劇情版4th Anniversary Special Edition's Side Story 序破急−序ー
【お知らせ】
このお話を読むのであれば
第四章を読み終えてから
読んでいただけると
物語が分かりやすいと思います。
遂に出来ました。
構想一年くらいかなぁ(遠い目)
そして、7/14で
千刃花連載四周年!!
あ、そういえば誰にもおめでとうございます。
って言われてないな(遠い目)
あれ••••••涙が。
ま、まぁ、この話がお披露目されればねぇ?
ねぇ?
という訳で
今回はダークヒーローものでございます。
一概にダークヒーローとは何ぞやと
考えたんですが
手段を選ばずに正義を執行する事なのかな。
でも、正義の定義は人それぞれだから
場合によってはみんなダークヒーローだなぁ
とかなんとか考えたんですが
一つの結論に至りました。
でもこれは3部作全て通して
あなたの心で感じてください。
そして、今回は挿絵もアメコミ風でございます!!
はい、難しいです。無理です。
誰か挿絵代わりに描いてくれないかなぁ!!
4年間同じ悩みを抱いております!
あと、この物語のために主題歌を書き下ろしましたー!!
こちらコピーして飛んじゃえ!!
https://booth.pm/ja/items/4955016
では、楽しんで!!
ルリカ
((月夜が闇魔に包まれる時
選ばれし乙女に光が降りる。
そして、与えられん
数多を照らす神晶光武を。
祈りを捧げよ。
祈りを捧げよ。
悪魔を祓い光を灯せ。
今際の世界に
大天使 の祝福を))
※音楽がある場合終わるまで待つ
ベリブルー▶︎▶︎▶︎N
N
ここは世界地図中央、最北端に位置する
エルドーラ帝国の帝都
信仰と信奉の都イーストキャピトル。
エルドーラ帝国は皇帝をはじめ
国民全員が大天使 ミカエルを
神として信仰する宗教国家である。
宗教国家とは国教が定められ
尚且つ
その教えを国の統治の原則として定め
国家行事として
儀礼を執行する国の事を指す。
信仰の自由などなく
エルドーラでは大天使 ミカエルが
全ての営みであり全ての恵みなのである。
ニゲル
「ぁあ、分かった。なら仕方ねぇな。
もう今日は帰れ。
この国の新聞社は何もそこだけじゃあねぇ。
そうか。ん?里帰り?違ぇよ。
ただ...約束があってな。
ぁあ。他に良い案があれば連絡をくれ」
N
黒いライダースジャケットの男はそう言って
イヤホン型通信機器Sany Pods での
通話を切った。
そして、建物の屋上から
星の無い夜空を見上げ
タバコに火をつけると深く息を吐いた。
ニゲル
「フゥーーーー。
...数ヵ月前に起きた爆発は
老朽したパイプから
漏れたガスが原因だってか。フンッ。
民主主義も報道の自由もねぇのかよ。
変わってねーな。本当、この国はよ」
N
そう言って男は白いフードを深くかぶり
街を見下ろした。
そして、ネオンの輝きに
懐かしさを感じながら独りごちる。
ニゲル
「ネオンが照らす人混み。
テールランプの帯...
ひっきりなしに聞こえる踏切の音」
N
そして空腹のあまり腹がグーっと鳴る。
ニゲル
「そういや...朝からなんも食ってねぇな」
N
この男は
ニゲル=ヴァイオレット=グリムウェイ。
褐色の肌に黄金の瞳。
魔獣生物 の生態を童話として
世界に広めたグリム童話の著者
ドラコ=コンシネンサ=グリムウェイの子孫。
血が掻き立てるのか
グリムウェイ家は
代々、物書きを生業としてる事が多く
ニゲルも世界中を旅しながら
国際ジャーナリストとして活躍している。
訳あって偽名を使い記事を書き
エージェントを介して
各メディアに書いた記事を
売り込ませている。
更に、ニゲルには裏の裏と言うべき
もう一つの顔があった。
ルリカ
「キャーーーー!!!」
ニゲル
「...騒がしいな」
配役変更一覧
----------------------------
ローザ▶︎▶︎▶︎マンデー
ハミデル▶︎▶︎▶︎フライデー
カクトス▶︎▶︎▶︎ウェンズデー
----------------------------
N
セーラー服の少女が路地裏で
仮面をつけた白装束たちに襲われていた。
そして、ニゲルは隣の建物の屋上から
その状況を冷静に見下ろしていた。
ニゲル
「あそこか... パチンッ」
N
ニゲルが指を鳴らすと
大気が振動し電気が小さく弾けた。
ニゲル
((大気中の光武が揺れてやがる。
これは...))
N
光武とは
ナーベルク、ラミオラスでは刃汽、
スペリオールでは魔礎、
アザジェノスでは怨といい
各国でそれぞれ呼称は変わるが
人の内側から溢れ出る汽、つまり
生命エネルギーの総称である。
光武を用いて
特殊な術を行使したり
気配を察知するのは
戦闘の基本とされている。
ルリカ
「な、なんですか??」
ウェンズデー
「私はウェンズデー」
ルリカ
「ウェ...ンズデー??」
ウェンズデー
「一緒に来てください。それが貴女の為です」
ニゲル
((ウェンズデー...。コードネームか))
ルリカ
「そ、そんな...
行くわけありません。
こんな事をしていいんですか!?
ミカエル様の天罰 が下りますよ」
マンデー
「どの口がミカエル様って言ってんの?
ほら、言う事聞きなよ。
無駄な抵抗は良しなって。
悪いことは言わないからさ。
それとも...遊んで欲しいの?」
ルリカ
「い、嫌です」
フライデー
「君、可愛いねー!!
連れてく前にさぁ...どう?俺と?」
ルリカ
「わ、私...お金とか持ってないです」
フライデー
「食事行くなら俺が出すって!」
ルリカ
「そ、そういう意味では...」
マンデー
「ちょっと!!フライデー!!
こんなクソガキのどこがいいのよ!!」
フライデー
「そんなピリピリすんなってマンデー。
俺もさぁ、ヒカリ高校の生徒に
こんな事したくないよー??」
ウェンズデー
「正直な話し生きてても死んでても
どちらでも良いそうですよ」
ニゲル
((どちらでも良い...か。
こりゃあただの誘拐じゃあねぇな))
ルリカ
「え?」
マンデー
「それはアンタ次第よ?」
ルリカ
「な、なんでこんな事をするんですか?
あなた達は一体...」
フライデー
「よくぞ聞いてくれた!!俺達は!!
世界の混沌を引き裂く調整者!!」
マンデー
「正義を導く標の花!!」
ウェンズデー
「例え明日がどんなに辛くとも!!」
マンデー
「マンデー、チューズデー!!」
ウェンズデー
「ウェンズデー、サーズデー!!」
フライデー
「フライデー、サタデー!!」
ウェンズデー
「サンデー必ずやってくる!!」
マンデー
「我らは...」
マンデー•ウェンズデー•フライデー
「創世ノ爪痕 !!」
N
3人は堂々とポーズを決めた。
ルリカ
「ス、創世ノ爪痕 !?」
フライデー
「聞いた事あるだろう?」
ルリカ
「無いです!!」
フライデー
「ガビーン!!!
す、少しは有名なんだぜ?」
マンデー
「ちょっとフライデー!!!!
それ有名じゃない人が言うセリフ!!」
ウェンズデー
「安心して下さい。
これから名が広まりますよ」
フライデー
「そうそう!!
ウェンズデーの言う通りさ!!」
ニゲル
((なるほど。
アイツらが創世ノ爪痕 の構成曜員 ...
バカなのか?))
フライデー
「バッチリ名乗りも決まったことだし
本気でどうしようか考えなきゃねー」
N
そう言ってフライデーはルリカを
冷たい目で 睨 んだ。
フライデー
「ってか君さぁ。
とっても可愛いんだけど
ミカエル様への侮辱だと思うよ。
愚かしいと思わないの?
図々しいよね。全く」
ルリカ
「ミ、ミカエル様への侮辱!?
そ、そんな事ありません!!!
私は毎日祈りを捧げ
奉仕活動だってーーーー」
ウェンズデー
「そんな事はどうでもいいです」
フライデー
「あ!!待て!」
ルリカ
「だ、誰か!!!!!」
N
ルリカは全速力で走った。
ウェンズデー
「現状を理解していないのですね...」
ニゲル
((なんで構成曜員 なんかに
狙われてんだ?))
ウェンズデー
「無意味な事を」
『光唱 ・ 第八唱・"八光縛"!!』
ルリカ
「アッッ!!!」
N
構成曜員 が手をかざすと
8つの光の鎖がルリカを縛り上げた。
ルリカ
「な、なんですかこれ!!」
フライデー
「そのままジッとしててねぇ...」
マンデー
「私は四輪駆動 魔進 を回して来るわ」
フライデー
「頼んだ。
んじゃあ、それまで楽しもうぜぇ」
ルリカ
「誰か...」
ウェンズデー
「生かすか殺すか...
どちらにしましょうか」
フライデー
「殺すと処理が面倒だからさ
連れていこーぜ」
ルリカ
「だ、誰か...助け...て」
ウェンズデー
「実はここに誘い込む少し前から
光域 を降ろさせていただきました。
なので残念ですが
貴女の声は外には聞こえません。
そして、全ての生物は私達がいる事さえも
認識できません」
ルリカ
「光域??な、何よそれ...」
フライデー
「空間を隔てる光のベールさ。
不思議だよねぇ。
光唱はまるで魔法みたい!
こんな力が存在していたなんて!!
俺らも最近まで知らなかったんだよ!」
ウェンズデー
「浮かれないで下さいフライデー。
魔法と光唱は、まるで違います」
フライデー
「ウェンズデーは相変わらずお堅いねぇ。
パンピーからしたら一緒だって」
ウェンズデー
「いいえ。この世界に魔法などありません」
フライデー
「理屈っぽいとモテないよー?」
N
そう言ってフライデーは
少女を舐め回す様に 睨 むと
ニヤッと笑った。
フライデー
「そんじゃぁ
泣かれても五月蝿いし
ノドでも潰そうかな!!!!!」
ルリカ
「い、嫌...
誰か...助けて...
誰かぁぁあ!!!!!」
ニゲル
「ペラペラとよく喋る奴らだ」
N
ニゲルは人差し指と中指を合わせて
逆さ十字を空に描くと静かに呟いた。
配役変更一覧
----------------------------
ジュダス▶︎▶︎▶︎機械音 兼任
----------------------------
ニゲル
『神聖十字架光武兵装』
機械音
((COUNTDOWN!!
PARALYZE!!RISE ON))
ニゲル
『天身!!!』
N
描かれた逆さ十字は
青白く輝きながら
徐々に大きさを増し
身体をゆっくり貫いていく。
すると、十字が通っていく先から
ニゲルの身体は分解、再構築され
みるみると変容していった。
ドクロの仮面に青白い翼
皮膚は鎧の様に硬くなり
内側から溢れ出る光武によって
大気中に電気が迸る。
ニゲル
「ッッ!!」
N
ニゲルはタンッッと屋上から飛び降り
光域を叩き割った。
マンデー
「お待たせぇ!!
光域の際ギリギリだったから
入れるかどうか焦っーーーーッッ!?
何よ...この大きな光武!!
近づいて...来るッッーーー」
ニゲル
「退け」
マンデー
「誰!?ちょっ!!ちょっと!!
何すんのよ!!!!
こ、こんな事してミカエル様が許すと
思ってんの!?!?
天罰 が下らない事を祈るのね!!
ね、ね!?ちょっと!!
本当にやめてぇ!!」
フライデー
「おい!!テメェ!!!」
ニゲル
「俺は神に祈らねぇ」
マンデー
「きゃーー!!!!!!!」
フライデー•ウェンズデー
「マンデー!!!!」
N
ニゲルは四輪駆動 魔進 を
持ち上げ勢いよく投げ飛ばすと
光域の壁に叩きつけられた。
マンデー
「アグッッ!!」
ニゲル
「だから退けっつったろ。 パチンッ」
N
ニゲルが指を鳴らした瞬間
電気が迸り四輪駆動 魔進 が
ドーーーンッと爆発した。
ルリカ
「キャーーー!!!」
フライデー
「マン...デー...
よくも...マンデーを!!!!」
ウェンズデー
「な、なんだ!!
このとてつもない光武は!!
これは、祓悪使 か...
いやむしろーーーー下がれ!!フライデー!」
ニゲル
『電氣瘴空!!』
N
ニゲルは両手の指先から
電気を迸らせると
猛烈な電撃を3人に浴びせた。
ウェンズデー
「まずい!!!」
フライデー
「テメェ!!!ガガガガッガガガッ」
ウェンズデー
「待て!!ガガガッガガガッ」
ルリカ
「イ、イヤァァァア!!ってあれ?
痛く...ない」
ウェンズデー•フライデー
「グッッッッッッ」
N
2人の構成曜員 は膝から崩れ落ち
息も絶え絶え地に這いつくばっていた。
フライデー•ウェンズデー
「ハァ...ハァ...ハァ...」
N
同時にニゲルは
ルリカを縛り付けていた光の鎖を
電撃で焼き切った。
ニゲル
「ガキは下がってろ」
ルリカ
「あ、ありがとうございます!!」
フライデー
「ハァ、ハァ...
俺の...マンデーを...」
ウェンズデー
「ハァ、ハァ...
何故、光域が降ろされているのに
ここに...入って来れた...」
ニゲル
「中途半端に光唱を使いやがって
この三下が」
ウェンズデー
「この私を三下...だと!?」
ニゲル
「違ぇのか?」
フライデー
「ヤバいってコイツ...
