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夏のホラー参加作品

死の国


カーテンの隙間から差し込む太陽光で僕は目を覚ました。


枕元の時計を見たら8時35分、それなのに家の中は静まり返っている。


リビングに行ったけどママもパパもいなくてカーテンも閉められたまま。


ママとパパの部屋のドアをノックしたけど物音一つしない。


ノブに手を掛けて開けようとしたときパパに昨日言われた事を思い出した。


「いいかい。


明日、パパもママも部屋から出てこなかったら、パパ達の部屋のドアを開けては駄目だ。


約束だよ」


って言われたんだ。


リビングに戻りカーテンを開けテレビを点ける。


でも放送しているテレビ局は1つも無かった。


昨晩、ママとパパに言われた事を思い出す。


1週間程前から世界中に感染が拡大している、致死率が99パーセント以上の未知の伝染病。


水際で食い止めていたその未知の伝染病が一昨日日本に上陸し、国内初の死亡者が出た関西から瞬く間に日本中に感染が拡大して日本が死の国になるのも時間の問題。


でも1つだけ希望があって、大人はほぼ100パーセントの死亡率だけど、12歳以下の子供だと死亡率が少し下がり1000人に1人くらいの割合で感染しても死なないんだって。


伝染病に対する免疫があるのか分からないけど、お医者さんや科学者も次々と亡くなっているから理由は解明されていないらしい。


僕が今も生きているって事は、その1000人に1人の免疫持ちなのかも知れない。


お腹すいたなぁー。


キッチンに行ったらテーブルの上にメモ用紙が置かれていて、ママとパパの字でこう書かれていた。


ママの字で。


冷蔵庫に朝御飯と昼御飯が入っています。


冷蔵庫の中の物が無くなったら缶詰めやレトルトを食べてね。


パパの字で。


免疫があったら生き続けて欲しい。


でも、寂しくてパパとママに会いたくなったら、お皿の上のカプセルを飲みなさい。


ゴメンな最後まで一緒にいてあげられなくて。


パパとママより。


冷蔵庫を開けるとオニギリが乗った皿とサンドイッチが乗った皿が入っていた。


朝御飯を食べてから顔を洗い歯を磨き寝巻きから服に着替える。


それからショルダーバッグにオニギリとお茶のペットボトルを入れ、ポケットに財布とテーブルの上の皿に入っていたカプセルを入れた。


帽子を被りショルダーバッグを肩に下げ生きている人を探しに出掛ける。


マンションを出て山手線の駅に向かう。


道のあちらこちらには人の遺体と、犬や猫にカラスやスズメの死体が転がっていた。


動いているのは無人清掃トラックと、犬や猫にカラスやスズメの死体を集め清掃トラックの荷台に放り込んでいる清掃アンドロイドだけ。


僕は遺体を見ないように踏んづけ無いように車道を歩く。


駅に着き切符を購入して改札口を通り階段を下りてホームへ。


ホームの前にコンピューター制御の無人電車が止まる。


窓から車両の中を覗き中に人の遺体が無い事を確かめてから電車に乗った。


座席に後ろ向きに座り流れ行く街の中に人の姿を探す。


山手線を1周したけど動いていたのは清掃アンドロイドや、遺体を回収している警察官補助アンドロイドだけ。


生きている人は見当たらなかった。


見落としたかも知れないからもう1周しよう。


10歳くらいの男の子の骸を乗せて、電車が山手線を幾度も周回していた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 怖っ!? そっちですか!? なんとも切ない話かと思えば、最後に意表を突かれた気がします。 ……あ、でも、これはむしろ……。 いつかの未来に、このようなことが起きませんよう。
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