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沈まない日々

掲載日:2025/12/09

 例えば月曜日はフランスのコーヒーを入れる。別にフランスがコーヒーの有名な産地かどうかとかは関係ない。何となくオシャレな、それでいて少し面倒くさそうなものを用意したい。


 火曜もまた知らない土地のオシャレな食べ物があるといい。ちょっぴり口に合わないくらいが刺激にはちょうどいいというものだ。


 水曜は母の手料理が食べたい。できるだけ昔によく出た、何か思い出せるような味で。どうせ思い出した分だけ悲しくなるんだろうな。


 木曜は君と外食に出かけたい。悲しくなった分だけ、心の空き場を埋めてもらいたい。君がお喋りであればあるだけ楽しいだろうね。けれど、君は忙しいだろうから、結局家で一人パスタを啜る。


 金曜は発泡酒を開けたい。もう慣れた苦みに大人になったなんて耽りながら酔っていく。あんまり食べ過ぎると酔っぱらえないから、しょっぱいスナックなんかがいい。ポテトチップスを選ぶところに何だかまだ幼稚さを感じる。


 土曜こそ君と外食に出かけたい。何回目かわからない話で、何回目かわからない大笑いをして、何回目かわからない可愛い顔を見たい。時を増すごとに皺の増えた君を見て、それでもかわいいんだね、なんてささやきたい。


 日曜は君とおんなじ家で自炊したちょっぴりのごはんで晩酌したい。また明日から仕事だ、なんて嘆く君に、またフランスのコーヒーを開けよう、なんて言って怒られたい。そういうことじゃないよなんて。



 別に掃除が趣味じゃない。けれど君との場所はできるだけ清潔で、汚すにしてもモードのあるようにしたい。きっと思い出してしまうから、どうせなら映画のような雰囲気でありたい。洗い物はすぐに済ませてしまって、できるだけすっきりいたい。

 特に二人でやりたいこともない。でもできるだけ君が飽きないように、ちょっと変わったものを帰り道に探したい。ただ君を見つめているだけでも僕は充分だけれど、君は退屈に耐えられないんだろうな。


 きざな言葉は好きじゃない。どこか奥底に、諦観を見出してしまうから。言葉が完璧であればあるほど、あらを探してしまうから。だけれど君のは心地いい。全部包み込んでしまえるほどの温かさが愛しい。


 溶けてゆくのなら二人で、コーヒーカップに沈まないアイスクリームの様に、二人の沈まない日々を、

 

 どうか苦く儚い毎日を甘く、くどく変えてしまいたい。

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