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第1話 白の世界

 二人が白の世界に迷い込んだのは、魔王が起こした空間の歪みによるものだった!



「覚悟しろ魔王!お前を倒して、俺たちは元の世界に戻るんだ!」



「人間風情が笑わせる!俺様が捻り潰してやろう!」



「この旅で出会ったたくさんの仲間たち……あいつらの思いもぶつけてやる!!」



「かかって来るがいい!!だが、ウルトラけんけんぱで8億年勝ち続けて来たこの魔王に勝てると思うな!!」



「行くぜ!うおおおおおお!!」



 果たして彼らは元の世界に戻ることができるのか!?

 最終話「決戦と帰還」デュエルスタンバイ!



「おいおいおい待て待て待て!」



 え?何?



「何?じゃねえわ!何初っ端から最終話の予告かましてくれてんだ!まだ始まってもないのに終わらせんな!」



 ええー……。最初からやった方がいい?



「そりゃそうだろ!ていうかなんだウルトラけんけんぱって!!ルールが一つも推測できねえわ!!」



 そんなこと言われてもウルトラけんけんぱはウルトラけんけんぱだから。



「開き直るな!!ていうか勝手にデュエルもスタンバイすんなよ!!カード一枚も持ってねえよ!?」



 いやでも、デュエリストの資格はカードじゃなくて心じゃないですか。あと無いならコンビニで買ってくるとか。



「どの世界線で生きりゃいいんだ俺は!?なんでもいいけど早く本編を始めろ!!」



 はいはい、そこまで言うなら最初からやりますよ……。



「仕方なくやんなよ!?ちゃんとやれよ!?」



 分かってるようるさいな。はい、始まり始まりー。



 ここは何も無い、真っ白な世界。そんな何も無いはずの世界に、一組の男女が入り込んでいた。



「どうするんですか真美先輩!こんな何も無いとこに来ちゃって……見渡しても地平線まで真っ白じゃないですか!」



 彼の名前は瀬名川瞬(せながわしゅん)。高校2年生だ。



「ごめんってば!!私もこんなことになるなんて思ってなかったんだもん!」



 彼女は野崎真美(のざきまみ)。瞬の一つ先輩だ。



「とにかく、帰る為の呪文を早く思い出してください!先輩がノリで転移魔法なんて試すからこんなことに……」



「そうだね!早く帰らないと、相撲中継が始まっちゃうもんね!」

 


「相撲はどうでもいいわ!優先順位どうなってんだよ!」



 二人がこの真っ白な世界、通称「白の世界」に迷い込んで来たのは、真美が転移魔法を使った為。


 彼女はオカルトマニアで、魔法に興味を持っていた。試しに瞬を巻き込んで転移魔法を使ってみたところ、ちゃんと魔法が発動した。……のは良いが、全く知らない世界に飛んで来てしまったということである。



「それにしても、まさか転移魔法が発動するとはねえ。私もビックリだよ!」


 

