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3.新たな力


「味付けは何にする?タレと塩コショウがあるけど」

「......何も付けずに食べます」


 俺はシアンの肉をそのまま焼いて食べることにした。味付けなんかいらない。


「じゃあ、いただきます」


 シアンの肉をナイフで切り、フォークで口に運ぶ。


「美味いか?」

「いや......不味いです」


 なんか、えぐみを感じる。


「やっぱり味付けした方がいいんじゃないか?」

「いえ、このまま食べます」


 そして俺は100gほどの肉を食べきった。


「なんか、強くなった実感がないんですけど」

「すぐに分かるさ」

「ん、ぐ!ぎゃああああああ!!!」

「お、始まったか」


 痛い!苦しい!全身が散り散りになるように激しい痛みが襲ってくる!


「ここは天使の力を押さえつける力を持った特別な部屋だからな。ある程度は抑え込める」


 ジェイさんに抱えこまれ、動けないようにされた。邪魔でぶっ殺したいという衝動が体の中を駆け巡る。


「てめえ!殺すぞ!」

「いいねいいねえ。その意気だ」


 暴れまわろうとするが、ジェイさんの圧倒的な力で、俺は押さえつけられた。


「あああああ......!」

「お、ちょっと苦しみが和らいできたか」


 だんだん痛みと苦しみが引いてきた。そして、圧倒的な力が俺の中に溢れてくるのが感じられてきた。


 そして、痛みと苦しみが完全に無くなった時、俺は天使に一歩近づいた事を確信した。


「どうだ?」

「もはや人間じゃないって感じですね」

「それはいい。じゃあ早速実戦だ」


















 やってきたのは渋谷のスクランブル交差点。人間がたくさん集まりストレスが多いここは強い幽霊が出やすい。


「それでジェイさん」

「ん?なんだ?」

「この人は誰なんですか!」


 ジェイさんは俺以外に、俺と同じ歳くらいの女の子を連れてきていた。


「お、そうだな。自己紹介してやれ」

「へっへーん。私は最強退霊師の候補者、サキだよ!よろしくー!」

「というわけだ。仲良くしろ」

「いや、どういうわけなんですか!」

「退霊師はコンビで動かなきゃいけないっていう規定があるんだよ。俺はもうコンビがいるしこいつを連れてきたってわけだ」

「ああ、そういうことですか」

「くれぐれも私の足を引っ張らないようにね!」

「分かったよ......」

「さて、仲良くなったところで悪いがちょうど幽霊が現れたようだ」


 スクランブル交差点のど真ん中に現れたのは巨大な幽霊。トゲトゲした形をしている。


「ね、ねえ、なんかでかくない?」

「こいつは複合幽霊。最上級だな」


 複合幽霊というのは多数の幽霊がくっついて融合している幽霊のことだ。こいつは全長50メートルくらいあるから百人ほどは融合してるだろうな。


「ビビってるのか?」

「ビ、ビビってないし!ちょっとでかいだけでしょあんなの!」


 そう言ってサキは霊化し、幽霊に向かって飛び出していった。霊化すると人間と、現世の物と相互作用しなくなるのだ。それを感知したのか幽霊のトゲがうにょうにょと蠢き出した。


「うえー、気持ち悪っ。さっさとやっつけちゃお」


 サキは二丁の銃を取り出し、幽霊に向かって撃ち込んだ。


「霊銃!爆裂弾!」


 すると幽霊の中から弾が爆裂する音が聞こえてきた。なるほど、中で爆裂する弾か。それなら銃でも巨大な幽霊を相手できるな。


「これはやっつけちゃったでしょー」


 だけど、まだ倒すには足りないな。


 複合幽霊は傷穴からボタボタ霊を垂れ流しながらトゲをサキに向かわせる。


「嘘。もう全力出しちゃったから霊力残ってないんだけど!」


 逃げ回るだけの霊力もないのかその場でブルブル震えている。


「よーし、ついにその力を発揮する時が来たな」

「そうですね。やってみます」


 サキを助けるべく、フッと体を脱力させ内なる力を解放してやる。すると、右腕が組み替えられ、白く透き通るような腕になった。


「ほー、部分的な天使化だな、と思ったが少し違うか?」

「......そうですね。完全に天使化しているわけではなく、あれ?あの幽霊こっちに気づきましたね」


 サキを助けるため向かおうかと思っていたが、天使化したことに気づいたのか幽霊の動きが止まった。


「さーて、ルートの腕前見せてもらうぜ」

「はい、頑張ります」


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