第2話 ありがちな神事情
え…か、神ー!?
そう、神。
勇気の神様じゃ。
まったく意味が分かりませんが。
(何を言ってるんだ、このおっさん)
ふむ。
まず話を聞くとよい。
つい先日、神同士の争いで二柱の神が消えた。
神が消えた際は、同時刻に死んだあらゆる生命体の中で最も神にふさわしい輝きを持つ魂を召喚し、次の神に任命することになっておる。
それがお主だったのじゃ。
二柱の神が消えた?
そう。
神は不死じゃが不滅ではない。
存在が消えることはある。
例えば神は自身の魂を使い、同等の存在である他の神を消し去ることが可能だったりするのじゃ。
それって結局、不死じゃないんじゃないですか?
神の世界では、死ぬということは記憶を消し去り別の器に転生することなのじゃ。神となったものは転生できない。
あるのは消失することだけじゃ。
そして消失した魂が転生することはない。
死ぬよりたちが悪い…
(僕もそうなるのか?)
まぁ消失などそうそうあることではないがな。
数千万年の神の世界の中でもごくわずかじゃよ。
でも二人も神が死んだ訳でしょ?
死んだのではない。
消失じゃ。
同じようなものですよ。
その代わりが僕ということなんですか?
そういうことじゃ。
正確にはお主と、もう一柱おるがな。
え…どういうことです?
二柱と言ったじゃろう。
消失したのは、勇気の神と嫉妬の女神。
嫉妬の女神が力を使い、勇気の神を消し去ったのじゃ。
つまり、嫉妬の女神も消失した。
お主と同様、嫉妬の女神の代わりも神の世界に招かれておる。
嫉妬の女神…
嫌な名前がついていますね。
お主の世界の言葉に変換するとそうじゃな。
我らの世界では○¥@△○と呼ばれる。
奮起とか克己とも訳せる言葉じゃ。
なるほど…
(僕の世界に存在しない言葉なのか?)
まぁ難しく考える必要はない。
とりあえず、お主がここにおる理由は理解したか?
何となく分かりました。
それで僕は何をすればいいんです?
それはお主の自由じゃ。
は?
(どういうことだ?)
神に義務はない。
目的もない。
神は神である。
それが全てじゃ。
何かすべきことなどない。
何をしても良い。
自由…圧倒的自由。
(ざわ…ざわ…)
なんじゃその擬音は。
お主面白いな。
心をよんだ!?
ワシは神じゃ。
心など、よめて当然じゃろう。
さっきからずっとじゃよ。
さっきから…
(僕の心の声…大丈夫なのか?)
大丈夫じゃ。
気にする必要はない。
(心が広い…さすが神様)
さすがじゃろ。
でも僕も神なはずなのに。
貴方の心はよめる気がしませんよ。
それはそうじゃ。
最初に言ったろう。
ワシは全知全能の神。
あらゆる神の上位の存在なのじゃ。
(なんかズルい…)
ズルくなどない。
そなたと同じく、ワシにも義務などない。
故に自由じゃが、特に何ができる訳でもないのじゃ。
また俺の心よみやがった…
でも全知全能なんですよね?
そう。
全知全能。
それがワシの権能じゃ。
そうそう。
お主の権能の説明がまだじゃったな。
俺の権能?
あるんですか!?
それはあるじゃろ。
神なんじゃから。
(早く説明しろよ…)
仮にも上位の神にその物言いはどうじゃと思うがな。
まぁよかろう。
説明してしんぜよう。
(勝手に心をよむの、まじ勘弁してほしいわ)
例えばワシの権能の一つが全知じゃな。
勝手によむ訳ではない。
あらゆる情報が自然とワシは知覚できるのじゃ。
はぁ…
隠し事はできないという訳ですね。
そうじゃ。
まぁ隠し事など、神はしないがな。
悪事をしようが、良い行いをしようが誰も責めないし評価もしない。
隠す意味がないのじゃ。