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良い事なんて何一つ無いこの世界の幸福

帰り道。俺は今日の事を振り返りながら歩いている。あの戦い方だ。訓練も何も無しのぶっつけ本番だったからそうなるのも仕方は無い。ただ、余りにも酷すぎた。おそらく、あのまま紡が援護射撃(一撃)が無ければ俺は死んでいただろう。振り返って、情けなくなる。

「…やっと…追いつきました…」

「!?」

後ろにいたのは紡だった。若干息を切らしている。走ってきたのだろう。少女とはよく話せたのだろうか。

「…疲れました…甘いもの…要求します…」

「…」

またもや紡の案内で喫茶店へ向かう。と言っても、昨日と同じ場所だが。

「なぁ、やっぱり俺は不合格、だよな。あんな戦い方だったし、結局タイルも倒せなかった」

「…もぐもぐ…」

「紡の助けが無いと、きっと俺は死んでいた…」

「…あむあむ…」

「やっぱり俺は、不適なのかな…」

「…ごくん…」

しばし沈黙。紡は何やら考え込んでいる。

「…紡?」

「あ…すいません…上の方から先に食べようか…下の方を掻き出しながら食べようか…悩んでました…」

酷い!こっちは割と本気で悩んでたのに!

「…まぁ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは…この仕事をしたくない…そうですか…?」

「いや、やりたいよ。ただ、俺には才能とかが無いから…」

「…お兄ちゃんは今…空っぽのパフェの器です…」

急に突拍子もない事を言い出した。

「…今朝…私がお兄ちゃんにナイフと…拳銃を手渡しました…お兄ちゃんという器の中にコーンフレークだけが入りました…」

コーンフレークが少量。そんなパフェは嫌だな。

「…そのパフェの食べ方は…コーンフレークを食べる…それしか出来ません…でも…徐々に…徐々に…他人から教えてもらったり…道具を手に入れたりで…お兄ちゃんという器は満たされていきます…すると…上から食べるか…下から食べるか…どのフルーツから食べるか…そうして選択肢も…味も広がっていくのです…才能なんて…ちょっといい食材を使っている…それだけです…子供だったり…味音痴には些細なもの…気にする必要は…ないのです…」

たぶん、励ましてくれているのだろう。

「あぁ、そうだな。次こそ頑張るよ」

「??…何か…勘違い…してませんか…?」

「?何をだ?」

「言ったはずです…合格…と」

「えっ…?」

合格?確かに今、合格って言ったか?

「今日一日…あなたの行動見る中で…あなたには十分…資質があると見込みました…」

「でも、タイルは倒せなかったし…」

「あら…?私…タイルを倒せなんて…書きませんでしたよ…?お兄ちゃん…私は…最適な行動を取るよう…指示したのです…」

そういえばそうだった。

「って事は、俺はここで働いてもいいのか…?」

「えぇ、ようこそ、我が社へ」

「…ぅぅぅ…いよっしゃぁぁああ!!」

周りからドン引きされる程大声を出して喜んだ。我に帰って平謝り。いつも通りの光景だった。


紡がパフェを食べ終わり、帰り道。社長室前、いつもそこで別れるのだ。

「今日一日お疲れ様でした」

「あぁ、おやすみ」

そう言って、いつものように別れようとした、その時

「あ、お兄ちゃん。言い忘れてました」

「…お説教は勘弁願いたく…」

「もうっ…違いますよ…」

そう言って膨れる紡。

「ありがとうございました」

「?何がだ?」


「良い事なんて何一つ無いこの世界の幸福を守ってくれて」


紡は確かにそう言った。

「紡。一つだけ教えてやろう」

「はい…なんでしょうか…?」

「俺はこの世界、良い事なんて一つも無いなんて事は無いと思う。みんな懸命に生きて、笑って、怒って、泣いて…その中にも、良い事はあると思う」

「…ふふっ…そうですね…」

そう言って紡は笑う。多分、納得してくれたのだろう。

「では…改めて…おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ。紡」

そして別れる。部屋に戻る途中の廊下。俺はずっと気になっていた。

あのタイル。発生源となる人間や動物が見当たらなかったことに。

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