光唱に干渉出来るのは
光唱喇叭隊でも祓悪使 でも無理なのに...
それなのに...何で...
テメェは何者だ!!!!!!」
N
するとフライデーはマジマジと
ニゲルの姿を見た。
フライデー
「待てよ...聞いた事があるぞ...
青白い翼に...ドクロの仮面...
そして...その黄金の瞳...」
ウェンズデー
「とにかく今は...
この偽 半神少女を...」
ニゲル
「ん?偽 半神少女だと?
何だかよく分かんねぇけど
こんなガキを大人が寄ってたかって
いじめてんの見せられたら
助けねぇ訳にはいかねぇな」
ウェンズデー
「そもそも他人が首を突っ込まないで
いただきたい。その娘は偽りの半神少女。
罪深き存在なのです」
ルリカ
「何よ...それ。
そもそも私は半神少女様では
ありませんッッ」
ウェンズデー
「黙れ!!」
『光唱 ・ 第一唱・"光矢 "!!』
N
ウェンズデーが放った青白く輝く光の矢は
パリンッとニゲルに軽く握りつぶされた。
フライデー
「そんな...」
ニゲル
「不意打ちか...嫌いじゃあねぇ」
ウェンズデー
「なん...だと?」
ニゲル
「言ったろーが三下。
中途半端な光唱だってよ。
なぁ?創世ノ爪痕 の構成曜員 ども」
ウェンズデー
「と、とにかく逃げろ!!!
我々では敵わなーーーー」
ニゲル
『電波磁灼』
ウェンズデー•フライデー
「アガガガガガガ!!!!」
N
ニゲルは大地に手を当てると
微弱な電波が2人を感電させ動きを止めた。
ニゲル
「電波磁灼は
微弱な電波が身体を巡り動きをマヒさせる」
ウェンズデー•フライデー
「アガガガガガガ!!!!」
ニゲル
「あ、そうだ。ぶっ殺す前に聞かせてくれ。
このガキが偽 の半神少女とか何とか言ってたな。
半神少女はこの国の象徴。
大天使 ミカエルに仕える巫女だ。
もし、それが本当だとしたら
おいそれと簡単に
口に出していい言葉じゃあねぇ。
お前らが因縁ふっかけて
そう言ってるのか、
それともこのガキが自分の事を
そう吹聴したのか」
ウェンズデー•フライデー
「アガガガガガガ!!!!」
ニゲル
「何だ?答えられねーのか?」
ウェンズデー•フライデー
「アガガガガガガ!!!!」
ニゲル
「んまぁ良い。
どっちもブン殴れば分かるか」
ルリカ
「え?」
N
そう言うとルリカを
グッと 睨 みつけた後
ニゲルは指を鳴らし
ウェンズデー達の電撃を解除した。
ニゲル
「話す気になったか? パチンッ」
ウェンズデー•フライデー
「ガハッ」
ウェンズデー
「ハァ...ハァ...
喋らせる気など...ないのか...」
フライデー
「ウェンズデー...お、思い出した...
裏の世界じゃあ...
有名な話だ...
闇夜に羽ばたき
法じゃ裁けねぇ悪を断罪する
正義の執行者。
コイツは...コイツは...」
ウェンズデー
「何を...言ってるんだ!!
私達の...手に負える相手じゃあない!!
このまま...逃げるぞ!!」
N
ニゲルには裏の裏と言うべき
もう一つの顔があった。
そう、彼は...
フライデー
「ダークヒーロー"人喰い鴉"だ!!!」
N
----------------------------
作者 REN’sJackson
劇情版
ー千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜ー
番外篇 4th Anniversary
Special Edition's Side Story 序破急−序−
【The Paralysed 】
※音楽がある場合終わるまで待つ
----------------------------
配役変更一覧
----------------------------
マンデー▶︎▶︎▶︎ローザ
フライデー▶︎▶︎▶︎ハミデル
ウェンズデー▶︎▶︎▶︎カクトス
----------------------------
ルリカ▶︎▶︎▶︎N
N
ーー数ヶ月前ーー
ガタンゴトンと
列車の通過する音がトンネル内に響く。
ここは煌びやかなネオン街とは
打って変わり、イーストキャピトルで
住居の無い者や
訳あって日陰者となった人々が集まる地域
マウントバレー ストリート。
まさに地域格差が
如実に現れる裏通りだった。
ベリブルー
「栄光と堕落...光と闇...
支配者と奴隷」
N
首の傷がドラム缶の火の光に照らされ
ニブく反射していた。
ベリブルーは黒いローブを羽織り
物乞いや道端で眠る人々を
渇いた瞳で眺めていた。
ベリブルー
「ここにいるのは元兵士達も多い」
N
そして、ネオン街の方角を見た。
ベリブルー
「あの頃の私には分からなかった。
神はそうまでして我々を試すと言うのか。
平和を願いミカエル様のために
命を賭して戦った兵士達への
報いがこれだと言うのなら
あまりにも残酷過ぎる。
そうだろう?カクトス」
N
ベリブルーは寂しげに
眼帯をした男に問いかけた。
カクトス
「そうだ。これはミカエル様が
兵士に...いや。
帝国の馬鹿どもに教えて下さってんだ。
目を覚ませってな。
アンタもその身で痛感しただろうが」
N
カクトスは自身の首に人差し指を当てて
ベリブルーにそう言い放った。
ベリブルー
「これが罰だと言うのか」
カクトス
「能力を欲するが故に
その代償に何を得た?
いや...何を失った?」
ベリブルー
「何を失った...か。私はーー」
カクトス
「全てだ」
ベリブルー
「人生を捧げた職も、
信頼する友も、愛する家族も
全て...全て失った」
カクトス
「それもこれもエルドーラ帝国軍が
長年、あの女を半神少女だと
吹聴したからだろう。
アンタはニセモノの能力を与えられた。
その罰が下ったんだ。
そのせいで、全てを失ったんだよ」
ベリブルー
「お前のその目もか?」
カクトス
「俺も全てを失った。
だが失ったんなら取り戻せばいい。
神は俺たちを見離さない。
大天使 ミカエル様は
本当の敵と戦えって言ってんだ」
ベリブルー
「本当の敵か。
何者でもなかったお前に
何が出来ると言うのだ」
カクトス
「確かに俺はアンタと違って無力だった。
だが今は違う。
アンタも昔とは違う。そうだろう?」
ベリブルー
「昔...か。
私の正義は国の平和の為に戦って来た」
カクトス
「立場が変われば正義の解釈なんて
どうにでも変わんだよ。
今アンタの正義はどこにある?」
ベリブルー
「私の正義は今もここにある」
カクトス
「そうかよ。
じゃあ確かめに行こうぜ。乗れよ」
N
カクトスは四輪駆動 魔進 に
ベリブルーを乗せると
イーストキャピトルのネオン街へ向かった。
すると、ベリブルーは
窓から流れる景色を虚な瞳で眺めていた。
※音楽がある場合終わるまで待つ
カクトス
「着いたぜ。
ここはネオンと歓楽の街ニューモート。
どうだ??ここの馬鹿どもは」
N
2人はゆっくりと街を歩きながら
人混みをかき分けていく。
派手な宝石や服を身に着けて呼び込む売女
酒を片手に騒ぎたて麻薬を打つ若者
人目も憚らず身体を重ねる者
欲に塗れた人々が
夜をネオンに染め上げていく。
カクトス
「私は国の平和の為に戦って来た。って
そう言ってたな。
アンタはコイツらの幸せの為に
命を懸けて戦ってたのか?」
ベリブルー
「違う...私は...
こんな愚か者どもの為に
戦っていた訳ではない。
私は...私は...」
カクトス
「マウントバレーで見たろ。
アンタはあそこにいる奴らと同じだ」
ベリブルー
「ッッッ」
N
ベリブルーの脳裏に
マウントバレーで横たわる人々や
物乞いをして生活する人々がよぎった。
カクトス
「今のまんまじゃ...この国の奴らは
一向に幸せになる事なんて出来ねぇ。
アンタの娘だって
コイツらの様になるのも
時間の問題だ。
それでもいいのかよ」
ベリブルー
「ヨツバが...コイツらと?」
カクトス
「そうだ」
N
するとベリブルーは突然叫んだ。
ベリブルー
「ふざけるな!!!!!
そんな事は許されない!!!!!
私がさせない!!!!!」
N
ベリブルーの光武が増大し
一瞬、辺りに静寂が生まれたが元に戻った。
カクトス
「ッッッ!!
とんでもねぇ光武だな」
ベリブルー
「ハァ...ハァ...ハァ...
す、すまない」
カクトス
「いや、構わねぇ。
むしろ、抑えるべきじゃあねぇ。
その怒り、その痛みを解放しろ。
そんでそれを騙され続けて来た
エルドーラにぶつけんだ。
いいか?
これは大天使 ミカエル様からの啓示だ!!」
ベリブルー
「神からの啓示...
私の正義はそこにあると...」
カクトス
「そうだ」
ベリブルー
「しかし娘と同じ年端もいかぬ少女を
殺せとでもいうのか?」
カクトス
「ぁあ。
今の半神少女を殺し
偽りの系譜を持つ半神少女も殺す。
エルドーラ帝国がまつり上げる半神少女は
全員、不完全だ。
本物なら神のために命を懸ける者に
能力の代償なんて求める訳がねぇ。
少し考えれば分かる事だったんだよ」
ベリブルー
「ならば完璧な半神少女がいるとでも?」
カクトス
「ぁあ。会わせてやるよ」
ベリブルー
「何!?」
カクトス
「あの方こそが完璧な半神少女だ」
ベリブルー
「...そうか。
確かにカクトス。
お前からも力強い光武を感じる」
カクトス
「言ったろ?
俺は昔とは違うってよ。
...ベリブルー。
俺達の手で腐った帝国をぶっ壊すんだ。
今の四大天に
"主席 ・ 祓悪使 "はいねぇ。
邪魔になる戦力はいねぇ!!」
N
するとカクトスは瞳孔を開き
笑みを浮かべた。
カクトス
「今が好機だベリブルー!!!」
ベリブルー
「それが私の使命だと言うのか...
だからあの時、生かされたと言うのか...」
カクトス
「ミカエル様がお救いになったんだ!!
アンタはあのキスツスと戦って
生き延びたんだぞ!?
こんな奴らの為に生き延びたんじゃあねぇ!
そんな想いをする為に
お前は生き延びたんじゃあねぇ!!
そうだろ!?
お前は何の為に生き延びたんだ!?」
ベリブルー
「私は...私の正義の為に」
カクトス
「ベリブルー!!!
こんな馬鹿どもの為に命を張る必要もねぇ!!
むしろ害悪だ!!!!!
ミカエル様は浄化してくれって
俺たちに言ってんだよ!!!!!」
N
ベリブルーは虚な瞳で
辺りを見渡した。
ベリブルー
「私は...私は
こんな者どもの為に...
生き延びたんじゃあない。
私の正義はこんな者ドモノ...タメニ
ケッシテ...ナイ!!!!!!」
カクトス
「そうだ!!!!
こんな世界ぶっ壊しちまえよ!!!」
ベリブルー
「ゥオォオオオオオオ!!!!!」
N
ベリブルーの光武が大気を揺るがし
連鎖するように爆ぜていく。
カクトス
「そうだ!!アンタは超爆撃 だろ!!!」
ベリブルー
「ハァァァァァア!!!!!!!」
N
建物が次々と爆発し
人々は叫ぶ間もなく
爆炎に呑まれていった。
※音楽がある場合終わるまで待つ
ローザ▶︎▶︎▶︎N
N
ーーそして現在、ルリカ強襲の1時間後ーー
ニューモートにて
イーストキャピトルの地下鉄から
3人の男が降りて来た。
ハミデル
「やっと着いたぁぁあ!!!
え!?!?もう夜!?!?
ぁあ!!!長かった!!!!
何回乗り換えたら着くんだよ!!!
降りたら降りたで迷路だし!!!!
ちゃんとマップ見たんだろうな!?」
N
黄色いシャツにサスペンダーを
自身にバシバシ当てながら
男は叫んでいた。
すると、刺青だらけの腕を伸ばしながら
ドレッドヘアの男はハミデルをキッと 睨 んだ。
ユキヤ
「ァァーーー。うるせーっす。
列車の中でもずっと、うるせーっす」
N
その横で青髪をかき上げながら
アクビをする男がいた。
ジュダス
「ふぁ〜 。
早く案内しろよハミデル」
ハミデル
「あ、そうだね!!僕に任せてくれ!!
えーーーっとぉ。あっち!!
あっちかな!?あっ!!あっちだ!!
さぁ!行くぞ!っておい!!!!!
僕先輩なんだけど!?!?
知らないなら教えてやろうか!?
聞いて驚くなよ!?!?」
ジュダス
「何だようぜぇな」
ハミデル
「あの!!アキレイと!!!
ラナンとプラム嬢と!!
僕は!!同級生!!!分かる??
DOUKYUSEI!!!!」
ユキヤ
「へぇーラナンキュラス隊長を
ラナン呼びしてるんすねぇ」
ハミデル
「ア、アキレイだって、アッキーってーー」
ジュダス
「嘘つくなよ」
ハミデル
「お、おいユキヤ!!!
ツバキとジジとも僕は同級生だぞ!!
お前はーー」
ユキヤ
「次ツバキ隊長とジジ副隊長を
呼び捨てにしたら
ぶっ殺しますよ。先輩」
ハミデル
「どぇえええ!!!!!!
こ、こわいよぉお!!!ジュダスぅう!!」
N
ハミデルは半べそを掻きながら
ジュダスに抱きついた。
ジュダス
「触んな」
ハミデル
「こ、こっちも怖い!!!
