理想の死に方
「―理想の死に方、ねぇ」
「そう、理想の死に方。
どんなのが理想だと思うよ、君は」
俺の右側に腰をおろしていた「奴」が唐突に尋ねる。
「んー、そりゃ、家族に看取られて老衰、っつーのがお決まりのシアワセな死に方じゃねーの?」
「違う、違うよ。
まぁ殆どのニンゲンはそれを望んでるのかもしれないけどさ。
ぼくはそうは思わないね」
「あぁん?じゃあどんなのが理想だってんだよ」
「聞きたい?」
「奴」は初めて俺の目を見て、にやりと悪っぽく微笑んだ。
「あーはいはい、聞きたい聞きたい」
「なんだよその適当な感じ
まぁいいや、しょうがないから聞かせてやろう
一番シアワセで、理想的な死に方はさ―
『愛するモノに殺される』事じゃないのかって、思うんだよね」
「ほーぉ、それは何故ゆえ?」
常人では微塵も考えないようなことをさらっと言ってのける「奴」。
まぁ、同意する部分もあるけれど。
「まぁ、とりあえずニンゲン、あと機械とかそういうのだったとしても、それを心から愛しているとしよう。
本当にこれとなら世界を敵にまわしても怖くない、くらいにね。
他の奴はどうか知らないけれど、ぼくは死に際の、年老いて、寝たきりの醜い自分を愛しい人に見られたいと思わないのさ。
これは死に際の老人を侮辱しているわけじゃない、自分のことだから、誤解するなよ」
そんなことを真顔で言う。
変なところ、臆病っていうか、なんなのか・・・
「あぁ、わかってる」
「僕はそんな醜い姿を晒したくない―
だからどうせなら若くて綺麗なうちに、末期癌とかに罹ったりして抗癌剤治療なんてうけずに、あとはいっそ事故であっさりとか、そういうのもいいなぁと思うけど・・・」
「けど?」
「まぁこれから安楽死が合法になるなら病気に罹って殺してもらうのもいいだろう、でも、やっぱりさぁ―
首を絞めるとか、心臓を一突き、とか
そういう風に、殺されたいんだよねぇ」
「奴」―
俺の愛しい愛しいひとは、そう言ってにっこり笑った。
恍惚としているような瞳。
きっとこいつは本音で言っているのだろう。
俺に、愛しい愛しい俺に、自分を殺してくれと。
「ハッ、嫌だね―」
そんなヤンデレエンド、辿り着くものか。
「俺は、絶対お前のこと殺さねぇからな―
最期まで付きまとって、お前が嫌がる顔見て、笑ってやんよ」
「意地悪だなぁ・・・
っつーか、わたし、お前のことなんか」
「「愛してないしっ」」
「ていうかそれ、プロポーズ?」
「さぁな。」
end




