〜聖女意思疎通大作戦12〜
日が暮れて、ウェーズ湖に光の玉が浮かぶ頃…私は緊張感に包まれたウェールズ辺境伯邸の中庭にいた。
「マヤ様、こちらが結界を維持する装置になります。この魔石に魔力を流してから結界を張ってください。その後は魔石に魔力を流すことで維持しますので、最初の一回だけ失敗しなければ大丈夫です。失敗しても聖女の結界がありますから、マヤ様に危険はありません」
「ダリキス、あんまり緊張させないで」
「マヤ様なら大丈夫です。私はマヤ様がこちらにお越しになった時から、マヤ様のことを拝見しておりましたが…勉強熱心で必死に我々の世界を知ろうとしてくださるマヤ様も。妹思いで優しいマヤ様も。我々にはない視点をくださる聡明なマヤ様も…その…私は…」
バーンっ!
空に大きな花火が上がった。王城からの合図だ。駄犬が何か言いかけてたけどそれどころじゃない。
「よっしゃー!!!聖魔術師マヤの名において聖なる湖の地"ウェールズ"を守るヴェールを授けよ!」
結界には決まった形も呪文もないとの事で、私は花嫁を悪魔から守るヴェールを思い浮かべる。
ーこの世界に恩はないけれど…来てしまったからには…妹のためだとしても…この美しい地を守る鉄壁の守りをー
「…綺麗だ」
ダリキスの呟きが聞こえて、私の意識は落ちた。
夜空に白く大きなヴェールがかかる。
それはオーロラのようだが、よく見ると緻密なレースのようになってる。
優しくウェールズの地を包み込んだ結界は強固でかつ柔らかく魔物と人間の棲み分けを完璧なものとした。
この日、ヨーデル国の歴史がまた一つ塗り替えられた。
短くてごめんなさい。
ようやく結界を張るところまで来ました。
ここで一旦区切りとなりますが、まだまだ本編は続きます。
第1章ー完ー
 