っておかしいだろぅ!!!!
大体、僕は!!いや、この僕が
お前らの引率として来てやってんだぞ!!
デリシャスハムハムの名前がなかったら
エルドーラに入国出来なかったくせに!
いいか!?今日、お前らは僕の社員だ!!
僕は副社長だぞ!?!?
逆らって言い訳がーー」
ジュダス
「そうなのか!?
財布だって聞いたけど...」
ハミデル
「そうだ!!財布だ!!
ねぇ、みんな通帳みる?
0が庶民の君達よりずっと多い...
んな訳ないだろう!!!!
ユキヤの方が金持ちだろ!!
スノーマン家の資産舐めんな!!!
大体、誰が僕の事を財布だなんてーー」
ユキヤ
「俺、エルドーラの酒
飲んでみたかったんすよ。
ハムさん買ってもいいすか??」
ハミデル
「勝手に買えよ!!!!」
ユキヤ
「部下なら上司が出すんじゃないすか?」
ハミデル
「ぐぬぬ!!!
僕は1ベルクも出さな...
ハッッッッ!!!!!
つ、通貨ってドーラだよね???
替え忘れた!!!
こ、小銭は持ってたから列車は
何とかなったんだけど」
N
ユキヤとジュダスは冷めた目で
ハミデルを見ていた。
ユキヤ
「じゃぁ、帰っていいっすよー」
ハミデル
「確かに君たちを無事に送り届け
自家用飛行魔進 で
とんでもない量の燃料を使って
おまけに偽造IDまで用意したけど
帰るね!!あー観光でもしよっかなー!!
って帰るか!!ふざけるなよ!!!!
いい加減にしろ貴様ら!!!!!
これは千刃花の任務だぞ!?」
ユキヤ
「声でけぇすよ」
ハミデル
「ちゃんと段取りつけてあるんだろうな!?」
ユキヤ
「段取り??
エルドーラ側からは
突っぱねられたんすよ」
ハミデル
「ハァ!?!?」
ジュダス
「だから正規ルートで来れなかったのか」
ユキヤ
「そうだ。
本来なら俺はナーベルクの外交官として
招かれるはずだった」
ハミデル
「なぁにぃぃ!?
ビュッフェがあったかも
しれなかっただと!?」
ジュダス
「そっちかよ」
ユキヤ
「正式に招かれるとしたら
ハムさんが呼ばれる訳ねーっすよ。
役に立たないじゃないすか」
ハミデル
「てっきり...
僕の存在がエルドーラにとって
有益になるかと...
デリシャスハムハムの世界進出が!!
って誰が役に立たないだ!!!
貴様こそなんで選ばれたんだ!!
この不良め!!!」
ジュダス
「なんも聞いてねーのかよ。
ユキヤは法律家だ。
ナーベルクの法に詳しいから
選ばれたんだよ。家も名家だしな」
ユキヤ
「そー言う事。
って何でジュダスの方が詳しいんだよ」
ジュダス
「行く前に最低限の知識を
叩き込まれたんだよ」
ユキヤ
「マジか...おっかねぇ」
ハミデル
「法律家!?べ、弁護士か!?」
ユキヤ
「千刃花側のっすね。
んまぁ一応、検察って奴ですよ。
だから、ハムさんをいつでも検挙出来ますよ
適当にでっちあげれますから。
どうせ横領してんすよね?」
ハミデル
「してないわ!!
それこそMARtHCOMPANY なんて
アキレイが好き放題やってるだろ!!」
ユキヤ
「え?聞こえないっす」
ハミデル
「都合のいい耳め!!!」
ジュダス
「ってかユキヤ
本当に大丈夫なのか??
急に来てエルドーラ軍に乗り込むんだろ?」
ユキヤ
「仕方ねーよ。
ウチも切迫してんだ。
何とかなるさ。状況は互いに半々だしな」
ハミデル
「じゅ、重大だな...
何するか分からんが!!!
詳細を教えてくれ!!」
ジュダス
「外で話せるかよ」
ハミデル
「ハァ...復隊早々、とんでもない任務に
来てしまった気がする」
ユキヤ
「本当っすよ。
人手不足にも程があるっすね」
ハミデル
「おい貴様!!失礼だぞ!!」
ジュダス
「俺も入隊して分かったけど
ひでぇ有様だ。今のナーベルク帝国は」
ハミデル
「安心しろ貴様ら!!
僕がいればなんとかなる!!」
ユキヤ
「どんな任務かも分からないのに
よく言うっすね。
んまぁ、俺が分かってれば別にいーっすけど。
それに聞きましたけどハムさん。
復隊するの何度も断ったらしいじゃないすか
なのにヤル気が溢れすぎでしょ」
ハミデル
「逆に何で無いんだ貴様!!!!
ハァ。声出したら腹減ったなぁ
飯屋行こう!!エルドーラ料理楽しみだな!」
ジュダス
「おいハミデル」
ハミデル
「何だ急に!!」
ジュダス
「俺、金なんてねーぞ」
ハミデル
「何でだよ!!!
僕より良い給料もらってるだろ!!」
ジュダス
「だって先月まで無職だったし」
ユキヤ
「ハァ...んじゃまずは両替すね。
確か外貨両替所が近くにあると思うんで。
来る前に調べたんすけど...
ほら、あそこです。」
ハミデル
「助かったぁーーー。
見た目の割にしっかり者!!
流石はクリシャンテ先生の甥っ子!!」
ジュダス
「...おい」
N
ハミデルの一言で
ユキヤの顔が少し曇った。
ハミデル
「やめろよジュダス!!
そんな事言ったら傷つくだろ!!」
ジュダス
「いや俺言ってねーし!!」
ユキヤ
「気にしないでいいっすよ」
N
ユキヤの叔父であるクリシャンテは
ナーベルク士官学校の元校長であり
ナーベルク帝国皇帝に次ぐ権力を持つ
華四百花 でもあった。
先日、敵対するラミオラス帝国の将軍でもあり
ハミデルの同級生でもあるルビウスに
国民の前で斬首されたばかりだった。
その際に敵国に情報を漏洩していたと
ルビウスから暴露され
ナーベルク帝国に激震が走った。
ユキヤ
「クリシャンテは偉大な人でした。
俺ん中ではそれはずっと変わんねぇっす」
ハミデル
「...ユキヤ」
ジュダス
「おい、行かねーのか?
エルドーラに遊びに来たのかよ」
ユキヤ
「フンッ。
おいジュダス、そんな先急ぐなって
道わかんねーだろ?」
ジュダス
「早く来いよハミデル!!」
ハミデル
「行くよ!!ってお前!!
さっきからナチュラルに話してたが
この僕にタメ口聞くなんざ3万年早い!!」
ユキヤ
「いや、良いんじゃないすか?
俺たちより役職上だし」
ハミデル
「キィーーーーー!!!
生意気な奴め!!!!!!
誰だあんな奴を副隊長に推したのは!!」
ユキヤ
「冥府大監獄 捜索隊の隊長格すよ。
一緒に行ったら納得したんじゃないすか?」
ハミデル
「だだだだ誰が行くか!!あんな怖い所!!
そもそも敵国の監獄に行くって発想が
狂ってんだよ!!!」
ユキヤ
「俺は行きたかったっすけど。
何でツバキ隊長は俺の事
連れてってくれなかったんすかね」
N
話しているうちに
ジュダスに追いついた2人は
外貨両替所に到着した。
ジュダス
「ハミデル。とりあえず俺の分も頼む」
ハミデル
「はーい!!!!いくら??え?全部!?
分かったーー!!!ってならないからな!?
おい!!お前!!
隊から支給された金はどうした!!!」
ジュダス
「着るもん無かったから服買ったり、
日用品買ったりしたんだよ。残りは...
身寄りのない子供達に寄付した」
ユキヤ
「フンッお前馬鹿だなー」
ハミデル
「お、お前...って奴は...
そ、そんな事言われたら...ぐぬぬ。
ほらよ!!!持ってけ泥棒!!!」
N
ハミデルは札束をジュダスに叩きつけた。
ジュダス
「悪りぃな」
ハミデル
「あと、タコさんウィンナーやる!!」
ジュダス
「いや金だけよこせ」
ハミデル
「それだけ聞いたら
さっきの感動がなくなるわ!!」
ジュダス
「胸ポケットに入れてるウィンナー
誰が食うんだよ。
しかも札束で包んで渡すんじゃねぇよ!!」
ハミデル
「返せ!!!!!ウィンナー返せ!!
もういい!!僕が食べるもんねー!!!」
ユキヤ
「返すのウィンナーだけでいいんすね」
ハミデル
「ぁあー!!自社製品は美味いなぁ!!
こんな商品作れる僕は最強だなぁあ!!」
N
ハミデルはタコさんウィンナーを
食べながらイジらしく2人を見ていた。
ユキヤ
「いやそんな目で見られても
羨ましくねぇっすよ」
N
ゴクリとウィンナーを飲み込んだハミデルは
外貨両替所の窓口にどっさり札束を置いた。
ハミデル
「早く両替しろ!!!
ぼったくったらどうなるか
分かってんだろうな??
こっちには青髪の童貞と
イレズミの猿がいるんだ。
そしてこの僕はーーーー」
ユキヤ
「馬車馬のハミデル」
ハミデル
「そうだこの僕は馬車馬のハミデルだ!!
って違うよ??おいユキヤ!!
それ誰から聞いた!!!!」
ユキヤ
「え、アキレイ隊長が言ってたっすよ」
ハミデル
「アキレイィィイ!!グヌヌッ!!
許さん!!」
ジュダス
「お、俺は別に童帝じゃねぇーー」
ハミデル
「ほぅ?相手は誰だ??
言ってみろ?ぉう??」
ジュダス
「相手?童帝ってのは童の帝
つまり最強の子供戦士って意味だろ??
俺はそんな強くねぇよ!!
それに俺はもう子供じゃねぇ!!」
ハミデル
「字が違ーーう!!!!
何だそれ童貞の極みみたいな言い方は!!
賢者に謝れ!!!その前に誰だ!!!
ジュダスにそんなこと教えた奴は!!」
ジュダス
「ん?ジジが教えてくれたんだぜ」
ハミデル
「ろくでもねーな!!!」
ユキヤ
「ハムさーん。
後ろ並んでるんで早くしてもらえます?」
ハミデル
「何!?」
N
ふと、後ろを見ると
苛立つ人々がハミデル達を 睨 んでいた。
ハミデル
「す、すみませーん」
N
ハミデル達は急いで
ベルクからドーラに通貨を両替してもらい
店を出た。
ハミデル
「レート高すぎだろ...」
ユキヤ
「仕方ねぇーすよ。
一応、敵国同士すから需要無いんす。
向こうも商売っすからね」
N
するとジュダスは何か考え事をしていた。
ジュダス
「そういや、ウィンナーなんて食いもん
食べた事ねぇな」
ハミデル•ユキヤ
「え!?」
ハミデル
「山に囲まれた辺境にでも居たのかよ!!」
ジュダス
「そうだ」
ハミデル•ユキヤ
「えええ!?」
ユキヤ
「漁と狩りで生活してたなんて
言わねーだろうな?」
ジュダス
「いや、普通にそうだったぜ??
俺んちは親もいねぇし貧乏だったからな。
それに10年間の記憶もねぇんだ」
ハミデル•ユキヤ
「えぇえええ!!!!!」
ハミデル
「ジュダス...お前って奴は...
ほら、ウィンナー食え!!!」
ジュダス
「いらねぇ」
ハミデル
「返せウィンナー!!」
ユキヤ
「...早い。
もはや食べさせる気を感じねぇ」
ハミデル
「フンッ!!食べたくて土下座されても
お前にあげないもんねー!!!!!」
ジュダス
「食いたかったら自分で買う」
ハミデル
「え!?買ってくれんの!?」
ジュダス
「当たり前だろ?
だってそれ売ってんだろ?
ただで貰うのは作ってる人に申し訳ねぇ」
ハミデル
「な、な何だってェエ!!!ええ子や!!」
ジュダス
「ジニアが飯食った時に言ってたけど
すげぇウマいんだってな!」
N
クシャッと笑うジュダスの笑顔と
その言葉にハミデルは胸を打たれた。
ハミデル
((な、なんだその笑顔!!
その純真さ!!!これが...
ふみ子が言ってたジュダスきゅん))
N
ハミデルが胸を押さえている一方で
ユキヤはジュダスと肩を組んだ。
ジュダス
「お、おい!!」
ユキヤ
「そしたら今度は俺が酒を飲ませてやるよ。
まだ、飲んだ事ねぇーだろ??」
ジュダス
「ね、ねぇけど...」
ユキヤ
「エルドーラの酒は
米から作られてるらしいぜ。
ほら、飯食うついでに飲み行くぞ!!
ハムさーん!!いつまで胸押さえてんすか?
ハムさんいないと飯食えないっすよーー!」
ハミデル
「誰がおごるか!!」
N
するとハミデルの肩に誰かがぶつかった。
ハミデル
「イタッ!!!お、おい貴様!!!
一体誰にぶつかってーーーー」
ニゲル
「話しは...聞いた...
メシ...食わせ...ろ...」
N
そしてそのまま倒れてしまった。
ハミデル
「ぇえええええええ!!!!!」
※音楽がある場合終わるまで待つ
カクトス▶︎▶︎▶︎N
N
ーールリカサイドーー
構成曜員 に襲われたその翌日
ルリカは学校帰りに
イーストキャピトルにある
花屋"アヤオカ花店"に来ていた。
ルリカ
「相変わらずユリアちゃん面白かったなー
なんでいつもテスト赤点なんだろ。
今度勉強教えてあげなくちゃ」
N
するとルリカはピンクのバラに顔を寄せると
香りをかいだ。
ルリカ
「これとか良さそう!!
