第26話 大苦戦、醤油を醸造する
「さぁー、作るわよー!」
大豆を茹でて〜♪
小麦を炒って〜♪
麹をつくって〜♪
塩水を混ぜてぇ〜♪
「……一年寝かせりゃ、出来上がり〜」
…………。
「――え?」
「一年?」
嘘でしょ。
一年って、今から?
今日から?
明日じゃなくて?
「食べられないじゃん!!」
私は勢いよく振り返った。
「カイル〜!!」
「な、なんだ」
「あのね。この樽の中にあるものだけ、一年分、時間を進めたいんだけど」
「そんな魔法、ある?」
「……聞いたことないな」
カイルは即答した。
「たぶん、ない」
「何よそれ!ちょっとくらい探してよ!」
こうしてカイルは、
魔力が切れるまで、
あちこちに魔法通信を飛ばしたのだった。
⸻
結論。
醤油は――一年待ち。
「仕方ないかぁ……」
私は、がっくり肩を落とした。
泣きたい。
「……魔力を加えたら、どうかしら」
魔法はイメージ。
「ゆっくり……ゆっくり……」
「時間が進むイメージ……」
……何も起きない。
もう一度。
……ダメ。
三回目。
……やっぱりダメ。
「ダメなものは、ダメなのね……」
ちなみに、この仕込み作業をしていたのは、
すべて騎士たちだった。
⸻
宿屋にて。
「この焼き魚定食、美味しい〜」
翌日。
「大漁だぁー!!」
漁師たちの大声が聞こえたので、
私は港へ行ってみた。
そこにあったのは、
カツオのような魚の山。
「ここらじゃ、ガーリックステーキにするんだ」
そう教えられた。
「……藁焼きにしたい」
私は、ゴーレムに頼んでファイアを出してもらい、
それっぽく炙ってみた。
塩をふって、一口。
「……良いじゃん!」
私は、漁師たちに作り方を教えてあげた。
こうして、
魚の仕入れルートは完成した。
「……でも、醤油はまだ先ね」
一年後を思い浮かべながら、
私はため息をついたのだった。




