〜聖女意思疎通大作戦11〜
「っ…頭いたい」
「っ…飲みすぎた」
二日酔いの頭痛を感じながら呟いたら、呟きが返ってきた。
黒い瞳と目が合い、お互いに目を見開いた。
昨日のパーティーでマリー様が去ったあとおつまみをいい感じに持ってきたダリキスに感心して、2人でデロデロになるまでシャンパンを煽ったのは覚えてる。
ダリキスが「マヤ様、派手にやっちゃって〜!」と言ったので
「任された!」とド派手に花火を打ち上げたのも覚えている。
でもこれは記憶にない。
なぜダリキスと同じベッドにいるのだろう。
もしかして…と思い服を確認すると、きちんとパジャマを着ていた。
ネグリジェではなくパジャマだ。上下別れたボタン付きのスタンダードなパジャマ。
もうちょっと色っぽくてもいいかな。ジュリエッタに相談してみよう。うん。
「おはようございます。マヤ様」
駄犬のことは一旦無視する…本当は蕩けるような笑顔に心臓バクバクなんだけど、悔しいから悟られたくない。
「ジュリエッター!何がどうなってるのー?」
扉に呼びかけると
「覚えてないんですか?ダリキス様のシャツを掴んだまま離さずお眠りになったことを」
と言いながら洗面器とタオルを持って赤毛の辛口メイドが部屋に入ってきた。
…うわー超テンプレ展開。
「ダリキス、ごめん」
こういう時のための日本人の秘技!土下座を繰り出す。
「役得ですよ、マヤ様。顔をあげてください」
顔を上げきる前に、長くて男らしい指が顎にかかり、前を向かされた。
クイっ。そんな効果音をつけたくなるような見事な顎クイだ。
目の前でふにゃと笑った寝起きの天使は、私を本格的に天国へと誘いたいらしい。
「マヤ様、赤くなるものいいですが、顔を洗ってお髪を整えましょう。いろいろと残念なことになってますので」
辛口ジュリエッタは絶好調だ。
寝起きだもん。仕方ないじゃないか。髪が寝癖で爆発しているのは。
「坊ちゃんは早く出てってください」
ジュリエッタがダリキスを追い出そうと布団を剥ぎ、蹴りを入れる。
駄犬は粘った。ものすごく粘ったがジュリエッタに軍配が上がった。決め手になったのは「昔の恥ずかしい話を今からします。あれは坊ちゃんが5つのころ…」というジュリエッタの精神攻撃だった。
10歳までは聞けたよ!可愛かったろうね…天使。
顔を洗って、寝癖を直してもらい、朝食を食べ終わる頃には二日酔いはかなり軽減していた。
今日の夜、王城からの合図ののち、聖女意思疎通大作戦の第一段階である聖魔術師による結界を張ることになっている。
その後、各辺境伯領騎士団が結界の強度を確かめ、お墨付きが出れば、マリウスが結界を吸収し、会話成立後ユリカが王都に結界を張ることになる。
王都は真ん中にあるから、張らなくてもいいんだけど不測の事態に備える必要がある。
聖魔術師の結界の確認だけで1ヶ月はかかるらしいし、私は結界さえ張ってしまえばゆったりのんびりのスローライフを送れると目論んでる。
「とりあえず今日は魔術学の本を今度こそ!読むぞー!」
気合いを入れて本を開いたら
窓から光の粒が入ってきて
【今夜はよろしくちゃーん!光の手紙気に入ったから改良して使ってるよん。スマホの量産体制も整ったよん。陛下より】
読みかけのページにどうでもいいことが上書きされた。




