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第7話 軍団長

「そういえば、私以外の自己紹介がまだでしたね」


 ベリサリウスが言う。


「では改めて私から。エルトリア帝国軍、最後の軍団レギオン、上級軍団長ベリサリウス。ティナ様のおそばにて全軍団の指揮を執ります」

 

 ベリサリウスは胸に拳を当てから、腕をピンと伸ばすエルトリア式の敬礼をする。

 彼は上級軍団長。実質上の最高司令官だ。軍団長たちを統括し、軍団レギオンを動かす。


「……はーい。私は第九軍団、軍団長エル。主に諜報活動をする密偵だよ」

 

 ぼさぼさの青髪の少女エルが、気の抜けた声で言った後、エルトリア式の敬礼をする。

 スカーフで顔の半分を隠しているが、流麗な目元と眉だけでもわかる美少女だ。

 立つのもおっくうだというふうに、ふにゃふにゃとした態度だが、彼女はこれでも立派なスパイマスターである。密偵を各地に放ち、情報収集をすることを得意とする。


「次は私だねっ。私はヘレナ。第十軍団の軍団長だよっ。みんなのためにご飯を作ったり、物を運んだりするよっ」

 

 ヘレナはふわふわとしたオレンジ色の髪を揺らし、元気よく敬礼する。

 くりくりとした目と鼻のかわいらしい少女というより幼女といった風貌でエプロンドレスがよく似合っている。

 だが、これでも立派な軍団長だ。軍団の生命線ともいえる補給部隊を統括するという重要な役割を担っている。

 料理もこなすというが、千年前のレシピしか頭に入っていない。ティナたちの口に合うかは未知数だ。


「第八軍団、軍団長ファビウス。工兵の長」

 

 職人気質な丸禿の寡黙な男、ファビウスが短く言った後、どっしりと敬礼。

 背は低いが、体格はがっしりとしており、樽のような体型で立派な口ひげを蓄えている。

 古代エルトリア帝国は『つるはしで勝った』と称されるほど、優れた土木建築技術を持っていた。

 パンゲア大陸中に都市や城砦、そして今日に至るまで使われ続けている主要な道路はすべて古代エルトリアが築き上げてきたものだ。

 ファビウス率いる工兵軍団も同様の技術を持ち、軍団の勝利に大きく貢献するだろう。 


「第三軍団、軍団長ガイウス。重装騎兵を率いまする」

  

 岩山のような大男、ガイウスは堂々と敬礼する。

 白髪の老人ではあるが、はつらつとしていて眼光鋭く、どのマギアマキナよりも生命力にあふれている。

 この武人が率いるのは軍団の主力、重装騎兵だ。

 強固な全身鎧を身に纏い鉄馬という機械仕掛けの馬に乗って敵軍に突撃をかける。その突破力は帝国軍一を誇り、勝敗を決定づける重要な役割を担う。


「私の名は、ウル。第一軍団、軍団長。第一軍団は、ティナ様のお世話と護衛をさせていただく親衛隊です。以後お見知りおきを」


 赤髪の美女、ウルはすらりとした美しい敬礼する。

 長身で凹凸のはっきりとしたスタイルのいい美女で、目元涼やかで鼻筋がきりっとしている。口調も落ち着いた様子だ。 

 彼女は皇帝たるティナの護衛や身の回りの世話をする親衛隊だ。

 人数は少数だが、皇帝の親衛隊だけあって、高性能なマギアマキナが多く所属する精鋭部隊である。


「私は、ルーナだよ。第六軍団の軍団長。よろしくっ」

 

 ひときわ派手な格好のピンク髪のルーナは、フランクな口調であいさつする。

 奇抜で露出の多い格好をしているが、はっとするような美少女で、なにげない動き一つ一つが、見るものを魅了してしまう魔性の魅力がある。


「第六軍団は、そうだな~。こーんなことやったり」


 ルーナは魔法陣を展開し、弓を顕現させると構えて見せる。


「こーんなことやったりするよ」

 

 腰の刃のついた輪、チャクラムを指で回しながら、宙に飛ばして見せ、腰をひねりながら回転し妖艶に踊る。


「えーと、大道芸をやる軍団?」


 嬉しそうにルーナの技を見ていたティナが尋ね、ベリサリウスが答える。


「いえ、第六軍団は、戦闘部隊です。彼女は劇場出身なものですから」

「もとは踊り子なの。あの頃はすっごい人気だったんだから」


 ルーナは優雅に舞って見せる。


「踊り子ってことは戦闘には参加しないの?」

 

 ルチアは疑問に思う。踊り子として作られたマギアマキナが、皇帝の軍隊で軍団長をやっているというのはおかしな話だ。


「元踊り子ってだけ、ばっちり戦えるよ」


 ルーナがピースサインで答える。

 彼女は民間から軍に徴用された高性能なマギアマキナで軍事用に拐取を受けている。


「お恥ずかしながら、最初から軍事用に作られたのはこの中では、ガイウスとウルだけ。かくいう私ももとは教師型。私も含め他の者は民間の出身です」

 

 軍団の総指揮官であるベリサリウスですら元は民間機。彼は貴族の子弟を教育するための教師型マギアマキナだった。

 帝国末期、その性能を買われ、軍で戦闘もできるように、改修を受けたのち、最後の軍団に加わった。

 一からマギアマキナを生産する余裕がないほどに帝国の状況はひっ迫していた。


「ヘレナちゃんはどこ出身だったの?」


 興味を持ったティナが尋ねる。


「私は、いろんな場所でお料理したよっ。宮廷とかホテルとか、町の酒場でも!」

 

 ヘレナは働いてきた場所を指折り数える。

 彼女もまた、民間からの徴用である。ファビウスも同様に民間の工房からの徴用だ。

 ティナはエルにも聞こうとしたが、すでに居眠りをしていた。

 以上七名。全十二軍団長のうち、目を覚ましたのはおよそ半分。個性豊かで、最高の職人の手で作られたマギアマキナだけあって絵にかいたような美男美女たちだ。

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