父の葬儀
さおりの手伝いにより、葬儀の準備は順調に進められた。やらなくてはならないことがあまりにも多すぎて神無は何度も途方に暮れる。
父が亡くなって二日が経ち、腫れていた目はだんだんと元通りになった。しかし、ふとした瞬間に涙がこぼれる時がある。それでも葬儀の打ち合わせを終えることができた。父の仕事関係の人や神無の学校に訃報連絡もした。
だが、神無は父の両親を知らない。母の両親も知らない。親族への連絡手段がない。よって親族は誰一人として参列しないだろう。娘である神無のみが家族なのだ。
孤独だなと神無は思った。
父が亡くなって三日目に通夜をして四日目に火葬、そして収骨。父が棺に入れられてエレベーターのようなところへ入っていった時、思わず泣き崩れた。父の体を見送ったあとは長い長い時間を人が少ない控え室で過ごした。神無の知り合いは少なくて、またも孤独を感じた。さおりはそんな神無のそばにずっといてくれた。
火葬が終わったので、と葬儀屋の人に呼ばれて向かった部屋はとても暑かった。部屋全体の空気がむわっとしている。息がしにくい。そして燃えたあとの匂いがやはり凄まじかった。匂いから逃れるようにすぐにこの部屋から退出したい衝動に駆られた。
しかし部屋の中央にある大きな金属の板の上にあったものを見て、退出したい気持ちは途端に消えてなくなった。
骨。真っ白い。とても細い。金属の板の上は冷たそうだ。でも、少しでもその骨に近づこうとすると燃えるように熱い。
「......あ、......あぁ......。」
お父さん。お父さんだ......。
見送ったあと、たった数時間でここまで痩せこけるものなのだろうか。長年痩せたい痩せたいと言っていた父だが、決して痩せることなどなかった父がここまで痩せるのか。気にしていた内臓脂肪も今は何にもないじゃないか。
「神無。ほら、お父さんの骨、拾ってあげて」
さおりに声をかけられ、ぼーっとしていた神無は葬儀屋の女性に渡された長い箸で父の足の骨を四角い箱に入れ始めた。
四角い箱に骨の半分くらいを入れ終えたところで入りきらなくなってしまった。どうするのだろうと思っていると、先程の葬儀屋の女性に長めの木の棒を渡された。
え、......これで、骨を、砕くの......?すり、潰すの......?
動揺でいっぱいの神無だが震える手で成し遂げた。最後に喉の骨を骨壺に収めた。
そうして四日目の葬儀の日程は終わった。
五日目に納骨式を行い、忙しい日々は終わった。
ぼろぼろのアパートで父の服や持っているもの全てを処分した。中にはまだ使えそうなものや売れそうなものもあったため区別しながらの作業は大変だった。
それに、父が愛用していたマグカップやしばしば着ていた服とか靴とか帽子とか、それらを見るたびに涙が出てきて進みが遅かった。
不幸中の幸いだったのは、夏休み中だということ。学校を休んで授業に出席できなくなり大幅に遅れを取るということが避けられたため、唯一良かったことだなと神無は思う。
父の遺品の片付けがある程度終わった時、ピーンポーンと家のチャイムがなった。
谷崎神無(17歳)
・10月7日生まれ
・長い黒髪を低い位置で一つに結ぶ
・濃い青色のフレームメガネ
・真面目でしっかり者、勉強が好き
・辛いものは好きだが甘いものは嫌い




