王国ッター
スマホ…地球のものとは異なる大理石で作られた魔道具が裕福な貴族、商人の間で急速に普及したのは「王国ッター」の存在が大きい。
「王国ッター」ではヨーデル王国第一王子アルベルト•ヨーデルの政策の草案投稿から、公爵家令嬢のお茶会のお菓子の写真投稿など、さまざまな政治的かつ戦略的な"ひとりごと"が繰り広げられていた。
そこにウェールズ辺境伯爵からこのような投稿がなされた。
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宵闇の月 第ニ風の日〜第二宴の日まで
ウェールズにて恋人の祭り開催されたし。
参加条件はウェールズキルトの服を着ること。
ウェールズ露店で購入もしくはナリサ工房にてオーダー可。
オーダーは月華の月 第三宴の日まで受付。
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これを読んだ貴族子女たち、おのび令息たちは我先にとナリサ工房へドレスをオーダーし、ウェールズキルトを作る職人たちを集めた工房の工房長を押し付けられたナリサは非常に慌てたのであった。マリーと打ち合わせ中だったマヤに泣きつく30分前の出来事である。
「マヤ様〜無理ですよぉおおお!ドレスなんて!!キルトですよ?!?!
つぎはぎのドレスなんて思い浮かばないです…」
「お忍び用のワンピースのつもりだったのだけど…どうしてドレスになっちゃったのかしら…」猫目の令嬢マリーも不思議そうにしている。
「…うちの父が誤解を招くような呟きをしたからだな」そう言いながらダリキスは文鎮もといスマホをこちらに向けてきた。
文鎮が光り薄い液晶の中に文字が表示される。
「王国ッター…この書き方は勘違いされるわね」
「どうしよう…宵闇の月まで2ヶ月しかないし…そもそもワンピースだってテンプレートを作って布の種類でアレンジする予定だったのに」ナリサは不安げにマヤを見つめた。
「ドレスはお断りしましょう」
「え?そんなことして大丈夫なんですか?」
「王国ッターにウェールズ露店のワンピースには魔術師の呪いがかかっていて恋が叶うらしいって流せば向こうから断ってくれるわよ」
「それではオーダーが入らなくなるのでは?せっかく工房を作ったのにもったいないですわ」
「さすがマリー!だからね!その後にナリサ工房では呪いつきのワンピースの布が選べるって追記しとくの」
「なるほど…さすがマヤ様です」
大人しくしていた駄犬が無駄にキラキラした顔で相槌を打った。
その後、王国ッターには氷の獅子によりこのようなつぶやきがなされた。
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淑女の皆様、祭りでは呪い付きのワンピースが出回ります。
聖魔術師であり女神でありそれはそれは可愛いマヤ様が恋の呪いを施したものになります。
ドレスもあなたを着飾る武器と成りましょうが恋の呪い付きのワンピースもまたあなたの武器と成りましょう。
わたしは普段と違う装いのあなたを見られることを楽しみにしております。
ナリサ工房ではワンピースの布地のご相談をお受けしております。
月華の月 第三宴の日までの受付ですが予定数に達し次第締め切りさせていただくことをご了承ください。
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これにより氷の獅子様イメージで!!!という水色系統のワンピースのオーダーが増えたことは言うまでもない。