なんかモバラちゃんぽいなー。
あ、これはカエデちゃんぽい!!」
N
ルリカは部屋に飾る花を選びながら
昨日の事を思い出していた。
ルリカ
「こっちの赤いバラは...
ハァーー昨日の人すごかったなぁ」
※音楽がある場合終わるまで待つ
----------------------------
N
ーー構成曜員 との戦闘後
ハミデル一行が到着する1時間前ーー
ニゲルが光域 を破壊してしまい
周囲に音が漏れ聞こえてしまった為
構成曜員 達の叫び声で
人が集まりつつあった。
ルリカ
「ありがとう...ございます」
N
ルリカは後ろで気を失っている構成曜員 を
見ながらニゲルにお礼を言った。
ニゲル
「...逃げるぞ」
ルリカ
「え!?ちょっ!!」
N
ニゲルはルリカを抱き抱えると
翼を羽ばたかせて空へ飛び立った。
ルリカ
「ちょっと!!待ってくださぃぃい!!
ス、スカートと帽子がーーー」
ニゲル
「うるせぇ。ブン殴るぞ」
ルリカ
「ヒィッ」
N
ビルの屋上にある広告看板の裏側へ
ルリカと共にニゲルは降り立った。
ルリカ
「きゃーーーー!!!」
ニゲル
「っと。
ここなら誰も来ねぇな。」
ルリカ
「ハァ...ハァ...
あの...!!誰ですか!?!?」
ニゲル
「ぁん?」
ルリカ
((か、顔が怖いぃぃ!!!))
N
ルリカはニゲルの肩に腕を回したまま
顔が青ざめていた。
ニゲル
「いつまで捕まってんだ。離せガキ」
ルリカ
「は、はい!!」
ニゲル
「それで??
...半神少女だって?」
N
ドクロのマスク越しに 睨 むニゲルは
ルリカに詰め寄った。
ルリカ
「い、いえ...滅相もございません!!
わ、私が半神少女様だなんて
ミカエル様のバチが当たります!!!」
ニゲル
「だよな??
この国では半神少女は
実質、皇帝よりも偉い。神聖な存在だ。
なんたって神の力を半分持ってんだからな」
ルリカ
「そ、そうですよ!!
私はただの女子高生です!!」
ニゲル
「そうか。んじゃぁ...分かってるよな?」
ルリカ
「え??」
ニゲル
「おっぱい見せろや」
ルリカ
「いやぁぁあーーー!!!! パンッ」
ニゲル
「ッッ!!このクソガキ!!」
N
ルリカの平手がニゲルの頬を叩いた。
ニゲル
「馬鹿野郎!!変な意味じゃあねぇ!!
誰が好んでガキの胸を見んだ!!!
ごちゃごちゃ言ってねーで早くしろ!!!
じゃねぇとその制服引きちぎるぞ!!!!」
N
するとルリカは震える手で胸元を押さえた。
ルリカ
「実は私...誰にも見せた事ないんです。」
ニゲル
「誰にも...
やっぱりそうか。お前の胸には刻印ーーーー」
ルリカ
「おっぱい」
ニゲル
「いやそっちかよ!!
バカか。半神少女には等しく
熾印痕が刻まれてんだよ。
鎖骨の下あたりにな!!!」
ルリカ
「へ?」
ニゲル
「いいか。
お前が本当に半神少女なら
あるはずだ」
ルリカ
「...その」
ニゲル
「で?お前は半神少女なのか?
そうじゃあねぇのか??
半神少女ならココに
熾印痕があるはずだ」
N
ニゲルは自らの胸を指さした。
すると、ルリカは怪訝な表情を浮かべた。
ルリカ
「...その傷」
N
ルリカはニゲルの胸元から
僅かに見える傷跡に手を当てた。
ルリカ
「苦しかった...ですよね」
N
ルリカは傷跡を眺めながら
目に涙を浮かべていた。
ニゲル
「離せ」
ルリカ
「あっ...すみません。
つい、触ってしまいました」
ニゲル
「いいから熾印痕があるか見せろ。
命狙われてんだぞ?死にてぇのか?」
ルリカ
「い、嫌です!!!
しかも熾印痕ってなんなんですか!!」
ニゲル
「アザみたいなもんだ」
ルリカ
「アザ?そんなのありません!!
ほら!!!!」
N
バッと制服をまくしあげると
ニゲルに胸元を見せた。
ニゲル
「...ねぇな」
ルリカ
「も、もういいですか??」
ニゲル
「ぁあ。悪かった」
N
するとルリカは膝から崩れ落ちた。
ルリカ
「ぁあ!!私の純情が...こんな人に!!
ミカエル様!!どうかお許しを!!!」
ニゲル
「そんくれぇで純情とかほざくなガキ」
ルリカ
「ひ、ひどいです!!!!」
ニゲル
「って事は...創世ノ爪痕 の勘違いか?
いや、そんな訳はねぇ。
...じゃぁ、一体なんなんだ」
ルリカ
「その創世ノ爪痕 って
なんなんですか??」
ニゲル
「創世ノ爪痕 ってのは
分かりやすく言えば狂信者の集まりだな」
ルリカ
「そ、その創世ノ爪痕 が
何で私を狙ってるんですか??」
N
すると突然、ニゲルは腹を押さえた。
ニゲル
「は、腹減った...」
ルリカ
「え!?!?」
ニゲル
「俺はこの能力を使うと
猛烈に腹が減るんだよ...
ーーーーッッ!?誰だ!!」
ローザ
「何故、狙われているのか
知りたいならアタシと来なさい」
ルリカ
「ス、創世ノ爪痕 !?」
ニゲル
「いや、違う。コイツは...」
N
すると落ち着きを払った声でローザが言った。
ローザ
「アタシはローザ=S=エルファーラ」
ニゲル
「その隊服。祓悪使 じゃあねぇな」
ローザ
「お前もな。その光武...
その姿。こちら側の人間だとは思えん。
そもそも人間かも怪しい」
ニゲル
「どうだろうな」
ローザ
「アタシは 光唱喇叭隊 大唱長。
エルドーラ軍の者だ」
ニゲル
「大唱長...
大唱長様がこんな所に何の用だ」
N
ローザはルリカを指さした。
ローザ
「アナタが宇治宮=瑠璃香ね?」
ルリカ
「エ、エルドーラ軍」
ニゲル
「...人気モンだな」
ローザ
「ただちにその娘を引き渡せ。
さもなければ、拘束し連行する」
ルリカ
「た、助けてください!!!」
ニゲル
「はぁ!?」
ローザ
「何を驚いている。
アタシはエルドーラ軍。
庶民が助けを求めるのは至極真っ当。
それで?アタシに名乗らせておいて
自分は名乗る名すら無いというのか?」
ニゲル
「お前に名乗る名なんてねぇよ」
ローザ
「無礼極まりない男だ」
『光唱 ・ 第八唱・"八光縛"!!』
ニゲル
「チッ!!!そうなるよな!!」
N
光の鎖が8方向からニゲルを捕らえる為に
襲いかかって来た。
ニゲル
「クソが...さっきの奴より
格段と早ぇ!!!!!」
ローザ
「ほう、 避 けるか。だが!!」
『光唱 ・ 第四唱・"減衰光重奏"!!』
N
光の音波が何層にも重なりニゲルに当たると
限りなく動きが遅くなっていった。
ニゲル
「チッ!!!!!減衰の光唱か!!」
『電光刹那 !!』
N
ニゲルの身体が一瞬放電すると
給水塔の上に移動していた。
ローザ
「高速歩法...。
詠唱も無しとすれば...
その姿は能力の解放後という訳か。
"人喰い鴉"」
ニゲル
「誰が"人喰い鴉"だ。
お前らが勝手に呼んでるだけだろ」
ローザ
「エルドーラ軍の中では有名だ。
初めてその姿を見たが...まるでーー」
ニゲル
「じゃあ俺の強さも分かってんだろ?」
ローザ
「負けた時の言い訳にしてはお粗末だな。
アタシの邪魔をするなら覚悟しろ。
まだ空を自由に飛びたいのだろう?」
ニゲル
「捕まる気なんてサラサラねぇよ。
デカ女!!」
ローザ
「もう遅い」
ニゲル
「何!?!?」
N
気付けばニゲルの右腕は
光の鎖に縛られていた。
ニゲル
「無言詠唱かよ。
さすがは大唱長様ってか」
ローザ
「8つの光の鎖がお前を絡めとる。
確かに無言詠唱は
限りなく威力が落ちるが...」
ニゲル
「まさか...」
ローザ
「述縛戒放により
その威力は補填される」
ニゲル
「グッ!!!」
N
述縛戒放とは
術前、術中に繰り出す技の説明や
能力を説明することによって
そのリスクと引き換えに
威力を増大させる能力である。
技の名を叫ぶだけでも威力は上がるが
そこに説明を含む事により
リスクが増し更に威力が跳ね上がる。
今回、ローザは無言詠唱で発動させ
ニゲルの油断を誘って右腕を拘束した後
述縛戒放により
光の鎖は伸び全身を拘束した。
ニゲル
「ならこっちも容赦しねぇぞ」
『電氣ーーー』
ルリカ
「待って!!!!」
ニゲル
「退けガキ!!!」
ローザ
「危ないから下がりなさい!!
アナタを傷付ける気はない!!」
ルリカ
「ローザ...さんでしたっけ!?
私を探してるなら無駄です!!!
だって私は...
半神少女様じゃありません!!」
ローザ
「...なんだと?」
ルリカ
「た、確かに助けてくださいって
言ったんですけど...
この人が傷つくのは見たくないんです!!」
ニゲル
「...ガキ」
ルリカ
「わ、私の事を創世ノ爪痕 から
護ってくれたのもこの人なんです!!」
ローザ
「名前も知らないのに
そこまで信用するものなの?」
ルリカ
「そ、それは...」
ローザ
「そこを退いてルリカ。
光武を見ればコイツが
只者じゃないのは分かってる」
ルリカ
「は、話し合いましょう!!」
ローザ
「話し合い?」
ルリカ
「だってローザさんは
私を護ってくれるんですよね!?
そ、それに…エルドーラ軍なら
庶民に手を出すのは良く無いと思います!!」
ローザ
「コイツが庶民じゃ無いことくらい
ルリカも分かるでしょう?」
ルリカ
「疑わしきは罰せずと私は教わりました。
慈悲の心を持って対話せよとも!!
ミカエル様があなたを見ています!!
ローザさん!!正しき行いを!!!」
N
真っ直ぐな瞳でそう訴えるルリカを見て
ローザはため息をつくと
指を鳴らして拘束を解いた。
ローザ
「ハァ... パチンッ」
ニゲル
「クッッ」
ルリカ
「ローザさん」
ローザ
「清らかな心ね。ルリカ」
ニゲル
「いいのかよ」
ローザ
「笑止。
本気を出せばいつでも逃げられただろう。
アタシを甘く見ないことだな」
ニゲル
「フッ。ありがとよデカ女」
ローザ
「口を慎め。
お前には名が無いみたいだがアタシにはある」
N
ローザはそう言うとニゲルを 睨 んだ。
ニゲル
「おっかねぇ」
ローザ
「そもそもお前の光武を見ても
初めから悪意を感じなかった。
感じていれば話す間もなく殲滅していた」
ニゲル
「そうかよ」
ローザ
「しかし、その能力…
祓悪使 でなければ
やはり、お前の姿はーーーー」
ニゲル
「俺はこの国を捨てた男さ」
ローザ
「捨てた?どういう事だ」
ニゲル
「捨てたんだ。何もかも」
ローザ
「多くを語る気は無い。というのか。
もういい。立ち去れ。ルリカは預かる」
ニゲル
「預かる...か。
ちゃんと確認したのか?」
ローザ
「熾印痕の事まで知っているとは...」
ニゲル
「ちなみに無かったぜ」
ローザ
「信用ならん。
ルリカ...いい?」
ルリカ
「は、はい!!!」
ローザ
「胸を見せてちょうだい」
ルリカ
「え!?!?」
ローザ
「アザがあるか確認したいの」
ニゲル
「デカ女にも見せてやれよ。その俎板」
ルリカ
「ひ、ひどい!!!!」
ローザ
「無礼極まりない男だ。
気にしないでねルリカ。
アタシが早く来ればこんな男に
見せることも無かったのに...。
お願い。一度見れればそれでいいから」
ルリカ
「わ、分かりまし...た」
N
そしてルリカはローザに胸を見せた。
ローザ
「無い。」
ニゲル
「だろ?ぺったんこなんだ」
ローザ
「黙れ」
ルリカ
「ひどいですぅう!!!!」
ローザ
「もういいルリカ。ありがとう」
ルリカ
「は、はい」
ローザ
「服を着なさいーーー」
N
そう言ってルリカの身体に触れた瞬間
ローザ•ニゲル
「ッッ!!!」
N
光武が渦を巻き
ルリカの全身が光り輝き宙に浮いた。
ニゲル
「これは!!!」
ローザ
「どう言うことだ!!!!!!」
ニゲル
「今すぐ光域 を降ろせ!!
増幅する前に!!早く!!」
ローザ
「グッ!!!」
『光唱 ・ 第九唱・"不可視ノ光域 "!!』
N
ローザが天に向け詠唱すると
オーロラのようなカーテンが広がり
辺り一面を包み込んだ。
ニゲル
「おいガキ!!しっかりしろ!!!!」
ローザ
「グッ!!一体これは!!!!!」
N
するとルリカの声が響く。
それは神々しく尊大で
暖かい日差しの様だった。
ルリカ
((月夜が闇魔に包まれる時
選ばれし乙女に光が降りる。
そして、与えられん
数多を照らす神晶光武を。
祈りを捧げよ。
祈りを捧げよ。
悪魔を祓い光を灯せ。
今際の世界に
大天使 の祝福を))
ローザ
「これは!!!福音の兆し!?
