第11話 エミリア、街の外に出ますぅ!
肉屋で買い物をしていると、店主のおじさんが声をかけてきた。
「エミリアちゃん、知ってるかい?
この魔牛猪は、かなりのレアものなんだ」
「へぇ、そうなんですか?」
「俺も実際にやったことはないんだけどな。
西の森に生えてる“サラス”って香草で蒸し焼きにすると、
とんでもなく美味いらしいぜ」
サラス――四葉の香草。
見ればすぐ分かるらしい。
「ありがとうございます」
私はそう言うと、宿屋へ戻り、荷物を置いた。
(……これは、行くしかないよね)
◆ ◆ ◆
西はどっちだろう。
南と北は、なんとなく分かる。
太陽の位置で判断できるから。
(でも西って……)
そういえば昔、お母さんが言ってた。
――太陽は東から昇って、西に沈む。
「……今、真上じゃん」
沈む方角が分からない。
でも、街の外に森があるのは一方向だけだった。
「……もう、ここでいいや」
私はその森へ向かった。
◆ ◆ ◆
【カイル視点】
「よし、エミリア様は――東に向かった!」
「ベッセル!先回りして、あの森だ!」
「ガゼル!俺と来い!」
「あの森は魔物が出る。
絶対に、守るぞ!」
「はっ!」
◆ ◆ ◆
「西の森〜♪
ランラララン〜♪」
完全に気分は遠足だった。
森の入口に立つと、空気が少しひんやりしている。
「……なんか、冒険っぽい」
私は、両手を広げた。
「ゴーレム召喚!」
地面がもぞもぞと動き、
小さなゴーレムたちが次々と顔を出す。
「みんな、久しぶり〜!」
「わーわー!」
「エミリア〜!」
「すきー!」
相変わらず元気そうだ。
「今日はね、四葉の香草を探してほしいの」
「わーわー!」
ゴーレムたちは、楽しそうに森の中へ散っていった。
私はその背中を見送りながら、少しだけ胸が高鳴るのを感じていた。
(……街の外、初めてかも)
それが、
この先の騒動の始まりだとは――
この時の私は、まだ知らなかった。




