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第9話 B級グルメの世界 その2

 大勢の人々が屯する中、瞬はうろうろと屋台を見て回っていた。



「こんな中からトップ3を当てるって……不可能じゃないか?」



 並んでいる屋台は200ほど。焼きそばなどの定番料理から、城田が選んだ紫のグリーンカレーなど変わり種まで揃っている。


 その中でトップ3を当てるというのは、普段あまり食に興味の無い瞬にとっては難しいことだろう。



「でも当てないと脱出できないからなあ。なんとかして正解を見つけ出さないと。冷静に考えろ俺!結局万人受けの料理がウケるはずだから……」



 瞬の足は、目玉焼きが乗った焼きそばの屋台へ向いた。



「ちょーっと待ったー!」



「おお!?」



 そんな瞬を、後ろから大声で呼び止める者がいた。お察しの通り、真美だ。



「瞬くん、ここで焼きそばなんて選んだらエンタメ的に面白くないよ!」



「こらこらエンタメとか言わない!メタ発言禁止ですよ!」



「ここはさ、やっぱり見た目にも面白いものじゃないとインパクトが無いよね。だから瞬くんが選ぶのは、これだー!」



 真美が指差したのは、ネズミが丸々一匹入ったラーメンの屋台だった。

 こってりと黄金色に輝くスープから、生々しいピンク色の尻尾が顔を覗かせる。



「いや食えねえよ!?ネズミの形が分かりすぎて怖いわ!!」



「えーいいじゃん。魔女っぽくて」



「どっちかって言うと魔女はあんただろ!!いやそうだとしても使い魔であろうネズミを材料にすんなよ!!」



「中華そばならぬ、チュウが(そば)だね!」



「やかましいわ!!」



 嫌がる瞬を横目に、真美は迷いなくネズミラーメンを買ってきた。



「はい瞬くん!君の選択はこれだよ!」



「まじですか……!?いや絶対食べたくないんですけども!?」



「いいからいいから!さ、城田さんのとこ戻って順位聞こ?」



「本気で嫌なんですけど……。先輩も食べるの手伝ってくださいね?」



 涙目の瞬とるんるんの真美は、連れ立って城田が待つテーブルに戻った。



「遅かったではないか。お前たちが選んでいる間に、ジャングルの世界では虎がスマートフォンに進化したぞ」



「劇的な進化!!無機物になってんじゃねえか!!」



「Webサイトにアクセスしたらトラッキングされるんだね。トラだけに」



「やかましいわさっきから!!」



「して、お前たちは何を選んで来たのだ?」



 城田に聞かれ、瞬は恐る恐るネズミラーメンを見せる。


 それを見た城田は、何故か目を輝かせた。



「おお!これは伝説の鼠拉麺ではないか!これはいいチョイスだぞ。必ずランキングに入っていることであろう」



「お前のそのちょくちょく漢字で言うやつ何なの?ボケが細かいから気づきにくいわ!」



「これは絶品だぞ。早く食してみるが良い」



「はあー……。やっぱ食べなきゃダメ?」



「そりゃそうだよ瞬くん!さ、一気に飲み干しちゃって!」



「一気には遠慮しときますけど……。じゃ、いただきますよ」



 ネズミが一匹浮かんでいるラーメンを生理的に受け付けない瞬は、目をつぶり、思い切って丼に口を付けた。



「さあ瞬よ、どうだ?」



「う、美味い……!?見た目はあれだけど、めちゃくちゃ美味いぞ!?」



「やっぱりね!私の目に狂いは無かった!」



「ええ嘘だろ……。信じられない……!」



 感動した瞬は、そのまま豪快にラーメンを啜り始めた。

 そして5分ほどで完食。丸くなったお腹をさすり、満足げな様子だ。



「意外ですけど美味かったです!これはトップ3に入っててもおかしくないな!さあ地の文!順位を教えてくれ!」



 ネズミラーメンは、第……。


 どこからか聞こえてくるナレーション(地の文)により、緊張が高まる。

 だが瞬はどこか自信ありげで、その目はトップ3入りを確信しているようだった。



「さあ何位だ?1位か?2位か?」



「私が選んだんだから、間違い無い!」



「これ、我が選んだことにできないか?」



「セコい神だなおい!!」



 183位ー!!!



「……え?」



「……嘘でしょ!?」



「やっぱり我が選んだものの方が順位が高かったな。センスの無いやつらだ」



「お前はさっきの発言を思い出せ!?」



 瞬と真美は相当ショックを受けたようで、呆然と立ち尽くしている。


 しかし冷静に考えてみて欲しい。いくら味が良かろうが、ネズミが丸々一匹入っているラーメンを誰が食べたいと思うだろうか。


 結局、料理の味は見た目にも寄るのである。



「なんだそれ!無駄に期待させやがって!」



「はあ……。もう仕方ない!奥の手を使うよ!」



「奥の手?」



 真美はどこからか杖を取り出し、呪文を唱え始めた。



「熱く燃える火の精霊よ、我が手にその炎を宿せ!ファイアボール!」



 真美が杖を突き出すと、ボンッと音がして大きな皿が一枚出現した。



「うんファイアボールまで言って違う魔法なことある!?」



「見事な魔法だ。流石、魔術を研究しているだけある。今度我の末端冷え性も魔法で治せぬか?」



「お前神のクセに末端冷え性なのかよ!!」



 大騒ぎする城田と瞬に、真美は皿の説明を始めた。



「これは白の世界で私が家を出した時に、完備されてた大皿!願った食べものが何でも出てくるよ!」



「ちょっと待ってください先輩、てことは……?」



「その通り!大皿よ!B級グルメトップ3を出して!」



 真美が叫ぶと、大皿の上には金色に輝く焼きそば、銀色に染まったお好み焼き、銅色に鈍く光るたこ焼きが出現した。



「よし!これを食べればクリアだよ!」



「城田、これは反則じゃないのか?」



「うむ。魔法を使う想定はされていないから、ルール違反ではない。真美の機転を褒めようではないか」



「なんかイカサマで勝った気分だ……。それより金銀銅の粉もんは食いたくねえな!?」



 こうして三人は、無事B級グルメの世界を脱出することに成功したのだった。



「ふう〜。一時はどうなるかと思ったよ!」



「城田、次はどんな世界だ?」



「次はレーシングゲームの世界だ。お前たちには良い車を与えてやろう」



「おお!なんか楽しそうだな!」



 この時瞬は知らなかった。レーシングゲームの世界で、瞬の乗り物は竹馬になるということを。

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