グ、グァァァ!!!!頭が!!!!」
ニゲル
「おいデカ女!!!!!」
N
ローザは頭を抱えて膝から崩れてしまった。
ローザ
「光武が!!!アタシの中で!!」
ニゲル
「俺が抑える!!!」
N
ニゲルがルリカに手を翳すと
光は更に膨張し突然、弾けた。
ニゲル•ローザ
「グッッッ!!!」
ルリカ
「み、みんな!?どうしたの!?!?」
N
ルリカは倒れる2人を見て驚いていた。
ローザ
「ハァ...ハァ...まさか...
いや、これは...アナタが...」
ニゲル
「とんでもねぇ、光武だ。
熾印痕もねぇのによ」
ローザ
「今日は...もう帰りなさい」
ルリカ
「で、でも...」
ローザ
「アタシが...送っていくから」
ニゲル
「信用ならねぇな。
連れていく気だろう?」
ローザ
「アタシは...同意無しで
連れて行く気は無い」
ニゲル
「...エルドーラとしてそれは良いのか?」
ローザ
「たとえ、エルドーラ軍の総意でも
1人の少女の人生を...
勝手に変えては...いけない。
それはミカエル様も
望んではいないわ」
ニゲル
「話が分かる奴もいんだな。
エルドーラに連れて行けば身の安全は
保証されるんじゃないのか?」
ローザ
「えぇ。自由と引き換えにね。」
ルリカ
「自由と...引き換えに」
ローザ
「来るか来ないか決めるのは
ルリカが決める事」
ニゲル
「お前も...気づいたろ?
ルリカは特別だ」
ローザ
((ルリカはやはり...
私が求めていた人かもしれない))
ルリカ
「え、え!?どう言うことですか?
わ、私、ホームに帰って良いんですか!?」
ローザ
「ぁあ。アタシが責任を持って送り届ける。
しばらくの間、護衛もしよう」
ニゲル
「じゃぁ、めんどくせぇ事は
デカ女に任せるぜ。
それよりも早く光域 を解け。
俺は腹が減って死にそうだ」
ローザ
「この期に及んで...お前と言う奴は」
ルリカ
「ま、まぁ、帰れるなら...いっか」
ニゲル
「おいガキ」
ルリカ
「は、はい!!」
ニゲル
「あばよ」
N
そう言ってニゲルは夜の闇へと消えて行った。
※音楽がある場合終わるまで待つ
ルリカ▶︎▶︎▶︎N
N
ーーニゲルサイドーー
ルリカ、ローザと別れた直後
ニゲルは空腹のあまり
ハミデルの前で倒れてしまった。
ハミデル
「だ、誰ぇぇええ!!!!」
ジュダス
「どうした!!」
ユキヤ
「下がれ俺が診る」
ニゲル
「腹...減った」
ジュダス•ハミデル•ユキヤ
「ハァ!?!?!?」
N
ーー数分後ーー
ニューモートにある居酒屋"モモチ屋"にて
勢いよくエルドーラ料理を流し込むニゲル。
それをただただ呆然と見るハミデル達
ハミデル
「そ、それで...
普段は行きずりの女を捕まえて...
飯を食わせて貰ってる...と
今日はそんな時間がなくて
丸一日、飲まず食わずだったって事だっけ?」
ニゲル
「そうだ!!!」
ハミデル
「いや、クズか!!」
ジュダス
「クズだな」
ユキヤ
「ハーッハッハッ!!
面白れぇおっさんだな!!」
ジュダス
「夢があるって言ってたから
働いてねーんじゃねぇの?
目的の為なら金なんて二の次だしな」
ハミデル
「いやバンドマン!?
確かに見た目はそんな感じが...って
おい、その歳でその夢は諦めた方が...」
ユキヤ
「何言ってんすか。
人の夢は終わらねぇ。
いや、夢を失くしたら
どうやって生きてくんすか?」
ハミデル
「働けよ!!!!」
ユキヤ
「ぁーあ。つまんねぇ大人には
なりたくないっすねぇ」
ハミデル
「いやだって
もうこのおっさん中年よ!?」
ユキヤ
「ツバキ隊長だって
大きな夢があるし
アナスタシア隊長もアキレイ隊長も
んーーー
クーワ隊長とラナンキュラス隊長以外は
みんな夢を持ってんすよハムさん」
ハミデル
「そこと比べるな!!!
アイツらのは夢じゃなくて野望だよ!!」
ジュダス
「にしても、おっさん
凄い勢いで食べるんだな...」
ハミデル
「食べ過ぎだろ!!
コイツ自分で払わねぇだろ!」
ユキヤ
「野暮っすよハムさん。
おら、呑め呑め!!」
ハミデル
「お、おいジュダス!!
30分は食べ続けてるけど
今、勘定はどのくらいになる!」
ユキヤ
「これも食え!!あ、すんません!!
8本足コウモリの素揚げを一皿!!
あと、米酒をもう一升!!」
ジュダス
「いくらか分かんねぇ。
でもよ、腹空かせて倒れるくらいだろ?
今はいいじゃねぇか。フッ」
N
ジュダスはニゲルを見て微笑んでいた。
ハミデル
「そうだな!!気にしなくていっか!!!
さぁ!!もっと食べるがいい!!!
今日は僕のおごりだ!!
ってならないよ!!!!!
そもそも誰だよ!!このおっさん!!!
初対面だよ!?初めまして!!!」
N
すると、ニゲルは米酒を
一気に飲み干した。
ニゲル
「ふぅーーーー。恩にきる。
出来れば明日も頼む」
ユキヤ
「おー!!いいね!!!」
ハミデル
「旅は道連れって言うしね!!!!
あ、すみません!店員さん!!僕とコイツらの
勘定を分けて貰っていいですか?」
ジュダス•ユキヤ•ニゲル
「うわぁーーーーーー」
ハミデル
「な、な何だその目は!!
いや、そもそもジュダスとユキヤは
まだいい!!!
なんでお前までそんな目なんだ!」
ニゲル
「後輩の前で格好もつけられないとはな。
...お前にプライドはねぇのか?」
ハミデル
「こっちのセリフだよ!!
大体ね!!人の金で飯食って
名も名乗らないなんて非常識だぞ!!」
ニゲル
「ハァーー」
ハミデル
「何のため息だよ!!」
ジュダス
「落ち着けって。
なんか事情でもあんだろう」
ユキヤ
「そうだぜ。
変な奴だったら
とっちめりゃあ良いんだよ。
な?おっさん」
N
そのやりとりを見ていたニゲルは
辺りを見渡していた。
ジュダス
「どうした?」
ニゲル
「歩きながら話そう」
N
ニゲルはそう言って席を立つと
ジュダスとユキヤも後に続いた。
ハミデル
「え、ぇえええ!!!」
N
ハミデルは渋々、勘定を済ませると
店を出た。
ハミデル
「な、なんで僕が払うんだ...」
ニゲル
「行くぞ」
ジュダス
「早くしろよ」
ユキヤ
「遅かったっすね」
ハミデル
「グヌヌッ!!貴様ら!!!」
ニゲル
「飯の礼は必ずする。
女だったら抱いてやるが
男を抱く趣味はねぇ」
ハミデル
「どんな礼の仕方なんだよ!!」
ジュダス
「抱く?抱くってなんだ?」
ユキヤ
「おーおー!純情だねぇジュダス」
N
そしてニゲルは路地裏を進んで行くと
タバコに火をつけた。
ニゲル
「フゥーーー。
あんまり名乗るのは好きじゃあねぇ。
だが命の恩人は別だ」
ジュダス
「名乗んのに
そんなにハードル高いのかよ」
ニゲル
「俺は...
ニゲル=ヴァイオレット=グリムウェイ」
ハミデル•ジュダス•ユキヤ
「ッッッッ!?!?」
ハミデル
「グリムウェイ!?!?」
ユキヤ
「あのグリム童話の!?!?」
ジュダス
「ぽんぽこタヌキと紅葉の滝とかのか!?」
ニゲル
「そうだ。だから嫌なんだよ」
ユキヤ
「まぁ、色々言われる気持ちは分かるぜ」
ハミデル
「有名人だもんね!!」
ジュダス
「仕事は何かしてんのか?」
ニゲル
「俺はフリーランスのジャーナリスト。
無職だ」
ハミデル
「いやどっち!?」
ニゲル
「最近は記事も中々売れなくてな。
ほぼ稼ぎはねぇ。
金のためにゴシップを書く事もある。
若い頃はお前らナーベルク人の六大貴族も
追っかけてた事もあるぜ」
ハミデル
「もしかして...あー!!!!!
ラナン達に見つかったらお前命ないぞ!!」
ユキヤ
「ちょっと待て...おい。
なんで俺らがナーベルク人って分かんだよ」
ニゲル
「元・上位 十士族 スノーマン家に
株式会社デリシャスハムハムの副社長。
言ったろ?俺はジャーナリストだ。
何でも知ってる」
ジュダス
「まさか...俺のことも知ってーーーー」
ニゲル
「誰だ?」
ハミデル
「知らねぇーのかよ!!」
ニゲル
「何の用でこの国に来た。
千刃花の隊長格が来るって事は
それなりの理由があるはずだ」
ハミデル
「こ、このガラの悪い2人は
うちの会社の部下で
研修中なんだよ!!」
ニゲル
「信じられねぇな。
間違いなくお前らは軍人のそれだ」
ジュダス
「何が言いたいんだよ」
ニゲル
「礼は返す。どんな理由か知らねぇが
俺はこの国に詳しい。
知ってる情報を教えてやる」
ハミデル
「何!?!?じゃ、じゃぁ...
や、安いホテル!!」
ニゲル
「その角を曲がった先に
カチャーナというラブホテルがある」
ハミデル
「ビジネスの方だ!!!」
ニゲル
「それなら戻って左にすぐある」
ユキヤ
「良い酒を教えてくれ!!
おすすめは何だ!!」
ニゲル
「それなら喉越しは炎
舌触りは苛烈。
有名な米酒ホムラがおすすめだ」
ジュダス
「お前らそんな情報でいいのかよ」
ハミデル•ユキヤ
「確かに!!!」
ハミデル
「でも、特にないもんなぁ」
ジュダス
「俺はあるぜ?」
ニゲル
「言ってみろ」
ジュダス
「創世ノ爪痕 はどこにいる?」
ニゲル
「何!?」
ユキヤ
「創世ノ爪痕 ??
飲み屋か???」
ハミデル
「バカめ!!創世ノ爪痕 はキャバレーだ!!」
ジュダス
「そうか。お前らに言ってなかったな」
ニゲル
「何故それを」
ジュダス
「何でも知ってんだろ??
それに、アンタの刃汽...
少し揺らいで分かった。
とんでもねぇ刃汽量だな。
アンタ、ただのジャーナリストじゃねぇだろ」
ユキヤ
「なるほどな」
ハミデル
「え!?え!?え!?」
ニゲル
((抑え込んだ光武を見破りやがったか...))
ジュダス
「何者だアンタ」
ニゲル
「お前こそ...何者だ」
ハミデル
「ど、ど、どう言う事!?」
ユキヤ
「どうやら酒がもっと必要みてぇだな」
※音楽がある場合終わるまで待つ
配役変更
----------------------------
ジュダス▶︎▶︎▶︎サーズデー
ローザ▶︎▶︎▶︎N
----------------------------
N
ーールリカ襲撃の翌日ーー
イーストキャピトルにある花屋"アヤオカ花店"で
ルリカが買い物をしている同時刻
創世ノ爪痕 のアジトにて
カクトス
「おい、聞き間違いか?」
サーズデー
「ガハッ」
カクトス
「ならもう一度言ってみろッッ」
N
サーズデーを蹴り飛ばすカクトス。
それを見るサタデーとチューズデーは
怯えておりサンデーだけが 俯 いていた。
サーズデー
「マンデー、ウェンズデー、フライデーは
人喰い鴉 の横やりにより
半神少女の件は失敗に終わり
3人は重症を負いましーーーー」
カクトス
「偽半神少女だ」
サーズデー
「も、申し訳ありません」
ベリブルー
「報告が遅れたのは何故だ」
サーズデー
「意識を取り戻すのに時間がーーーー」
カクトス
「うるせぇ!!」
サーズデー
「申し訳...ありません」
カクトス
「奴ら3人が何で来ねぇんだよ」
サーズデー
「身体が麻痺してしまい
動けない状態で...」
ベリブルー
「麻痺...まさか...」
サーズデー
「何やら感覚機能が麻痺したらしく...」
カクトス
「どうした?
思い当たる節でもあんのか?」
ベリブルー
「いや、少し懐かしい奴を思い出してな。
詳細は聞けたのか?」
サーズデー
「それが...まだ...ウグッ」
N
すると、カクトスはサーズデーの首をつかみ
持ち上げた。
サーズデー
「アガッ...ウグッ...グッ」
カクトス
「おい。1日あって
詳細も聞き出せてねぇのか?ぁん??
報告ってのがどんなもんか
その身体に教えてやろうか?」
ベリブルー
「カクトス」
カクトス
「いつ、どこで
人喰い鴉はどんな能力で
何故、邪魔立てをして、どうやって逃したか。
それが分からねぇんじゃあ
どうしようもねぇよな?
