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分離と割譲

「で、オレの能力を分離するって話だが」


どうやってやるのかとか、そのあたりは置いておこう。とりあえず自分の意志として。この改変能力を分離してもいいかどうか、という話に絞って言うなら。


「切り離しちまって構わねぇよ」


それで構わない。なくてもまったく困らない。便利ではあるが、だからといって残したいとも思わない。

元々、この能力は後付けだ。本来の自分のものではない。後からくっつけられた余分なものだ。一言で言うなら邪魔。人間でたとえるならば、起きたらある日4本腕になっていたようなものだ。腕が増えたおかげで色々な作業が並行できて便利だとは思うだろうが、やっぱり2本腕が恋しくなる。


それに。


「これで狂わされた色々もあるしなぁ」


色々と。具体的に何というとカンナの心をえぐりかねないので言わないが。


「なくなってスッキリさせたほうがいいだろ」


と、思うのだが。カンナはどうだろう。意思決定権を譲ってくれたが自身の主はカンナだ。主であるカンナもまた決定権を持つだろう。どうしたいか意見を述べて決める権利がある。


「私はベルダーの意見に従うよ」


それがどういう意志であれ、彼がしたいと思うことをさせてやりたい。分離したいと言うなら賛成する。

考えるのを諦めて意思決定を放棄しての結論ではなく、自分がこうしてやりたいと思うゆえの同意だ。友達の意見は尊重したい。

確かに現実改変能力は便利であるし、それに救われたものも狂わされたものもある。だが、この能力イコールベルダーコーデックスではない。彼の価値はその能力ではない。


「いいのか? お喋りする本になるんだぞ?」


それでいいのか。憎まれ口を叩く口と態度の悪い本になり下がるのだが。

問われ、きょとんとした顔でカンナが返す。


「今更じゃない?」


***


「でも、取り出すってどうやって?」


武具から能力を分離して別の武具を作る。そんなことが可能なのだろうか。

武具のことなど彫金の知識のないカンナにはわからない。ヴィトにその知識があるのだろうか。


「ん? ボクも作れナイよ」


この長い長い時間の暇潰しとして知識を求めた時期があった。その際に彫金、つまり武具作りの方面にも手を出してみたのだが、教本を見るだけで頭が痛くなった。

自分は彫金に向いていない。その素質がないし、気質も合わない。魚に陸上で生活しろというようなものだ。長い時間があっても適応は不可能。

なのであっさりと諦めた。それ以来、まったく手を付けていない。当然、武具など作れるわけがない。


だがそれをすり抜ける方法に覚えがある。はるか昔の友人だ。その人物は武具作りの知識も技術もないのにそれを作り上げた。あの仕組みを解明すれば、知識も技術もない自分でも武具を作ることができるかもしれない。

その人物というのが、かつてアブマイリの儀式を執り行っていたラピス諸島の巫女だ。彼女はその儀式の中で武具を作り、人に授けていた。


だからこそフュリを呼んだ。彼女は巫女の血族の末裔なのだ。

この半端な時期に留学生が来たのもこのため。そのために色々とあれこれ手を回したのだ。


「ふぅん。で、ソイツの協力は得られてんのかよ」

「モチロン」


アスティルートに切り刻まれて窓から放り捨てられて生き返った後、その足でフュリに会いに行った。同じような話をして協力を求め、彼女も自身の研究の一助になるからと快諾をもらった。

この後に図書室で待ち合わせる予定だ。それまでの時間潰しとしてここでカロントベリーをつまみながらゆっくりしていたらカンナが来て今に至る。


「図書室?」


図書室。何か忘れているような。


「あ」

「あ」


そうだ。まくし立てるフュリをアルカンに押し付けて逃げてきたのだった。

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