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〜聖女意思疎通大作戦③〜

さて、この状況をどう祐華に説明したものか…と悩んでいると祐華が

「お姉ちゃんについに春が!ハネムーンだね!」と言い始めた。

「え?ハネムーン?どいうこと?」

「お姉ちゃん隣見てみなよ」

「となり…」

"見ないように"していた隣を見ると、アイスブルーの駄犬が膝をつき騎士の礼をして私の指先にキスをしていた。

「マヤ様、ユウカ様に通訳を」

「ほえぇぇい」

あ、変な声が出た。祐華が笑ってる。

手を引っ込めようにも思いの外、力強くてできない。

「ゆ、ゆうか、えっと、その」

「この度、聖魔術師マヤの騎士の名を授かりましたダリキス・ウェールズです。我が命に変えてお姉様をお守りいたします。しばしの間、任務のためお姉様をお借りいたしますが必ず幸せにしますのでご安心ください」

「はい。姉をよろしくお願いします」

…うん?まだ結界は貼り直しできてないのに意思疎通ができてる?うん?

「ダリキス様は日本語がお上手ですね」

「ありがとうございます。観察させていただいたおかげです」

「…チート!チートすぎる!だろ!」

私の呟きは誰の耳にも入ることはなかった。


そこから地獄の馬車の旅が始まった。

ガタゴトと揺れるし、酔うし、お尻が痛い。

馬車の中で読もうと張り切って積んでもらった魔術学の本に埋もれて私は唸っていた。

「ゔー…腰痛い。お尻痛い。気持ち悪い」

「だから言ったじゃないですか…そんなにも読めないから他の馬車に積みましょうって」

「こんなに辛いと思わなかったの!」

正面に座った駄犬もといウェールズは本を乱雑に自分の隣に移動させて、私の隣にやってきた。

「ウェールズ…吐きそう」

「ダリキスとお呼びください。今から赴く地にはウェールズが山ほどいます。あと吐くなら休憩を入れます。我慢して」

ダリキスは私の肩を抱え、御者のいる方をノックし「休憩にする」と伝えてくれた。

そこからは吐き気との戦いである。一刻も早く馬車を降りたい私は扉を開けて飛び出そうとした。

しかしダリキスに手首を掴まれそのまま横抱きにされてしまう。

「んんんんん!んーんー!」(なにするの吐きそう!)

「馬車は高いですからそのまま飛び降りると怪我しますよ。もう少しだけ我慢です」

私を横抱きにしたまま馬車を飛び降りたダリキスは風を駆けるように、木陰へと私を運び、背中をさすってくれた。

乙女の都合でこれ以上は話せないが、人生最大の恥をかいたのだけは間違えない。


そんなやりとりを食事をするたびにするものだからダリキスが心配に心配して3日目。学習した私は日中の移動はスープしか飲まず、夜中にどが食いすることで生命を維持していた。

「はむ!美味しい!ダリキス、そのお肉取り分けて!」

「…はぁ馬車から降りると元気なのがまた…」

そう言いつつローストビーフ的なものを取り分けてくれるダリキス。

「なんか言った?あら、お魚のフライもあるの?!やったー!この世界にはないんだと思ってた」

「マヤ様は魚がお好きですか?」

「大好き」

ズッキュン。何かが撃ち抜かれた音がしたが撃ち抜いた本人は気が付かない。

「やっぱりお刺身がいいよね。うん。フライも美味しいけど」

「もう少しウェールズに近づけば生食用の魚も増えます。まぁ食べられるのはあと2日後でしょうが…両親に用意するように伝えるために早馬を出します」

「うーん…電話がないのは不便ね」

「で、ん、わ?ですか?」


私はその日乱雑にウェールズにスマホの話をした。本当に乱雑に。

「石の板にエネルギーを通して会話をするの。あとカメラって言って映像が映し出せる機能があって、あとは…そう!SNSっていって世界中の人の独り言が聞ける機能があったわ!それは文字だけど」

「独り言を聞いてどうするのですか?」

「独り言という名の宣伝だったり意見書なのよ」

「…なるほど」


次の日、起きてすぐの私のところに青クマを作ったダリキスが駆け込んできて、一言。

「作りましたよ!でんわ」

…やっぱりこいつチートや。

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