そんな奴は創世ノ爪痕 にいらねぇんだよ。
...もう死ね」
ベリブルー
「カクトス!!」
N
ベリブルーはカクトスの手を掴んだ。
カクトス
「離せ。今コイツと話してんだよ」
ベリブルー
「会話になっていない。
お前の一方的な制裁だ」
カクトス
「うるせえ。奴ら3人は後で始末する。
んでこのバカもな」
ベリブルー
「構成曜員 の幹部は7人だろう...
欠けた曜日はどうするつもりだ」
カクトス
「替えはいくらでもいんだ。
こいつらは創世ノ爪痕 の幹部として
落とし前をつけさせる」
ベリブルー
「カクトス。
それでは構成曜員 がいなくなってしまう。
私の元部下もいるんだ。
それに、まだあの少女は
エルドーラの手に落ちてはいないだろう」
カクトス
「だから何だ」
ベリブルー
「もう一度言う。離せカクトス」
カクトス
「離さなかったら?」
N
睨 むカクトスに対して
ベリブルーは全く動じず
光武を互いに迸らせていた。
カクトス
「チッ」
N
カクトスは悪態をつきながら
サーズデーを放り投げた。
サーズデー
「グッ!!!!!!ゴホゴホゴホゴホッッ」
カクトス
「失せろお前ら!!!」
サーズデー
「は...い」
N
そう言うと構成曜員 達は
背を向けて歩いて行った。
ベリブルー
「何故、そんな焦る必要がある
そんなにあの少女が特別だとでもーーーー」
カクトス
「サーズデー」
サーズデー
「は、はい!!...え?」
ベリブルー
「やめろカクーーーー」
カクトス
『光唱 ・ 第二唱・"連撃疾風光矢 "』
サーズデー
「ぎゃぁぁぁあ!!!!」
N
怒涛の光の矢がサーズデーの身体を貫いた。
カクトス
「落とし前つけさせるって言ったろ。
チューズデー。このゴミを片付けろ。
サタデー。フライデー達を始末しとけ」
ベリブルー
「...カクトス」
N
構成曜員 達が部屋から出ていくと
カクトスはベリブルーを 睨 んだ。
カクトス
「おいベリブルー!!!!」
ベリブルー
「何だ」
カクトス
「何の真似だ!!」
ベリブルー
「何の事だ」
カクトス
「サーズデーの前で俺をコケにしやがって!」
ベリブルー
「コケだと?
お前の方こそ粛正する必要は無かった」
カクトス
「生半可な覚悟の奴はいらねぇんだよ。
それにベリブルー。
創世ノ爪痕 のボスは俺だ!!」
ベリブルー
「部下がいなければ創世ノ爪痕 は機能しない。
人の上に立つべき者は下の者を支えるべきだ」
カクトス
「ハッ!!なんだそりゃぁ!!
元 "主席 ・ 祓悪使 "だからって
いい気になんなよ!!」
ベリブルー
「力を誇示するべきではない。
策に溺れるぞ」
カクトス
「うるせぇ!!!
お前の時代は終わったんだよ!!
今は俺がボスだ!!」
ベリブルー
「...分かっている。
だが、新しい時代を共に創るのなら
私は平和の時代を築きたい」
カクトス
「今更、良い子ちゃんぶんなよ。
この手は血に染まってんだ。
もう遅ぇんだよ。俺も...お前もな」
N
するとカクトスは眼帯を押さえながら
天井を見上げた。
カクトス
「血で血を洗うしか
俺らに道は残されてねぇんだ」
※音楽がある場合終わるまで待つ
ハミデル▶︎▶︎▶︎N
N
ーーローザサイドーー
ローザは買い物をしているルリカの後ろを
護衛としてついて来ていた。
ルリカ
「ローザさーん。
そんなに離れてないで来てください」
ローザ
「いいや...アタシはここでいいよ」
ルリカ
「フフッ。そんな照れないで下さい」
N
ローザはため息をつくと
ルリカに近寄った。
ローザ
「アタシは照れてなんか無い。
アタシは...ほら...
デカイだろ?目立つのを避けたいだけ」
ルリカ
「もう充分に目立ってますから
心配いりませんよ」
ローザ
「...そうだよね」
ルリカ
「護衛なんか...いらないのに。
だって私は半神少女様じゃないですから」
ローザ
「本当に記憶がないの??」
ルリカ
「記憶??何のことですか??」
ローザ
「何でも無いわ。
狙われているのは変わらないから
知ってる以上はほっとく事は出来ないわ」
ルリカ
「良いんですか??
ローザさんって偉い人なんですよね?」
ローザ
「エルドーラ軍に
無理やり連れて行っていいなら
そうするけど?」
ルリカ
「い、嫌です!!!」
ローザ
「そうでしょ??
アタシはルリカの気持ちを尊重する」
ルリカ
「ローザさん...」
ローザ
「意思に反する事はアタシの本意じゃない」
ルリカ
「ありがとうございます」
N
ルリカは微笑んだ後
ふと、時計を見た。
ルリカ
「あ!!もうこんな時間!?!?
ローザさん!早く行きましょ!!」
ローザ
「ちょ、ルリカ!!どこに行くの!?」
ルリカ
「そんなに遠くないんで!!」
N
ルリカはそう言って手を引こうとしたが
ローザは瞬時に引っ込めた。
ルリカ
「ん?」
ローザ
「手を繋がなくとも
アタシは歩けるわ。ルリカ」
ルリカ
「そ、そうですよね!!」
N
そう言って2人は歩き始めた。
ローザ
「ねぇ、ルリカ」
ルリカ
「はい」
ローザ
「学校は楽しい?」
ルリカ
「はい!!とっても!!
もうすぐテストなんですけど
ユリアちゃん毎回追試なんで
勉強を教えてます!!」
ローザ
「勉強得意なの?」
ルリカ
「得意...かもしれません」
ローザ
「学年でどれくらい?」
ルリカ
「そ、その...」
ローザ
「恥ずかしがる事ないじゃない」
ルリカ
「そ、その...1番です」
ローザ
「凄いのね!!
将来はお医者さんになりたいの?」
ルリカ
「い、いえ!そんなつもりはないです!!
学費も高いですし」
ローザ
「親御さんが出してくれるわよ」
ルリカ
「私...親いないんです」
ローザ
「...そう。ごめんね」
ルリカ
「家族もいないんです。
でも!!学校に行けば友達がいますし!」
ローザ
「さっきのユリアちゃん??」
ルリカ
「はい!!」
ローザ
「どんな子なの?」
ルリカ
「ユリアちゃんは勉強が出来なくて
ドジで泣き虫なんですけど
一緒にいると楽しいんです!!」
ローザ
「可愛い子ね。
他にはどんな子がいるの??」
ルリカ
「カエデちゃんは
おっとりしててフワフワしてます!
写真を撮るのが好きで
よく私達を撮ってくれます!
少し家が厳しいんですけど
お父さんとお母さんも
お茶会に呼んでくれるんです!!」
ローザ
「仲良いのねぇ」
ルリカ
「でもモバラちゃんが
いつも騒がしくて
出た茶菓子を全部食べちゃうんです!!
あ、モバラちゃんの家は有名な華道の家元で
帝国に花を献上してるんですよ!!」
ローザ
「友達たくさんいるじゃない。
大切にしないとね」
ルリカ
「はい。だから私
寂しくないんです。
たまに、お姉ちゃんとかいたらなぁって
思いますけど...」
ローザ
「ルリカはしっかりしてるから
甘えたいのかしら?」
ルリカ
「そ、そんな事ないですけど...
どうですかねぇ。
でもお姉ちゃんとかいたら
ローザさんみたいな人がいいなって
思います」
ローザ
「アタシ??
どうして??」
ルリカ
「だって、カッコいいし強いし優しいし!!
頼りになりそうです!!」
ローザ
「カッコいい...かぁ」
ルリカ
「あ、すみません!!
美人って意味です!!」
ローザ
「いいのよ。
よく言われるから」
ルリカ
「よく言われるんですか?」
ローザ
「まぁね。
そう言えばルリカは夢とかあるの?」
ルリカ
「はい。
料理が好きなんで
帝国軍専属の総料理長になりたいんです!!」
ローザ
「料理好きなの??」
ルリカ
「こう見えても料理得意なんですよ!?
じゃぁ、今度作ってあげますね!!」
ローザ
「それは楽しみが増えたわね」
ルリカ
「嫌いなものとかありますか??」
ローザ
「特に無いかな。
ルリカが作ってくれるなら
何でもいいかな」
ルリカ
「それじゃつまらないですよ!
じゃぁ好きな食べ物はあります??」
ローザ
「好きな食べ物...
親子丼かな???」
ルリカ
「フフフッ親子丼??ウフフッ」
ローザ
「な、何か変な事言った??」
ルリカ
「いや、ただ...普通だなって!!
もっとオシャレなものを言うかと思って!!」
ローザ
「アタシはパパッと食べれて
流し込めるものが好きなんだ」
ルリカ
「分かりました!!
腕によりをかけて作ります!!!
約束ですよ?」
ローザ
「ぁあ...いつか食べられる日を
楽しみにしているわ」
ルリカ
「って私...
会ったばかりの人に何言ってるんでしょう。
すみません」
ローザ
「フフッ。聞いたのはアタシだから。
それにちゃんと女子高生してるなって
思ったよ。なんかいいね」
ルリカ
「フフッ。
なんか初めて会った気がしないっていうか
少し不思議な感覚です」
ローザ
「ルリカもそう思う?
アタシもそんな気がしてるの。
ねぇ?ルリカ」
ルリカ
「はい?」
ローザ
「好きな子いる?」
ルリカ
「え!?!?い、いないです!!」
ローザ
「本当??」
ルリカ
「本当ですよ!!
今は勉強が大切ですから!!」
ローザ
「ふーん。そう。
青春は謳歌した方がいいわよ。
二度と戻って来ないんだから」
ルリカ
「そんなローザさんは恋人いるんですか?」
ローザ
「気になる??」
ルリカ
「それは...ローザさんが聞くから」
ローザ
「アタシは...今はいないかな?」
ルリカ
「どんな人がタイプなんですか??」
ローザ
「うーん。ルリカみたいな子かな?」
ルリカ
「え!?!?私ですか!?!?」
ローザ
「ウフフ。冗談よ」
N
するとルリカは突然足を止めた。
ローザ
「ルリカ?どうしたの?」
ルリカ
「着きました!」
ローザ
「ここは...公園?」
ルリカ
「そうです!!ギヨヨ公園 ですよ」
N
ルリカが指を指す方には
仮設テントや電灯に明かりが灯り
人が賑わうなか列を成していた。
ルリカ
「私が住んでるラグエル孤児院が
毎週炊き出しをやってるんです」
ローザ
「孤児院...なのね」
ルリカ
「フフッ、同情は要りません。
仲のいい友達がいて
ホームには私の帰りを待ってくれるシスターや
子供達がいますし。
私はこう見えても幸せです。
この幸せがずーっと!!
続く事だけを願ってます。
きっと大天使 ミカエル様も
見守っててくれてますから!!」
N
幸せ。
そう言ってローザに微笑むルリカの笑顔は
戦乱の世とは思えないほど眩しかった。
ルリカ
「ローザさんも護衛してくれるなら
手伝って下さいね!!
人手は多い方が助かります!!」
ローザ
「もちろん。手伝うわ」
ルリカ
「ホームのみんなにも紹介しますね!!」
ローザ
「ぇえ」
ルリカ
「みんな軍人さんが来たら驚くだろうなぁ」
N
しかし、状況は一変する。
ローザ
「ルリカ!!!伏せてぇえ!!!」
ルリカ
「え?」
N
ギヨヨ公園 は
一瞬にして
爆炎に包まれた。
N
----------------------------
作者 REN’sJackson
劇情版
ー千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜ー
番外篇 4th Anniversary
Special Edition's Side Story 序破急−序−
【The Paralysed 】(完)
※音楽がある場合終わるまで待つ
----------------------------
N
おまけ
配役変更一覧
----------------------------
ジュダス▶︎▶︎▶︎左翼神官長老
ユキヤ▶︎▶︎▶︎右翼神官長老
ニゲル▶︎▶︎▶︎N
----------------------------
N
ーー数日前ーー
帝都イーストキャピトルにある
巨城メタトロンにて。
N
半神少女や皇帝に次ぐ権力を持つ
左翼神官長老と右翼神官長老が
両翼の間で話し合っていた。
赤いローブを深く被った
小柄な左翼神官長老は
杖をついたまま鎮座していた。
反対側には青いローブを深く被った
大柄な右翼神官長老は
部屋を行ったり来たりと
不安と焦燥が態度に出ていた。
左翼神官長老
「火急である。
半神少女様は...
いや、マーガレット様はもう限界じゃ」
右翼神官長老
「分かっておる。
しかし、どうしたものか...
まさか聖石である天卵石 が盗まれるとは
なんたる失態!!!!
あれが無ければ新たな祓悪使 は生まれて来ぬ」
左翼神官長老
「じゃがしかし、どのみち
天卵石 に血を注ぐ事は出来なんだ。
早急に見つけ出さねば...
エルドーラ帝国は終わりじゃ!!」
右翼神官長老
「ハァ...度重なる戦争によって
我が軍の四大天はほぼ壊滅。
この事が他国に知れ渡りでもしたら」
左翼神官長老
「エルドーラは陥落してしまう。
"主席 ・ 祓悪使 "がいなければ
他国の鞘花や神滅適合者
最高位魔術師 、尸諫術士といった
戦術核級の能力を持つ者どもに
対処出来ぬ。
祓悪使 や 光唱喇叭隊だけでは...
大天使 ミカエル様が
我らを試しておると言うのか...」
右翼神官長老
「こうしている間にも
隣国のアザジェノスは虎視眈々 と
我が国を狙っておるぞ!!!
