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〜聖女意思疎通大作戦②〜

ふかふかのベッドで眠った翌日は雨だった。

ザーザーと降り頻る雨の中、部屋は静寂に包まれていた。

私は図書館から建国誌を借りてもらい初めから読んでいた。マリウスの説明はざっくりだったのでさらに深く知りたくなったのだ。

そして思いの外、面白くのめり込んでしまった。だから気が付かなかったのだ。

アイスブルーの髪から覗く黒い瞳がものすごく近いことに。

「ひゃっ!」

「やっとこちらを見てくださいましたね。マヤ様。聖女ユウカ様にお伝えしたいことがありますので通訳をお願いします」

「ひゃ、ひゃい」

「マヤ様、ユウカ様、改めまして自己紹介させていただきます。この度お二人の護衛を務めることとなりましたダリキス・ウェールズです。普段は第二王子殿下の護衛として近衛に務めております」

なんとびっくり。なんかずっと後ろにいるなーと思っていたけども、護衛だったとは。

祐華が「よろしくお願いします」と早くも状況を飲み込んだので慌てて通訳する。

「こちらこそ」

そう言ったウェールズの顔はこの世のものとは思えないほど美しかった。


それから更に3日経ち祐華が散々侍女達の着せ替え人形にされ、私が建国誌を読み終わったころ、マリウスが陛下と共にやってきた。

そう王様ではなく陛下だ。私はこの4日間で建国誌に感化されていた。


「マヤ殿、聖女様。今からこの国の要となります結界を貼る聖魔術師たちを紹介いたします。

彼らが結界を貼り終えたのを確認後、マリウスが聖女の結界を一旦壊し、聖女様には新たに王都全体に結界を貼っていただきたく思います」

祐華に伝えると不安そうな顔をした。

「どうしたの?」

「マリウスは危なくないの?魔力減ってるんでしょ?なくなると死んじゃうんでしょ?」

「聞いてみる」


「陛下、聖女ユウカはマリウスの魔力がなくなることを心配しております」

「大丈夫です!実は回復薬が完成しまして…現在、私の魔力は全盛期の3分の1はあります。聖女様の結界を吸収させていただければ3分の2まで戻るかと」

「え、吸収?」

「ええ、壊すには魔力を吸収する魔術を使うのが1番だと考えました」

「え、吸収しても3分の2なの?!国を守る結界を?!」

「全盛期のわたしはマヤ様並みの魔力でしたので」

「え、わたし魔力とか測ってないけどわかるの?」

「えっと…そちらのブレスレットが魔力測定器になっておりまして、かつ魔術師の証となります」

それはウェールズがお近づきの印にとかなんとか言って持ってきたブレスレットだった。

正直それより建国誌の方が気になっておざなりに「はーい」「ハメますよ?」「どうぞ」という会話をした覚えが朧げにある程度だ。

「えっそうだったの?」

とウェールズを見ると…「説明しましたよね?」と頭を抱えていた。


「そろそろよいか?聖魔術師マヤよ。他の仲間を紹介したい」

「…私も聖魔術師?」

「「そうです」」

銀と茶が同時に頷いた。


陛下の合図で入ってきた藍色に金の刺繍の入ったローブをきた3人はひどく緊張しているようだった。


「ナタリーです」「リリーです」「マルクです」


家名がないということは平民らしい。

すかさずマリウスのお小言が飛ぶ。

「お前達、正式の場での自己紹介の時は聖魔術師と名乗るんだ。やり直し」

「「「はぃいいい」」」

…あれ?めちゃくちゃ怯えられてない?


「聖魔術師リリーです。生け贄になるため一生懸命尽くします」

「聖魔術師ナタリーです。人柱のお役目精一杯努めます」

「聖魔術師マルクです。苦しまずに死にたいです」


ちょっと待て。ものすごく誤解されてるぞ?


「えっと…マリウス?」

「貴族の魔力の高い子息、子女たちは親子さんの猛反対や派閥の関係でお役目を引き受けていただけず…やむ終えず魔術学園の特待生たちにお願いしたのですが…ええ。終始こんな感じでして。現地に行ったらきっと誤解も解けるかなと」

「なるほど…ところで聖魔術師って人柱じゃないわよね?」

「マヤ様まで…そんなことを…」

マリウスは絶望した顔で天を仰いだ。


「…というわけで聖魔術師のお役目はこの魔石に1日1回もしくは7日間の間に10回魔力を貯めるだけです。結界は最初の1回失敗せずに貼っていただければ、この石が起動してあとは魔力を足しつづければ大丈夫です」

「マリウス先生!質問です!」

「もう先生ではありませんが…なんですかリリー」

「なぜ7日に10回なのですか?1日1回でいいんですよね?」

「魔力を少なくするためですよ。1日1回毎日魔力を与えられないとき用に7日に10回与えた魔石を用意しておけということです」

「用意…」

「そうです。病気で倒れたとき、なんらかの理由で外出するとき。そう言う時のための備えが7日に10回与えた魔石です」

「実質1日2回以上…」

リリーの顔が青ざめる。

「ええそう言うことです。ですが我々には試作品ですが回復薬があります。こちらを使えば1日3回魔力付与しても余るくらいに回復しますから、命の危険はありませんよ」

マルクとナタリーがなぜか酸っぱそうな顔をした。


「さて、大々的に聖魔術師の歓迎会をするのは後日にするとして…早速任務に当たっていただきたい。なんせ辺境伯までは遠いからの。移動だけでも5日はかかる。それぞれに担当してもらう地域だが…おっほん。

聖魔術師リリー、マーナード辺境伯領

聖魔術師ナタリー、サリナン辺境伯領

聖魔術師マルク、ナルミード辺境伯領

聖魔術師マヤ、ヴェールズ辺境伯領

以上」


ウェールズかー…どんなところだろう…綺麗な景色の場所だといいなー。うん?ウェールズ?

「もしかしてだけどウェールズって…実家?」

アイスブルーから覗く黒目に問うと

「ええ!その通りです。マヤ様!大丈夫ですよ!私も近衛を辞職してついていきますからね!」

ものすごく良い笑顔で言われた。


え、辞職して大丈夫なの?

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