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社内見学

「私は紲星 紡、この会社の社長です」

そんな事をいきなり暴露され、俺は混乱していた。しかし、どうやら冗談でも無さそうだった。右の壁を見ると、壁に歴代社長のおじさんの白黒写真の1番右、そこには確かに少女の写真があった。

「あなたの事は存じているので構いません…八神さん…あなたには今から少し…健康診断を受けてもらいます…」

そう言うと社長椅子をくるりと回り

「よいしょっと…とと…」

フラフラっとバランスを崩しながらも椅子から飛び降りる。

「あ…そうだ…この事は他言無用です…おじさんで通してますので…」

立ち上がりながらそう言う。

「ん?なんでだ?俺なら幼女が社長の方が余計お金落とすぞ?」

「何訳の分からない事を吐かしますか…世間体は…大事…なのです…おじさんや主婦は…普通を好むのです…」

そんなもんかねぇ…

スタスタと歩く社長、紡の後ろを追いかける。

「こちらです…」

鉄扉をくぐり、医務室へ。

「服などは…こちらに…」

やる事は大して変わらないらしい。

小一時間、色々な機械に通され、結果が出てくる。

「ふむ…やはりですね…」

そこにはレントゲンやら謎の写真と睨めっこしている紡の姿がいた。

「やはりって?」

「ぴゃうっ!?…い、いえ…異空間転移で健康状態に乱れが無かったので…さすが私が作ったものだな…と」

頭に手を置いたら凄い驚かれ、即座にどかされた。しっしっ、とでもするように。

「というか、作った?」

「えぇ…そうですよ…?信じるか信じないかはご自由ですが…あと…次頭の上に手を置いたら…健康診断で今後…良い結果は絶対出ないので…お覚悟を…」

なら、次は脇腹でも触ろうかなーと考えていると、紡は再び歩き始める。

「次はお部屋をご案内します…こちらへ…」

不気味なほど誰もいない廊下。その廊下を渡っていく。

「こちらです…」

内装はかなり整っていて、所謂ホテルのスイートルーム、みたいな所だった。テレビで紹介されるのを見たことあるだけだが。

「欲しいものがあれば…こちらの電話からお願いします…とりあえず私に繋がるようにはしてあります…その方が安心でしょうし…」

部屋を見る限り、ホントに何一つ不自由なく過ごせそうな内装だった。内装はあるそうです。

「では…私はこれで…」

部屋を出ると、鍵をかけられる。

早速ベッドにダイブ!休めと言われてたし、休むことにする。何気に疲れたからな。心ゆくまで、堪能させて頂くとしようじゃないか!

三食昼寝のみ!そんな生活が続いた。息苦しくなればベランダへ出る。そこでも外の空気は吸えるからな。

しかし、異変は起こった。実に二週間が経ったある日の事。

「…仕事がしたい」

人間は本来仕事をする生き物であり、休みすぎるとその反動として仕事をしたくなる。というか、仕事しなくても良いから、外に出たい…

いや、出ればいいじゃん。何考えてるんだかな、俺は。扉を開く。開かない。そういえば鍵がかかっていた。

「えっと、鍵鍵ー」

部屋中捜索する。見つからない。それも全然。部屋を隈なく、隅から隅まで探してみたが見つからない。あれれ?おかしいなぁ…

電話をかけてみる。

「はい…紡です…」

紡が出てくれる。騙されたと疑っていたが、全然そんな事は無さそうだ。

「ちょっと部屋の中にずっといて流石に息苦しいんだ。出来れば少し仕事をしたい。いや、無理なら散歩だけでもいいんだ」

ようやく久々に外の空気を存分に吸える!そんな風に若干舞い上がっていた。

「お仕事ですね…えっと…分かりました…すぐに向かいますね…」

紡はそう言って電話を切る。まだかなまだかなー、とソワソワしてると鍵が開き、紡が入ってくる。

「えっと…お仕事はこちらです…」

手渡されたのは段ボール。ちょっと呆然とする。

「えっと…内職…分かります…よね…?」

「あのぉ…出来れば外の空気を吸いたいのですが…」

イメージしていたものと、全然違っていた。

「あの…契約書…禁止事項の所…お読みください…鞄に入ってますので…」

紡はそれだけ言うと部屋から出て行ってしまった。契約書を開く。

「禁止事項:外出、及び部屋からの出入りを禁ずる。もし、禁止事項を破った場合、この者の待遇を悪化させ、部屋に縛り付けることとする」

普通に書いてあった。それも堂々と。

無言で段ボールに向かい合う。どうやら俺はこの部屋に永久就職してしまったらしい、という事実から逃れるため、現実逃避に浸った。薔薇の造花は増えていく。増えれば増えるほど、ここから出る事は出来ない、という現実が突きつけられるようだった。部屋からの脱出も考えた。しかし、この研究所?の構造も把握できておらず、異世界転移も出来る装置を作る天才幼女もいる。異世界転移装置を起動すれば勝ち目があるかも、と考えたが、そもそも使い方が分からない。勝てる気がしない。

そしてどれだけの月日が過ぎただろう。俺は薔薇の造花を作るだけの機械になってしまったのであった。

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