やはり、今回の話し...
受け入れるべきじゃ」
左翼神官長老
「おいそれと尻尾を振れというのか!?」
右翼神官長老
「仕方なかろう。あくまでも対等に。
こちらの弱みは握らせはせぬ。
互いに利とする点は
幾つもあるじゃろうて」
左翼神官長老
「まだ分からんじゃろう。
それにマーガレット様には
ミカエル様からのお告げがあった。
もしそのビジョンが
福音の兆しだとしたら...
我々にも好機はある。じゃから今は...」
N
するとコツッコツッコツッと
靴のカカトを鳴らしながら歩く音が
ゆっくりと近づいてきた。
右翼神官長老
「来たか...」
左翼神官長老
「よう来た」
N
すると女はマントを翻えし跪いた。
左翼神官長老
「 光唱喇叭隊 大唱長」
ローザ
「ハッ。お呼びでしょうか
左翼神官長老様、右翼神官長老様」
左翼神官長老
「わざわざ前線から
戻ってもらってご苦労であった」
N
まるで男の様な巨躯に
ポマードで固められたオールバック。
一見、男かと見紛様な容姿だが
滑らかな肌と膨らんだ胸
フロアに響くその声はどこか神々しく
確かに女のそれだった。
右翼神官長老
「遠路はるばる長旅は疲れたかの?」
ローザ
「いえ、お気遣い感謝いたします」
左翼神官長老
「ローザよ。
おんしは 光唱喇叭隊に入隊し
2年で大唱長まで登り詰めた逸材」
右翼神官長老
「異例の新人よ。
大天使 ミカエル様に
愛されておられる様だ」
ローザ
「もったい無きお言葉」
左翼神官長老
「もうよい。楽にせよ」
ローザ
「ハッ!!」
N
ローザはバッと立ち上がり
肩幅に足を開くと腕を後ろに回した。
右翼神官長老
「して、"福音の兆し"は知っておるかの?」
ローザ
「はい。大天使 ミカエル様による御言葉です」
右翼神官長老
「そうじゃ。
半神少女様が
先日、そのビジョンを観たそうな」
ローザ
「ビジョン?それはつまり...
映像という事でしょうか??」
左翼神官長老
「分類するのであれば
予知夢の様なものだと思っておる」
右翼神官長老
「半神少女様は
こうおっしゃっていた。
月が闇に呑まれ大地が渇くその時
空から天使が現れ
虹の光で闇を祓った。と」
左翼神官長老
「ワシらはそれを"福音の兆し"と 睨 んでおる」
ローザ
「虹の光...という事は
神晶光武を指しているのかと」
右翼神官長老
「ワシらもそう思うておる」
N
するとローザは拳を握りしめ
少し興奮気味に口を開いた。
ローザ
「ではやはり!!!
新たな半神少女が
この国に現れたという事でしょうか!!
"主席 ・ 祓悪使 "がいない
我が国の戦力は
半神少女様の加護を受けた
数少ない祓悪使 と
我々、 光唱喇叭隊のみ!!!!
現状を鑑みれば
七大国の中で最弱と言っても
過言ではありませんでした!!!」
右翼神官長老
「ローザ」
ローザ
「...ハッ!!失礼いたしました!!
無礼をお許しください!」
左翼神官長老
「良い良い。
おんしが興奮するのもよーく分かる。
しかし、知っておろうな??」
右翼神官長老
「新たな半神少女様が
現れたという事は現半神少女である
マーガレット様は死ぬ。という事じゃ」
左翼神官長老
「だがそれも運命。
能力を引き継ぐ必要があるからのぅ」
右翼神官長老
「それにまだあるぞ??
神晶光武じゃ。
見つける事はエルドーラの悲願でもある。
この国の現状はおんしも言っていた通り
芳しくない。」
左翼神官長老
「神晶光武は
神の如き力の血晶体 。
つまり濃縮された光武の 塊 じゃ。
それがあれば"主席 ・ 祓悪使 "以上の能力を
手に出来るかもしれん!!」
右翼神官長老
「"福音の兆し"があった以上
おそらく神晶光武もあると
我らは 睨 んでおる」
ローザ
「しかし、長老様
神晶光武よりも
新たな半神少女様と
盗まれた天卵石 を見つけるのが
急務だと思いますが...」
N
ローザのその言葉に激震が走った。
左翼神官長老
「おんし...何故それを...」
右翼神官長老
「どこでそれを知った!!」
ローザ
「失礼しました。
しかし、我々 光唱喇叭隊や
祓悪使 の中でも
もっぱら噂になっておりました。
天卵石 が下賤の賊...
創世ノ爪痕 に盗まれたと」
右翼神官長老
「そこまで知っておるのか」
ローザ
「はい。」
左翼神官長老
「創世ノ爪痕 の実態は
まだ掴めておらなんだ」
ローザ
「しかし、あくまでも憶測でしか
なかったので特に対応する事もなく
今日に至ります」
左翼神官長老
「国境警備に当たっていたおんしが
その事を知っているという事は
他国に知れ渡るのも時間の問題じゃな」
右翼神官長老
「そうじゃな。
今、この国では戦力を削 ぐ訳には行かぬ。
我々が話している間にも、祓悪使 は
血を流し戦っておる。
"主席 ・ 祓悪使 "がおらぬ今
貴重な戦力である祓悪使 を
任に就かせる事は無理じゃ」
左翼神官長老
「ローザよ。斥候によれば
ヒカリ高校に通う1年生
宇治宮=瑠璃香という少女が
創世ノ爪痕 に命を狙われておる。
理由は明白じゃ。
その少女が半神少女なのじゃろう。
一体どうやって知ったのか...」
右翼神官長老
「半神少女の確認は
おんしも分かるじゃろう?」
ローザ
「はい。
ミカエル様に選ばれた半神少女には
胸の中央に熾印痕が刻まれております。
それを確認して
連れて来ればよろしいのでしょうか?」
右翼神官長老
「そうじゃ。
これは国の根幹 を揺るがす任務じゃ。
祓悪使 以外では
光唱喇叭隊 の 大唱長である
おんしにしか任せられぬ」
ローザ
「おまかせを」
左翼神官長老
「並びに、聖石 天卵石 の奪還じゃ」
ローザ
「かしこまりました」
右翼神官長老
「ローザよ。
創世ノ爪痕 の構成曜員 は
おんしと同じ光唱を扱えると聞く
くれぐれも気をつけよ」
ローザ
「ハッ!」
右翼神官長老
「では行け!!
必ず見つけ出すのじゃ!!!!」
ローザ
「ハッッッッ!!!」
N
そう言ってローザはマントを翻すと
部屋を後にした。
左翼神官長老
「この国の命運を 光唱喇叭隊の大唱長とはいえ
単独任務で大丈夫かのぉ」
右翼神官長老
「大唱長ならば
祓悪使 にも劣らぬ」
左翼神官長老
「しかし...創世ノ爪痕 には」
右翼神官長老
「そうじゃな」
左翼神官長老
「光に堕ちた元"主席 ・ 祓悪使 "がおる。」
右翼神官長老
「...あれからもう
どれほどの時が経ったのか」
左翼神官長老
「エルドーラ帝国 最後の"主席 ・ 祓悪使 "じゃった」
右翼神官長老
「まさか...あんな事になるとは」
※音楽がある場合終わるまで待つ
N
ーー数年前ーー
突如、ナーベルク帝国の南に位置するナターシャに
エルドーラ帝国軍葬送部隊 四大天が約千人と
エルドーラ帝国軍 三万人もの兵が空と海から来襲した。
唐突な襲撃にナーベルク帝国軍は
急造で編成したカルミア率いる五刃花隊五百人
キスツス率いる二刃花隊五百人
ナーベルク帝国兵が一万で迎え撃った。
同時期にラミオラス帝国軍に北から攻められており
ナーベルク帝国軍はまさに虚をつかれた形となった。
配役変更一覧
----------------------------
カクトス▶︎▶︎▶︎隊士A
ルリカ▶︎▶︎▶︎キスツス
----------------------------
N
ナーベルク帝国は一時優勢かと思われていたが
"主席 ・ 祓悪使 "である
ベリブルーの能力" 時限爆撃"により
五刃花隊はほぼ壊滅に追い込まれた。
その際に五刃花隊の隊長であるカルミアは
後に同隊隊長となるレンゲイに全てを託し殉死した。
この時、カルミアの娘でもあるニ刃花隊 隊長のキスツスは
ベリブルー抹殺の為
四大天に単身、乗り込んでいた。
キスツス
「パチン。
夜天狼おいで」
N
キスツスに呼応して白銀の二輪駆動魔進が
ブォンとエンジンをふかし走って来ると
キスツスは空中で夜天狼にまたがり
長く美しい銀髪とマントをはためかせながら
四大天のいる方へ消えていった。
ベリブルー
「この魔進 の音...
月光の鞘花か。
ゴホッゴホッゴホッゴホッ」
隊士A
「隊長!!大丈夫ですか?」
ベリブルー
「心配ない」
N
そう言ってベリブルーは
エルドーラ軍 移動式空母艦" D-2L"から
地上を見下ろしていた。
ベリブルー
「ぁあ、心配ない。
千刃花の野営地はすぐ下だ。
私が出る」
隊士A
「ハッ!!!!」
N
ベリブルーは司令室から甲板へ出ると
朝焼けの空に手をかざした。
ベリブルー
「跡形もなく消えるがいい千刃花」
『爆酸豪雨』
N
火花の様な赤い雨が野営地に降り注ぐ
着弾と同時に音を立て灰燼と化した。
そして、煙が晴れると
そこには荒野が広がっていた。
ベリブルー
「こんなものか...千刃花
ゴホッゴホッゴホッゴホッ」
隊士A
「隊長。千刃花は掃討しました。
帰還してすぐにでも
身体を診てもらいましょう」
ベリブルー
「いや、私はもう...」
隊士A
「しかし、隊長は最後の"主席 ・ 祓悪使 "!!
その命は何よりも重く...
ん!?隊長!!!あれは!!!」
N
荒野の真ん中にはキスツスが立っていた。
ベリブルー
「来たか」
隊士A
「あの爆撃の中で生き残ったというのか!!
ッッ!!全隊!!!
地上にいるキスツスに向けて
砲撃用意ッーーーー」
キスツス
「さようなら」
隊士A
「え?」
N
時すでに遅し。
隊士Aの身体は
真っ二つに切り裂かれていた。
ベリブルー
「来たか...キスツス!!!!」
N
地上にいるキスツス。
甲板にいるキスツス。
どちらが本物か判断が付かぬほど
まごう事なき幻影という確信。
ベリブルーは薄っすらと月が輝く空を見た。
ベリブルー
「上だ!!!!」
キスツス
「ウフフッ」
ベリブルー
『爆炎焼射 !!』
N
爆炎がキスツスを包んでいく
キスツス
「...ハズレ」
ベリブルー
「何!?」
キスツス
『滅刃 十八・月道』
ベリブルー
「ガッ」
N
夜天狼に跨ったキスツスが
遠くからベリブルー目掛けて
白い光線を放つと移動式空母艦" D-2L"ごと
ベリブルーの胸を貫いた。
ベリブルー
「ガハッ!!!
なん...だと!?鞘の開放も無しに
あんな...遠くから
私を...幻で魅入らせたのか!!!
待て...私の部下は一体!!」
N
目の前で斬られたエルドーラ軍の隊士の死体は
いまだに足元に転がっていた。
落下して行く" D-2L"の上で
ベリブルーは混乱していた。
すると、景色がクルクルと変わって行く
ベリブルー
「ど、どう言う事だ...
この荒野もこの空も全て...全て!!
幻だったというのか!!!!!」
N
すると、銀狼を携えたキスツスが
移動式空母艦" D-2L"の爆炎の中で
微笑んでいた。
ベリブルー
「ハァ...ハァ...ッッ
光武を隠していたのか...グッ
その莫大な光武の量に
比例する...術式は...」
キスツス
「幻か現か現か幻か...
真か嘘か白か黒か...
全ての確信は疑念に変わり
全ての疑念は確信に変わる。
息をしている君だって
自分が現実かどうかさえも分からない」
ベリブルー
「まさか!!!
鞘花の奥義...千年万花か!!」
N
するとキスツスは
ベリブルーに向かって微笑んだ。
キスツス
「さぁ?」
ベリブルー
「ゴホッゴホッゴホッッッ
一体...いつから!!!
一体いつから仕掛けていた!!!」
キスツス
「初めから」
ベリブルー
「初めから...だと?」
キスツス
「そう。初めから。
逆に私を相手にする時点で
疑念も確信も持っちゃダメだよ。
初めから部下もいないし
初めから君はそこにいた」
ベリブルー
「嘘だ...」
キスツス
「だって私はニ刃花隊 隊長キスツス=グレイ。
上官に習わなかった?」
ベリブルー
「クッ...」
N
地に這いつくばり
拳をギュッと握り締めるベリブルーは
自身の弱さに絶望した。
ベリブルー
((これが...ナーベルク最強の鞘花
...キスツス=グレイなのか。
格が...違う))
キスツス
「最期に言い残す事ある?」
ベリブルー
((最期...そうか...私は死ぬのか。
とうとう、"主席 ・ 祓悪使 "の中で
私が1番長生きをしてしまった。
ニゲル...もう少しで会えるな。
そっちで...