「いや俺もまさか発動するなんて思ってなかったんで、舐めてたのは謝ります。でもなんでこんな何も無いところに出ちゃったんですか!?ていうかここどこですか!?」



「うーん、何も無いから多分私たちがいた世界じゃないよね。異世界ってやつ?」



「簡単に言ってくれるな!ほんとどうするんですか!」



 真美のお気楽な発言に、呆れ返る瞬。彼は今朝突然真美に呼び出された上こんなことに巻き込まれた為、かなり機嫌が悪いのだ。



「それがね瞬くん、私名案を思い付いちゃったの!」



「どうせ開き直ってここで暮らすとかそんなんでしょ?嫌ですよ絶対」



「わお、瞬くん鋭い!正明叔父さんみたい!」



「誰だよ!!間違ってもその人に俺のこと紹介しないでくださいね!?」



 楽観的な真美とそれにツッコミを入れる瞬。そんな二人を、上から見ている存在がいた。


 この世界には、神がいる。ただこの神、かなりものぐさである。


 なんか知らんのがいるな。まあとりあえずめんどくさいから放っておくか。そう決めた神は、高みの見物を決め込んだ。



「コンナトコロニオデンヤガ!サトウセンム、ヨッテイコウカ!」



 真美が呪文を唱えると、何も無かった白の世界に突如一軒家が出現した。



「おおすげえけど呪文が意味不明だな!?」



「これでとりあえず住める環境はできたね。この呪文で出した家には、願った食べ物がなんでも出てくる大皿が完備されてるから安心してね!」



「便利過ぎません!?なんだその青いネコ型ロボットが出しそうな道具!」



 こうして二人は、白の世界での生活を始めたのだった。



 そして1ヶ月が過ぎ、二人には諦めムードが漂っていた。


 真美は思い付く呪文を全て試したものの、公衆トイレや大宮殿など関係無いものばかりが出現し、白の世界は最早都市と化していた。



「あー……。もうここから帰れないんですかね、俺たち」



「そうなのかなあ。相撲も見られてないし、辛いよね……」



「うんだから相撲はどうでもいいんですよ!相撲好きですね!?」



「そりゃそうだよ!私スモリストだよ?相撲を摂取しないと力尽きちゃうから!」



「相撲を炭水化物みたいに言うな!」



 二人が言い争っていると、突然辺りが白い光に包まれた。



「え?何が起こってるの?」



「まさか、このまま帰れたりとか……?」



 困惑する二人の脳内に、突然男の声が響く。その声はどこか神々しく、それでいて少しイラッとする声だった。



『お前たち、いつまでこの世界にいるつもりだ?』



「な……!脳内に直接!?誰だ!!」



【我はこの白の世界を支配する者、城田保和糸(しろたほわいと)だ】



「白田じゃねえのかよ!!」



「支配する者……?神様ってこと?」



《その認識で間違いない》



「カッコ統一しろよ!!」



 突然現れた城田は、二人に語りかける。今まで二人を放置していた城田に、一体何があったのか。

 実は城田は、白の世界に瞬と真美という異物がいることが、少し鬱陶しくなってきていた。

 そこで城田は、二人を元の世界に送り届けようと二人に接触したのだ。



「ていうか、神様いるなら早く出てきてよ!私たち、色々呪文試したんだからね!?」



『知っている。我は、お前たちが白の世界に来た時からお前たちのことを見ていた。だが我は、自分から人間に接触することができない。我の気が向いた時を除いて』



「面倒だっただけじゃねえか!!ていうか良いのかよ、俺たちこの世界都市化しちゃったぜ?」



『あんな外れに都市ができようが特に支障はない。我の支配する世界の中でも、かなり端の方であるからな』



「興味持てよ!さとり世代か!!」



 あまりの城田の大ボケ振りに、真美に対してよりも更に強いツッコミを入れる瞬。



「それで、接触してきてくれたってことは、元の世界に帰してくれるの?」



『そのつもりだ。我が送り届けよう。だが、お前たちの世界に行くには、数多の異世界を巡る必要がある。覚悟はいいか?』



 「数多の異世界」という言葉に、ゴクリと唾を飲み込む二人。だが、1ヶ月も何も無い世界で過ごしてきた彼らには、他に選択肢はなかった。



「もちろん、世界を巡るよ!それが私たち、スモリストの決断だよ!」



「先輩、俺を一緒にしないでください」



『それがお前たち、スモリストの決断だな?』



「スモリストではねえわ!!」



『いいだろう、では我もお前たちに同行する為、姿を現そう』



 城田がそういうと空から白い光がスポットライトのように降り注ぎ、上裸に真っ白なコートを着た、肌も髪も真っ白な男が現れた。



「へ、変態だあー!!」



「さあ、最初の世界はじゃんけんの世界だぞ。準備はいいな?」



 こうして、彼らの世界を巡る旅が始まったのだった。

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― 新着の感想 ―
キノの旅みたいな感じになるんですかね?オムニバス異世界者、実は好きです。
ウルトラけんけんぱ、懐かしい… あれは確か、50億年前くらいに流行ったんじゃなかったっけ? 今はぼっち鬼ごっこが主流だからね… かれこれ30億年くらい負けなしだよ、フフフ。 何せ、ぼっちだからね( •…
ウルトラけんけんぱがツボった(笑)
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