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第22話  帝国の陰謀――狙いは私?

 帝国・皇城。


 重厚な玉座の間に、低い声が響いた。


 


「王国に、あり得ぬ魔力反応があると報告を受けておる」


 


皇帝が顎に手を当て、ゆっくりと問う。


 


「魔導兵器か? それとも、新たな禁呪か?」


 


丞相が一歩進み、頭を下げた。


 


「いえ。――人です」


 


「……何?」


 


「調べさせましたところ、

 エミリアと名乗る一人の女のようです」


 


皇帝の目が、細くなる。


 


「人、だと……」


 


「ならば話は早い」


 


「勧誘は可能か?」


 


丞相は一瞬、言葉を選び――首を振った。


 


「おそらく不可能かと。

 王国側も、すでに諦めている様子です」


 


「なぜじゃ?」


 


皇帝の声に苛立ちが滲む。


 


「爵位、金、地位……

 何なら、予の息子を差し出してもよい」


 


「なぜ王国は、あの力を放置しておる?」


 


そのとき、七賢老の一人が進み出た。


 


「陛下。

 そのエミリアなる者――

 物欲も、出世欲も、権力欲もありません」


 


「ただ、自由に生きたい。

 その思想の持ち主ゆえ」


 


皇帝は、しばし沈黙した。


 


「……ならば」


 


低く、笑う。


 


「攫えばよいではないか」


 


「その力、どうしても手に入れたい」


 


丞相が顔を曇らせる。


 


「しかし陛下。

 あの娘には、膨大な魔力、魅惑、ゴーレム……

 それ以外にも、未知の能力がある可能性が――」


 


皇帝は、言葉を遮った。


 


「漆黒の団を使え」


 


「……!」


 


「わしの“切り札”じゃ」


 


丞相は深く頭を下げた。


 


「御意」


 


 



 


王国。


 


「ねぇ、1号」


 


「あなたって、ゴーレムのリーダーなの?」


 


 


「いえ〜」

「リーダー?」

「僕は〜1号〜」

「いちご美味しい」


 


「……わかった」


 


私は、ため息をついた。


 


「じゃあ、この中で喋れる子は、

 43号と44号以外にいる?」


 


 


――すっ。


 


一体のゴーレムが、静かに手を挙げた。


 


「100号……?」


 


「喋れるの?」


 


「はい。

 私は無口ですが、喋れます」


 


「じゃあ、どうしたら皆が喋れるようになるの?」


 


100号は、少し考えてから答えた。


 


「エミリア様が、

 我々をレベルアップさせなければ不可能です」


 


「……やっぱり魔物倒すのよね」


 


「うぅ……」


 


「気持ち悪いし……無理かも……」


 


私は、ふと思い出した。


 


「ねぇ、知ってる?」


 


「私が前にいた世界にはね、

 黒くて、カサカサ動く虫がいたの」


 


「しかも、たまに飛ぶの」


 


「……無理」


 


100号は、少し間を置いて言った。


 


「このような生物でしょうか?」


 


 


――ズズズ。


 


土が盛り上がり、

“それ”が再現された。


 


 


「ぎゃああああ!!」


 


「殺しなさい!! 今すぐ!!」


 


 


「申し訳ありません。

 先ほどのお話を、土で再現しました」


 


 


「もうやめて……」


 


私は、泣いた。


 


 



 


その頃――


 


王国内の、とある宿の向かい。


 


黒装束の男たちが、静かに集っていた。


 


「……あの宿だな」


 


「は」


 


「よし。今夜は動かん」


 


「まずは様子見だ」


 


「向かいの宿を押さえろ。

 交代で見張る」


 


 


――漆黒の団、十名。


 


彼らは、すでに王国内へ侵入していた。


 


その視線の先にいるのが、

何も知らずに暮らす一人の少女だとは――

まだ、誰も気づいていなかった。


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