また酒でも酌み交わそうか))
N
すると、ベリブルーは最期の力を振り絞り
震える足で立ち上がり
目の前にいるキスツスを 睨 んだ。
ベリブルー
「グッ…ゴホッゴホッゴホッ
ならば、私の歩んだこの道はーーーー」
キスツス
『月光花 』
ベリブルー
「正しかっーーーーーー」
キスツス
「やっぱり聞くのやめた」
ベリブルー
「ッッ!?」
N
一閃、銀狼が煌めきキスツスが刃を振るうと
シュンッッと上空から光の刃が
ベリブルーの首をはねた。
ベリブルー
「っあ」
N
反転する世界の中で
キスツスと目が合うベリブルー。
その冷たい眼差しに
ベリブルーは底知れない恐怖を感じた。
キスツス
「パチン。
夜天狼おいで」
N
再びキスツスは
夜天狼に跨り
ベリブルーの首を携えると
流麗の如く遥か彼方へと消えていった。
※音楽がある場合終わるまで待つ
ハミデル▶︎▶︎▶︎N
N
しかし、ベリブルーは
ナターシャの森奥深くにある
湖の前で目が覚めた。
ベリブルー
「ハッ!!!!ハァ...ハァ...
私は一体...ここはどこだ!!」
N
ベリブルーは首を触ると
近くにあった湖に駆け寄り
水面に映る自分の姿を見た。
ベリブルー
「繋がっている。
私は確かにあの時...キスツスに」
N
首が繋がっている事に驚きを隠せなかったが
更にベリブルーが驚いたのは
自身の変わり果てた姿だった。
鬼の様な顔に赤黒い翼、硬くなった皮膚
それはまるで悪魔の様な姿だった。
ベリブルー
「これは...まさか...
私は光堕ちしたという事なのか!!
そんな...あの噂は...
本当だったというのか!!私は...私は
大天使 ミカエル様に
見捨てられたというのか!!!!!!!
嘘だぁぁあ!!!!!!!!!
嘘だァァァア!!!!!!!」
N
身体中から光武が溢れ出し
大気が震え爆炎が迸る。
同時にナターシャの湖が全て干上がった。
ベリブルー
「ハァ...ハァ...」
N
近年、四大天の中で
都市伝説とも呼べる噂があった。
それは...
半神少女より
能力を分け与えられし者
命を半分、差し出し
天寿 を全うしなければならない。
差し出せぬ者は
等しく光から堕とされるだろう。
それ即ち、神への冒涜なり
ベリブルー
「ァァァア!!!!!!!!!」
※音楽がある場合終わるまで待つ
ユキヤ▶︎▶︎▶︎N
N
ーー数年後ーー
エルドーラ帝国 軍人墓地にて
ベリブルーは自身の墓碑を眺めていた。
そこには...
ベリブルー
「英雄ここに眠る」
N
ベリブルーの心には
憤怒の感情が常に渦巻き
破壊的な衝動を
僅かな理性で抑える事しか出来なかった。
まるで爆弾を抱えている様な
感覚に恐怖を覚え
不安定な自身の精神状態では
娘や妻に会う事など出来るはずもなかった。
ベリブルー
「ハァ...ハァ...ハァ...」
N
ベリブルーは黒いローブを羽織り
顔が見えない様に 俯 いていると
手向けられた花の鮮やかさに
怒りが込み上げる。
ベリブルー
「私が死んでもなお
娘と妻は欠かさず墓参りをしているのか。
私は...生きているというのに!!
この手で娘さえも!!
抱きしめられないというのに!!」
N
蘇る記憶
家族との日々
胸を抉られる様な痛みが
ベリブルーを更に苛立たせる。
この時、ふと脳裏に浮かんだのは
在りし日の友の言葉だった。
ベリブルー
「何が...英雄だ...」
※音楽がある場合終わるまで待つ
N
ーーー時は更に遡 り数十年前ーー
巨城メタトロンに併設される教会にて
ベリブルーは大天使 ミカエルに祈りを捧げていた。
ベリブルー
「我らに導きと幸福をもたらし
我が家族にーーーー」
ニゲル
「また神に祈ってんのか?」
ベリブルー
「信仰とは心の支えだ」
ニゲル
「心の支えねぇ。
そうだ、美味い酒があるんだ一緒に呑むか?」
ベリブルー
「ニゲル。ここは教会だぞ」
ニゲル
「別にいいじゃあねぇか。
神だって今日くらい酒を呑みたくなるさ」
ベリブルー
「今日くらい?」
ニゲル
「ベリブルー。子供出来たんだって?」
ベリブルー
「何故それを...」
ニゲル
「男か?女か??」
ベリブルー
「...女の子だ」
ニゲル
「めでてぇな」
N
そう言ってニゲルは
米酒を片手にドスッと座った。
ニゲル
「めでてぇのに...
なんでそんな顔してんだ?」
ベリブルー
「そんな顔?」
ニゲル
「不安そうな顔だよ」
ベリブルー
「不安か...」
ニゲル
「なんだ?ビビってんのか?」
ベリブルー
「幾つもの戦争を乗り越え戦って来た。
お前も俺も今や"主席 ・ 祓悪使 "。
今更、死ぬ覚悟が揺らぐハズがない」
ニゲル
「俺が言いたかったのは父親になる事に。
だったんだが...んまぁいいか。
でも無茶な戦い方ばっかしてると
死ぬぞ??この前みてぇに
単騎で突っ込むのはよせ。
悪運も尽きるぞ」
ベリブルー
「お前の様な強運 がよく言う」
ニゲル
「強運 ??バーカ。実力だよ」
N
そう言ってニゲルは酒瓶を渡すと
ベリブルーは一気に呑んだ。
ベリブルー
「ゴクゴクゴク」
ニゲル
「おいおい!!俺の分も取っとけよ!?」
ベリブルー
「次はお前の番だ」
ニゲル
「そう来たか!!ゴクゴクゴク
プハーッ!!!
それで??名前は決まったのか??」
ベリブルー
「まだだ」
ニゲル
「楽しみだな」
ベリブルー
「お前は死地に何度も遭遇した。
その胸の傷を負って帰って来た時も
誰もが死ぬと思った」
ニゲル
「ぁあこれな。
流石に俺も死ぬかと思ったぜ」
ベリブルー
「お前はいつも道を切り開く
誰よりも先に行く。
そんなお前に私は憧れた」
ニゲル
「憧れ??気持ち悪ぃなお前」
ベリブルー
「他の同期は皆死んだ。
残ったのは融通が利かない頑固な私と
エルドーラきっての問題児」
ニゲル
「頑固の自覚あったのか...」
ベリブルー
「戦乱の世では
お前の様な人間が生き残るのだと私は思う。
私の命はどうでもいい。
生まれてくる子供には生きて欲しい」
ニゲル
「そんな未来の事を憂いても
意味なんかねぇよ。
数年後にはエルドーラが世界の覇権を
握ってるかもしんねぇーだろ?」
ベリブルー
「そう単純じゃない事くらい分かるハズだ」
ニゲル
「まぁな」
ベリブルー
「私の子がお前と同じぐらい
強運 なら心配いらないのだがな」
ニゲル
「だから実力だって」
ベリブルー
「そうだニゲル!!
お前の運に肖らせてくれないか!?」
ニゲル
「だから実力だって!!」
ベリブルー
「ニゲル!!
私の子供に名前を付けてくれ!」
ニゲル
「俺が!?嫌だよ。
責任取れねぇし」
ベリブルー
「頼む!!!」
ニゲル
「嫌だ」
ベリブルー
「何故だ!!友の頼みだぞ!!」
ニゲル
「酒呑んでる時しか
友とか言わねぇ友の頼み?」
N
ニゲルはしばらく考えた後
静かに口を開いた。
ニゲル
「ハァーーー。
分かった。お前の嫁さんのルーツは
純粋なエルドーラ人だよな?」
ベリブルー
「そうだ」
ニゲル
「そうか。
じゃあ...幸子!!」
ベリブルー
「それはない」
ニゲル
「幸恵!!」
ベリブルー
「却下だ」
ニゲル
「ワガママかよ!!」
ベリブルー
「真面目に頼む」
ニゲル
「真面目だけどなぁ...
うーん。四葉。なんてどうだ?
四葉のクローバーってのは
何度も踏まれて何度も傷付いて生き残った奴が
四葉になれるんだ。
幸運だろ??おまけに希少価値も高い」
ベリブルー
「四葉か...
素敵な名前だ。そう名付けるよ」
ニゲル
「俺に名付けさせて後悔すんなよ?」
ベリブルー
「それはお前のこれから次第だな」
ニゲル
「なんだそれ!!!
まっ、とりあえず決まった事だし呑めよ!!
乾杯だ!!!四葉に」
ベリブルー
「四葉に。
そしてこれからの未来に...」
N
すると、2人は壇上に上がり
夜更けまで酒を呑み交わした。
ベリブルー
「...ニゲル。お前は聞いた事あるか?」
ニゲル
「何だ急に」
ベリブルー
「我々祓悪使 の末路を」
ニゲル
「ぁあ。でも、あくまでも噂だ。
先人達はみんな戦いの中で死んだ。
立証する術なんてねぇよ」
ベリブルー
「私は子供が出来たと分かって
初めて戦いの最中、恐怖を覚えた。
殺される事にじゃない。残された時間にだ」
ニゲル
「そうか。んじゃあ逃げろよ。
俺は追いかけもしねぇし何も思わねぇ」
ベリブルー
「何を言う!ミカエル様を
裏切れと言うのか!!」
ニゲル
「カタブツのお前に
初めて守りたいもんが出来たんだろ?
じゃあいいじゃあねぇか。逃げちまえ。
世界のどっかに逃げて
家族とひっそり暮らせ。
酒ぐらい送ってやるよ」
ベリブルー
「無理だ。そんな事は出来ない。
私の正義は私の為にある訳じゃない」
ニゲル
「私の正義ねぇ。
世界が平和でもお前が幸せじゃあ無かったら
そんな平和に意味なんてあんのか?」
ベリブルー
「そんな事を言える立場にはない。
この能力は神の為、国の為
平和の為に与えられたものだ」
ニゲル
「相変わらず堅いねぇ、ほら呑めよ。
祝いの酒だ。神様も咎めたりしねぇさ」
N
するとベリブルーは神妙な面持ちで
ニゲルを見た。
ベリブルー
「もう1つ頼みがある」
ニゲル
「何だ?まだあんのかよ。
金は貸さねぇぞ」
ベリブルー
「金はいらん。
まず私に返せ」
ニゲル
「借りたっけ?」
ベリブルー
「お前って奴は...
真面目な話し、あの噂が本当だとしたらーー」
ニゲル
「等しく光から堕とされるだろう。
それ即ち、神への冒涜なり。って所か?
そもそも俺は神に祈らねぇから
初めから冒涜してんだよなぁ」
ベリブルー
「もし仮に私が光から堕ちたらどうする?」
ニゲル
「光から堕ちたらどうなるかも
分かんねぇーのに分かんねぇよ」
ベリブルー
「もし仮にだ」
ニゲル
「仮?」
ベリブルー
「もし...私が光から堕ちたら...」
N
ーー時は巻き戻りーー
ベリブルーは自身の墓碑の前で
刻まれた文字を眺めていた。
カクトス
「おい...おい!!おい!!!!」
ベリブルー
「ッッ!!!」
カクトス
「アンタ...ベリブルー隊長か?」
ベリブルー
「誰だ!!!!私に構うな!!!」
カクトス
「落ち着けよ。俺だ。
アンタの隊にいたカクトスだ」
N
そこに立っていたのは
キスツスとの戦闘で切り裂かれた隊士だった。
ベリブルー
「お前は...カクトスか。
その眼帯はーーーー」
カクトス
「湖までアンタを運んだのは俺だ」
ベリブルー
「お前だったのか...」
カクトス
「やっぱり生きてたのか...
じゃぁあの姿はアンタで
間違いなかったんだな」
ベリブルー
「ッッ!!私に関わるな!!
もしこの事を誰かに話せばーーーー」
カクトス
「心配すんな。
俺も死んだことになってる。
お互いに好都合だろ?」
ベリブルー
「お前まで...」
カクトス
「無理にとは言わねぇさ。
気が向いたらいつでも連絡して来な」
N
カクトスはそう言って
連絡先が書かれた紙と金を渡して来た。
ベリブルー
「これは...」
カクトス
「当面これで生きろ。
アンタがバケモンだろうが何だろうが
腹は減るだろう。
何かあればマウントバレーストリートに来い。
俺なら力になれる」
ベリブルー
「力になれるだと?」
カクトス
「ぁあ」
N
そう言ってカクトスは踵を返し去っていった。
配役変更一覧
----------------------------
ハミデル▶︎▶︎▶︎シヲン
----------------------------
シヲン
「彼が例の光堕ちかい?」
カクトス
「そうだ」
シヲン
「へぇ。
あれじゃあ、まるで...
怨念の塊じゃあないか」
カクトス
「怨念か...この国からしたら
それは禁忌だな」
シヲン
「禁忌ねぇ。
風土や風習、宗教観によって
解釈は異なる。
僕の国では 怨はね
誰もが持つ無限の可能生なのさ」
カクトス
「ここはエルドーラだ。
それで?会わせたい奴ってのは
ベリブルーじゃあなかったみたいだな。
アザジェノスの皇帝様よ」
シヲン
「ここには寄り道しただけさ。
本筋はこっち。僕も最近、忙しくてねぇ。
もう少し早く引き合わせたかったんだけど」
カクトス
「引き合わせたい?」
シヲン
「紹介しよう パチンッ」
N
シヲンがそう言って指を鳴らすと
どこからともなく人が現れた。
カクトス
「...誰だ」
N
そこに立っていたのは1人の少女だった。
シヲン
「須夜崎=眠萠 」
間
シヲン
「僕の娘だよ」
どうだった??
物語は面白かった?
続き気になる???
でもまた来月会えるさ!!!
そん時まで楽しみにしときな!!
バイバイキーン