ、って言うでしょ?

 その間に“キ”を入れてみて?」


 


 


「ゴキブリン」


 


 


「……」


 


 


「ゴキブリなの!」


 


 


「怖い怖い怖い……!」


 


 


カイルは一瞬考えてから首を傾げた。


 


「なんだよ、そのゴキブリって。魔族か?」


 


 


「違うわよ!」


 


「このくらいの大きさで、黒くて、カサカサ動いて……

 たまに飛ぶの!」


 


 


「そんなの、踏めばいいんじゃないか?」


 


 


「はぁ!?」


 


「無理に決まってるでしょ!

 汚いじゃない!」


 


 


「俺、クリーンの魔法使えるぞ」


 


 


「……何それ?」


 


 


「どんなに汚れてても、一瞬で綺麗になる魔法だ」


 


「まぁ、魔力少ないから多用はできないけどな」


 


 


「今度!私にもやって!」


 


 


「……わかったよ」


 


カイルは苦笑した。


 


「元気になったな」


 


 



 


「それとな、これ」


 


カイルは、布に包まれた細長い物を差し出した。


 


 


「開けてみろ。多分、気に入る」


 


 


包みをほどく。


 


 


「……わぁ」


 


 


杖だった。


 


明らかに高そうな、装飾の施されたもの。


 


 


「これ……いいの?」


 


 


「ああ」


 


 


私は、思わずカイルに抱きついた。


 


 


「ありがとう!」


 


 


「ちょ、エミリア!」


 


「みんな見てるから……!」


 


 


「あ……ごめんなさい」


 


 


少し、気まずい沈黙。


 


 


「……それとだな」


 


 


カイルは咳払いをして続けた。


 


 


「国王陛下から招待状が来てる」


 


「お前宛だ」


 


 


「えっ……?」


 


 


「第二王女が、会いたいそうだ」


 


 


「えぇ……」


 


 


「でも、私マナーとか全然わからないよ?」


 


 


「知ってる」


 


 


「それはすでに報告してある」


 


 


「だから気にするな」


 


 


「明日にでも王都に行こう」


 


「ドレスも作らないとな」


 


 


「……うん」


 


 



 


翌日。


 


 


「カイル〜、これどう?」


 


 


「おお……似合ってる」


 


 


「じゃあ、これは?」


 


 


「それもいいな」


 


 


「どっちが良いと思う?」


 


 


……。


 


 


このやり取りが、二時間以上続いた。


 


 


(……疲れた)


 


 


その日は、王都の公爵家の屋敷に泊まることになった。


 


 


エミリアには、十人ほどのメイドがついた。


 


 


別室では、侯爵令嬢たちと何やら盛り上がっているらしい。


 


 


(……何を話してるんだ?)


 


 


遠くから聞こえる笑い声を聞きながら、

カイルはため息をついた。


 


 


貴族の世界は――

やっぱり、苦手だ。


 


今度王様に会うんだけど。ゴーレムとか披露した方が良いのかしら。でも、嫌な予感しかしないし、やめとこう。何話せば良いのしら。挨拶のマナーは覚えたわ。

         エミリア心の声

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